アルバムレビュー:Take It From the Man! by The Brian Jonestown Massacre

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1996年5月28日

ジャンル:ネオ・サイケデリア、ガレージ・ロック、サイケデリック・ロック、インディー・ロック、60年代ロック・リバイバル

概要

The Brian Jonestown Massacreの『Take It From the Man!』は、1996年に発表されたアルバムであり、Anton Newcombeを中心とするこのバンドの膨大なディスコグラフィーの中でも、特に60年代ガレージ・ロック/サイケデリック・ロックへの強い愛着が前面に出た作品である。The Brian Jonestown Massacreは、1990年代アメリカのインディー・ロック・シーンにおいて、商業的な成功よりも過剰な創作衝動、ヴィンテージな音響美学、ドラッグ的なサイケデリア、そしてバンド内部の混沌によって独自の神話を築いた存在である。

バンド名そのものが、Rolling Stonesの創設メンバーBrian Jonesと、カルト集団Jonestownの悲劇を組み合わせたものであり、最初から1960年代ロックの美学と暗いカウンターカルチャー的な不穏さを同時に背負っていた。Anton Newcombeは、The Rolling StonesThe Velvet UndergroundThe BeatlesThe Byrds、The 13th Floor Elevators、Love、Spacemen 3、The Jesus and Mary Chainなどの影響を吸収し、それを1990年代のローファイなインディー環境の中で再構築した。

『Take It From the Man!』は、同じ1996年に発表された複数の作品群の中でも、The Brian Jonestown Massacreの「60年代志向」が最も明快に表れたアルバムのひとつである。特にRolling Stonesの初期から中期、The KinksやThe Pretty Thingsのような英国ビート/ガレージ・ロック、さらにアメリカ西海岸のサイケデリアやフォーク・ロックへの接近が目立つ。タイトルの“Take It From the Man!”には、「そいつから奪え」「権威から取れ」といったニュアンスがあり、既存のロック史、音楽産業、権威的な文化に対する挑発的な態度も感じられる。

本作の重要性は、単なるレトロ趣味にとどまらない点にある。The Brian Jonestown Massacreは、60年代ロックを博物館的に再現するバンドではない。むしろ、過去の音楽を現在の混乱した精神状態、DIY的な録音環境、インディー・ロックの反商業的な姿勢の中へ引き戻し、荒々しく再点火する。『Take It From the Man!』には、意図的に粗い録音、揺れる演奏、反復するリフ、だらしなくも魅力的なコーラス、陶酔的なギターの鳴りが詰め込まれている。洗練された復古ではなく、過去のロックがまだ危険で、安っぽく、猥雑で、魅惑的だった時代の感触を1990年代に召喚する作品である。

1996年という時代背景も重要である。アメリカではグランジ以後のオルタナティヴ・ロックが商業化し、イギリスではブリットポップが巨大化していた。そうした中で、The Brian Jonestown Massacreは、主流のロック・シーンとは異なる場所で、1960年代の地下精神を掘り返していた。彼らの音楽は、メジャー・レーベル的な完成度や明快なヒット性から距離を置き、むしろ過剰な曲数、長い反復、録音の荒さ、サイケデリックな酩酊感を重視する。そのため、本作は商業的なロック・アルバムというより、ひとつの地下室、ひとつの乱雑なスタジオ、ひとつのバンド共同体が鳴らした音の記録として聴こえる。

歌詞の面では、愛、欲望、裏切り、自己破壊、権力への反発、幻想、ドラッグ的な意識、バンドやシーンへの皮肉が混ざり合う。Anton Newcombeの歌詞は、明確な物語を語るというより、60年代ロック的な定型句、挑発的な言葉、ロマンティックな断片を使いながら、聴き手を一種のサイケデリックなムードへ引き込む。歌そのものは時に投げやりに聞こえるが、その投げやりさこそがバンドの魅力になっている。

『Take It From the Man!』は、The Brian Jonestown Massacreの入門作としても比較的分かりやすい。彼らの作品には、シューゲイザー寄りのもの、電子的な要素を含むもの、より実験的なものもあるが、本作はガレージ・ロック/60年代サイケデリアへの焦点が明確で、バンドの根本的な美学を理解しやすい。The Rolling StonesやThe Velvet UndergroundThe Jesus and Mary ChainPrimal Scream、Spacemen 3、The Dandy Warholsなどに関心があるリスナーにとって、本作は非常に魅力的な接点になる。

全曲レビュー

1. Vacuum Boots

「Vacuum Boots」は、アルバムの冒頭からThe Brian Jonestown Massacreのガレージ・サイケデリックな美学を強く提示する楽曲である。タイトルの“Vacuum Boots”は意味を一つに固定しにくい奇妙な言葉だが、その曖昧さがこのバンドらしい。現実感がありそうで、実際には少しずれている。日用品のようでもあり、ドラッグ的な幻覚の中に出てくる物体のようでもある。

サウンドは、ジャングリーなギター、軽く揺れるリズム、ローファイな質感によって構成されている。曲は過剰にドラマティックに展開するのではなく、ひとつのグルーヴやリフの中でじわじわと中毒性を作る。ここには、The Rolling StonesやThe Byrds、初期サイケデリアの影響が明確にあるが、1990年代のインディーらしい脱力感も同時にある。

歌詞では、直接的な物語よりも、音と言葉の雰囲気が重視される。The Brian Jonestown Massacreにおいて、歌詞はしばしばサウンド全体の一部として機能する。意味を追うよりも、声の揺れ、反復、言葉の響きが聴き手を曲の中へ引き込む。「Vacuum Boots」は、アルバムの入口として、バンドの酩酊したロックンロール感覚を端的に示す。

2. Who?

「Who?」は、短いタイトルに疑問と挑発を込めた楽曲である。“Who?”という問いは、相手の正体を問う言葉でありながら、同時に相手を突き放すような冷笑にも聞こえる。The Brian Jonestown Massacreの音楽には、しばしば人間関係への不信や、シーンの中での競争、他者への皮肉が含まれている。この曲にもその態度が表れている。

音楽的には、60年代ガレージ・ロックの簡潔さが強く出ている。ギターは荒く、リズムは直線的で、曲全体には即興的な勢いがある。洗練されたアレンジよりも、バンドがその場で鳴らしているような生々しさが重要である。声も整いすぎず、少し投げ捨てるように歌われることで、曲の挑発性が強まる。

歌詞では、相手への疑い、距離、軽蔑、あるいは存在確認のようなニュアンスが感じられる。誰なのか。何者なのか。自分にとって何の意味があるのか。こうした問いは、単純な会話ではなく、バンドが属するインディー・シーンやロック史への問いにも聞こえる。「Who?」は短く鋭いガレージ・ロックとして、本作の荒々しい側面を担っている。

3. Oh Lord

「Oh Lord」は、タイトルからゴスペルやブルース的な祈りを連想させる楽曲である。しかしThe Brian Jonestown Massacreがこの言葉を使うとき、それは純粋な信仰の歌というより、混乱や疲労の中で口をついて出る嘆きのように響く。ロックンロールにおける“Lord”は、救いを求める言葉であると同時に、自分ではどうにもならない状況へのため息でもある。

サウンドは、ゆったりとしたサイケデリック・ロックの色があり、ギターの響きには少し宗教的な広がりもある。反復されるコードと揺れるヴォーカルによって、曲は祈りのような循環感を持つ。ただし、それは教会的な清らかさではなく、煙たい部屋で酩酊しながらつぶやかれる祈りである。

歌詞では、救いへの希求や、自分自身の弱さへの意識が感じられる。The Brian Jonestown Massacreの音楽はしばしば傲慢で挑発的に聞こえるが、その裏側には不安定さや脆さもある。「Oh Lord」は、その脆さが比較的はっきり表れた曲であり、アルバムに精神的な陰影を加えている。

4. Caress

「Caress」は、タイトル通り「愛撫」や「優しく触れること」を意味する楽曲である。The Brian Jonestown Massacreの音楽には、荒っぽいガレージ・ロックの側面と、陶酔的で甘いサイケデリック・ポップの側面があるが、この曲は後者に近い。触れること、欲望、距離の近さがテーマとして浮かび上がる。

音楽的には、ギターの響きが柔らかく、メロディにも甘さがある。ただし、完全に清潔なラブソングではなく、どこか退廃的で、少し危うい。The Brian Jonestown Massacreのラブソングは、純粋な愛情だけではなく、依存、酩酊、曖昧な関係、身体的な欲望を含むことが多い。

歌詞では、相手への接近や触れることへの欲望が描かれているように響く。重要なのは、その接触が必ずしも安定した関係を意味しない点である。優しく触れる行為の中にも、不安や所有欲が潜む。「Caress」は、アルバムの中で比較的メロディアスな瞬間であり、バンドのロマンティックな側面を示す楽曲である。

5. B.S.A.

「B.S.A.」は、The Brian Jonestown Massacreらしい謎めいたタイトルを持つ楽曲である。短い略語のようなタイトルは、意味を明確に説明することを避け、聴き手に音そのものへ集中させる。バンドの作品には、このように意味を開いたままにしておく曲が多い。

サウンドは、ガレージ・ロック的な勢いとサイケデリックな反復が結びついている。ギターはざらつき、演奏には少し荒さがあるが、その荒さが曲に生命力を与えている。The Brian Jonestown Massacreの魅力は、完璧な演奏ではなく、崩れそうで崩れないグルーヴ、まとまりきらないエネルギーにある。

歌詞のテーマは、直接的には判然としにくいが、反抗、欲望、シーンへの皮肉が混ざっているように聞こえる。タイトルが略語であることによって、曲全体は一種の暗号のように機能する。意味の明快さよりも、態度と音の質感が重要な楽曲である。

6. Cabin Fever

「Cabin Fever」は、閉じ込められた状態による精神的な不安定さを意味するタイトルを持つ楽曲である。小屋や部屋の中に長く閉じ込められることで生じる焦燥、退屈、幻覚、苛立ち。これはThe Brian Jonestown Massacreの音楽世界と非常に相性が良いテーマである。彼らの音楽には、自由なサイケデリアと同時に、部屋の中にこもった閉塞感がある。

音楽的には、ローファイな録音の質感がタイトルの感覚を強めている。音は外へ大きく開けるというより、狭い空間の中で反響しているように聞こえる。ギターの反復や単調なリズムは、同じ場所に閉じ込められた感覚を音楽化している。

歌詞では、精神的な圧迫や、日常から抜け出せない感覚が読み取れる。サイケデリック・ロックはしばしば外界への拡張を表すが、この曲ではむしろ内側への沈み込みが強い。「Cabin Fever」は、本作にある酩酊と閉塞の二重性を象徴する楽曲である。

7. In My Life

「In My Life」は、The Beatlesの同名曲を連想させるタイトルを持つが、The Brian Jonestown Massacreの文脈では、より個人的で不安定な響きを持つ。人生、記憶、過去、失われた人々への視線が想起されるが、ここではそれが整ったノスタルジーではなく、ローファイなサイケデリック・ポップとして提示される。

音楽的には、メロディアスで、比較的穏やかな表情がある。The Brian Jonestown Massacreは荒いガレージ・ロックだけでなく、こうした60年代ポップ的な旋律を書く力も持っている。ギターの音色にはThe Byrds的なきらめきも感じられ、アルバムに柔らかい陰影を与える。

歌詞では、人生の中での出来事や関係を振り返るような感覚がある。ただし、明確な回想録ではなく、断片的なイメージとして現れる。Anton Newcombeの声は、過去を美しく整理するのではなく、少し酔った状態で思い出を口にしているように響く。その不安定さが曲に独特の魅力を与えている。

8. Be Song

「Be Song」は、存在そのものをテーマにしているようなタイトルを持つ楽曲である。“be”という言葉は、存在すること、ある状態であることを意味し、非常に単純でありながら抽象的である。The Brian Jonestown Massacreにおいて、このような単純な言葉は、しばしばサイケデリックな反復の中で意味を変化させる。

音楽的には、反復的なギターと淡々としたグルーヴが中心である。曲は劇的に変化するというより、同じ感覚を少しずつ深めていく。これは、Spacemen 3以降のドラッグ的ミニマリズムにも通じる手法である。聴き手は曲の進行を追うというより、音の状態の中に入っていく。

歌詞では、明確な物語よりも、存在すること、そこにいること、ある感情の中にとどまることが重要になる。The Brian Jonestown Massacreの音楽は、しばしば「何かを語る」より「ある状態を持続させる」ことに力を持つ。「Be Song」は、その性質を端的に示す曲である。

9. My Man Syd

「My Man Syd」は、タイトルからSyd Barrettへの参照を想起させる楽曲である。Syd BarrettはPink Floyd初期の中心人物であり、サイケデリック・ロックの神話的存在である。The Brian Jonestown Massacreにとって、Syd Barrett的な狂気、無垢、幻覚、破綻は重要な参照点だったと考えられる。

音楽的には、サイケデリックな揺らぎとガレージ的な簡潔さが混ざる。曲は過度に複雑ではないが、音の質感には少し異様な感覚がある。Syd Barrett的な影響を直接模倣するというより、壊れかけたポップ・ソングの感覚を受け継いでいるように聞こえる。

歌詞では、Sydという人物への親近感や賛辞、あるいはサイケデリック・ロックの系譜への自己投影が感じられる。The Brian Jonestown Massacreは、過去のロックの英雄たちを単に崇拝するのではなく、自分たちの混乱した音楽生活に引き寄せている。「My Man Syd」は、バンドのサイケデリックな血統を明確に示す楽曲である。

10. Straight Up and Down

「Straight Up and Down」は、本作の中でも特に印象的な楽曲であり、The Brian Jonestown Massacreの代表的なサウンドをよく示している。タイトルは「まっすぐ上下に」という意味を持ち、単純な動き、揺れ、酩酊、身体的な反復を連想させる。曲全体も、反復するリズムとメロディによって中毒性を生む。

音楽的には、The Rolling Stones的なリフ感覚と、サイケデリックな反復、ローファイなインディー・ロックの質感が結びついている。ギターはざらつきながらも非常にキャッチーで、バンドの持つガレージ・ロックの魅力が凝縮されている。曲は荒いが、フックは強い。このバランスがThe Brian Jonestown Massacreの重要な魅力である。

歌詞では、関係の揺れ、感情の上下、あるいはドラッグ的な身体感覚が感じられる。曲名の単純さは、意味を限定するのではなく、音楽の反復性と結びついている。「Straight Up and Down」は、本作の中心的な楽曲であり、バンドの美学を最も分かりやすく味わえる一曲である。

11. Monster

「Monster」は、内側にある怪物性、社会から見た異物感、自己破壊的な衝動を連想させるタイトルを持つ楽曲である。The Brian Jonestown Massacreの音楽には、しばしばロマンティックな甘さと攻撃的な不穏さが同居しているが、この曲では後者が前に出ている。

音楽的には、やや重く、暗い雰囲気がある。ギターは荒く、曲全体に不安定なエネルギーがある。The Brian Jonestown Massacreの「怪物性」は、メタル的な重さではなく、精神的に壊れかけたガレージ・ロックの形で現れる。音の崩れや演奏の揺れが、曲のテーマと結びついている。

歌詞では、自分の中にある制御しきれない部分、あるいは他者から怪物のように見られる感覚が読み取れる。Anton Newcombeのバンド神話には、天才性と破滅性が常に付きまとっているが、この曲はその暗い自己像とも重なる。「Monster」は、アルバムに不穏な重心を与える楽曲である。

12. Take It From the Man

表題曲「Take It From the Man」は、アルバムのタイトルを担う楽曲として、バンドの反抗的な姿勢を象徴している。“the man”は権力、体制、音楽産業、支配的な文化、あるいはロック史の権威を指す言葉として読める。そこから奪え、学べ、あるいは逆手に取れというニュアンスがある。

音楽的には、ガレージ・ロック的な勢いがあり、バンドのラフな演奏が魅力になっている。曲は整然としたアンセムというより、地下のロックンロール集会のような雰囲気を持つ。ギター、リズム、声が一体となり、粗いエネルギーを放つ。

歌詞では、権威への反発や、既存の価値観を盗み取って自分たちのものにするような姿勢が感じられる。The Brian Jonestown Massacreは、60年代ロックの遺産を借用しているが、それを従順に再現しているわけではない。むしろ、その遺産を自分たちの混沌の中で再利用し、別のものに変えている。この曲は、その方法論をタイトルとして宣言している。

13. Bailing Out

「Bailing Out」は、逃げ出すこと、撤退すること、危機から抜け出すことを意味するタイトルを持つ楽曲である。The Brian Jonestown Massacreの世界では、関係や状況から逃げることは、敗北であると同時に生存のための行動でもある。この曲には、そうした逃避と諦めの感覚がある。

音楽的には、やや軽快なガレージ・ロックの感触があり、タイトルの切迫感とは対照的に、曲にはどこか飄々としたムードもある。The Brian Jonestown Massacreは深刻なテーマを扱っていても、それを過度に重々しく演出しない。むしろ、軽く投げ出すような歌い方が、逆にリアルな疲労を感じさせる。

歌詞では、何かがうまくいかなくなり、そこから抜け出そうとする人物が浮かぶ。恋愛、バンド、社会、精神状態のいずれにも当てはまる。この曖昧さが、曲をThe Brian Jonestown Massacreらしいものにしている。「Bailing Out」は、アルバム後半における逃走感を担う楽曲である。

14. Wisdom

「Wisdom」は、知恵や悟りを意味するタイトルを持つ楽曲である。The Brian Jonestown Massacreの混沌とした音楽世界において、“wisdom”という言葉は少し皮肉にも響く。知恵を求めながら、実際には失敗や混乱を繰り返す。そうした人間的な矛盾がこの曲にはある。

音楽的には、サイケデリックなムードが強く、反復するギターと淡いヴォーカルが曲を支える。曲は明確な到達点へ進むというより、同じ感覚の中を漂う。知恵というタイトルにもかかわらず、音楽は確信ではなく曖昧さを保っている。

歌詞では、経験から何かを学ぼうとする姿勢や、しかし完全には理解に至れない感覚が読み取れる。The Brian Jonestown Massacreの音楽において、知恵は整理された答えではなく、混乱の中で一瞬だけ見えるものに近い。「Wisdom」は、アルバムに少し内省的な空気を加える楽曲である。

15. Whoever You Are

「Whoever You Are」は、相手を特定しない開かれた呼びかけをタイトルにした楽曲である。「君が誰であれ」という言葉には、恋人、聴き手、敵、仲間、あるいは見知らぬ誰かへ向けられた曖昧な距離感がある。The Brian Jonestown Massacreの音楽は、しばしば非常に私的でありながら、同時に不特定多数の聴き手へ投げられているようにも聞こえる。

音楽的には、メロディアスで、比較的聴きやすいサイケデリック・ポップの感触がある。ギターは柔らかく、コーラスにも少し甘さがある。荒い曲が多い中で、この曲はやや開放的な響きを持ち、アルバムに温度を加える。

歌詞では、相手の正体を問わず、何らかの関係を結ぼうとする感覚がある。しかし、それは完全な信頼ではなく、どこか距離を残した呼びかけである。誰であってもいい、しかし同時に誰なのかは分からない。この曖昧さが、サイケデリックなムードとよく合っている。

16. Sue

「Sue」は、女性名をタイトルに持つ短い楽曲であり、60年代ポップ/ガレージ・ロックに多く見られる人物名ソングの系譜にある。The Brian Jonestown Massacreは、こうした古いロックンロールの形式を好んで使うが、それを現代的に洗練させるのではなく、あえて古臭く、荒く、親密な形で鳴らす。

音楽的には、シンプルなギター・ポップとして機能する。曲の魅力は、複雑な構成ではなく、名前を呼ぶことの即物的な強さにある。人物名は、具体的でありながら、リスナーにとっては空白でもある。Sueが誰なのかは分からないが、その名前の響きによって曲の世界が立ち上がる。

歌詞では、Sueという人物への思いや関係が断片的に示される。The Brian Jonestown Massacreのラブソングは、しばしば相手を理想化しながらも、関係の不安定さを隠さない。「Sue」もまた、短いながらバンドのレトロなポップ感覚を示す曲である。

17. Got My Eye on You

「Got My Eye on You」は、「君を見ている」「目をつけている」という意味を持つタイトルであり、欲望、警戒、執着を含む楽曲である。ガレージ・ロックにおいて、こうした直接的な視線の歌は非常に重要である。見ることは欲望の始まりであり、同時に支配の感覚も含む。

音楽的には、軽快で、リフを中心にしたロックンロール的な曲である。60年代のビート・バンド的なシンプルさがあり、バンドの演奏にも勢いがある。The Brian Jonestown Massacreは、こうした古典的な題材を、自分たちのローファイな音像で蘇らせる。

歌詞では、相手への強い関心や、近づきたいという衝動が描かれる。ただし、その視線には少し危うさもある。ロマンティックな憧れと監視のような執着が紙一重になっている。「Got My Eye on You」は、本作のガレージ・ロック的な快楽を分かりやすく示す楽曲である。

18. Salaam

「Salaam」は、アラビア語で平和や挨拶を意味する言葉をタイトルにした楽曲であり、アルバムの中で異国的、あるいはエキゾチックな響きを持つ。1960年代サイケデリアには、しばしば中東やインドなど非西洋的な音への憧れが含まれていたが、この曲もその系譜にある。

音楽的には、東洋的な雰囲気を直接的に再現するというより、サイケデリック・ロックの中に異国的なムードを混ぜ込んでいる。反復するリズムやギターの響きが、少し呪術的な雰囲気を作る。The Brian Jonestown Massacreの音楽には、こうした60年代サイケデリアの定型的な異国趣味も含まれているが、それがローファイな音像の中で粗く表れる点が特徴である。

歌詞では、平和や挨拶の言葉が、サイケデリックな空気の中に置かれる。深い宗教性というより、音の響きそのものが重要である。「Salaam」は、アルバムの終盤に少し異なる色彩を与える楽曲であり、The Brian Jonestown Massacreのサイケデリックな幅を示している。

総評

『Take It From the Man!』は、The Brian Jonestown Massacreの中でも、60年代ガレージ・ロック/サイケデリック・ロックへの愛情と、その乱暴な再構築が最も分かりやすく表れたアルバムである。曲数は多く、録音は荒く、演奏も整いすぎていない。しかし、この過剰さと未整理さこそが本作の魅力である。The Brian Jonestown Massacreは、完璧なアルバムを作ろうとしているというより、音楽的な衝動をほとんどそのまま放出している。その結果、作品全体がひとつの巨大なガレージ・サイケデリックの塊として響く。

本作の大きな特徴は、The Rolling Stones的なロックンロール感覚である。特に初期から中期のStonesにあった不良性、ブルース由来のリフ、だらしない色気、少し危険なグルーヴが、The Brian Jonestown Massacre流に再解釈されている。ただし、彼らはStonesをそのままコピーしているわけではない。1990年代インディーのローファイ感、オルタナティヴ・ロック以後のだるさ、サイケデリックな酩酊、Anton Newcombeの偏執的な創作衝動が加わることで、音楽は別の不穏さを帯びている。

また、本作にはThe Velvet UndergroundやThe Jesus and Mary Chainの影響も感じられる。単純なコードの反復、淡々とした歌、ノイズとメロディの共存、ドラッグ的なムードは、こうした系譜と深くつながっている。The Brian Jonestown Massacreは、60年代ロックの「明るい懐古」ではなく、その地下的で危険な側面を強く受け継いでいる。

歌詞の面では、明確なコンセプト・アルバムではないものの、愛、欲望、救い、逃避、権威への反発、自己神話化が繰り返し現れる。「Oh Lord」や「Wisdom」には内省や救いへの希求があり、「Straight Up and Down」や「Got My Eye on You」には欲望と反復の快楽がある。「Take It From the Man」には反体制的な姿勢があり、「My Man Syd」にはサイケデリック・ロックの系譜への敬意がある。これらの曲がまとまりすぎずに並んでいることが、逆に本作の生々しさを生んでいる。

The Brian Jonestown Massacreの作品を聴くうえで重要なのは、一般的な意味での完成度だけを基準にしないことである。音程や録音の整い方、構成の洗練、アルバム全体の緊密さという点では、彼らの音楽はしばしば粗い。しかし、その粗さは欠点であると同時に表現の核でもある。きれいに整理されたサイケデリアではなく、実際に混沌の中で鳴っているようなサイケデリア。その感触が『Take It From the Man!』には濃厚にある。

1990年代の音楽史の中で見ると、本作はオルタナティヴ・ロックやブリットポップの大きな流れとは別の、地下的な60年代再解釈の重要作である。Primal Screamが『Screamadelica』以降にダンスとサイケデリアを結びつけ、The Dandy Warholsがよりポップでアイロニカルなネオ・サイケデリアを展開する中で、The Brian Jonestown Massacreはより泥臭く、危険で、過剰な形でロックの過去を掘り返した。本作はその象徴的な記録である。

日本のリスナーにとって『Take It From the Man!』は、60年代ロック、ガレージ・ロック、サイケデリア、ローファイ・インディーの接点を知るうえで非常に魅力的な作品である。The Rolling StonesやThe Velvet Underground、The Byrds、The 13th Floor Elevatorsに親しんでいるリスナーには、過去の音が1990年代の地下で再び歪んで鳴っている感覚が楽しめるだろう。一方で、The Jesus and Mary ChainやSpacemen 3、Spiritualized、The Dandy Warholsのようなネオ・サイケデリックな系譜を好むリスナーにも強く響く作品である。

総合的に見ると、『Take It From the Man!』は、The Brian Jonestown Massacreの魅力である過剰さ、粗さ、レトロな美学、反抗心、サイケデリックな酩酊感を凝縮したアルバムである。整然とした名盤ではない。しかし、危うい生命力を持った作品であり、バンドの創作衝動がほとんどそのまま刻まれている。60年代ロックの亡霊を1990年代のローファイなインディー空間に呼び戻した、混沌と魅力に満ちた一枚である。

おすすめアルバム

1. The Brian Jonestown Massacre『Their Satanic Majesties’ Second Request』

1996年発表のアルバムで、『Take It From the Man!』と同じくバンドの多作期を象徴する作品である。タイトルからも分かるようにRolling Stonesの『Their Satanic Majesties Request』への参照があり、よりサイケデリックでドラッグ的な音像が強い。The Brian Jonestown Massacreの幻想的な側面を深く知るうえで重要である。

2. The Brian Jonestown Massacre『Methodrone』

1995年発表のアルバムで、シューゲイザー、スペース・ロック、ドローン的なサイケデリアに接近した作品である。『Take It From the Man!』のガレージ・ロック色とは異なり、より浮遊感と長い反復が強い。バンドの幅広い音楽性を理解するうえで欠かせない一枚である。

3. The Rolling Stones『Aftermath』

1966年発表のアルバムで、The Brian Jonestown Massacreの60年代志向を理解するうえで重要な作品である。ブルース、ポップ、サイケデリア前夜の実験性が混ざり合い、英国ロックが独自のソングライティングへ進んだ時期を示している。『Take It From the Man!』の根底にあるStones的な感覚を確認できる。

4. The Velvet Underground『The Velvet Underground』

1969年発表のアルバムで、ローファイな親密さ、反復、都市的な退廃、シンプルなコードの中にある深い陰影が特徴である。The Brian Jonestown Massacreの地下的なサイケデリアや、整いすぎない美学の背景を理解するために関連性が高い。

5. The Dandy Warhols『…The Dandy Warhols Come Down』

1997年発表のアルバムで、The Brian Jonestown Massacreと同時代のネオ・サイケデリック・ロックを代表する作品である。よりポップで洗練された感触を持つが、60年代ロック、サイケデリア、インディー・ロックを結びつける姿勢は共通している。両バンドの違いを比較すると、1990年代ネオ・サイケデリアの幅がよく分かる。

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