
発売日:2014年5月19日
ジャンル:ネオ・サイケデリア、サイケデリック・ロック、ガレージ・ロック、ドローン・ロック、シューゲイズ、インディー・ロック
概要
ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの『Revelation』は、2014年に発表されたスタジオ・アルバムである。アントン・ニューコムを中心に活動してきたこのバンドは、1990年代以降のネオ・サイケデリア、ガレージ・ロック、ドローン・ロック、シューゲイズ、ローファイ・インディーの交差点に位置する重要な存在であり、膨大な作品数と不安定なバンド史、そして強烈な美学によって独自の神話を築いてきた。
バンド名は、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズと、1978年の人民寺院事件を指す「ジョーンズタウン」を組み合わせたものであり、最初から1960年代ロックへの深い愛情と、カルト的・破滅的なイメージが同居している。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽は、バーズ、ローリング・ストーンズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、13thフロア・エレヴェイターズ、スピリチュアライズド、ジーザス&メリー・チェイン、スペースメン3などの系譜を受け継ぎながら、常にアントン・ニューコム自身の偏執的な美学によって再構成されてきた。
『Revelation』は、バンドの長いディスコグラフィの中でも比較的整った音像を持つ作品である。初期の『Methodrone』や『Their Satanic Majesties’ Second Request』、『Take It from the Man!』、『Give It Back!』に見られたローファイな荒々しさや、1990年代的な過剰な衝動に比べると、本作は録音もアレンジもかなり明瞭で、アントン・ニューコムの成熟したスタジオ・ワークが前面に出ている。だが、それはサイケデリック性が薄れたという意味ではない。むしろ本作では、反復するギター、ドローン的な鍵盤、淡いヴォーカル、揺れるリズムが、非常に自然な形で一つの夢幻的空間を作っている。
タイトルの『Revelation』は、「啓示」「黙示」「明らかにされること」を意味する。宗教的な響きも持つ言葉だが、ここでの啓示は劇的な救済や終末の宣告というより、長くサイケデリックな音の渦に身を置くことで、現実の輪郭が少しずつずれていくような感覚に近い。アントン・ニューコムの音楽において、啓示とは新しい真理を高らかに宣言することではなく、古いロックの語彙を反復し続ける中で、別の時間感覚へ入っていくことなのだ。
本作が発表された2014年は、1960年代サイケデリアやガレージ・ロックの再評価がインディー・シーンで広がっていた時期でもある。テーム・インパラ、MGMT、トイ、ウッズ、ザ・ホラーズ、テンプルズ、ムーン・デュオなど、多くのアーティストがサイケデリックな音像を現代的に更新していた。その中でザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーは、流行の中心に乗る新世代バンドというより、すでにその地下水脈を長年掘り続けてきた先行者として存在していた。『Revelation』は、その経験と蓄積が穏やかに結晶化した作品である。
音楽的には、ガレージ・ロックの鋭さよりも、サイケデリック・フォーク、ドローン、メロディアスなインディー・ロックの側面が強い。曲ごとに爆発的な展開があるというより、同じ温度の中で少しずつ色合いが変わっていく。アントン・ニューコムのヴォーカルは、感情を大きく前に出すというより、音の一部として溶け込むように配置されている。そのため、本作は歌詞を追うアルバムであると同時に、音の質感、ギターの重なり、反復の揺れを味わうアルバムでもある。
キャリア上の位置づけとして、『Revelation』は、ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの後期作品の中でも重要な一枚である。混沌とした初期のイメージや、ドキュメンタリー映画『Dig!』によって広まった破天荒なバンド像から距離を置き、アントン・ニューコムがヨーロッパを拠点にしながら、より職人的かつ持続的に音楽を作り続ける段階の作品といえる。ここには、若さゆえの暴走よりも、長年同じ美学を掘り続けた者だけが持つ静かな強度がある。
日本のリスナーにとって本作は、ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーに初めて触れる入口としても有効である。初期作品ほど荒くなく、過度に難解でもない。サイケデリック・ロック、シューゲイズ、ドローン、60年代ロックへの関心があれば、比較的入りやすい。一方で、聴き込むほどに、単純なレトロ趣味ではない深みが見えてくる。古いロックの響きが、現在の孤独や曖昧な不安の中で再び鳴っている。その感覚が、『Revelation』の魅力である。
全曲レビュー
1. Vad Hände Med Dem?
アルバム冒頭の「Vad Hände Med Dem?」は、スウェーデン語で「彼らに何が起こったのか」といった意味を持つタイトルである。英語圏のロック・アルバムの冒頭に、あえて異言語のタイトルを置くことで、本作は最初から少しずれた感覚を作る。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーは、アメリカのバンドでありながらヨーロッパ的な感覚や異文化的な響きをしばしば取り込んできたが、この曲もその一例である。
音楽的には、淡いギターの反復と穏やかなリズムが中心である。派手なオープニングではなく、ゆっくりと霞の中から音が立ち上がるような始まりである。ヴォーカルも強く前へ出るのではなく、楽器の一部のように溶け込む。これによって、聴き手はロックの興奮というより、サイケデリックな時間の流れへ入っていく。
歌詞やタイトルが示す「彼らに何が起こったのか」という問いは、個人や世代、あるいは失われた理想への問いとして読める。1960年代サイケデリアへの憧れを持つバンドにとって、「彼ら」とは過去のアーティストや消えたカウンターカルチャーの夢かもしれない。冒頭曲として、この問いはアルバム全体に静かな影を落としている。
2. What You Isn’t
「What You Isn’t」は、文法的に少し崩れたタイトルが印象的である。通常であれば「What You Aren’t」となるところを「isn’t」としていることで、言葉にぎこちなさや違和感が生まれている。この言語のずれは、ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽にある、整ったロックの形式を少し歪ませる感覚とよく合っている。
音楽的には、ガレージ・ロック的なリズム感とサイケデリックなギターの層が組み合わされている。曲は過度に激しくはないが、前へ進む推進力がある。ギターの音はざらついていながら、メロディには柔らかさがあり、バンドの持つ二面性がよく表れている。
歌詞では、自己認識、他者からの見られ方、本当の自分ではないものへの違和感が示されるように聞こえる。タイトルの「あなたがそうではないもの」という発想は、アイデンティティの否定形を扱っている。人は自分が何者かだけでなく、自分が何者ではないかによっても定義される。この曲は、その曖昧な自己認識をサイケデリックなロックの中で表現している。
3. Unknown
「Unknown」は、タイトル通り「未知」を意味する楽曲である。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽には、しばしばはっきりした目的地へ向かうよりも、知らない場所へ漂っていくような感覚がある。この曲はその性質を端的に示している。
音楽的には、ミッドテンポの穏やかなグルーヴと、反復するギターが中心である。曲は大きく展開するというより、同じ空間の中を少しずつ漂う。ヴォーカルは淡く、歌詞の意味よりも声の響きが重要な役割を持つ。サイケデリック・ロックにおける「未知」は、恐怖であると同時に魅力でもある。
歌詞では、分からないこと、見えないもの、確信のなさが感じられる。現代のインディー・サイケデリアにおいて、未知とは単なる外宇宙や幻覚のことではなく、自分自身の感情や未来の不確かさでもある。この曲は、そうした曖昧な不安を穏やかな反復の中に包み込んでいる。
4. Memory Camp
「Memory Camp」は、記憶と場所を結びつけたタイトルを持つ楽曲である。「記憶のキャンプ」とは、過去の断片が一時的に集まる場所のようにも、記憶の中に閉じ込められる場所のようにも読める。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽において、記憶は常に重要な要素である。1960年代ロックの記憶、個人的な過去、失われた音楽的理想が、現在の音の中に重ねられる。
音楽的には、柔らかいギターの響きと反復的な構成が印象的である。曲は穏やかに進むが、その背後には少し寂しさがある。過去を振り返る音楽はしばしば甘くなりがちだが、この曲には単純な郷愁だけではなく、過去から抜け出せないような感覚もある。
歌詞では、記憶の残響、誰かとの距離、過ぎ去った時間が暗示される。キャンプという言葉には一時的な滞在の意味がある。記憶もまた、永遠の故郷ではなく、一時的に戻る場所なのかもしれない。この曲は、本作の中でも内省的な色合いを強める楽曲である。
5. Days, Weeks and Moths
「Days, Weeks and Moths」は、タイトルの言葉遊びが印象的である。通常であれば「Days, Weeks and Months」となるところが、「Months」ではなく「Moths」、つまり蛾になっている。時間の単位が、夜の光に集まる虫へと変化する。この小さなずれが、非常にサイケデリックである。
音楽的には、淡いメロディと浮遊感のあるギターが中心である。曲は大きな爆発を避け、静かに揺れるように進む。タイトルが示すように、時間が直線的に進むというより、夜の中で蛾が光の周りを回るように、同じ場所を旋回しているような感覚がある。
歌詞では、時間の経過、待つこと、反復される日々が暗示される。日、週、そして月ではなく蛾。つまり、時間は規則正しいカレンダーから外れ、生き物のように不規則に揺れ始める。この曲は、日常的な時間感覚を少しだけ歪ませることで、サイケデリックな感覚を作っている。
6. Duck and Cover
「Duck and Cover」は、冷戦期の核攻撃対策教育映像で知られるフレーズでもあり、「身をかがめて隠れろ」という意味を持つ。タイトルからは、危機、警告、社会的な不安、子ども向け教育映像の不気味さが連想される。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽が持つ1960年代的な記憶と、冷戦的な不安がここで結びつく。
音楽的には、比較的リズムがはっきりしており、サイケデリックなギターの中にガレージ・ロック的な感覚がある。曲は暗くなりすぎず、むしろ淡々とした調子で進む。しかし、その平静さが逆に不気味である。危機に対して感情を爆発させるのではなく、どこか無感覚に反応しているように聞こえる。
歌詞では、身を隠すこと、危険をやり過ごすこと、社会の中で生き延びるための反射的な行動が暗示される。これは冷戦的な核不安だけでなく、現代社会における精神的な防御反応としても読める。『Revelation』の中で、外部世界の不安が比較的明確に現れる曲である。
7. Food for Clouds
「Food for Clouds」は、非常に詩的で不可思議なタイトルを持つ楽曲である。「雲のための食べ物」という表現は、現実の論理から少し外れている。雲は食べるものではないが、その不可能な組み合わせによって、夢のようなイメージが生まれる。
音楽的には、柔らかく浮遊するサウンドが特徴で、タイトル通り雲の中を漂うような感覚がある。ギターや鍵盤は輪郭を強く主張せず、音の層として広がる。アントン・ニューコムのヴォーカルも、空気に溶け込むように配置されている。
歌詞では、現実から離れた感覚、想像力、儚いものへの視線が感じられる。雲は形を持つようで持たず、常に変化する。そこに食べ物を与えるというイメージは、存在しないものを育てようとする行為のようでもある。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーのサイケデリックな柔らかさがよく表れた楽曲である。
8. Second Sighting
「Second Sighting」は、「二度目の目撃」「再び見ること」を意味するタイトルである。これは、何かを一度見た後に、別の形でもう一度見ること、あるいは幻視のような体験を連想させる。サイケデリック・ロックにおいて「見ること」は重要なテーマであり、通常の視覚が変化することが音楽体験と結びつく。
音楽的には、ギターの反復と淡いメロディが中心で、曲全体に夢の中のような揺れがある。タイトルが示すように、曲は新しい展開へ突き進むというより、すでに見た風景を少し違う角度からもう一度眺めるように進む。
歌詞では、再認識、既視感、過去の出来事の再訪が感じられる。何かを二度見ることは、一度目とは違う意味を持つ。『Revelation』というアルバム・タイトルと結びつけると、この曲は啓示が一度きりの劇的な瞬間ではなく、繰り返し現れる視覚や記憶の変化であることを示しているように聞こえる。
9. Memorymix
「Memorymix」は、記憶とミックスを組み合わせたタイトルであり、ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽的手法をそのまま示しているような楽曲である。彼らの音楽は、1960年代ロック、ガレージ、ドローン、フォーク、シューゲイズ、個人的な記憶を混ぜ合わせることで成り立っている。まさに記憶のミックスである。
音楽的には、反復的で、やや実験的な雰囲気を持つ。メロディの明快さよりも、音の重なりや質感が重視されている。聴き手は曲を物語として追うというより、過去の断片が混ざり合う音の流れの中に入る。
歌詞や音像からは、記憶が直線的に整理されるものではなく、編集され、混ざり合い、歪むものであることが伝わる。アントン・ニューコムの音楽におけるレトロ感は、単なる過去の再現ではない。過去の音楽を現在の感覚で再編集することで、別の現実を作る。この曲はその方法論を象徴している。
10. Fist Full of Bees
「Fist Full of Bees」は、非常に強烈で不穏なイメージを持つタイトルである。「蜂でいっぱいの拳」と訳せるこの言葉には、握りしめた手の中で暴れるもの、痛み、怒り、制御不能な生命力が含まれる。蜂は甘い蜜を作る一方で刺す生き物でもあり、美と危険を同時に持つ。
音楽的には、やや不穏なリズムとギターの反復が中心である。曲には緊張感があり、穏やかなサイケデリアだけではない、ざらついた攻撃性も感じられる。タイトルのイメージ通り、内側で何かがざわざわと動いているような感覚がある。
歌詞では、怒りや痛み、身体的な不快感が暗示される。拳は攻撃の象徴だが、その中に蜂がいるということは、自分が攻撃する前に自分自身も刺されるということを意味するようにも読める。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽には、他者への反抗と自己破壊がしばしば重なっている。この曲はその緊張をよく表している。
11. Nightbird
「Nightbird」は、夜の鳥を意味するタイトルを持つ楽曲である。夜に飛ぶ鳥は、自由、孤独、見えない移動、闇の中の感覚を連想させる。アルバム後半に置かれることで、本作のサイケデリックな旅が夜の領域へ入っていく印象を与える。
音楽的には、メロディアスでありながら、暗い余韻を持つ。ギターの響きは柔らかく、ヴォーカルも穏やかだが、曲全体には夜の静けさと孤独がある。大きな爆発を避けながら、じわじわと情緒を広げるタイプの楽曲である。
歌詞では、夜、移動、孤独、誰かを探す感覚が暗示される。夜の鳥は、昼の世界から外れた存在であり、闇の中で自分の道を見つける。これはアントン・ニューコム自身の音楽的立場にも通じる。メインストリームの光の下ではなく、地下の夜の中で鳴り続ける音楽。その象徴として「Nightbird」は機能している。
12. Xibalba
「Xibalba」は、マヤ神話における冥界の名であり、アルバムの中でも特に神話的なタイトルを持つ楽曲である。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーのサイケデリック性は、単なる薬物的な幻覚だけでなく、古代的・神話的なイメージとも結びつく。この曲はその側面を強く示している。
音楽的には、ドローン的で、儀式的な雰囲気がある。リズムやメロディは大きく動くというより、暗い空間の中で持続する。冥界というタイトルにふさわしく、曲全体には地下へ降りていくような感覚がある。
歌詞や音像からは、死、地下世界、見えない力、古い儀式のようなイメージが浮かぶ。『Revelation』というタイトルが宗教的な啓示を連想させる一方で、「Xibalba」は西洋的な宗教とは異なる神話的地下世界を呼び込む。アルバム後半において、作品のスケールを個人的な記憶から神話的な暗さへ広げる重要な曲である。
13. Goodbye (Butterfly)
アルバム最後を飾る「Goodbye (Butterfly)」は、別れと変容を感じさせる終曲である。「Butterfly」は蝶を意味し、変態、儚さ、美しさ、短い生命、魂の象徴として読める。タイトル全体は、何か美しいものに別れを告げるような響きを持つ。
音楽的には、穏やかでメロディアスな余韻を持ち、アルバムを静かに閉じる。大きなカタルシスや劇的な終幕ではなく、淡い光の中で消えていくような終わり方である。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの美しさは、しばしば過剰なドラマではなく、こうした淡い消失の感覚にある。
歌詞では、別れ、変化、過ぎ去ったものへの視線が感じられる。蝶は変容の象徴であるが、その美しさは非常に短い。ここでの別れは、完全な悲劇ではなく、変化を受け入れることでもある。『Revelation』というアルバムが、過去の記憶、未知、啓示、冥界を通過してきた後、最後に蝶へ別れを告げることは象徴的である。終曲として、静かな余韻を残す楽曲である。
総評
『Revelation』は、ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの後期作品の中でも、非常に聴きやすく、かつバンドの美学がよくまとまったアルバムである。初期作品のローファイな混沌や、バンド内部の不安定さによって生まれた危うい魅力とは異なり、本作には落ち着いた成熟がある。しかし、その成熟は退屈な安定ではない。アントン・ニューコムが長年追求してきたサイケデリック・ロックの語法が、より自然に、より深く鳴っている。
本作の中心にあるのは、記憶、未知、啓示、反復である。「Memory Camp」「Memorymix」では記憶がテーマ化され、「Unknown」や「Second Sighting」では見えないものや再び見ることが扱われる。「Duck and Cover」には社会的不安があり、「Xibalba」では神話的な冥界が現れる。アルバム全体は、現実の世界を直線的に描くのではなく、記憶と幻視が重なり合うように構成されている。
音楽的には、ギターの重なりと反復が非常に重要である。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーのサイケデリアは、派手なエフェクトや長大な即興だけで作られるものではない。むしろ、シンプルなコード、反復するリズム、淡いヴォーカル、少しずつ変化する音色によって、聴き手の時間感覚を変えていく。本作でも、曲ごとの大きな差異より、全体を通した流れが重要である。
アントン・ニューコムのヴォーカルも、本作では音響の一部として機能している。強いメッセージを前面に押し出す歌い方ではなく、ギターや鍵盤の中に溶け込むように配置される。そのため、歌詞の意味を明確に追うというより、声そのものが作るムードを聴くことが重要になる。これはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやスペースメン3以降のサイケデリック・ロックの系譜にも通じる。
本作は、1960年代ロックへの深い参照を持ちながら、単なる懐古にはなっていない。確かに、バーズ的なギター、ローリング・ストーンズ的なざらつき、ガレージ・ロックの反復、サイケデリック・フォークの淡さは随所に聴こえる。しかし、それらは過去のスタイルの再現ではなく、アントン・ニューコムの長い音楽的執着を通して現在に再配置されている。『Revelation』の音は古く聞こえるが、その古さは意図的な美学であり、現在の時間から逃れるための装置でもある。
また、本作はザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの「継続するバンド」としての重要性を示している。彼らは1990年代のネオ・サイケデリアやガレージ・ロックの文脈で語られがちだが、2010年代にもなお新作を発表し、自分たちの音を更新し続けていた。『Revelation』は、若い頃の衝動を再現するのではなく、同じ美学を長い時間の中で熟成させた作品である。
日本のリスナーにとって本作は、過度に騒がしいロックではなく、空間や反復を味わうサイケデリック・ロックとして聴くと魅力が伝わりやすい。明確なシングル・ヒットや劇的な展開を求めるよりも、アルバム全体の温度、ギターの層、タイトルが作るイメージ、曲間の連続性に耳を向けるべき作品である。夜、移動中、あるいは一つの景色を眺めながら聴くと、その淡い幻覚性がより強く感じられる。
総じて『Revelation』は、ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーのサイケデリックな美学が、穏やかで成熟した形で表れた重要作である。啓示というタイトルにふさわしく、アルバムは大きな宣言ではなく、音の反復と記憶の揺らぎの中で、静かに別の視界を開く。派手ではないが、深く、持続的に効いてくる作品であり、長年サイケデリアを掘り続けてきたバンドだからこそ作り得たアルバムである。
おすすめアルバム
1. The Brian Jonestown Massacre『Their Satanic Majesties’ Second Request』(1996年)
バンド初期の代表作のひとつであり、1960年代サイケデリック・ロックへの愛情とローファイな実験精神が濃厚に表れた作品である。『Revelation』よりも荒く、過剰で、混沌としているが、アントン・ニューコムの美学の原点を理解するうえで欠かせない。
2. The Brian Jonestown Massacre『Take It from the Man!』(1996年)
ガレージ・ロック、ローリング・ストーンズ的なロックンロール、60年代ビート・ミュージックへの傾倒が強く出た作品である。『Revelation』の落ち着いたサイケデリアとは異なり、より直線的で荒々しいバンドの側面を知ることができる。
3. The Brian Jonestown Massacre『Methodrone』(1995年)
シューゲイズ、ドローン、スペースメン3的な浮遊感が強い初期作である。長く反復するギター、霞のような音像、夢幻的なムードが特徴で、『Revelation』の柔らかいドローン感に惹かれるリスナーに適している。
4. Spacemen 3『The Perfect Prescription』(1987年)
サイケデリック・ドローン、ミニマルな反復、薬物的な浮遊感をロックの形で追求した重要作である。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーの音楽的背景を理解するうえで非常に重要であり、『Revelation』の反復と酩酊感の源流として聴ける。
5. The Warlocks『Phoenix』(2002年)
アメリカのネオ・サイケデリック・ロックを代表する作品のひとつであり、ドローン、ガレージ、シューゲイズ的なギターの層が特徴である。ザ・ブライアン・ジョーンズタウン・マサカーと同じ地下サイケデリアの流れにあり、『Revelation』の暗く揺れる音響を好むリスナーに関連性が高い。

コメント