John L by Black Midi(2021)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「John L」は、Black Midiの2021年のアルバム『Cavalcade』に収録された楽曲で、狂気に満ちたカルト的リーダーの支配とその崩壊をテーマにしている。曲の中では、John Lという人物が群衆を統率し、独裁的な権力を振るう様子が描かれる。しかし、その支配は次第に脆くなり、彼が築いた帝国は崩壊していく。

歌詞は詩的で難解な表現が多く、抽象的かつ風刺的な言葉遊びが特徴的である。暴力的でカオスなビジョンが描かれ、独裁者の終焉や、集団心理の恐ろしさを風刺しているようにも解釈できる。こうしたテーマは、現代社会の政治や権力構造に対する批判とも取れる。

2. 歌詞のバックグラウンド

Black Midiは、ロンドン出身のバンドで、ポストパンク、プログレッシブロック、ジャズ、ノイズロックなどを融合させた独自のサウンドで知られる。「John L」は彼らの2ndアルバム『Cavalcade』のリードシングルとして発表され、アルバムの混沌とした世界観を象徴する楽曲となった。

この楽曲は、圧倒的なテンションと複雑な楽曲構成でリスナーを圧倒する。特に、フロントマンであるジョーディ・グリープの狂気じみた語り口調のボーカルと、急激な展開を見せる楽器編成が、楽曲のカオティックな雰囲気を強調している。歌詞の中で語られるJohn Lの存在は、現実世界の独裁者やカルトリーダーのイメージと重なり、社会的なメッセージを含んでいると考えられる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、この楽曲の印象的なフレーズを抜粋し、和訳を添える。

Original Lyrics:
John Fifty wants to bring back the turnip
His reign is unimpeded and total

和訳:
ジョン・フィフティはカブを取り戻したい
彼の支配は妨げられることなく、完全だ

Original Lyrics:
And the people all say: “He must be the best”!
“He must be the best!”

和訳:
そして人々は皆言う:「彼が最高に違いない!」
「彼が最高に違いない!」

Original Lyrics:
But the mask will soon fall off his face
And the men will run away in fright

和訳:
だが、その仮面はすぐに剥がれ落ちる
そして男たちは恐怖に駆られ逃げ出す

引用元:Genius

4. 歌詞の考察

「John L」の歌詞は、一見ナンセンスなように思えるが、実際には独裁者の心理とその終焉を描いた深い意味を持っている。楽曲の冒頭では、John Lが人々に崇拝され、カルト的な支持を受けている様子が描かれる。しかし、物語の進行とともにその支配が崩壊し、人々が彼を見限る様子が明確になっていく。

「John Fifty wants to bring back the turnip(ジョン・フィフティはカブを取り戻したい)」というフレーズは、権力者の奇妙な政策を皮肉るような表現であり、現実の独裁者たちが持つ支離滅裂な信念を象徴しているとも解釈できる。また、「But the mask will soon fall off his face(だが、その仮面はすぐに剥がれ落ちる)」というラインは、権力者の虚像が崩壊し、人々がその真の姿に気付く瞬間を示している。

この楽曲の核心には、群衆心理や偶像崇拝、そしてそれが崩壊したときの絶望感といったテーマがある。歴史上の独裁者やカルトリーダーの台頭と没落を風刺するかのような内容は、Black Midiならではのアバンギャルドなアプローチで描かれている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

「John L」が持つカオティックで実験的な要素を好むリスナーには、以下の楽曲もおすすめできる。

  • “953” by Black Midi
    • デビューアルバム『Schlagenheim』のオープニングトラックで、「John L」に通じる混沌とした展開が特徴。
  • “Mr. Bungle” by Mr. Bungle
    • ジャズとメタルを融合させたカオスな楽曲が多く、Black Midiと共通する実験精神を持つバンド。
  • “Bile Ridden” by Black Country, New Road
    • Black Midiと同じくロンドンの実験的ロックシーンを牽引するバンドの楽曲で、不安定な展開と緊張感が特徴。
  • The National Anthem” by Radiohead
    • ノイズとジャズの影響を強く受けた実験的なサウンドが、「John L」の持つエネルギーと通じる部分がある。

6. 楽曲の影響と特筆すべき事項

「John L」は、Black Midiの音楽的進化を象徴する楽曲のひとつであり、前作『Schlagenheim』のノイズロック的なアプローチから、よりプログレッシブでアヴァンギャルドなスタイルへと移行する過程を示している。楽曲の中で展開されるジャズの影響や急激なテンポチェンジは、従来のポストパンクやノイズロックの枠を超え、まるで即興演奏のようなダイナミズムを持っている。

また、ミュージックビデオでは、John Lというカルト的リーダーが異様な動きを見せながら群衆を操る様子が描かれており、楽曲の狂気を視覚的にも強調している。この映像美と音楽の融合が、Black Midiの持つアート性を際立たせている。

結果として、「John L」は単なるロックソングではなく、現代社会の不安定さや権力構造の変化を表現する、強烈なアート作品としての側面を持っている。Black Midiの音楽は、従来のロックの枠を超えて新たな地平を切り開く試みを続けており、「John L」はその代表的な楽曲として語り継がれるだろう。

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