The National: メランコリックな詩情とシネマティックなサウンドを描くインディーロックの重鎮

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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The National(ザ・ナショナル)は、1999年に米国オハイオ州シンシナティ出身のメンバーによって結成され、ニューヨークを拠点に活動してきたインディーロック・バンドである。中心となるのは、ボーカルのマット・バーニンガー、双子のアーロン・デスナーとブライス・デスナー、兄弟のスコット・デヴェンドーフとブライアン・デヴェンドーフの5人だ。

彼らの音楽には、派手なギターソロや大きなサビで一気に盛り上げる曲はそれほど多くない。低く落ち着いた歌声、細かく動くドラム、静かに重なるギターやピアノによって、じわじわと緊張感を高めていく。歌詞では恋愛や孤独、不安、年齢を重ねることなどが描かれる。

2000年代のニューヨーク周辺から登場したインディーロック勢のなかでも、流行に合わせて大きくスタイルを変えるのではなく、自分たちの音を少しずつ深めながら長いキャリアを築いてきたバンドである。

The Nationalの背景と歴史

The Nationalのメンバーはシンシナティ周辺で育ち、以前から互いを知る関係だった。1990年代末にニューヨークへ移ったメンバーたちが集まり、1999年にThe Nationalとして活動を始める。

2001年にセルフタイトルのデビューアルバム The National を発表した。初期には後年よりもカントリーやアメリカーナに近い素朴な音が目立っている。続く Sad Songs for Dirty Lovers では、静かな曲と荒々しいロックを行き来するようになり、バンド独自の緊張感が少しずつ見えてきた。

大きな転機となったのが2005年の Alligator である。「Abel」「Mr. November」などを収録し、インディーロックのリスナーや音楽メディアから広く注目されるようになった。マット・バーニンガーの低い声と、デヴェンドーフ兄弟のリズム、デスナー兄弟が作る細かなギターの重なりという基本的なスタイルも、この頃にはかなり明確になっている。

2007年の Boxer では、さらに落ち着いた方向へ進んだ。音数をむやみに増やさず、ピアノやストリングス、管楽器などを慎重に配置するようになる。「Fake Empire」のように、最初は静かでも聴き進めるうちに演奏が大きく広がっていく曲が増えた。

2010年の High Violet で人気はさらに拡大する。続く Trouble Will Find Me も高く評価され、The Nationalは2010年代を代表するインディーロック・バンドの一つとなった。

それでも同じ音を繰り返したわけではない。2017年の Sleep Well Beast では電子音や機械的なビートを積極的に導入する。2019年の I Am Easy to Find では複数の女性ボーカリストを迎え、マットだけを中心に置かない歌の構成を試した。

2023年には First Two Pages of Frankenstein と Laugh Track の2作品を発表した。長い活動による迷いや人間関係の変化も作品の題材にしながら、現在まで活動を続けている。

The Nationalの音楽スタイルと特徴

The Nationalを最初に聴いて強く印象に残るのが、マット・バーニンガーの低い歌声である。力強く歌い上げるタイプではなく、普段の会話に近い低音で淡々と歌うことが多い。

そのため、最初は感情が抑えられているようにも聞こえる。しかし曲が進むにつれて声が荒くなったり、同じ言葉を繰り返したりすることで、内側にあった感情が少しずつ表へ出てくる。この静けさと爆発の差がThe Nationalらしさにつながっている。

演奏ではブライアン・デヴェンドーフのドラムが非常に重要だ。単純に一定の拍を刻むだけではなく、細かな音を連続させながら曲を前へ進める。静かな曲でもドラムを注意して聴くと、手足が忙しく動いていることが多い。

アーロンとブライスのデスナー兄弟は、ギターを大きなコードで鳴らし続けるより、小さなフレーズを重ねて空間を作る。そこへピアノ、ストリングス、管楽器や電子音が加わるため、ロックバンドでありながら映画音楽のような広がりを感じさせることがある。

歌詞も重要である。マットは、恋愛の失敗や夫婦関係、不安、自意識、酒、仕事、年齢といった日常的な問題を頻繁に扱う。ただし、出来事を最初から最後まで説明するような書き方ではない。短い会話や奇妙な比喩、断片的な記憶を並べることで、頭の中を直接のぞいているような感覚を作る。

The Nationalの代表曲

「Fake Empire」

2007年の Boxer を代表する曲であり、The Nationalの音楽を理解しやすい一曲である。

静かなピアノとマットの低い歌声から始まり、少しずつ楽器が増えていく。特にドラムは普通のロックのように分かりやすく拍を強調せず、異なるリズムが重なって聞こえるような演奏になっている。終盤には管楽器も加わり、最初の小さな音から大きな景色へと広がっていく。

「Bloodbuzz Ohio」

2010年の High Violet に収録された代表曲である。重く繰り返されるドラムとピアノを土台に、マットが故郷オハイオを思わせる言葉を歌う。

故郷への愛情を素直に歌った曲ではない。過去から逃げ切れないような感覚や、戻っても以前と同じ場所には帰れないような複雑さがある。大きく広がる演奏と個人的な不安が同時に存在する、The Nationalらしい曲だ。

「Terrible Love」

High Violet の冒頭を飾る曲である。ぼんやりしたギターと低い歌声から始まり、後半に向かってドラムやギターが激しくなっていく。

The Nationalは静かなバンドと思われることもあるが、この曲を聴くと別の面が分かる。感情を最初から叫ぶのではなく、抑えながら進み、最後に演奏全体を大きくする。この「少しずつ崩れていく」ような展開が彼らの得意な方法である。

「I Need My Girl」

2013年の Trouble Will Find Me を代表する曲の一つである。細く繰り返されるギターと控えめなリズムを背景に、マットの歌声を前面に出している。

複雑な演奏よりもメロディと歌詞が中心なので、The Nationalを初めて聴く場合にも特徴をつかみやすい。大げさな言葉を使わずに人間関係の距離や寂しさを表現する、彼らのソングライティングがよく表れている。

「The System Only Dreams in Total Darkness」

2017年の Sleep Well Beast に収録されている。従来のThe Nationalらしい暗い雰囲気を残しながら、電子的なリズムや鋭いギターを強く押し出した曲だ。

特に目立つのがブライス・デスナーによるギターである。普段のThe Nationalでは珍しいほどギターソロが前面に出る。長いキャリアを経ても、バンドが自分たちの基本形を変えようとしていたことが分かる。

アルバムごとに見るThe Nationalの進化

Alligator(2005年)

The Nationalが自分たちのスタイルをはっきりさせた初期の重要作である。

「Secret Meeting」のような抑えた曲がある一方、「Abel」や「Mr. November」ではマットが声を荒らし、バンドも激しい演奏を見せる。後の作品より荒削りだが、静かな不安と突然の爆発を組み合わせる方法がすでに確立されつつある。

歌詞でも、仕事や恋愛、自意識に振り回される大人の姿が目立つ。若者の反抗とは少し違う、社会生活のなかで感じる疲れや居心地の悪さをロックにしたことがThe Nationalの個性となった。

Boxer(2007年)

Alligator の荒々しさを残しながら、演奏をより細かく整理した作品である。

「Fake Empire」「Mistaken for Strangers」「Apartment Story」などでは、一つひとつの楽器が大きな音を出すのではなく、小さなパターンを繰り返しながら曲全体を作っている。

特にドラムの存在感が大きい。ギターを中心に押し切る一般的なインディーロックとは違い、細かなリズムによって緊張感を保つ。その上にピアノや管楽器が重なり、後のThe Nationalにつながる洗練されたサウンドが完成した。

High Violet(2010年)

The Nationalがより広い人気を獲得した作品である。「Terrible Love「Bloodbuzz Ohio」「England」など、現在でも代表曲として扱われる曲が多い。

Boxer より音が厚く、暗さも強い。ギターやキーボードを何層にも重ねているが、それぞれの音をはっきり聞かせるというより、全体を大きな霧のようにまとめている。

そのなかをマットの低い声が進んでいくため、巨大なサウンドと個人的な孤独が同時に感じられる。The Nationalの「シネマティック」と呼ばれる音の広がりが特に分かりやすいアルバムだ。

Trouble Will Find Me(2013年)

それまでに完成させたスタイルを、より自然な形で鳴らした作品である。

「I Should Live in Salt」「Don’t Swallow the Cap」「I Need My Girl」など、メロディが比較的分かりやすい曲がそろっている。複雑な演奏をしていても、それを難しく聞かせないところが特徴だ。

この頃には、大きな変化を見せなくてもThe Nationalだと分かる音が完成していた。マットの低音、細かなドラム、デスナー兄弟のギター、ピアノやストリングスの配置が非常に自然に結びついている。

Sleep Well Beast(2017年)

完成していたスタイルを意識的に崩した作品である。

電子音やドラムマシンを取り入れ、これまで以上に冷たく機械的な感触を加えた。「The System Only Dreams in Total Darkness」には鋭いギターがあり、タイトル曲では電子的な音が大きな役割を持つ。

歌詞では長い人間関係のなかで起こる衝突や距離が目立つ。若い頃の失恋ではなく、一緒に長く生活してきた人間同士がどう関係を保つのかという問題が描かれ、バンド自身の年齢に合わせて題材も変化している。

I Am Easy to Find(2019年)

The Nationalのボーカルのあり方を大きく広げた作品である。シャロン・ヴァン・エッテン、リサ・ハニガン、ゲイル・アン・ドーシーなど複数の女性歌手が参加し、マットと声を交わしている。

これまでのThe Nationalでは、基本的にマットの視点から世界を見る感覚が強かった。この作品では異なる声が同じ曲に入ることで、一つの感情を複数の方向から眺めるような作りになっている。

ストリングスやコーラスも大きく使われ、ロックバンドという枠からさらに外側へ広がった作品である。

影響を受けたアーティストと音楽

The Nationalの音楽は、ポストパンクやオルタナティブ・ロック、アメリカのシンガーソングライターなど、複数の流れと結びついている。

マット・バーニンガーの低い声は、Joy Divisionのイアン・カーティスやLeonard Cohenなどと比較されることがある。ただし、声が低いというだけで音楽全体が同じわけではない。Leonard Cohenに通じるのは、派手に歌い上げず、言葉の細かなニュアンスを低い声で伝える部分である。

バンドの暗い音や反復するリズムには、Joy Divisionなどのポストパンクと共通する部分がある。一方、The Nationalはそこへピアノやストリングス、管楽器を加え、より柔らかく広がりのあるサウンドへ変えている。

また、米国のフォークやカントリーに近い音は初期作品で特に分かりやすい。The Nationalはニューヨークのインディーロック・シーンと結びついて語られることが多いが、音楽の根には米国のシンガーソングライター的な物語性もある。

The Nationalが後の音楽に与えた影響

The Nationalは2000年代以降、インディーロックが年齢とともにどのように変化できるかを示したバンドの一つである。若さや反抗を前面に出すのではなく、仕事、人間関係、家庭、不安、老いといった大人の日常をロックの題材として扱ってきた。

音の面では、ギターを大音量で鳴らすだけではなく、細かなリズムとピアノ、ストリングス、電子音を組み合わせる方法を発展させた。静かな曲でも演奏を単純にせず、何層もの小さな音を重ねて大きな空間を作る。その感覚は、2010年代以降のインディーロックやシンガーソングライター作品にも通じている。

特にアーロン・デスナーはプロデューサーとしても活動を広げた。Taylor Swiftの folkloreevermore への参加は、その代表例である。The Nationalで培われた、ピアノやアコースティック楽器を中心に余白を残しながら細かな音を重ねる方法が、より大きなポップ市場にも接続した。

その意味でThe Nationalの影響は、似た音のインディーロック・バンドを増やしたことだけではない。インディー音楽で発展した繊細な録音やアレンジの方法を、現代のポップ音楽へつなぐ役割も果たしている。

まとめ

The Nationalの大きな特徴は、低い歌声、細かく動くリズム、静かに重なるギターやピアノ、そして日常の不安や人間関係を描く歌詞にある。最初から感情を爆発させるのではなく、小さな音や言葉を積み重ね、曲の途中から少しずつ景色を広げていく。

Boxer や High Violet でそのスタイルを完成させた後も、電子音や異なるボーカリストを取り入れながら変化を続けてきた。大人になっていくこと自体を音楽の題材にしながら、長い時間をかけて自分たちの表現を深めてきた点も特徴である。

2000年代のインディーロックから登場し、その方法を2010年代以降の音楽へつないできたThe Nationalは、派手な変化ではなく、細かな音と言葉の積み重ねによって独自の世界を築いたバンドである。

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