アルバムレビュー:『Sucker』 by Charli XCX

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2014年12月15日

ジャンル:ポップ・ロック、パワー・ポップ、パンク・ポップ、ニューウェイヴ、シンセ・ポップ、ガール・グループ・ポップ、オルタナティヴ・ポップ

概要

Charli XCXの2作目のスタジオ・アルバム『Sucker』は、彼女のキャリアにおいて、初期のダークなエレクトロ・ポップから、より明快で攻撃的なポップ・ロック/パンク・ポップへ大きく方向転換した作品である。2013年のデビュー作『True Romance』では、Charli XCXはシンセ・ポップ、ゴシック・ポップ、クラウド・ラップ以後の暗い電子音、Tumblr的な美意識を背景に、傷ついたロマンスと夜の陶酔を描いていた。それに対して『Sucker』は、ギター、手拍子、シンプルなフック、挑発的な言葉、ティーンエイジ的な反抗心を前面に押し出したアルバムである。

この変化には、2014年前後のCharli XCXの状況が大きく関係している。彼女はIcona Popの「I Love It」のソングライティングで注目され、さらにIggy Azaleaの「Fancy」にフィーチャーされたことで、メインストリーム・ポップの中でも強い存在感を示した。また、映画『The Fault in Our Stars』に提供された「Boom Clap」は大きなヒットとなり、Charli XCXはアンダーグラウンド寄りのポップ・アーティストから、国際的なチャート・ポップの担い手へと移行していく。その直後に発表された『Sucker』は、彼女が大衆的なポップの場へ入り込みながらも、単なる優等生的なポップ・スターにならず、反抗的で騒がしいキャラクターを打ち出した作品である。

『Sucker』というタイトルは、「だまされやすい人」「負け犬」「夢中になる人」といった意味を含む。アルバム全体に漂うのは、誰かに媚びるのではなく、自分のルールでポップを鳴らすという態度である。Charli XCXはここで、恋愛に傷つく少女像よりも、ガムを噛みながらギターを鳴らし、ショッピングモールやパーティーや学校の廊下を走り抜けるような、騒々しく自己主張の強いポップ・キャラクターを演じている。これは1970年代後半から1980年代初頭のパンク/ニューウェイヴ、1990年代のパワー・ポップ、2000年代のポップ・パンクやチアリーダー的ポップの系譜を、2010年代のメジャー・ポップに接続する試みでもある。

音楽的には、『Sucker』は非常に直接的である。前作『True Romance』のような霞んだ電子音や暗い残響は後退し、代わりに歪んだギター、ハンドクラップ、シンプルなドラム、短いコーラス、反復されるフックが前に出る。Ramones、The Runaways、The Go-Go’s、BlondieBow Wow Wow、Weezer、Letters to Cleo、さらには90年代以降のティーン映画的なポップ・ロックの感覚が、Charli XCXらしい人工的なポップ感覚と混ざっている。ロック的な音を使っているが、あくまでポップとして設計されている点が重要である。

代表曲「Boom Clap」は、アルバムの中では最もストレートなポップ・ソングである。鼓動を思わせるタイトル、シンプルなビート、明快なメロディによって、恋愛の高揚を非常に分かりやすく表現している。一方、「Break the Rules」は、学校、規則、退屈、夜遊びへの憧れを歌う反抗的なポップ・アンセムであり、『Sucker』のアルバム全体の態度を象徴する。「London Queen」ではロンドンからアメリカへ移動するCharli自身のキャリア感覚が、軽快なパンク・ポップとして描かれる。

本作は、Charli XCXのディスコグラフィの中ではしばしば過渡期の作品として扱われる。後の『Vroom Vroom』以降の未来的で実験的なエレクトロ・ポップや、『Pop 2』『Charli』『how i’m feeling now』に見られるハイパーポップ的な鋭さを知るリスナーにとって、『Sucker』は比較的保守的で、ギター・ポップ寄りに聴こえるかもしれない。しかし、本作はCharli XCXが「ポップ・スター」としての演技、引用、キャラクター作りを意識的に行っている点で、後の作品と深くつながっている。彼女はここで、ロックの反抗的な記号をポップの中で再利用し、自分のイメージを作り替えている。

歌詞面では、反抗、恋愛、名声、移動、自己肯定、退屈への拒絶が中心にある。「Sucker」では自分を過小評価する相手や業界への挑発が歌われ、「Break the Rules」では規則から逃れたい若者の衝動が表現される。「Famous」では名声の空虚さとポップ文化の消費性が、明るい曲調の中で皮肉っぽく描かれる。「Need Ur Luv」では60年代ガール・グループ的な甘さと、相手を求める切実さが結びつく。全体として本作のCharliは、傷つきやすいが、決して従順ではない。

日本のリスナーにとって『Sucker』は、Charli XCXのキャリアを立体的に理解するうえで重要な作品である。『True Romance』の暗いシンセ・ポップから、『Vroom Vroom』以降の実験的ポップへ進む前に、彼女は一度、ロック的なエネルギーとメジャー・ポップの即効性を強く打ち出した。その意味で『Sucker』は、Charli XCXが単に未来的な電子音楽のアーティストではなく、ポップの歴史を引用しながら自分のキャラクターを組み替える作家であることを示している。

全曲レビュー

1. Sucker

アルバム冒頭の「Sucker」は、本作の姿勢を最も直接的に示すオープニング曲である。タイトル曲でありながら、壮大な導入ではなく、短く、騒がしく、挑発的に始まる。ここでCharli XCXは、自分を見下す相手や、音楽業界の期待に対して、強気で皮肉な態度を取る。これは自己紹介であると同時に、前作『True Romance』の陰鬱なロマンティシズムからの決別でもある。

サウンドは、パンク・ポップとパワー・ポップを基盤にしている。ギターは粗く、リズムは単純で、曲は非常に短い。複雑な構成ではなく、衝動の瞬発力が重視されている。この単純さは意図的であり、Charliはここで、ロックの荒さをポップのキャラクター作りに利用している。

歌詞では、自分を利用しようとする相手や、彼女を一時的な流行として扱う視線に対する反発が示される。Charli XCXは、単に「売れるポップ・スター」になるのではなく、その立場をからかい、挑発し、壊しながら引き受けている。ここに後年の彼女のメタ・ポップ的な態度の萌芽がある。

「Sucker」は、アルバム全体の宣言として機能する。甘い恋愛の世界に浸るのではなく、騒がしく、下品で、少し生意気なポップ・ロックの世界へ聴き手を引き込む。Charli XCXの第2段階の始まりを告げる曲である。

2. Break the Rules

「Break the Rules」は、『Sucker』の代表曲の一つであり、アルバム全体の反抗的なムードを象徴するポップ・アンセムである。タイトル通り、規則を破ること、学校や日常の退屈から抜け出すこと、夜に出かけて自分の時間を取り戻すことが歌われている。

サウンドは、シンセ・ポップとポップ・ロックを組み合わせた非常に明快な作りである。サビは大きく、歌いやすく、フックが強い。ビートは単純で、ギターやシンセは過度に複雑なことをせず、メッセージを一気に伝えるために機能している。ここには、ティーン映画のサウンドトラック的な即効性がある。

歌詞では、「学校へ行きたくない」「規則を破りたい」「夜を楽しみたい」という若者の衝動が、非常に分かりやすく描かれる。これは深い政治的な反抗ではない。むしろ、日常の管理や退屈に対する小さな反乱である。しかし、ポップ・ミュージックにおいて、こうした小さな反乱は非常に重要である。リスナーが自分の退屈を一瞬でも忘れるためのアンセムとして機能するからである。

「Break the Rules」は、Charli XCXのポップ・スターとしての大衆的な顔を強く示す曲である。後年の実験的な作品に比べると直線的だが、その直線性こそが本曲の力である。『Sucker』の最も分かりやすい入口の一つである。

3. London Queen

「London Queen」は、Charli XCX自身の移動とキャリア意識を、軽快なポップ・パンクとして描いた楽曲である。タイトルは「ロンドンの女王」を意味し、イギリス出身のCharliがアメリカへ渡り、ポップ・スターとしての自分を演じる姿がユーモラスに表現されている。

サウンドは、短く弾むようなパンク・ポップである。RamonesやThe Go-Go’sのようなシンプルでキャッチーなロックの系譜を感じさせる。ギターは軽く歪み、テンポは速く、曲は一気に駆け抜ける。深刻さよりもスピード感とキャラクター性が重視されている。

歌詞では、ロンドンからロサンゼルスへ向かうような移動の感覚、名声、若いポップ・スターとしての自己演出が描かれる。Charliはここで、自分を「ロンドンの女王」と呼びながら、同時にその肩書きを少し茶化している。自信と冗談が同居している点が重要である。

「London Queen」は、『Sucker』の中でも特に軽快で、Charli XCXのパンク的な遊び心がよく出た曲である。国境を越えてポップ・スターになっていく彼女のキャリアの勢いを、短いロック・ソングとして表現している。

4. Breaking Up

「Breaking Up」は、別れをテーマにしながら、悲しみよりも嫌悪と解放感を前面に出した楽曲である。タイトルはそのまま「別れること」を意味するが、曲調は失恋バラードではなく、相手への不満を痛快に吐き出すポップ・ロックになっている。

サウンドは、ギターを中心にしたシンプルなパンク・ポップで、サビは非常にキャッチーである。曲の構成は無駄がなく、短い時間で感情を伝える。Charliの歌い方も、泣き崩れるのではなく、相手を突き放すように響く。

歌詞では、相手のすべてが嫌いだという感情がコミカルかつ率直に表現される。恋愛の終わりを成熟した対話として描くのではなく、むしろ若い怒りと嫌悪として描いている。これは『Sucker』のポップ・パンク的な世界観に非常に合っている。感情は整理されるのではなく、叫ばれ、笑われ、ギターとともに放り投げられる。

「Breaking Up」は、Charli XCXの恋愛表現における強気な側面を示す曲である。『True Romance』では恋愛の痛みや執着が中心だったが、ここでは相手を捨てる側の快感がある。『Sucker』の反抗的なキャラクターを支える重要曲である。

5. Gold Coins

「Gold Coins」は、成功、富、華やかな生活への憧れを、皮肉と誇張を交えて描いた楽曲である。タイトルの「金貨」は、富や贅沢の象徴であり、Charliがポップ・スターとしての成り上がりを演じるための小道具のように機能している。

サウンドは、重めのビートとギター、シンセが組み合わさったポップ・ロックである。曲には少しグラマラスな空気があり、単純なパンク・ポップよりも、セレブリティ的な輝きと毒がある。Charliの歌唱も、挑発的で、やや大げさな自己演出を含んでいる。

歌詞では、高級車、金、派手な生活といったイメージが登場する。しかし、それは素朴な成功賛歌というより、ポップ・スターの欲望を演劇的に演じているように聴こえる。Charliは、富への憧れを隠さないが、それを完全に真面目なものとしても提示しない。ここには、商業ポップへの皮肉と魅了が同時にある。

「Gold Coins」は、『Sucker』の中でCharli XCXの自己演出能力がよく表れた曲である。ロック的な反抗だけでなく、ポップ・スターとしての派手な欲望を取り込み、それを少し漫画的に拡大している。

6. Boom Clap

「Boom Clap」は、Charli XCXのキャリアを大きく広げた代表曲であり、『Sucker』の中でも最もストレートなポップ・ソングである。映画『The Fault in Our Stars』との結びつきによって広く知られるようになったこの曲は、アルバム全体の騒がしいパンク・ポップ路線の中では、よりロマンティックで普遍的な位置を占める。

サウンドは、非常にシンプルで効果的である。タイトルの「Boom Clap」は、心臓の鼓動や手拍子、ポップ・ソングの基本的なリズムを思わせる。ビートは明快で、メロディは大きく、サビはすぐに覚えられる。Charliのソングライティング能力が最も分かりやすく表れた曲の一つである。

歌詞では、恋愛の高揚が身体的な音として表現される。相手に出会ったことで心が鳴り、世界が明るくなる。『True Romance』の暗く執着的な恋愛とは異なり、ここでの恋愛はもっと開放的で、映画的で、聴き手に届きやすい。ただし、Charliらしい少し人工的な輝きも残っている。

「Boom Clap」は、『Sucker』における商業的な中心曲である。アルバム全体の反抗的なムードとはやや異なるが、Charli XCXが大衆的なポップ・ソングを書ける作家であることを証明した重要曲である。

7. Doing It feat. Rita Ora

「Doing It」は、Rita Oraを迎えた楽曲であり、アルバムの中でも特に80年代ポップ、シンセ・ポップ、ガールズ・ナイト的な高揚感が強い曲である。タイトルは「やり遂げる」「楽しむ」といったニュアンスを持ち、友情、夜遊び、自己解放のムードが前面に出ている。

サウンドは、きらびやかなシンセとダンス・ポップ的なビートを中心にしている。『Sucker』のギター・ポップ路線の中では、比較的シンセ・ポップ寄りの曲であり、後のCharli XCXのクラブ志向にもつながる。Rita Oraの参加によって、曲にはよりメインストリーム的な華やかさが加わっている。

歌詞では、友人や仲間と一緒に楽しむこと、夜を自分たちのものにすることが歌われる。恋愛よりも、パーティーや連帯の感覚が強い。Charli XCXの音楽には、しばしば自己演出と仲間意識が同時に存在するが、この曲はその初期の例として聴ける。

「Doing It」は、『Sucker』の中でダンス・ポップとしての完成度が高い曲である。パンク的な反抗とは別の形で、女性同士の華やかなエネルギーを表現している。Charliが後にクラブ・カルチャーやコラボレーションを重視していく流れを予感させる楽曲である。

8. Body of My Own

「Body of My Own」は、本作の中でも特に身体性と自己所有をテーマにした楽曲である。タイトルは「自分自身の身体」という意味で、恋愛や性的な欲望において、他人に依存せず、自分の身体と快楽を自分のものとして扱う姿勢が示される。

サウンドは、荒いギターとパンク・ポップ的なビートが中心である。曲調は短く、直接的で、挑発的である。Charliの歌唱も、相手に媚びるのではなく、自分の欲望をはっきり語るように響く。

歌詞では、自分の身体を自分自身のものとして確認する姿勢が中心にある。これは単なるセクシュアルな曲ではなく、女性ポップ・アーティストが自分の身体と欲望を主体的に語る曲として重要である。相手に愛されるための身体ではなく、自分が感じ、自分が決める身体である。

「Body of My Own」は、『Sucker』の中でCharli XCXのフェミニンで反抗的な側面が強く出た曲である。パンク的な音と自己所有のテーマが結びつき、アルバムの態度を補強している。

9. Famous

「Famous」は、名声とポップ文化の消費性をテーマにした楽曲である。タイトルは「有名」という意味で、ポップ・スターになることへの憧れと、その空虚さを同時に描いている。Charli XCXがメインストリームへ進出していく時期に発表された曲として、非常に自己言及的である。

サウンドは、明るく弾むポップ・ロックである。メロディは親しみやすく、曲調だけを聴くと非常に楽しい。しかし、歌詞には名声への皮肉が含まれている。明るい音と空虚なテーマの対比が、この曲の面白さである。

歌詞では、有名になること、見られること、消費されることへの欲望と不安が描かれる。Charliは名声を完全に否定しているわけではない。むしろ、それに魅了されてもいる。しかし同時に、有名になることがどれほど軽く、消費されやすいものかも理解している。この二重性が、後年のCharli XCXの商業ポップへの批評的な姿勢にもつながる。

「Famous」は、『Sucker』の中でポップ・スターという役割をめぐる重要な曲である。Charliはここで、名声を夢見る少女であると同時に、その夢を笑う観察者でもある。

10. Hanging Around

「Hanging Around」は、退屈、無為、仲間との時間をテーマにした楽曲である。タイトルは「ぶらぶらしている」という意味で、目的もなく過ごす若い時間の感覚が表れている。『Sucker』の中では、パンク・ポップのルーズな魅力がよく出た曲である。

サウンドは、ギターを中心にした軽快なポップ・ロックで、曲全体にラフな勢いがある。複雑な展開はなく、同じ場所で騒ぎながら時間を潰すような感覚が音にも反映されている。

歌詞では、何か大きなことをするのではなく、ただその場にいて、仲間と時間を過ごす状態が描かれる。若者文化において、こうした無為の時間は非常に重要である。退屈でありながら、後から振り返るとその時間こそが自由だったと感じられる。

「Hanging Around」は、『Sucker』の中で日常的な青春感を担う曲である。反抗や名声だけでなく、ただ時間を無駄にすることも、Charliのポップ・ロック世界の重要な要素である。

11. Die Tonight

「Die Tonight」は、タイトルこそ過激だが、内容としては今この瞬間を最大限に生きること、夜の高揚、若さの一瞬性を歌う楽曲である。「今夜死んでもいい」という表現は、破滅願望というより、瞬間の快楽を誇張したポップ的な言葉として機能している。

サウンドは、明るく疾走感のあるポップ・ロックである。曲には強い前進感があり、夜の街を走るようなエネルギーがある。Charliの歌唱も、悲壮というより開放的である。

歌詞では、退屈な日常から抜け出し、仲間と夜を楽しむことが描かれる。明日がどうなるかより、今この瞬間を生きることが重要になる。これは『Sucker』全体の若さの美学と深く関わる。未来への計画よりも、現在の爆発が優先される。

「Die Tonight」は、アルバムの後半にエネルギーを与える楽曲である。タイトルの過激さと曲調の明るさのギャップが、Charli XCXらしいポップな誇張として機能している。

12. Caught in the Middle

「Caught in the Middle」は、恋愛や人間関係の中で板挟みになる状態を描いた楽曲である。タイトルは「真ん中に捕らわれている」という意味で、相手への気持ち、自分の自由、関係の不安定さの間で揺れる感覚が中心にある。

サウンドは、アルバムの中では比較的メロディアスで、ポップ・ロックとシンセ・ポップの中間に位置する。曲調は大きく爆発するというより、感情の揺れを滑らかに表現する。Charliの声も、強気一辺倒ではなく、少し迷いを含んでいる。

歌詞では、関係の中で自分がどこに立つべきか分からない状態が描かれる。『Sucker』には反抗的な曲が多いが、この曲ではその裏にある不安が見える。Charliは常に強いわけではない。強気なキャラクターの背後には、関係に巻き込まれてしまう脆さもある。

「Caught in the Middle」は、アルバム後半に感情的な陰影を加える曲である。『Sucker』の騒がしい表面の下にある、恋愛の迷いや不安を表現している。

13. Need Ur Luv

アルバムの最後を飾る「Need Ur Luv」は、60年代ガール・グループ的な甘さと、Charli XCXらしい切実な恋愛感情が結びついた楽曲である。タイトルはカジュアルな表記だが、内容は非常にストレートな愛の渇望である。『Sucker』の終曲として、騒がしい反抗の後に、再び恋愛の脆さが戻ってくる。

サウンドは、レトロなポップ感覚を持ちながら、現代的な処理が施されている。コーラスは甘く、メロディは親しみやすい。パンク・ポップ的な勢いとは異なり、ここではクラシックなポップ・ソングとしての魅力が強い。Charliの声も、強気な挑発ではなく、相手を求める切実さを含んでいる。

歌詞では、相手の愛が必要だという感情が繰り返される。これは依存にも近いが、『True Romance』の暗い執着とは異なり、もう少し明るく、ポップな形で表現されている。それでも、Charliの恋愛表現には常に少しの過剰さがある。愛は軽く歌われても、感情の強度は高い。

「Need Ur Luv」は、『Sucker』の締めくくりとして非常に効果的である。反抗、名声、夜遊び、身体性を歌ったアルバムが、最後に甘く切ない愛の歌へ戻る。Charli XCXのポップ・ソングライターとしてのクラシックな才能が表れた終曲である。

総評

『Sucker』は、Charli XCXのキャリアにおける重要な転換点である。前作『True Romance』の暗いシンセ・ポップ、ゴシックなロマンス、インターネット的な陰影から大きく離れ、本作ではパンク・ポップ、パワー・ポップ、ニューウェイヴ、ガール・グループ・ポップの要素を取り入れ、より明快で騒がしいポップ・アルバムを作り上げた。

本作の魅力は、ポップの即効性とロックの反抗的な記号を巧みに組み合わせている点にある。ギターは鳴っているが、ロック・バンド的な生々しさを追求するというより、ポップ・スターとしてのCharli XCXのキャラクターを作るために使われている。手拍子、シンプルなリフ、短いコーラス、挑発的な言葉が、彼女の「生意気で騒がしいポップ・ロック少女」というイメージを補強する。

「Break the Rules」「London Queen」「Breaking Up」「Body of My Own」などでは、反抗的な態度が前面に出る。これは政治的なパンクではなく、日常、恋愛、学校、業界、退屈への小さな反抗である。その意味で『Sucker』は、ティーンエイジ的なポップ・パンクの衝動を、2010年代のメジャー・ポップへ移植した作品といえる。

一方で、「Boom Clap」「Need Ur Luv」のような曲は、Charli XCXが非常に優れたメロディメーカーであることを示している。「Boom Clap」は、恋愛の高揚を最小限の言葉とリズムで表現した大衆的なポップ・ソングであり、「Need Ur Luv」は60年代ガール・グループ的な甘さを現代的に再構成している。騒がしい曲だけでなく、クラシックなポップの構造を理解している点が、本作の強みである。

『Sucker』は、後年のCharli XCXの実験的な評価を基準にすると、やや分かりやすく、商業的で、ロック寄りに感じられるかもしれない。『Vroom Vroom』以降の金属的な電子音、『Pop 2』の未来的なコラボレーション、『how i’m feeling now』の切迫したデジタル感覚と比べると、本作は意図的に古典的なポップ・ロックの形式を使っている。しかし、それを単純な後退と見るべきではない。Charli XCXはここで、ポップの歴史を引用し、自分のキャラクターを別の形に作り替えている。

本作には、商業ポップと反抗的な自己演出の緊張がある。Charliは「Famous」で名声の空虚さを歌いながら、自分自身もその名声へ向かっていく。「Gold Coins」では富や成功を誇張しながら、それを少し漫画的に見せる。「Sucker」では業界や周囲への反発を示しながら、メジャー・ポップの場所でそれを鳴らす。この二重性は、後の『Crash』でより明確になる「商業ポップを演じるCharli」の原型といえる。

歌詞面では、自己肯定、反抗、恋愛、名声、身体の所有が中心にある。特に「Body of My Own」は、自分の身体と欲望を自分のものとして語る曲であり、女性ポップ・アーティストとしての主体性がはっきり示されている。また、「Breaking Up」や「Break the Rules」では、感情を深く説明するより、短いフレーズで一気に吐き出すポップ・パンク的な手法が取られている。

本作の弱点を挙げるなら、アルバム全体のコンセプトや音響的な革新性は、後年のCharli XCX作品に比べると限定的である。曲によっては、2010年代前半のポップ・ロックとしてやや時代性を感じさせる部分もある。また、前作『True Romance』の暗い美学を好むリスナーにとっては、本作の明るさや単純さがやや軽く感じられる可能性もある。

しかし、その軽さは本作の本質でもある。『Sucker』は、深く沈み込むアルバムではなく、ガムのように弾け、雑誌の切り抜きのように派手で、ティーン映画のワンシーンのように短い快楽を重ねる作品である。Charli XCXはここで、ポップの軽さを恐れていない。むしろ、その軽さを武器にしている。

日本のリスナーにとって『Sucker』は、Charli XCXを理解するうえで重要な分岐点である。『True Romance』のダーク・ポップから『Vroom Vroom』以降の未来的ポップへ進む間に、彼女は一度、ロック的な反抗とメジャー・ポップの分かりやすさを全力で試した。その結果生まれたのが本作である。実験的なCharliだけでなく、ポップ・スターとしてのCharliを知るために欠かせない。

『Sucker』は、Charli XCXがポップ・カルチャーの中で自分のイメージを作り替えたアルバムである。暗いシンセ・ポップの少女から、反抗的なポップ・ロック・スターへ。その変化は一時的なものだったが、後のキャリアにおける自己演出、引用、商業ポップとの距離感を考えるうえで非常に重要である。騒がしく、軽く、挑発的で、同時にメロディが強い。『Sucker』は、Charli XCXのポップ作家としての柔軟さを示す、鮮やかな過渡期の作品である。

おすすめアルバム

1. True Romance by Charli XCX

2013年発表のデビュー作。『Sucker』とは対照的に、ダークなシンセ・ポップ、ゴシックなロマンス、インターネット時代の陰影を持つ作品である。Charli XCXが本作でどれほど大きく方向転換したかを理解するために重要である。

2. Vroom Vroom by Charli XCX

2016年発表のEP。SOPHIEとの協働により、Charli XCXが未来的で金属的なエレクトロ・ポップへ進んだ転換点である。『Sucker』のギター・ポップ的な明快さから、より実験的なポップへ進化する過程を知ることができる。

3. Pop 2 by Charli XCX

2017年発表のミックステープ。A. G. Cookらとともに、コラボレーション型の未来的ポップを提示した作品である。『Sucker』のメジャー・ポップ志向と比較すると、Charli XCXの表現がどれほど大きく変化したかが分かる。

4. Beauty and the Beat by The Go-Go’s

1981年発表のアルバム。ガール・グループ的なキャラクター、ニューウェイヴ、パワー・ポップ、明るい反抗心という点で、『Sucker』の背景にある重要な参照点として聴ける。女性バンドによるポップ・ロックの軽快さと強さを理解できる作品である。

5. Parallel Lines by Blondie

1978年発表のニューウェイヴ/パワー・ポップの名盤。パンク、ディスコ、ポップ、ロックを横断する感覚は、Charli XCXのジャンル横断的な姿勢とも通じる。『Sucker』の背後にある、反抗的でありながら非常にポップな女性ヴォーカルの系譜を理解するために有効な一枚である。

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