発売日: 2021年6月24日（EP）
ジャンル: インディーポップ、オルタナティヴロック、ベッドルームポップ
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概要
『Our Extended Play』は、Beabadoobeeが2021年にリリースした4曲入りのEPであり、前作『Fake It Flowers』と次作『Beatopia』の間に位置する“過渡期”の作品として特異な存在感を放っている。
プロデューサーには、The 1975のMatty HealyとGeorge Danielが参加。これまでのローファイなDIYサウンドや90年代ロックの影響から一歩踏み出し、洗練されたポップ・プロダクションへと移行する準備段階として制作された。
タイトルの「Extended Play」は、文字通りEP＝短編作品を意味するが、同時に「私たちの拡張された遊び場」「一緒に作った延長線」という意味も内包しており、Beabadoobeeの音楽が“個”から“共同性”へと開かれていくことを示唆している。
現代のZ世代的な孤独や不安を、より軽やかに、より開かれたサウンドで包み直したこの作品は、彼女の音楽がより大きなフィールドへと飛躍していくプロローグとなった。
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全曲レビュー
1. Last Day On Earth
終末的なタイトルとは裏腹に、楽観的なメロディと軽快なリズムが印象的。パンデミック以降の「明日が来ないかもしれない」という感覚を、青春映画のような疾走感で表現する傑作ポップソング。
2. Cologne
The 1975のプロデュース色が濃く出たトラック。タイトルの“香水”は記憶や親密さの象徴として使われており、繊細でロマンティックなニュアンスが全編に漂う。
3. Animal Noises
ローファイな質感を残しつつも、ミニマルでアブストラクトな構成が特徴。Bea自身の「感情がうまく言葉にできない」瞬間を、まさに“動物的な音”で表現したような実験性の高い楽曲。
4. He Gets Me So High
Beabadoobeeらしい素朴なメロディと歌詞に、サイケポップ的なアレンジが加わった1曲。恋に落ちた高揚感を、重力のない音で包んだような浮遊感が心地よい。
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総評
『Our Extended Play』は、Beabadoobeeが“ひとりの少女”から“バンドの一員”のような立ち位置へと意識を変えた節目の作品である。
Matty HealyやGeorge Danielとの共同制作は、彼女の音楽に新たな視点とテクスチャーを加え、結果としてより洗練され、ポップかつオープンなサウンドを実現している。音楽的には、90年代のオルタナティヴ・ロックを軸にしつつ、シンセやポップスの要素が強まり、現代的なアートポップの匂いも漂わせる。
また、歌詞はこれまでのような個人的な内省だけでなく、“日常をどう受け止めるか”“他人とどう関係するか”といったテーマへと広がりを見せている。
このEPは、短いながらも非常に濃密で、「Beabadoobeeがどこへ向かうのか」という問いへのヒントを多く含んでいる。結果的に、次作『Beatopia』での夢見がちなサウンド世界の土台となったこの作品は、単なる“つなぎ”ではなく、彼女の表現領域を一気に拡張した重要な作品である。
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おすすめアルバム（5枚）
- The 1975『Notes on a Conditional Form』
本EPにプロデューサーとして参加したメンバーの作品。ポップと実験性のバランスがBeaのサウンドにも影響。 - Men I Trust『Untourable Album』
夢幻的でリラックスした空気感が、『He Gets Me So High』と共鳴する。 - Wolf Alice『Visions of a Life』
Beabadoobeeの“ロック”と“ポップ”の間を行き来するスタイルに共通点が多い。 - Faye Webster『Atlanta Millionaires Club』
ミッドテンポで親密なサウンド感。『Cologne』のような曲に通じる内向的ポップ。 - Japanese Breakfast『Jubilee』
きらびやかで開かれたインディーポップ。『Last Day On Earth』と同じ「未来を照らす感覚」がある。
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後続作品とのつながり
『Our Extended Play』での試行錯誤は、次作『Beatopia』へとダイレクトにつながっている。
特に、“個”から“世界観”へと拡張していく音楽の流れ、そしてジャンルをまたぐ柔軟なアレンジは、本EPが重要な前哨戦であったことを示している。Beaが音楽だけでなく、ヴィジュアルやコンセプトにおいても“宇宙”を描くようになった背景には、このEPで得た新しい感触が大きく関与しているのだ。
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