発売日: 1992年8月
ジャンル: シンセポップ / エレクトロニック / アンビエント
Why Be Blueは、Suicideが1990年代に発表した唯一のアルバムであり、時代の移り変わりに対応しながらも、彼らの独特な音楽性を堅持した作品だ。アラン・ヴェガの挑発的で感情的なボーカルと、マーティン・レヴによるシンセサウンドが再び融合し、ポップでありながらもダークな美学を描き出している。
本作では、より洗練されたサウンドプロダクションと、アンビエントやシンセポップの要素が強調されている。従来の荒々しいノイズと暴力性を抑え、感情的な深みとメロディアスな楽曲が目立つ。リスナーにとっては、Suicideの新しい一面を感じられる一枚だ。
トラック解説
1. Why Be Blue
アルバムのタイトル曲であり、希望と悲しみの両方が込められた楽曲。ヴェガの声は柔らかさを増し、レヴのシンセサウンドは心地よいリズムとメロディを生み出している。
2. Cheat Cheat
反復されるリズムとシンプルなシンセサウンドが特徴の楽曲。歌詞は誘惑や裏切りをテーマにしており、ダークでありながらどこかポップな仕上がりだ。
3. Mujo
アンビエントな雰囲気が漂うインストゥルメンタル的な楽曲。東洋的なムードを感じさせるメロディが印象的で、アルバム全体の中で一息つける場面となっている。
4. Pump It
アップテンポでエネルギッシュな楽曲。ヴェガのボーカルは叫びと囁きの中間にあり、リズムとシンセのビートが強烈な印象を残す。
5. Play the Dream
夢と現実の狭間をテーマにした楽曲。ミッドテンポのメロディが心地よく、反復されるフレーズが聴き手をトランス状態に導くような感覚を生む。
6. Flashy Love
エレクトロポップの要素が強い楽曲で、他の曲よりも明るい雰囲気が特徴的だ。恋愛にまつわる複雑な感情がテーマとなっている。
7. Hot Ticket
力強いビートとシンセのループが楽曲を支えている。歌詞は現代社会の欲望や競争を皮肉った内容で、ヴェガのボーカルに強い説得力がある。
8. Last Time
アルバムの中でも特に感情的な楽曲。失恋や喪失をテーマにした歌詞が、ヴェガの切実なボーカルによって心に響く。シンプルなアレンジが楽曲の感情を際立たせている。
9. Sufferin’ In Vain
1988年のアルバムA Way of Lifeに収録された同名曲のリワークバージョン。オリジナルよりもポップなアレンジが施され、新しい解釈が加えられている。
10. Devastation
アルバムを締めくくるダークで力強いトラック。反復的なリズムとシンセサウンドが高揚感を生み出し、Suicideらしい破壊的な美学を感じさせる。
アルバムの背景: 洗練と時代への適応
1990年代初頭、エレクトロニックミュージックは進化を遂げ、アンビエントやシンセポップが広く受け入れられる時代となった。Why Be Blueは、Suicideがその流れに適応し、彼ら独自の美学を洗練させた作品である。荒々しいパンク精神を抑え、ポップでメロディアスなアプローチを取り入れたことで、より広い層のリスナーにアピールする可能性を示した。
アルバム総評
Why Be Blueは、Suicideのキャリアにおいて新たな章を開くアルバムだ。これまでの作品に比べると穏やかでポップな印象を受けるが、その中に込められたダークなテーマと挑発的な美学は健在である。ヴェガの情熱的なボーカルと、レヴのミニマルなシンセサウンドが巧みに融合し、彼らの音楽性の幅広さを感じさせる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Black Celebration by Depeche Mode
ダークなエレクトロニックサウンドとポップさを融合したアルバムで、Why Be Blueの雰囲気と近い。
Behaviour by Pet Shop Boys
メロディアスで感情的なシンセポップが楽しめる一枚。
Low-Life by New Order
ポップなメロディとダークな歌詞が共存する作品で、Suicideファンにおすすめ。
Songs from the Big Chair by Tears for Fears
メロディアスで壮大なエレクトロポップが共通点を持つ。
BGM by Yellow Magic Orchestra
ミニマルなエレクトロニックサウンドが特徴で、Suicideの音楽性に通じる一枚。
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