
発売日: 2019年3月
ジャンル: サイケデリック・ロック、ネオサイケ、クラウトロック、ドリームポップ、オルタナティブ
概要
『The Brian Jonestown Massacre』は2019年に発表された、セルフタイトル(バンド名そのまま)を冠した作品であり、
“成熟した後期BJMの核が最も凝縮されたアルバム” と位置づけられている。
セルフタイトルという選択は、
“これが今のBJMだ”
“ここまで来て、ようやく自分たちをそのまま名乗れる”
という宣言と読むことができる。
実際、この作品は直前の
- 『Aufheben』(2012) … 再構築期
- 『Revelation』(2014) … メロディとロック性の整理
- 『Musique de Film Imaginé』(2015) … 映画音楽的美の探求
- 『Third World Pyramid』(2016) … 浮遊感と陰影の深化
- 『Don’t Get Lost』(2017) … クラウト/ドローン/ダンス寄りの実験
という 2010年代の歩みをひとつに統合した“総合形態”になっている。
Anton Newcombe はベルリンのスタジオで安定した制作環境を手に入れており、
精神的にも創作的にも成熟期に入ったことで、
ここでは 過去の美学をすべて自然体でまとめあげる境地 に達している。
そのため本作は、
美しいサイケデリア × 落ち着いたロック × ドローン的反復 × 柔らかいノスタルジア
という後期BJMの特徴を最もバランス良く楽しめる作品となっている。
“混沌でも、破壊でも、実験過多でもなく、ただ美しく漂うBJM”
それが本作の魅力である。
全曲レビュー
1曲目:Drinking Song
柔らかいアルペジオが夜の中へ溶けていくような、美しいオープニング。
ドリームポップとフォークサイケが静かに交差する。
2曲目:Animal Wisdom
クラウトロックの反復と、淡いメロディが美しく融合。
内省的でありながら、どこか優しい。
3曲目:Psychedelic Sunday
タイトル通りの“ゆるいサイケ日曜日”。
陽だまりのような気だるさと、軽い祝祭感を同時に持つ曲。
4曲目:Skin and Bones
ミッドテンポのサイケロック。
乾いたギターとAnton の落ち着いた声が、飾り気のない魅力を放つ。
5曲目:My Mind Is Filled with Stuff
メロディアスで切なく、後期BJMの叙情をよく示す一曲。
煙のようなギターがふわりと広がる。
6曲目:Bitte Keinen Sex
ベルリン的な冷たさと柔らかいポップさが同居する異色曲。
ユーモアとミニマリズムが心地よい。
7曲目:Forgotten Graves
フォークロック寄りの穏やかなサウンド。
メロディに深い哀愁があり、アルバム後半のアクセントになる。
8曲目:Tombes Oubliées
フランス語ボーカルのドリームポップ曲。
異国的で、甘く、映画のワンシーンのような美しさ。
9曲目:A Word
淡く短い小品。
アルバムの流れに静かな呼吸を与える。
10曲目:We Never Had a Chance
ゆったりとしたテンポで進むフォークサイケ。
本作で最も”温度のある”曲の一つ。
11曲目:Too Sad to Tell You
哀愁の叙情フォーク。
Anton の“弱さ”と“美しさ”がもっとも素直に出ている。
12曲目:Remember Me This
締めとして完璧な優しさと静けさ。
アルバムは大きく叫ばず、そっと幕を閉じる。
総評
『The Brian Jonestown Massacre』は、
Anton Newcombe の成熟期の美意識がもっとも自然な形で結晶した作品
である。
90年代の
- ガレージ
- ノイズ
- カオス
2000年代の - メロディの美
- 静かで霞むサイケ
- ミニマル反復
2010年代の - ベルリン的音響設計
- 多様な言語と文化を取り込む姿勢
これらがすべて、
ひとつの“穏やかで美しいBJM” として統合されている。
本作は派手ではないし、劇的でもない。
しかし、BJMを深く知るリスナーにとっては、
“これだよ、今のBJMは”
と感じられる、極めて完成された一枚だ。
混沌の中で光っていた天才性が、
ここでは穏やかで大きな湖のような静けさへと変化している。
おすすめアルバム(5枚)
- Aufheben (2012)
本作の直接的前身。静かで秩序だった美。 - Third World Pyramid (2016)
後期BJMの浮遊感と叙情の黄金比。 - Don’t Get Lost (2017)
クラウト/ダンスロック寄り。ビート面の流れが理解できる。 - Musique de Film Imaginé (2015)
映像的サウンドの極致。本作の“静寂の美”との関連が深い。 - Spacemen 3 / The Perfect Prescription
反復と精神性の文脈を理解する上で最適。



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