- 発売日: 2014年9月23日
- ジャンル: インディーロック、ドリームポップ、ポストパンク
Encyclopediaは、The Drumsのサードアルバムであり、これまでの作品から一歩進んだ実験的で深みのあるサウンドが特徴的だ。バンドは本作で、ポストパンクやニューウェーブの影響を残しつつも、より暗く内省的なサウンドにシフトしている。デビューアルバムの明るいポップエネルギーや、Portamentoでのダークなエッセンスに加え、Encyclopediaではさらに感情的で独自性のある楽曲が展開され、The Drumsの新しい一面を強調している。
ジョナサン・ピアースとジェイコブ・グラハムが再びデュオとして制作に取り組んだ本作には、失恋、孤独、内面的な葛藤がテーマに取り入れられており、エモーショナルな深みが感じられる。アルバム全体にわたる夢幻的なサウンドスケープと、不安定な感情を反映したリリックが、The Drumsの音楽に一層の複雑さと成熟を与えている。
トラック解説
1. Magic Mountain
アルバムのオープニングトラックで、歪んだギターとパーカッシブなビートが特徴的。メランコリックな歌詞と高揚感のあるメロディが不安定に交差し、リスナーを一気に異世界へ引き込む。
2. I Can’t Pretend
切ないメロディとエモーショナルなリリックが光る一曲で、失恋や自己喪失がテーマ。ドリーミーなシンセサウンドとジョナサン・ピアースの儚いボーカルが印象的で、静かな悲しみが漂っている。
3. I Hope Time Doesn’t Change Him
明るめのビートで進行する楽曲ながら、歌詞には喪失感とノスタルジアが込められている。シンセとギターのバランスが絶妙で、80年代ニューウェーブの影響が色濃く感じられるトラック。
4. Kiss Me Again
シンプルでキャッチーなメロディが魅力の一曲。失恋と愛情の葛藤が描かれており、ピアースのボーカルが甘く切ない感情を表現している。軽やかなビートとシンセサウンドが特徴的。
5. Let Me
アップテンポでドリーミーなトラック。希望に満ちたメロディと対照的に、リリックには孤独と自己疑念が込められている。シンプルながらも耳に残るリフと、切なさが滲み出たサビが特徴。
6. Break My Heart
静かで重厚なサウンドスケープが広がり、ピアースの儚いボーカルが心に響く。ゆっくりと進行するメロディが、失恋の痛みや感情の揺れを丁寧に表現している。
7. U.S. National Park
エクスペリメンタルな要素が強いインストゥルメンタル風のトラックで、アルバムの中でも異色の一曲。広がりのあるシンセサウンドが幻想的なムードを演出し、風景のようなサウンドスケープが聴く者を包み込む。
8. Deep in My Heart
哀愁漂うメロディに乗せて、深い喪失感が歌われている。シンプルなビートとドリーミーなサウンドが印象的で、ピアースのボーカルが曲全体を支える。アルバムの中でも特に感情が込められた一曲。
9. Bell Laboratories
実験的でダークなサウンドが特徴で、不安と混沌が表現されたトラック。エレクトロニカの要素が色濃く反映されており、緊張感のある音の構成が異世界的な雰囲気を醸し出す。
10. There is Nothing Left
痛みと喪失感がテーマとなった、切ないトラック。シンセとギターが主導するミディアムテンポのサウンドが心地よく、ピアースのボーカルが絶望と希望の狭間で揺れ動く感情を表現している。
11. Wild Geese
アルバムを締めくくるフィナーレで、静かなメロディが淡々と進行する。失恋や別離を思わせるリリックが、ドリーミーなサウンドに乗せて美しく表現されており、優しい余韻を残す。
アルバム総評
Encyclopediaは、The Drumsがこれまでのインディーポップ・サウンドから脱却し、よりダークで複雑なエモーショナルな領域に踏み込んだ意欲作である。シンプルなサウンドの中に隠れた感情の深みと、シンセやエレクトロニカを多用したドリーミーで幻想的なサウンドスケープが、バンドの成長と進化を感じさせる。ジョナサン・ピアースのボーカルが、孤独や失恋といったテーマにリアルな感情を吹き込み、リスナーに強い印象を与える。本作は、The Drumsがこれまでのポップな一面から一歩踏み出し、感情に訴えるインディーロックの深みを探求した一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Coexist by The xx
ミニマルでダークなサウンドが特徴の一枚。静けさと感情の深みが際立っており、Encyclopediaの持つ内省的な雰囲気と共鳴する。 - Primary Colours by The Horrors
ダークで重厚なポストパンクのサウンドが魅力で、実験的な要素と幻想的なムードがThe Drumsのファンに刺さる。 - Turn On the Bright Lights by Interpol
内省的でメランコリックなポストパンクサウンド。深い歌詞とシンプルなメロディが特徴で、Encyclopediaと同様、感情を強く揺さぶる。 - I See You by The Horrors
ドリーミーなサウンドと実験的なアプローチが楽しめるアルバムで、The Drumsの新しい音楽性に共感できるリスナーにおすすめ。 - To Be Kind by Swans
ダークで重厚なサウンドスケープが特徴。アルバム全体を通してエモーショナルで重厚な音が続き、The Drumsの内省的な側面を好きなリスナーにおすすめの作品。
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