アルバムレビュー：Infinity on High by Fall Out Boy

発売日: 2007年2月6日
ジャンル: ポップパンク、ポップロック、オルタナティブロック

エモを超えた壮大な進化—Fall Out Boyの新たなステージ
全曲レビュー
総評
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エモを超えた壮大な進化—Fall Out Boyの新たなステージ

2007年、Fall Out Boyは3rdアルバムInfinity on Highで、エモ・ポップパンクの枠を超えたスケールの大きな作品を生み出した。本作は、前作From Under the Cork Treeの成功を受け、さらに洗練されたプロダクションと多彩な音楽性を取り入れたアルバムとなっている。

アルバムはJay-Zのイントロダクションで幕を開け、パンクだけでなくR&B、ゴスペル、クラシカルなアレンジなども大胆に導入。リードシングル「This Ain’t a Scene, It’s an Arms Race」はBillboard Hot 100で2位を記録し、続く「Thnks fr th Mmrs」も世界的にヒットするなど、Fall Out Boyがスタジアム級のバンドへと成長したことを証明した。

全曲レビュー

1. Thriller (feat. Jay-Z)

Jay-Zのナレーションによるイントロから始まる、壮大なオープニングトラック。Fall Out Boyが音楽業界の厳しさや名声との戦いについて語る、メタ的な楽曲。

2. “The Take Over, The Breaks Over”

キラキラしたギターワークが印象的なポップロックナンバー。「俺たちはまだここにいる」というバンドの決意が込められた歌詞が特徴的。

3. This Ain’t a Scene, It’s an Arms Race

R&B的なグルーヴを取り入れた大ヒット曲。音楽業界の虚構や商業化を皮肉る歌詞が印象的で、Fall Out Boyの新たな音楽的アプローチが際立っている。

4. I’m Like a Lawyer with the Way I’m Always Trying to Get You Off (Me & You)

Patrick Stumpのソウルフルなヴォーカルが際立つ、R&B要素の強い楽曲。タイトルのユーモアと甘美なメロディのギャップが魅力的。

5. Hum Hallelujah

レナード・コーエンの「Hallelujah」を引用したゴスペル風の楽曲。エモーショナルなメロディと力強いリズムが印象的。

6. Golden

ピアノのみの伴奏で、Patrick Stumpの歌声が際立つ美しいバラード。バンドの新たな一面を見せる実験的なトラック。

7. Thnks fr th Mmrs

「母音を抜いたタイトル」も話題となった大ヒット曲。壮大なストリングスとエネルギッシュなギターが融合した、キャッチーな楽曲。

8. Don’t You Know Who I Think I Am?

軽快なリズムとギターリフが際立つアップテンポなナンバー。アルバムの中では比較的シンプルなポップパンク曲。

9. The (After) Life of the Party

ジャジーな要素を取り入れたミッドテンポの楽曲。タイトル通り、パーティーの後の虚無感を描いたリリックが印象的。

10. The Carpal Tunnel of Love

ハードなギターとシャウトが入り混じる、ヘヴィなエモ・ポップパンクチューン。Fall Out Boyの攻撃的な側面が垣間見える。

11. Bang the Doldrums

グルーヴ感のあるビートとキャッチーなコーラスが特徴的な楽曲。海賊映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の影響を受けたとされる。

12. Fame < Infamy

鋭いギターリフが印象的な楽曲で、「名声と悪評」について皮肉るリリックがFall Out Boyらしい。

13. You’re Crashing, But You’re No Wave

政治的なテーマを扱った楽曲。シリアスな歌詞とドラマティックな構成が特徴的。

14. I’ve Got All This Ringing in My Ears and None on My Fingers

アルバムの締めくくりにふさわしい壮大な楽曲。ストリングスとバンドサウンドが見事に融合し、Fall Out Boyの音楽的進化を象徴するトラック。

総評

Infinity on Highは、Fall Out Boyがエモ・ポップパンクを超えて、より幅広い音楽性を取り入れた作品である。R&Bやクラシカルな要素を織り交ぜることで、より成熟したサウンドへと進化し、シーンのトップバンドとしての地位を確立した。

歌詞はこれまでの自己憐憫的なものから、音楽業界や名声、社会への皮肉へとシフトし、Fall Out Boyのスタンスがより広がりを見せている。Patrick Stumpのヴォーカルの成長も顕著で、バンドの音楽的な可能性を大きく押し広げた作品と言える。

このアルバムによって、Fall Out Boyは単なるポップパンクバンドではなく、ロックシーンを代表するアーティストの一員へと昇華した。