
発売日: 2021年6月25日
ジャンル: インディーフォーク、オルタナティブR&B、アメリカーナ
気だるさと親密さが共存する、Faye Websterの成熟したサウンド
2021年、Faye Websterは4thアルバムI Know I’m Funny hahaをリリースし、彼女独自の気だるくもエモーショナルな音楽スタイルをさらに洗練させた。本作は、前作Atlanta Millionaires Club(2019年)で確立した、カントリー、R&B、インディーフォークを融合させたサウンドを深化させ、より洗練されたプロダクションとパーソナルなリリックが特徴となっている。
ウェブスターの音楽は、ジャズのような即興性と、R&Bのリズム、そしてカントリーの憂いを帯びたメロディが独特のバランスで共存しており、まるで深夜の独白のような親密さを持っている。本作では、「Better Distractions」「A Dream with a Baseball Player」「Cheers」などの楽曲が、彼女のセンチメンタルで飄々とした世界観を美しく表現している。
全曲レビュー
1. Better Distractions
穏やかなギターと、アンニュイなボーカルが心地よいオープニング。歌詞では、日常の退屈さと何かを待つような感覚が描かれている。
2. Sometimes
ジャジーなコードとスライドギターが特徴の楽曲。メロディの浮遊感が、夢の中にいるような雰囲気を醸し出す。
3. I Know I’m Funny haha
タイトル曲。シンプルながらも切ないメロディが印象的で、自己認識とユーモアの間で揺れるウェブスターの感情が伝わってくる。
4. In a Good Way
R&Bの影響が強いミッドテンポのバラード。「あなたは私を泣かせた、でも良い意味で」というフレーズが、感情の複雑さを美しく表現している。
5. Kind Of
ミニマルなアレンジと、ささやくようなヴォーカルが特徴。静かな夜に聴きたくなる一曲。
6. Cheers
ジャズとカントリーが融合したような独特の雰囲気を持つ楽曲。皮肉めいたタイトルとは裏腹に、どこか孤独を感じさせる。
7. Both All the Time
スローなテンポと浮遊感のあるメロディが、まるで時間が止まったかのような感覚を与える。
8. A Dream with a Baseball Player
タイトル通り、野球選手(元MLB選手のRonald Acuña Jr.)への片想いを歌ったユニークなラブソング。甘く切ないメロディが印象的。
9. Car Therapy
ストリングスが美しく重なり、クラシカルな雰囲気を持つ楽曲。シンプルなコード進行とウェブスターの囁くような歌声が魅力。
10. Half of Me
カントリーとフォークの要素が色濃く出た楽曲。温かみのあるギターと、淡々とした語り口調の歌詞が特徴。
総評
I Know I’m Funny hahaは、Faye Websterが彼女独自の音楽スタイルをさらに深化させた作品であり、ジャンルの枠を超えた独特の美しさを持っている。フォーク、カントリー、R&B、ジャズといった多様な影響を受けながらも、ウェブスターの持つ気だるいヴォーカルとユーモアがアルバム全体を貫いている。
また、歌詞のテーマはよりパーソナルでありながら、日常の中にある孤独や、さりげない感情の揺らぎを詩的に描いており、多くのリスナーが共感できるものになっている。夜に静かに聴くことで、その魅力がより深く感じられる作品だ。
おすすめアルバム
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Weyes Blood – Titanic Rising (2019)
シネマティックなサウンドとメランコリックなムードが共通する。 -
Angel Olsen – Big Time (2022)
カントリーとインディーフォークの融合がウェブスターと似たアプローチ。 -
Mitski – Laurel Hell (2022)
エモーショナルな歌詞とミニマルなアレンジが本作と共鳴する。 -
Kacey Musgraves – Star-Crossed (2021)
インディーポップとカントリーの中間にあるサウンドが共通する。 -
Big Thief – Dragon New Warm Mountain I Believe in You (2022)
インディーフォークの繊細なアプローチと、ジャンルを超えた実験性が似ている。
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