
発売日:2021年11月26日
ジャンル:ハードロック、クラシック・ロック、ブルース・ロック、カバーアルバム
- 概要
- 全曲レビュー
- 1. 7 and 7 Is(Love)
- 2. Rockin’ Pneumonia and the Boogie Woogie Flu(Huey “Piano” Smith)
- 3. Oh Well(Fleetwood Mac)
- 4. Jenny Take a Ride!(Mitch Ryder & The Detroit Wheels)
- 5. Watching the River Flow(Bob Dylan)
- 6. Let the Good Times Roll(Sam Cooke)
- 7. Dixie Chicken(Little Feat)
- 8. Shapes of Things(The Yardbirds)
- 9. The Battle of New Orleans(Johnny Horton)
- 10. Lucifer(Bob Seger)
- 11. White Room(Cream)
- 12. Caught in the Act(Medley)
- 総評
- おすすめアルバム
概要
『Turning to Crime』は、ディープ・パープルが2021年に発表した通算22作目のスタジオ・アルバムであり、バンドとして初のフル・カバー・アルバムである。前作『Whoosh!』(2020)に続き、プロデューサーのボブ・エズリンと再びタッグを組み制作された本作は、バンドのルーツや影響源を再解釈するという明確なコンセプトを持っている。
1960年代末から活動を続けてきたディープ・パープルは、これまでにも多くの楽曲でブルースやロックンロールの伝統を取り入れてきたが、本作ではそれらの源流に直接立ち返る形で、ロック、ブルース、R&Bのクラシック楽曲を取り上げている。選曲には、ボブ・ディラン、フリートウッド・マック、ラヴ、ヤードバーズといった多様なアーティストが含まれており、バンドの音楽的ルーツの幅広さが示されている。
重要なのは、本作が単なる忠実な再現にとどまらず、ディープ・パープルならではのアレンジと解釈によって再構築されている点である。スティーヴ・モーズのギター、ドン・エイリーのキーボード、そしてリズムセクションの安定したグルーヴが、原曲に新たなエネルギーを与えている。また、イアン・ギランのボーカルは年齢を重ねたことでより味わい深くなり、楽曲に独自のニュアンスを加えている。
『Turning to Crime』は、キャリア後期における回顧的作品でありながらも、創造的な再解釈を通じて現在進行形のバンドとしての姿を提示するアルバムである。その意味で、本作はディープ・パープルの音楽的アイデンティティを再確認する重要な作品となっている。
全曲レビュー
1. 7 and 7 Is(Love)
オープニングを飾る疾走感あふれる楽曲。原曲の持つサイケデリックなエネルギーを保ちながら、よりハードロック的なアレンジが施されている。バンドの演奏力が際立つ一曲。
2. Rockin’ Pneumonia and the Boogie Woogie Flu(Huey “Piano” Smith)
ニューオーリンズR&Bのクラシックをカバー。軽快なピアノとリズムが特徴で、楽しさとグルーヴが前面に出ている。
3. Oh Well(Fleetwood Mac)
ピーター・グリーン期のフリートウッド・マックの名曲を再解釈。ブルース的な重厚さとダイナミクスが強調されており、ディープ・パープルのスタイルと親和性が高い。
4. Jenny Take a Ride!(Mitch Ryder & The Detroit Wheels)
ロックンロールとR&Bの要素が融合した楽曲。エネルギッシュな演奏とコーラスが印象的で、ライブ感覚の強い仕上がりとなっている。
5. Watching the River Flow(Bob Dylan)
ディランの楽曲をよりストレートなロックナンバーとして再構築。シンプルながらも力強いグルーヴが特徴で、原曲とは異なる魅力を引き出している。
6. Let the Good Times Roll(Sam Cooke)
ソウル・クラシックを軽快にカバー。リズムのノリとボーカルの表現が楽曲の楽しさを引き立てている。
7. Dixie Chicken(Little Feat)
ファンキーでリラックスしたグルーヴが特徴の楽曲。原曲の持つ南部的な雰囲気を残しつつ、バンド独自のアレンジが加えられている。
8. Shapes of Things(The Yardbirds)
サイケデリック・ロックの代表曲を、よりヘヴィなサウンドで再解釈。ギターとキーボードの掛け合いが際立つ。
9. The Battle of New Orleans(Johnny Horton)
フォーク的な要素を持つ楽曲で、ユーモラスな語り口が特徴。軽妙なアレンジが印象的で、アルバムに変化を与えている。
10. Lucifer(Bob Seger)
比較的マイナーな楽曲のカバーで、ブルース・ロック的なアプローチが際立つ。重厚なサウンドが印象的。
11. White Room(Cream)
クリームの代表曲をカバー。原曲のサイケデリックな要素を活かしつつ、ディープ・パープルらしい力強さが加えられている。
12. Caught in the Act(Medley)
複数の楽曲を組み合わせたメドレー形式のトラック。バンドの遊び心と音楽的ルーツが一体となった構成で、アルバムの締めくくりとして機能する。
総評
『Turning to Crime』は、ディープ・パープルが自らのルーツに立ち返り、それを現代的な視点で再解釈した作品である。カバーアルバムという形式でありながら、単なる懐古主義に陥ることなく、バンドの個性と創造性が明確に表れている点が本作の最大の特徴である。
本作では、ロック、ブルース、R&Bといった多様なジャンルの楽曲が取り上げられているが、それらはすべてディープ・パープルのサウンドへと再構築されている。これにより、バンドの音楽的ルーツと現在のスタイルが自然に結びつき、一貫した作品として成立している。
また、長年の経験に裏打ちされた演奏の安定感と、適度な遊び心が同居している点も重要である。若い頃の攻撃性とは異なる、成熟したエネルギーが作品全体に流れており、それが本作の魅力となっている。
結果として、『Turning to Crime』はディープ・パープルの音楽的背景を再確認する作品であると同時に、キャリア後期における創造性の持続を示す重要な一枚である。ロックの歴史と現在をつなぐ架け橋としての役割を果たしている。
おすすめアルバム
- Deep Purple – Whoosh! (2020)
本作と同時期のオリジナル作品で、バンドの現在形を示す。
2. Deep Purple – Now What?! (2013)
復活期の代表作で、現ラインナップの方向性を確立した作品。
3. Whitesnake – Ready an’ Willing (1980)
ディープ・パープルの系譜に連なるブルース・ロック作品。
4. Cream – Disraeli Gears (1967)
本作でカバーされた「White Room」を収録した原点的作品。
5. Fleetwood Mac – Then Play On (1969)
「Oh Well」を含む、ブルース・ロック期の重要作。



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