アルバムレビュー：Ride Or Die by ARXX

発売日: 2023年3月31日
ジャンル: インディーロック、ポップロック、オルタナティヴポップ

概要
全曲レビュー
総評
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ビジュアルとアートワーク
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概要

『Ride Or Die』は、イギリス・ブライトン出身のデュオ、ARXXが2023年にリリースしたデビューアルバムであり、
エネルギッシュなロックサウンドと、パーソナルなリリックを融合させた力強い作品である。

ARXXは、ボーカルとギターを担当するHanni Pidduck、ドラムを担当するClara Townsendによる2人組。
フェミニズム、自己受容、友情、愛といったテーマを、ダイレクトでありながらも繊細な視点で描き出してきた彼女たちは、
本作でついに、そのエモーショナルな爆発力を本格的にアルバムというフォーマットに封じ込めた。

『Ride Or Die』というタイトルは、”何があっても支え合う”という絆を象徴しており、
友情や愛、自己との闘いを描いた各曲が、アルバム全体で大きな感情の物語を紡いでいる。

パンチの効いたギターリフ、突き抜けるボーカル、タイトなドラムが織りなすサウンドは、
90年代オルタナティヴロックと現代ポップのハイブリッドともいえる新鮮な魅力を放っている。

全曲レビュー

1. Baby Uh Huh

勢いのあるイントロで幕を開ける、キャッチーなロックチューン。
恋愛における自己防衛本能と衝動を描いた、アルバムのスタートにふさわしいエネルギッシュな一曲。

2. The Last Time

切なさと怒りが交錯する失恋ソング。
ラウドなギターとパワフルなボーカルが、感情の爆発をストレートに伝える。

3. Not Alone

孤独の中に見出す連帯をテーマにした、アンセミックなロックナンバー。
サビでは観客とのシンガロングを想起させるような開放感がある。

4. Call Me Crazy

恋愛中の不安や執着を、ウィットとエネルギーで包み込んだ一曲。
疾走感のあるリズムと、痛快なリリックが爽快なカタルシスを生む。

5. Couldn’t Help Myself

自己破壊的な行動への自嘲と後悔を、ポップなサウンドに乗せて描く。
明るいメロディとのギャップが切なさを際立たせる。

6. Ride Or Die

アルバムタイトル曲にして、友情と無条件の支え合いを讃える重要なナンバー。
感情を爆発させるようなサビが印象的で、ARXXの”核”を感じさせる。

7. Imposter

自己不信と向き合う内省的なミドルテンポ曲。
「私にはふさわしくない」と感じる瞬間の苦しみを、誠実に描いている。

8. Never Want To Go Back

過去のトラウマや苦しい経験を乗り越え、新たな道を歩み出す決意を歌う。
ギターの鳴りが爽快で、聴き手に力を与える。

9. My Favourite Stranger

「最も好きな見知らぬ人」という逆説的なテーマを持つラブソング。
距離と親密さのあいだを揺れる微妙な感情が、繊細に表現されている。

10. Iron Lung

閉塞感と、そこから逃れたいという切実な願いを描いた曲。
リズムセクションが緊張感を高め、エモーショナルな爆発へと導く。

11. Outro

短いインストゥルメンタルでアルバムを締めくくる。
浄化のような静けさを湛え、全体を美しくまとめ上げている。

総評

『Ride Or Die』は、ARXXの持つエネルギー、誠実さ、そして感情のダイナミズムを余すところなく詰め込んだアルバムである。

彼女たちは、怒りも愛も、弱さも強さも、すべてを”そのまま”の形で音楽に変える。
そのため、楽曲にはどれも生々しい説得力があり、聴き手は無理なく感情移入してしまう。

サウンド面では、オルタナティヴロックのラフな衝動と、
現代ポップのキャッチーさを絶妙にブレンドしており、
ジャンルを越えて広いリスナー層に訴えかける普遍性を持っている。

『Ride Or Die』は、単なる友情や恋愛を歌ったアルバムではない。
それは、自分自身を支えるもの──他者でもあり、自分でもある──への静かな賛歌なのである。

ビジュアルとアートワーク

『Ride Or Die』のアートワークは、荒野の真ん中でバイクにまたがる二人の姿を捉えたもの。
スピード、自由、友情、そしてどこまでも続く旅路を象徴しており、
アルバムの持つ”無条件の連帯”というテーマを視覚的にも見事に表現している。

色使いも、夕暮れ時の温かな光と、地平線の先の未知への憧れを感じさせ、
聴く前から”これは私たちのための物語だ”と思わせる力を持っている。