
1. 歌詞の概要
ARXXのRide or Dieは、誰かを愛すること、何かを諦めないこと、その両方を同じ熱量で鳴らすアンセムである。
タイトルのRide or Dieは、最後まで一緒に行く、何があっても離れない、という意味を持つ言葉だ。
ただ仲がいい、ただ好き、という程度ではない。
困難が来ても逃げない。
道が悪くても降りない。
行き先が見えなくても、隣にいる。
この曲では、その覚悟がクィアな愛の祝福として、そしてARXXというバンドそのものの宣言として鳴っている。
ARXXはこの曲について、何か愛するものへの献身と、絶対に諦めないというコミットメントを歌った曲だと説明している。さらに、一方ではクィアな愛の堂々とした祝福であり、もう一方では自分たちのバンドに対する揺るぎない決意を表しているとも語っている。Get In Her この二重性が、Ride or Dieをただのラブソング以上のものにしている。
曲の中の語り手は、相手に迷わないでほしいと求める。
時間を無駄にしないでほしい。
目を見ればわかる。
言葉にしなくても、もう答えは出ている。
そんなふうに、関係の熱が最初から高い。
Dorkの歌詞ページでも、冒頭から「時間を無駄にしないで」「あなたが欲しいものはわかっている」というような流れが確認できる。Readdork
この曲の主人公は、遠回しに愛を求めない。
曖昧な関係に留まらない。
欲しいものを欲しいと言う。
その強さが、ARXXのサウンドとよく噛み合っている。
ギターは太く、ドラムは大きい。だが、音の質感は単なるガレージロックではない。サビは大きく開け、ポップソングとしての明快なフックがある。
AnalogueTrashはこの曲について、叫びたくなるコーラスと強烈なリフがあり、ダンスフロアにもモッシュピットにも喜びと混沌をもたらす曲だと評している。AnalogueTrash
まさに、Ride or Dieは身体を巻き込む曲である。
ただ聴くだけではなく、一緒に歌いたくなる。
「I would」と返したくなる。
その反復は、誓いのようでもあり、ライブハウスで観客が一つになる合図のようでもある。
2. 歌詞のバックグラウンド
Ride or Dieは、ARXXのデビューアルバムRide Or Dieに収録された表題曲である。
ARXXの公式Bandcampでは、アルバムRide Or Dieは2023年3月31日リリースとして掲載され、Ride Or DieはSide Aの5曲目に配置されている。アルバムにはBaby Uh Huh、Deep、Not Alone、God Knows、Ride Or Die、Call Me Crazy、Stuck On You、What Have You Done、Never Want To Go Back、The Last Time、Iron Lungなどが収録されている。ARXX
Apple Musicでも、Ride Or Dieは2023年3月31日リリース、12曲32分のアルバムとして掲載されている。Apple Music – Web Player
ARXXは、ブライトンを拠点とするデュオである。
メンバーは、ボーカル/ギターのHanni Pidduckと、ドラムのClara Townsend。
もともとはDIYなガレージロックの熱を持つバンドとして注目されてきたが、Ride Or Dieではその荒さを残しながら、よりポップで、より大きなサウンドへ進化している。
The Forty-Fiveのレビューでは、ARXXはUKのDIYシーンでスパイキーなガレージロックのライブバンドとして評判を得たあと、Ride Or Dieで光沢のあるフックに満ちたポップへ進化したが、ルーツを忘れてはいないと評されている。The Forty-Five
この変化は、表題曲Ride or Dieにもはっきり出ている。
曲は荒い。
でも、ただ荒いだけではない。
サビは明確に大きい。
歌詞は個人的だが、ライブで大勢が歌える形になっている。
クィアな愛を歌いながら、それを閉じた物語にしない。むしろ、誰かや何かを命がけで大切にすることの普遍的なエネルギーへ広げている。
The Forty-Fiveのインタビューでは、アルバム全体について、Hanni Pidduckの個人的な経験、特にメンタルヘルスやクィアな恋愛が前面に出ている作品だと紹介されている。また、Clara Townsendはアルバムが「物事が大変になり、それから大丈夫になっていく」物語を持っていると語っている。The Forty-Five
Ride or Dieは、その物語の中で重要な転換点にある。
苦しさだけではない。
不安だけでもない。
愛することを選び、バンドを続けることを選び、諦めないことを選ぶ曲である。
When The Horn Blowsのインタビューでは、Hanni PidduckがRide Or Dieという言葉について、「諦める選択肢はない。諦めたら、自分たちにとって最も大切なものを失う」と語っている。また、この曲は最初はクィアな愛の祝福として始まったが、やがてバンドとその旅路へのコミットメントを象徴する意味も持ったと説明している。When The Horn Blows
ここが、この曲の核である。
Ride or Dieは、恋人だけに向けられた言葉ではない。
バンドメイトにも向けられている。
音楽にも向けられている。
自分自身の人生にも向けられている。
愛するものを選び、そのために走る。
それが、この曲の姿勢なのだ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞全文はDorkなどの歌詞掲載ページで確認できる。ここでは権利に配慮し、曲の核心を示す短い部分のみを引用する。
Don’t waste my time
和訳:
私の時間を無駄にしないで
この一行は、Ride or Dieの入り口として非常に強い。
遠慮がない。
曖昧さもない。
恋愛において「時間を無駄にしないで」と言うことは、かなりはっきりした要求である。
好きなのか。
覚悟があるのか。
隣に来るのか。
逃げるのか。
その答えをはっきりしてほしい、ということだ。
この曲の語り手は、ただ待つ側ではない。
相手が迷っているなら、その迷いに付き合い続けるつもりはない。自分の欲望を知っている。相手の目にあるものも読んでいる。だからこそ、はっきり言う。
時間を無駄にしないで。
もうひとつ、曲の主題と深く結びつく短い言葉がある。
Ride or die
和訳:
最後まで一緒に行く
この言葉は、恋愛の誓いにも聞こえる。
しかしARXXの場合、それだけではない。
クィアな愛を堂々と祝う言葉であり、バンドを続ける決意でもある。Hanni PidduckはDIVAのインタビューで、この曲は音楽が先にあり、そこに自分が本当に大切にしているものを歌詞として乗せる必要があったため、クィアネスを選んだと語っている。diva-magazine.com
だからこのRide or dieは、単なる恋のスローガンではない。
自分の愛を隠さないこと。
自分のバンドを諦めないこと。
自分の人生を他人の基準に預けないこと。
それらが一つに重なった言葉である。
歌詞引用元:Dork Ride Or Die lyrics
楽曲情報:Ride Or DieはARXXの同名デビューアルバムに収録され、2023年3月31日にリリースされた。
4. 歌詞の考察
Ride or Dieの歌詞は、愛の確信を求める曲である。
しかし、その確信は柔らかいだけのものではない。
むしろ、かなり攻めている。
「私の時間を無駄にしないで」という出だしから、語り手は相手に選択を迫る。自分が何を望んでいるのかはわかっている。相手の目にも答えが出ている。だから、もう曖昧にしないでほしい。
ここで歌われている愛は、受け身ではない。
選ばれるのを待つ愛ではない。
自分から欲望を持ち、自分から関係を引き寄せる愛である。
この姿勢は、クィアな愛の歌としてとても重要だ。
クィアな恋愛は、しばしば隠されたり、曖昧にされたり、説明を求められたりする。友達なのか、恋人なのか。真剣なのか、ただの一時的なものなのか。周囲が勝手に関係を薄めてしまうこともある。
Ride or Dieは、その曖昧化に抗う曲として響く。
私たちは本気だ。
これは隠すような愛ではない。
遊びではない。
最後まで行く。
そう言っているように聞こえる。
ただし、この曲の面白いところは、愛をあまり重苦しくしないことだ。
歌詞の覚悟は強い。
でもサウンドは明るく、開けている。
Get In Her Earsはこの曲を、クィアな愛とプラトニックな友情を祝う、非常に高揚感のある曲だと評している。さらに、ライブで観客が「I would」と歌う瞬間が記憶に残ると書いている。Get In Her Ears
この「I would」という呼応が重要である。
それは、相手への返事でもある。
自分たちへの誓いでもある。
観客との共同体的な合唱でもある。
誰かが「一緒に来る?」と問い、別の誰かが「行く」と答える。
このシンプルな応答が、曲の中心にある。
Ride or Dieは、個人のラブソングでありながら、ライブでは共同体の歌になる。特にクィアなリスナーにとって、この「一緒に行く」という合唱は、ただの恋愛以上の意味を持つかもしれない。
自分たちはここにいる。
お互いを置いていかない。
自分たちの愛を小さくしない。
その感覚が、サビの大きさに宿っている。
また、この曲にはバンドとしてのARXXの姿も重なる。
HanniとClaraの二人は、ロックバンドとして、しかもデュオとして、限られた編成で大きな音を鳴らしてきた。大きなギターとドラム、声とリズム。そのシンプルな構造の中で、曲をどう大きくするかを磨いてきたバンドである。
Ride or Dieでは、そのシンプルさがポップの爆発力へ向かう。
Noizzeのレビューは、アルバムRide or Dieについて、インディー、オルタナ、パンク、現代ポップの要素を合わせたギター主導のロックとして評価し、デビューアルバムとして非常に完成度が高いと述べている。ノイズUK
表題曲もまさにその融合である。
リフはロック。
サビはポップ。
感情はパンク。
しかし全体は、ただのジャンルミックスではない。
自分たちが本当に大切にしているものを、いちばん大きな音で鳴らすために、必要なものを全部使っている。
DIVAのインタビューでHanniが、この曲では音楽が先にあり、それにふさわしい「本当に大切なもの」を歌う必要があったため、クィアネスを選んだと語っていることは象徴的である。diva-magazine.com
つまり、Ride or Dieの音は先に「大きなこと」を求めていた。
そこに、クィアな愛が入った。
その結果、曲は単なるキャッチーなロックソングではなく、ARXXのアイデンティティの宣言になった。
歌詞の中の関係は、身体的で、即時的で、迷いがない。
「目を見ればわかる」という感覚は、言葉以前のコミュニケーションを示している。相手が何を望んでいるか、もう見えている。だからこそ、隠す必要はない。
この視線の強さが、曲全体を動かしている。
クィアな愛の歌として考えると、「見つめ合うこと」には特別な意味がある。
人前で見つめ合うこと。
欲望を隠さずに見ること。
相手の目の中に、自分と同じ熱を見ること。
それは、とても単純なようで、時にとても政治的でもある。
Ride or Dieは、それを説教ではなく、ポップソングとしてやっている。
ここがARXXの強みである。
彼女たちは、メッセージを前面に掲げながらも、曲そのものを楽しませる。肩を組み、歌い、踊り、汗をかく。その身体的な楽しさの中に、クィアな愛とバンドへの献身が入っている。
だから、この曲は明るい。
ただし、軽くはない。
明るさの奥に、諦めないという厳しさがある。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Deep by ARXX
Ride Or Dieの2曲目に収録された楽曲で、ARXXのポップ化したロックサウンドを知るうえで重要な曲である。Bandcampの公式トラックリストでも、DeepはBaby Uh Huhに続く2曲目として掲載されている。ARXX
Ride or Dieの大きなサビや、感情を隠さず押し出すARXXの姿勢が好きなら、Deepも自然につながる。よりアップテンポで、ギターとドラムの勢いが前に出ている。愛や不安を深く掘りながら、曲としては明るく跳ねるところがARXXらしい。
- Not Alone by ARXX
Ride Or Dieの3曲目に収録された曲で、アルバム前半の流れを作る重要曲である。公式Bandcampでも3曲目として確認できる。ARXX
Ride or Dieが「最後まで一緒に行く」曲だとすれば、Not Aloneは「ひとりではない」と確認する曲として聴ける。ARXXの音楽にある共同体感、ライブで誰かと歌うことで生まれる安心感が好きな人に合う。
- Call Me Crazy feat. Pillow Queens by ARXX
Ride Or Dieの6曲目に収録された楽曲で、Pillow Queensを迎えたコラボ曲である。公式Bandcampでも同曲がSide Bの冒頭に置かれている。ARXX
Ride or Dieのクィアな愛の祝福に惹かれるなら、この曲もおすすめしたい。Pillow Queensの参加によって、ARXXの世界にさらに厚みが加わる。恋愛、友情、混乱、自己肯定が、ギターの熱とともに広がる曲である。
- The Last Time by ARXX
Ride Or Dieの10曲目に収録された、アルバム終盤の感情を担う曲である。The Forty-Fiveのインタビューでは、アルバムが「大変なことがあり、それから大丈夫になっていく」物語を持つと語られているが、その終盤の流れを感じるうえで重要な曲だ。The Ride or Dieの覚悟が好きなら、The Last Timeでは別の種類の決断を聴ける。もう戻らない、これが最後だ、という感情があり、アルバムの物語の中で回復へ向かう流れを作っている。
- When I Was a Girl by MUNA
ARXXのクィアなポップロック感、愛と自己認識を大きなサウンドへ変える姿勢が好きなら、MUNAも相性がいい。
MUNAは、クィアな視点をポップソングとして堂々と鳴らすバンドである。Ride or Dieの「愛を隠さない」「ポップであることを恐れない」感覚に近い。よりシンセポップ寄りだが、共同体的な高揚と切実さが通じている。
6. クィアな愛とバンドの覚悟を同じ熱で鳴らす曲
Ride or Dieの特筆すべき点は、恋愛の歌とバンドの歌が完全に重なっているところである。
普通なら、この二つは別々に語られる。
愛する人への献身。
音楽への献身。
でもARXXにとって、その二つは分けられない。
誰かを愛することも、バンドを続けることも、どちらも覚悟の問題である。
傷つくかもしれない。
うまくいかないかもしれない。
周囲から理解されないかもしれない。
それでも降りない。
その姿勢が、Ride or Dieという言葉に集約されている。
When The Horn BlowsのインタビューでHanniが語った「諦める選択肢はない」という言葉は、この曲の芯そのものだ。When The Horn Blows
この言葉は、ロマンチックであると同時に、かなり現実的でもある。
バンドを続けることは、夢だけでは続かない。
ツアーがあり、金銭的な不安があり、制作の苦しさがあり、体力的な負担がある。特にDIYシーンから出てきたバンドにとって、諦めないことは日々の選択である。
恋愛も同じだ。
愛しているだけでは足りない。
相手と向き合うこと、関係を選び続けること、外からの視線に負けないこと、自分の欲望を恥じないこと。それらが必要になる。
Ride or Dieは、その両方を一つの曲にしている。
だから、曲には力がある。
クィアな愛を祝う曲として聴いても強い。
ARXXというバンドの決意表明として聴いても強い。
ライブアンセムとして聴いても強い。
この多層性が、曲をアルバムの表題曲にふさわしいものにしている。
また、この曲はARXXの音楽的な進化も象徴している。
初期のARXXには、もっとざらついたガレージロックのイメージがあった。だがRide Or Dieでは、ポップなフック、厚いコーラス、より洗練されたプロダクションが前面に出ている。
The Forty-Fiveのインタビューでは、ARXXが自分たちを「alt-rock band who really want to be pop stars」と語る文脈で紹介されている。これは冗談めいているが、Ride or Dieの本質をよく表している。The Forty-Five
オルタナティヴ・ロックでありたい。
でも、ポップスターにもなりたい。
この欲張りさがいい。
Ride or Dieは、ロックの荒さを捨てずに、ポップの大きさへ向かう曲である。リフは強く、ドラムは鋭い。でもサビは誰でも歌える。難しい顔をして聴くより、身体で受け止める曲だ。
その身体性は、クィアな祝福とも深く結びつく。
クィアな愛は、しばしば説明を求められる。
理屈を求められる。
政治的な文脈に置かれる。
もちろん、それらも大切だ。
しかし、Ride or Dieはまず身体で歌う。
「I would」と返す。
拳を上げる。
隣の人と同じフレーズを叫ぶ。
その瞬間、愛は説明ではなく、音になる。
この曲の本当の力はそこにある。
ARXXは、クィアな愛を特別な苦悩としてだけ描かない。
喜びとして描く。
覚悟として描く。
みんなで歌えるサビとして描く。
それはとても重要である。
痛みを語る曲も必要だ。
不安や差別や孤独を歌う曲も必要だ。
でも、それと同じくらい、何の遠慮もなく愛を祝う曲も必要である。
Ride or Dieは、そのための曲だ。
しかも、その祝福はきれいごとではない。
「何があっても一緒に行く」という言葉には、リスクがある。愛するものと一緒に行くことは、いつも楽しいだけではない。面倒もある。痛みもある。道が荒れることもある。
でも、それでも行く。
この「それでも」が、曲を強くしている。
アルバムRide Or Die全体の中でも、この曲は中心にある。
公式トラックリストでは5曲目に置かれ、前半の締めくくりとして機能している。Baby Uh Huh、Deep、Not Alone、God Knowsと進んだあと、Ride Or Dieでアルバムのテーマがはっきり言葉になる。ARXX
ここでARXXは、自分たちが何のために鳴っているのかを明示する。
愛のため。
バンドのため。
諦めないため。
そして、その全部を楽しむため。
When The Horn Blowsのアルバムレビューは、Ride Or Dieを自信とアイデアに満ちた作品であり、ARXXがどこへ進むことも恐れていないと評している。When The Horn Blows
その「恐れていない」感覚は、表題曲に凝縮されている。
Ride or Dieは、ためらわない曲だ。
迷わない曲だ。
しかし、単純な曲ではない。
そこには、クィアな愛の政治性も、バンドの労働も、友情も、欲望も、ライブハウスの熱もある。
それらを全部まとめて、3分前後のポップロックにしてしまう。
それがARXXのすごさである。
最後に残るのは、やはりRide or Dieという言葉だ。
それは、少し大げさな誓いである。
でも、ポップソングには大げさな誓いが必要なときがある。
小さな声では足りない愛がある。
控えめな言葉では守れない夢がある。
ARXXは、その愛と夢を、大きなドラムとギターと声で鳴らす。
Ride or Dieは、誰かと一緒に行くことを選ぶ曲である。
そして同時に、自分たちの音楽を絶対に手放さないと宣言する曲でもある。
その二つの覚悟が重なったとき、この曲はただの表題曲ではなく、ARXXというバンドの旗になる。

コメント