発売日: 2015年1月20日
ジャンル: オルタナティブロック、パンクロック
10年間の活動休止を経てリリースされたSleater-Kinneyの8枚目のスタジオアルバムNo Cities to Loveは、待ち望まれていた復活の一枚であると同時に、彼女たちの進化と成熟を証明する作品だ。過去のパンクロックのエネルギーはそのままに、タイトで洗練された楽曲が揃っており、現代の社会や個人的なテーマを反映した歌詞が強い印象を残す。
プロデューサーには、長年のコラボレーターであるJohn Goodmansonを再び迎え、短いながらも力強い10曲が凝縮されたアルバムを完成させた。そのサウンドは鋭く、無駄のないアレンジが特徴で、ブラウンスタインとタッカーのギターとボーカルの掛け合いが再び中心に据えられている。
各曲ごとの解説
1. Price Tag
アルバムの幕開けを飾るパワフルなトラックで、消費主義社会への批判をテーマにしている。激しいリフとタッカーのエモーショナルなボーカルが際立つ。
2. Fangless
軽快なビートとキャッチーなギターワークが特徴の楽曲。抑圧された感情をテーマにした歌詞が印象的で、ポップな要素も感じられる一曲。
3. Surface Envy
仲間意識やコミュニティをテーマにしたエネルギッシュな楽曲。ブラウンスタインとタッカーの掛け合いが楽曲に躍動感を与えている。
4. No Cities to Love
タイトル曲であり、アルバムの中心的な楽曲。シンプルながらも力強いメロディと、故郷やアイデンティティを考えさせる歌詞が特徴。歌詞には普遍的なテーマが込められている。
5. A New Wave
アップテンポで明るいトラック。自己表現や創造性をテーマにした歌詞と、ブラウンスタインのギターが特に印象的。音楽の自由を祝うようなポジティブな楽曲。
6. No Anthems
ダークで重厚なサウンドが特徴の楽曲。抗議のアンセムではなく、自らの声を探求する姿勢をテーマにしている。力強いドラムとギターの絡み合いが際立つ。
7. Gimme Love
短く鋭い楽曲で、タイトル通り愛を求める強い感情を描いている。シンプルな構成ながらもダイナミックな展開が印象的。
8. Bury Our Friends
リードシングルであり、アルバムの中でも特にキャッチーな楽曲。困難を乗り越える力強さを歌った歌詞が、シンプルで印象的なメロディとともに響く。
9. Hey Darling
ノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲で、過去と未来を見つめる歌詞が心に残る。軽快なリズムとボーカルが楽曲に親しみやすさを与えている。
10. Fade
アルバムを締めくくる壮大な楽曲で、終わりと再生をテーマにしている。徐々に高まるエネルギーとノイジーなギターが、余韻を残すエンディングを演出する。
フリーテーマ:復活と再生の象徴
No Cities to Loveは、10年間のブランクを感じさせない力強い復活作であると同時に、Sleater-Kinneyの新たな章の始まりを告げるアルバムだ。鋭いサウンドと緻密なアレンジが際立ち、個人的なテーマや社会的な問題をストレートに描き出している。その一方で、彼女たち特有のエネルギーとユーモアも健在で、聴き手に新鮮さと懐かしさの両方を提供している。
アルバム総評
No Cities to Loveは、Sleater-Kinneyが新たな視点と成熟を携えて戻ってきたことを示す力強いアルバムだ。短いながらも一貫性のある楽曲群は、鋭いメッセージ性とキャッチーなメロディを両立しており、バンドの進化を感じさせる。特に「Price Tag」や「Bury Our Friends」、「No Cities to Love」といった楽曲は、復活作としてだけでなく、バンドのディスコグラフィーにおいても重要な位置を占めるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Woods by Sleater-Kinney
ノイジーでダイナミックなサウンドが共通する前作。
Dig Me Out by Sleater-Kinney
エネルギッシュでキャッチーなパンクサウンドが楽しめる名作。
Hurry Up, We’re Dreaming by M83
再生や未来をテーマにした作品が好きな人におすすめ。
American Idiot by Green Day
社会批評とエネルギッシュなロックが共通するアルバム。
Rid of Me by PJ Harvey
鋭い感情表現とシンプルなアレンジが響く作品。
コメント