Must Be the Moon by !!!(2007)楽曲解説

1. 歌詞の概要

!!!(チック・チック・チック)の「Must Be the Moon」は、2007年にリリースされたアルバム『Myth Takes』に収録された楽曲で、ファンク、ダンス、ポストパンクが融合したバンドの代表的なナンバーのひとつです。この曲は、夜の誘惑とその代償について歌われたもので、アルコールや欲望に身を任せた結果の後悔や戸惑いが描かれています。

リリックは、ある夜の出来事を回想するような形で進行し、主人公が「なぜあんなことをしてしまったのか?」と自問する場面が描かれています。しかし、その答えは曖昧で、「月のせいかもしれない」と半ば他責的に考えようとする、まるで酔っ払いが言い訳をしているようなユーモラスな視点が取り入れられています。

2. 歌詞のバックグラウンド

!!!は1996年にカリフォルニアで結成されたバンドで、ポストパンクとダンスミュージックを融合させた「ダンスパンク」の代表的なアーティストの一つとして知られています。2000年代初頭にLCD SoundsystemやThe Raptureといったバンドと共に、ニューヨークのダンスパンクシーンの一角を担いました。

『Myth Takes』は、バンドにとってキャリアの転換点となったアルバムであり、「Must Be the Moon」はその中でも特にキャッチーな楽曲のひとつです。シンプルでありながら洗練されたリズムと、ニック・オファーの挑発的なボーカルが絡み合い、ダンスフロア向けのグルーヴを生み出しています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

※ 歌詞の権利を尊重し、一部のみ引用しています。全文は こちら でご覧ください。

歌詞抜粋(英語):

And I don’t even know your name
And I swear that it was your perfume that got me hung up on this tune

和訳:

俺は君の名前さえ知らない
でも、間違いなく君の香水がこの曲に取り憑かせたんだ

この一節は、酔った勢いで出会った誰かとの瞬間的な高揚感と、その後に訪れる混乱を描いています。「曲(tune)」というワードを使うことで、音楽やダンスが夜の魔法を引き起こすメタファーとして機能しているのが特徴です。

4. 歌詞の考察

この曲のテーマは、夜の誘惑とその後の混乱です。主人公はパーティーの熱狂の中で誰かと関係を持ちますが、翌朝になって冷静に振り返ると、「なぜこんなことをしてしまったのか?」という疑問が湧き上がります。しかし、彼はその原因を「月のせいだ(Must Be the Moon)」と曖昧に片付けようとします。

この「月のせい」という表現は、昔からある「満月の夜には人が狂う」という言い伝えを想起させます。つまり、この楽曲は単なるナイトライフの一幕を描いているだけでなく、人間の衝動性や責任回避の心理をユーモラスに表現しているとも言えるでしょう。

また、音楽的にはディスコやファンクのグルーヴを取り入れることで、歌詞の内容とシンクロする「踊らずにはいられない」感覚を生み出しています。リスナーもこの楽曲のビートに乗って体を揺らしながら、気づけば夜の魔力に取り憑かれている――そんな感覚を味わえる構成になっています。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Daft Punk Is Playing at My House” by LCD Soundsystem
    同じくダンスパンクの流れを汲む楽曲で、ダンサブルなグルーヴとユーモラスな歌詞が魅力。
  • “Echoes” by The Rapture
    ファンクとポストパンクの融合が光る一曲で、!!!の持つリズムとエネルギーに共通点が多い。
  • “Get Innocuous!” by LCD Soundsystem
    繰り返されるリズムと高揚感が特徴で、長尺のグルーヴィーな楽曲が好きな人にはおすすめ。
  • “North American Scum” by LCD Soundsystem
    !!!と同じ時代に活躍したバンドで、ダンサブルながら皮肉の効いた歌詞が特徴。

6. 「Must Be the Moon」のライブでの魅力

!!!のライブは、スタジオ音源以上にカオスでエネルギッシュなものになることで有名です。「Must Be the Moon」は特に観客の熱狂を引き出す一曲であり、ライブではさらに長尺のジャムセッションが加えられることが多いです。

ボーカルのニック・オファーはステージを縦横無尽に動き回り、観客とコミュニケーションを取りながら曲を展開させます。さらに、リズムセクションが即興的に変化し、ライブならではのアレンジが施されるため、一度のパフォーマンスでは終わらない中毒性を持っています。

また、観客が踊りながらシンガロングできる部分も多く、クラブ的な一体感を生み出すのもこの曲の魅力の一つです。!!!のライブを体験したことのある人なら、この曲がどれほどの熱狂を生むかがよく分かるでしょう。


まとめ

「Must Be the Moon」は、夜の狂騒とその後の戸惑いをユーモラスに描いたダンスパンクの名曲であり、!!!の持つグルーヴとエネルギーを最大限に活かした楽曲です。ファンク、ポストパンク、ディスコの要素が絶妙にブレンドされ、聴く者をダンスフロアへと引きずり込む魔力を持っています。パーティーチューンでありながら、皮肉や社会的な視点を盛り込むことで、単なるクラブミュージックとは一線を画す作品となっています。

この曲を聴けば、あなたも「月のせいだ」と言い訳しながら、朝まで踊り続けてしまうかもしれません。

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