発売日: 2015年5月26日
ジャンル: サイケデリックポップ / インディーロック / ソウル
「Multi-Love」は、Unknown Mortal Orchestra（以下UMO）の3作目のアルバムであり、ルーベン・ニールソンが音楽的にも個人的にも大きな進化を遂げた作品だ。このアルバムでは、彼のプライベートな恋愛体験が反映され、多面的な愛をテーマにした深い内容が詩的な歌詞とサウンドに刻み込まれている。
前作「II」までのローファイでサイケデリックなサウンドを進化させつつ、ソウルやファンク、エレクトロニカの要素を加えた洗練されたアプローチが印象的。特にタイトル曲「Multi-Love」は、ポップでありながらも複雑な感情を内包した名曲として、多くのリスナーの心を掴んだ。
各トラック解説
1. Multi-Love
アルバムのタイトル曲であり、象徴的なリードトラック。シンセサウンドと軽快なリズムが心地よく、歌詞では複数の愛の関係性を探求している。ポップでありながらも感情的な深みを持つ。
2. Like Acid Rain
ソウルフルな要素が強く、リズミカルなギターリフとグルーヴ感のあるビートが特徴。軽快なサウンドの裏には切なさも漂う。
3. Ur Life One Night
ファンクの影響を感じさせるトラックで、ダンサブルなリズムと中毒性のあるメロディが魅力的。ライブでも盛り上がる一曲。
4. Can’t Keep Checking My Phone
ディスコやファンクの要素を取り入れたエネルギッシュなトラック。スマートフォンや現代のテクノロジーに依存する感覚をユーモラスに描いている。
5. Extreme Wealth and Casual Cruelty
ソウルフルでドラマチックな楽曲。ゆったりとしたテンポと温かいアレンジが、歌詞のテーマと共鳴する。
6. The World Is Crowded
愛と孤独がテーマのメランコリックなトラック。柔らかなギターとルーベンのボーカルが、聴き手を穏やかな感情へと導く。
7. Stage or Screen
短いながらも印象的なトラック。ローファイなアレンジと力強いリズムが特徴で、アルバムの流れに一石を投じる。
8. Necessary Evil
ファンクとサイケデリックが融合したミッドテンポの楽曲。カジュアルな雰囲気の中に切実な感情が感じられる。
9. Puzzles
アルバムを締めくくる長尺のトラックで、壮大なスケールと実験的なアレンジが光る。カール・ハイドのボーカルと大胆なギターが、物語の終幕にふさわしい。
アルバム総評
「Multi-Love」は、UMOがこれまでのサイケデリックなスタイルを超え、ポップやソウル、ファンクといった多彩なジャンルを融合させた作品である。ルーベン・ニールソンの個人的な体験や感情が音楽に込められ、リスナーはアルバムを通じて彼の内面的な世界を覗き見ることができる。「Multi-Love」や「Can’t Keep Checking My Phone」といった楽曲は、UMOの新しい方向性を示すだけでなく、聴き手を新たな音楽の旅へと誘う。過去作に比べてポップさが増した一方で、深みと実験精神を失わない傑作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Currents by Tame Impala
サイケデリックポップとディスコの融合が、「Multi-Love」と共鳴する。
Awaken, My Love! by Childish Gambino
ソウルとファンクのモダンな解釈が、「Multi-Love」のファンに響く作品。
Everything Now by Arcade Fire
ダンサブルで感情的なサウンドが特徴で、「Can’t Keep Checking My Phone」のようなトラックが好きな人におすすめ。
Honey by Robyn
シンセポップとソウルフルなボーカルが融合し、UMOのファンに親和性のある一枚。
What For? by Toro y Moi
サイケデリックとポップのバランスが絶妙なアルバムで、「Multi-Love」の雰囲気に通じる。
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