発売日: 1979年11月
ジャンル: パンクロック、ポストパンク
「Machine Gun Etiquette」は、The Damnedが2年間のブランクを経てリリースした3枚目のアルバムで、バンドのサウンドが大きく進化した作品である。前作の荒々しいパンクロックのエネルギーを維持しながらも、メロディとアレンジが格段に洗練され、ポストパンク的な要素も取り入れられている。ギターリフとシンセサイザーの大胆な使用、そしてバンド全体の演奏力の向上により、より多彩で複雑な音作りが実現されている。このアルバムは、The Damnedが単なるパンクバンドではなく、進化するロックシーンの中で独自の地位を確立したことを示す重要な作品となっている。
各曲ごとの解説:
- Love Song
このアルバムを代表する「Love Song」は、バンドの復活を高らかに宣言するトラックで、シンプルながら力強いギターリフとキャッチーなメロディが特徴。歌詞はアイロニカルなラブソングで、ストレートなメッセージとともに、荒々しいエネルギーが感じられる。 - Machine Gun Etiquette
アルバムタイトル曲は、疾走感のあるリズムとパンキッシュなギターが目立つ。テーマは社会に対する反抗と個人の自由で、荒削りなヴォーカルと緻密な演奏が見事に調和している。特にドラムの激しさが曲全体を引き締めている。 - I Just Can’t Be Happy Today
この曲は、ポストパンクの要素を強く感じさせるサウンドで、シンセサイザーの使用が際立つ。歌詞は疎外感や絶望をテーマにしており、メロディがどこか陰鬱で不穏な雰囲気を醸し出している。バンドの新しい方向性を象徴する一曲だ。 - Melody Lee
このトラックは、シンプルで親しみやすいメロディが特徴で、歌詞は個人的な感情を描写している。ギターリフは軽快で、パンク特有のスピード感がありながらも、キャッチーなフックが耳に残る。 - Anti-Pope
宗教への批判をテーマにした「Anti-Pope」は、激しいギターリフとアグレッシブな歌詞が特徴。攻撃的な内容ながら、どこかユーモアも感じられ、ライブでも人気の高いトラックだ。 - These Hands
短く強烈な「These Hands」は、パンキッシュな勢いを保ちつつ、無駄のないシンプルな構成が光る。怒りに満ちたヴォーカルとスピーディーな展開が特徴で、アルバムの中でも特にハードな楽曲。 - Plan 9 Channel 7
この曲では、より複雑なアレンジと、シンセサイザーの使用が印象的。サイケデリックな雰囲気と重厚なギターが融合し、バンドの音楽性の幅広さを感じさせる。歌詞は不条理な世界観を描き、幻想的な一面を持っている。 - Noise Noise Noise
激しくてノイジーなこのトラックは、パンクロックのエネルギーが爆発している。タイトル通り、音の洪水の中で暴力的なリフと叫ぶようなヴォーカルが印象的で、純粋なカオスを楽しめる一曲。 - Looking at You
MC5のカバー曲で、The Damnedらしいパワフルなアプローチで再解釈されている。原曲のエネルギーを尊重しつつ、よりスピード感を増したアレンジが秀逸。ギターソロも見どころで、バンドの技術的な進化を感じさせる。 - Liar
「Liar」は、嘘と裏切りをテーマにした短く鋭いトラックで、速いテンポと叫ぶようなヴォーカルが特徴。ギターのリフが繰り返される中、シンプルでストレートなパンクサウンドが印象的だ。 - Smash It Up (Part 1)
アルバムの後半に現れる「Smash It Up」は、二部構成になっている曲の最初の部分で、穏やかなギターと夢幻的なサウンドが特徴。パンクの攻撃性とは異なる、リリカルでメロディアスな一面を見せている。 - Smash It Up (Part 2)
「Smash It Up (Part 2)」では、前半の穏やかさが一転し、エネルギッシュで攻撃的なパンクサウンドに変わる。反抗的な歌詞と共に、アルバムのクライマックスにふさわしい激しい展開が待っている。
アルバム総評:
「Machine Gun Etiquette」は、The Damnedが単なるパンクバンドからさらに進化し、より幅広い音楽性を示した重要な作品である。従来のパンクの荒々しさを維持しつつ、メロディとアレンジが格段に進化し、シンセサイザーなどの新しい要素が取り入れられている。中でも「Love Song」や「Smash It Up」は、バンドの成熟した音楽性と、依然として燃え盛る反抗心を象徴する曲である。パンクロックの枠にとどまらず、多様なスタイルを吸収して成長したバンドの姿が印象的な一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- London Calling by The Clash
パンクとポストパンクの要素を融合させたアルバム。多彩なジャンルを取り入れたサウンドが、The Damnedの「Machine Gun Etiquette」と共通する。 - The Scream by Siouxsie and the Banshees
ポストパンクの代表作で、ダークで実験的なサウンドが、The Damnedの進化した音楽性と響き合う部分がある。 - Entertainment! by Gang of Four
パンクとファンク、アートロックの融合で知られるこのアルバムは、The Damnedの音楽的な冒険心と共通点が多い。 - The Crack by The Ruts
レゲエやダブの要素を取り入れたパンクアルバムで、サウンドの多様性やメッセージ性が「Machine Gun Etiquette」に通じる。 - Metal Box by Public Image Ltd.
John LydonがSex Pistols解散後に手がけた作品で、パンクと実験的な音楽の融合が強烈。The Damnedのポストパンク的アプローチが好きな人におすすめ。
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