アルバムレビュー:It Still Moves by My Morning Jacket

発売日: 2003年9月9日
ジャンル: サザンロック / インディーロック / アメリカーナ

My Morning JacketのサードアルバムIt Still Movesは、バンドの音楽的成熟を象徴する作品だ。前作At Dawnで見られたローファイなプロダクションに比べ、クリアで壮大なサウンドスケープが特徴となり、彼らのカントリーやサザンロックのルーツが、より堂々と前面に押し出されている。

フロントマンのジム・ジェームスによるリバーブを効かせたファルセットボーカル、煌びやかなギターリフ、そして厚みのあるアンサンブルが見事に融合した本作は、My Morning Jacketの代表作のひとつとされ、バンドの人気を大きく押し上げた。また、アルバムの長尺でドラマチックな楽曲構成は、彼らのライブパフォーマンスのエネルギーをそのまま凝縮したかのような迫力を持っている。


トラック解説

1. Mahgeetah

アルバムの幕開けを飾る壮大な楽曲。南部の暖かい風景を彷彿とさせるギターリフとジェームスの情感豊かなボーカルが、アルバム全体の方向性を提示している。ノスタルジックでありながらも力強いオープニングだ。

2. Dancefloors

アップテンポでカントリーダンスを思わせる楽曲。華やかなホーンセクションと軽快なリズムが、アルバムの中でも異彩を放つ。ライブで盛り上がること間違いなしの一曲。

3. Golden

アコースティックギターとジェームスのボーカルが主役のバラード。夕暮れ時の美しさを描いた歌詞とメロディが感動的で、アルバムの中でも特に感情的なハイライトとなっている。

4. Master Plan

ギターリフが印象的なドラマチックな楽曲。複雑な構成の中に、バンドの演奏力とアンサンブルの魅力が詰まっている。

5. One Big Holiday

アルバムのハイライトであり、My Morning Jacketの代表曲のひとつ。疾走感あふれるギターリフとパワフルなドラムが生み出すエネルギーが圧倒的で、ライブでも定番のクラシックとなっている。

6. I Will Sing You Songs

約9分に及ぶ壮大な楽曲で、アルバムの中でも特に瞑想的なトラック。緩やかに展開されるメロディと広がりのあるサウンドスケープが、時間を忘れさせるような没入感を与える。

7. Easy Morning Rebel

カントリーとロックが見事に融合したトラック。軽快なリズムとリバーブの効いたボーカルが、アルバム全体の流れを活気づける。

8. Run Thru

力強いギターリフで始まるダイナミックな楽曲。中盤の静かなブレイクと、その後の爆発的な展開が印象的で、スリリングな音楽体験を提供する。

9. Rollin’ Back

スローテンポで哀愁漂う楽曲。歌詞は懐かしさや過去への思いをテーマにしており、シンプルながらも深い感情を引き出す。

10. Just One Thing

メランコリックなメロディとギターが美しいトラック。アルバム全体の中で、一瞬の静けさを感じさせる貴重な場面となっている。

11. Steam Engine

静かな導入から、徐々に盛り上がりを見せる展開が見事な一曲。詩的な歌詞と、心に響くギターのソロが印象的だ。

12. One in the Same

アルバムのラストを飾る楽曲。温かみのあるメロディとジェームスのボーカルが、アルバム全体を締めくくる穏やかな余韻を残す。


アルバムの背景: 音楽的成熟への一歩

It Still Movesは、My Morning Jacketが初期のローファイなプロダクションから、より広がりのあるサウンドスケープを追求する段階へと進化した作品だ。ジム・ジェームスはプロデューサーとしても活躍し、サザンロックやカントリー、サイケデリックロックといった影響を取り入れながら、バンドの独自性をさらに明確にしている。このアルバムのリリースを通じて、My Morning Jacketはインディーロックシーンで確固たる地位を築いた。


アルバム総評

It Still Movesは、My Morning Jacketの音楽的な進化を示すだけでなく、彼らのキャリアを語る上で欠かせない重要な作品だ。南部のルーツを感じさせる情熱的で広がりのあるサウンドと、ジム・ジェームスの魂のこもったボーカルが印象的で、リスナーを豊かな音楽の旅へと誘う。サザンロックやアメリカーナ、壮大なロックサウンドを求めるリスナーには、ぜひ聴いてほしい一枚だ。


このアルバムが好きな人におすすめの5枚

Southern Rock Opera by Drive-By Truckers
サザンロックの影響を受けたアルバムで、物語性とダイナミズムが共通点。

Yankee Hotel Foxtrot by Wilco
フォークとロック、実験的な要素が融合したアルバムで、It Still Movesのリスナーにも響く一枚。

American Beauty by Grateful Dead
サザンロックやフォーク、カントリーのルーツを感じさせる作品。

Harvest by Neil Young
感情的で広がりのあるサウンドが、My Morning Jacketのスタイルと親和性が高い。

Sea Change by Beck
メランコリックで感情的なサウンドが、アルバムの持つ静けさや深みと共通する。

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