アルバムレビュー:Is This It by The Strokes

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

  • 発売日: 2001年7月30日(オーストラリア)、2001年8月27日(イギリス)、2001年10月9日(アメリカ)
  • ジャンル: ガレージ・ロック・リバイバル、インディー・ロック、ポストパンク・リバイバル、ニューウェイヴ、オルタナティヴ・ロック

概要

The Strokesのデビュー・アルバム『Is This It』は、2000年代ロックの方向性を決定づけた作品のひとつである。1990年代後半、アメリカのロック・シーンではポスト・グランジ、ニュー・メタル、ポップ・パンク、メインストリーム化したオルタナティヴ・ロックが大きな存在感を持っていた。その一方で、ギター・ロックは巨大化し、過剰にプロデュースされ、スタジアム的なスケールや重いサウンドへ向かう傾向も強かった。そうした時代に、The Strokesは極端に削ぎ落とされた演奏、短い曲、乾いたギター、ローファイなヴォーカル、都市的な倦怠感を持って登場した。

『Is This It』が与えた衝撃は、単に「古いロックを復活させた」ということではない。確かに本作には、The Velvet UndergroundTelevision、The Modern Lovers、Ramones、BlondieThe CarsThe Stooges、初期Talking Headsなど、ニューヨークやアメリカン・ロックの系譜が強く感じられる。しかしThe Strokesは、それらを博物館的に再現したのではなく、2001年の若者の身体感覚へ変換した。無駄を削ったギター・リフ、まっすぐだが微妙に気だるいリズム、ジュリアン・カサブランカスの拡声器越しのような歌声は、過去のロックの引用でありながら、当時の空気を鋭く捉えていた。

アルバム・タイトルの『Is This It』は、「これがそれなのか」「こんなものなのか」と訳せる。そこには、期待と失望、欲望と空虚、若さの高揚と倦怠が同時に含まれている。成功、恋愛、夜遊び、都市生活、ロックンロール。そうしたものに対して、The Strokesは熱狂的に信じきるわけでも、完全に冷笑するわけでもない。何かを求めているが、手に入れた瞬間に「これだけなのか」と感じてしまう。その感覚がアルバム全体を貫いている。

本作の音楽的な特徴は、徹底した簡潔さである。曲はほとんどが3分前後で、構成は明快、音数も多くない。Albert Hammond Jr.とNick Valensiのツイン・ギターは、厚い壁を作るのではなく、左右に分かれて細い線を描きながら絡み合う。Nikolai Fraitureのベースはシンプルながらメロディックで、楽曲の骨格を支える。Fab Morettiのドラムは派手なフィルを避け、タイトで乾いたビートを刻む。そしてJulian Casablancasのヴォーカルは、感情を過剰に表現するのではなく、少し距離を置いたような声で歌う。この抑制されたバンド・サウンドが、『Is This It』の美学を作っている。

プロダクション面でも、本作は重要である。The Strokesの音は、当時の大規模なロック作品と比べると非常に薄く、ざらついており、密室的である。だが、その薄さこそが魅力になっている。ドラムはタイトに録られ、ギターは乾き、ヴォーカルは電話や古いマイクを通したように処理される。その結果、アルバム全体はニューヨークの小さなクラブ、狭い部屋、夜明け前の通りのような空気を持つ。大きなロックではなく、都市の片隅で鳴っているロックである。

歌詞面では、恋愛、退屈、セックス、嫉妬、すれ違い、若者同士の会話、都市生活の倦怠が断片的に描かれる。Julian Casablancasの歌詞は、明確な物語を語るというより、短いフレーズや態度によって感情を作る。感傷的に泣くわけでも、政治的な主張をするわけでもない。むしろ、感情を持て余しながら、それを皮肉や無関心のような表情で覆い隠す。そこに2000年代初頭のインディー・ロック的なクールさがある。

『Is This It』は、後の音楽シーンに大きな影響を与えた。The White StripesInterpolYeah Yeah YeahsFranz FerdinandArctic MonkeysThe LibertinesBloc Party、The Killersなど、2000年代前半から中盤にかけてギター・ロックが再び注目される流れの中で、本作は非常に重要な参照点となった。特に、ロック・バンドが巨大な音を鳴らさなくても、簡潔な曲と明確な美学によって時代を変えられることを示した点は大きい。

日本のリスナーにとっても、『Is This It』は2000年代インディー・ロックを理解するうえで避けて通れない作品である。派手なギター・ソロや重厚なアレンジはない。しかし、曲の短さ、リフの鋭さ、声の距離感、アルバム全体の統一された空気が、聴き返すほどに強く残る。これは若さのアルバムであると同時に、若さの空虚さを知っているアルバムでもある。

全曲レビュー

1. Is This It

オープニング曲「Is This It」は、アルバムのタイトル曲であり、The Strokesの美学を非常に静かに提示する楽曲である。デビュー・アルバムの冒頭としては意外なほど控えめで、派手なギター・リフや爆発的なサビでは始まらない。ベースとギターがゆるく絡み、Julian Casablancasの声が少し疲れたように入ってくる。その瞬間から、このアルバムが大げさなロックンロールの勝利宣言ではなく、都市の倦怠を描く作品であることが分かる。

音楽的には、ミドルテンポの軽いグルーヴが中心である。ギターは鋭すぎず、むしろ丸みを帯びた音で鳴り、リズムもリラックスしている。ベースラインはシンプルだが印象的で、曲全体にゆるやかな推進力を与えている。大きな盛り上がりを作らず、淡々と進む構成が、タイトルの持つ「これがそれなのか」という倦怠感と合っている。

歌詞では、恋愛や関係の不確かさ、期待と失望が曖昧に描かれる。何かを求めていたはずなのに、実際に目の前にあるものに対して確信が持てない。「Is this it」という問いは、恋愛にも、若さにも、都市生活にも、ロック・バンドとしての成功にも向けられているように響く。

この曲は、アルバム全体の入口として非常に重要である。The Strokesは最初から聴き手を熱狂させるのではなく、少し拍子抜けするような空気を置く。しかし、その拍子抜けこそが本作の核心である。期待されたものが現れた瞬間に、すでに少し失望している。この感覚が『Is This It』を単なるガレージ・ロック復興作以上のものにしている。

2. The Modern Age

「The Modern Age」は、The Strokesの初期を象徴する楽曲のひとつであり、彼らが登場した時代の気分を強く刻んでいる。タイトルは「現代」を意味するが、曲のサウンドには明らかに過去のロックの影がある。つまりこの曲は、古いロックの形式を使って、現代の若者の倦怠と速度感を描く楽曲である。

音楽的には、乾いたギター・リフと軽快なドラムが中心で、前曲よりも明確に前へ進む。ギターは左右で細かく役割分担され、片方がリズムを刻み、もう片方がメロディックなラインを差し込む。The Strokesのツイン・ギターの美しさは、この曲で非常に分かりやすく表れている。

歌詞では、現代生活の中で何かを見失っている感覚が漂う。Julianの歌い方は感情を強く押し出さず、むしろ少し投げやりである。現代という言葉は、進歩や新しさを示すはずだが、この曲では必ずしも明るい未来を意味しない。むしろ、若者が速度の中で消耗し、退屈し、どこへ向かっているのか分からなくなる時代として響く。

「The Modern Age」は、The Strokesが持っていた時代感覚を象徴する曲である。彼らは未来的な音を鳴らしたわけではない。しかし、古いギター・ロックを通じて、2000年代初頭の現代を見事に表現した。この逆説が、彼らの登場を特別なものにした。

3. Soma

「Soma」は、タイトルからAldous Huxleyの小説『Brave New World』に登場する幸福薬を連想させる楽曲である。Somaは、人々を苦痛や不満から遠ざけ、社会に適応させるための薬として描かれる。The Strokesの曲においても、この言葉は快楽、麻痺、現実逃避、感情の鈍化を示しているように響く。

音楽的には、軽快でありながらどこか冷めた雰囲気を持つ。ギターのリフはシンプルで、ドラムはタイトに進み、曲全体は非常にコンパクトである。だが、その軽さの中に、感情の空洞のようなものがある。楽しげに聞こえるが、完全には楽しんでいない。The Strokesの音楽に特徴的な、快楽と倦怠の同居が表れている。

歌詞では、快楽や刺激によって現実をやり過ごす感覚が描かれる。若者文化における夜遊び、酒、薬、恋愛、会話の断片は、一時的な逃避として機能する。しかし、それが本当に満足を与えるわけではない。むしろ、感情を鈍らせることで、空虚さを先送りにしているだけかもしれない。

「Soma」は、『Is This It』のタイトルが持つ問いと深くつながる曲である。何かを感じたいのに、感じすぎるのはつらい。だから麻痺させる。だが、麻痺した先にあるのは、さらに深い退屈である。この曲は、その心理を短いロック・ソングの中に巧みに閉じ込めている。

4. Barely Legal

「Barely Legal」は、アルバムの中でも特に挑発的なタイトルを持つ楽曲である。直訳すれば「かろうじて合法」という意味で、若さ、性的な緊張、危うい境界、未成熟と欲望の接点を示している。The Strokesの初期作品にある、若者文化の無責任さや危険な遊びの感覚が強く出た曲である。

音楽的には、ギターのストロークが鋭く、リズムも軽快で、アルバムの中でも特にガレージ・ロック的な勢いを持つ。曲は短く、無駄がなく、サビも強い。The Strokesのソングライティングの魅力である、簡潔さとフックの強さがよく分かる。

歌詞では、若さと性的な関係をめぐる危うさが断片的に描かれる。ここにはロマンティックな純愛はなく、むしろ衝動、未熟さ、無責任さ、そして少しの自己嫌悪がある。Julianの歌い方は、挑発的でありながらどこか冷めている。その距離感が、曲を単なる無邪気なロックンロールにしていない。

「Barely Legal」は、The Strokesが持っていた危険な若さを象徴する楽曲である。だが、その危険さは荒々しいパンクの暴力というより、都会的な無関心と結びついている。何かをしてしまった後でも、深刻な顔をしない。その態度が、この曲の鋭さである。

5. Someday

「Someday」は、『Is This It』の中でも特にメロディアスで、The Strokesの代表曲として広く知られる楽曲である。タイトルは「いつか」を意味し、過去への郷愁、未来への曖昧な期待、今この瞬間のもどかしさが込められている。アルバムの中でも比較的温かい感情を持つ曲だが、その温かさの中にはやはり失われていく時間への寂しさがある。

音楽的には、軽快なリズムと明るいギター・フレーズが特徴である。曲は非常にシンプルで、サビも大きく展開しすぎない。しかし、その抑制されたメロディが強く耳に残る。The Strokesの楽曲は、派手なドラマを作らずとも、短いフレーズの積み重ねで強い印象を残す。この曲はその好例である。

歌詞では、かつての時間、友人関係、若さの記憶が浮かび上がる。「いつか」という言葉は未来を指すが、この曲ではむしろ過去を振り返る感覚が強い。いつか分かる、いつか思い出す、いつか変わってしまう。若いときには、今がすぐに過去になることに気づきにくい。「Someday」は、その感覚を非常に自然に捉えている。

この曲は、The Strokesの冷めたイメージの中にある感傷を示す重要曲である。彼らは感情を大げさに表に出さないが、感情がないわけではない。むしろ、照れ隠しのようなクールさの奥に、若さが過ぎ去ることへの深い寂しさがある。「Someday」はその寂しさを最も美しく表現した曲のひとつである。

6. Alone, Together

「Alone, Together」は、タイトルそのものがThe Strokesの世界観をよく表している。「一緒にいるが孤独」という矛盾した状態は、都市の若者文化、恋愛、友情、バンド内の関係にまで広く当てはまる。誰かと一緒に夜を過ごし、会話し、踊り、恋愛をしているのに、根本的には孤独である。その感覚がこの曲の中心にある。

音楽的には、ギターの絡みが非常に印象的で、リズムはタイトに進む。曲は疾走するというより、少し抑えたテンションで進み、サビで感情が少し開く。The Strokesらしい直線的な構成の中に、微妙なメロディの陰影がある。

歌詞では、関係の中での距離感や、親密さの不完全さが描かれる。誰かと一緒にいることは、必ずしも孤独の解消を意味しない。むしろ、相手が近くにいるからこそ、理解されないことがよりはっきりする場合もある。この曲のタイトルは、その都市的な孤独を非常に端的に表している。

「Alone, Together」は、『Is This It』の持つ集団的な孤独の感覚を象徴する楽曲である。The Strokesの音楽は、バンド全体で非常にまとまって鳴っている。しかし、そのまとまりの中で歌われるのは孤独である。この矛盾が彼らの音楽に深みを与えている。

7. Last Nite

「Last Nite」は、The Strokes最大の代表曲のひとつであり、2000年代ロックを象徴する楽曲である。イントロのギター・ストロークは非常に印象的で、Tom Petty and the Heartbreakersの「American Girl」との類似もよく指摘されるが、The Strokesはそのクラシックなロックの感触を、より短く、乾いた、都会的なロック・ソングへ変換している。

音楽的には、非常にシンプルでありながら強力である。ギターは軽く歪み、ドラムはタイトに跳ね、ベースは曲を支える。曲の構成は明快で、無駄がない。Julianのヴォーカルは、酔ったようでもあり、苛立っているようでもあり、感情を直接ぶつけるのではなく、少しずらして歌う。この歌い方が曲に独特の不安定さを与えている。

歌詞では、昨夜の出来事、恋人とのすれ違い、会話の失敗、感情の空回りが描かれる。相手が何かを言い、語り手はそれにうまく応えられない。若い恋愛にありがちな、言葉が足りないまま関係が壊れていく感覚がある。しかし曲調は明るく、勢いがあり、その痛みを深刻に見せすぎない。

「Last Nite」の魅力は、失恋やすれ違いの曲でありながら、ロックンロールの高揚を持っている点にある。悲しいのに踊れる。苛立っているのに口ずさめる。The Strokesのポップ・センスが最も分かりやすく結実した楽曲であり、『Is This It』を時代の象徴へ押し上げた重要曲である。

8. Hard to Explain

「Hard to Explain」は、『Is This It』の中でも特に完成度の高い楽曲であり、The Strokesの美学が最も洗練された形で表れている。タイトルは「説明しにくい」という意味を持ち、感情、関係、都市生活、自己認識の曖昧さを端的に示している。The Strokesの音楽はしばしば説明しにくい感覚を扱うが、この曲はそれを直接タイトルにしている。

音楽的には、ドラムのゲート処理のような硬い質感が特徴的で、曲全体が機械的に前へ進む。ギターは細かく刻まれ、ベースは安定し、全体が非常にタイトに構成されている。ロック・バンドでありながら、どこかニューウェイヴ的、機械的な冷たさを感じさせる点が重要である。

歌詞では、コミュニケーションの難しさ、都市の中での疎外、感情を言葉にできない状態が描かれる。何かを感じているが、それを説明できない。相手に伝えたいことがあるが、言葉にすると違ってしまう。現代的な若者の感情の詰まりが、非常に簡潔な形で表現されている。

「Hard to Explain」は、The Strokesのクールさが単なるファッションではなく、感情表現の形式であることを示す曲である。彼らは説明しすぎない。だからこそ、聴き手はその余白に自分の感情を重ねることができる。本作の中でも最も重要な楽曲のひとつである。

9. New York City Cops

「New York City Cops」は、オリジナルのアメリカ盤では9.11同時多発テロの影響により「When It Started」に差し替えられた楽曲である。ニューヨーク市警を挑発的に扱う歌詞が、事件直後の状況には不適切と判断されたためである。だが、アルバムの初期構成においては、この曲はThe Strokesのニューヨーク的な態度を象徴する重要な楽曲だった。

音楽的には、アルバムの中でも特にストレートなガレージ・ロック色が強い。荒々しいギター、シンプルなリズム、挑発的なヴォーカルが前面に出ている。曲は洗練されすぎず、初期衝動を保っている。そのラフさが、アルバムにパンク的なアクセントを与えている。

歌詞では、ニューヨーク市警に対する皮肉や挑発が繰り返される。政治的な深い分析というより、若いバンドらしい反抗的な態度が中心である。権力への不信、都市の路上感覚、軽い悪ふざけが混ざり合っている。この曲の魅力は、まさにその軽薄さと攻撃性のバランスにある。

「New York City Cops」は、The Strokesがニューヨークのバンドであることを強く示す曲である。彼らのニューヨークは、観光的な都市ではなく、クラブ、路上、警察、夜遊び、若者の皮肉が交差する場所である。この曲は、その荒い都市感覚をアルバムに刻んでいる。

10. Trying Your Luck

「Trying Your Luck」は、アルバム終盤に置かれた、ややメランコリックな楽曲である。タイトルは「運を試す」という意味で、恋愛や人生において、うまくいく保証がないまま行動する感覚を示している。The Strokesの中では比較的感情の影が濃い曲であり、アルバムの後半に深みを与えている。

音楽的には、ミドルテンポで、ギターの響きも少し柔らかい。曲は大きく爆発するのではなく、じわじわと感情を積み上げていく。Julianの声も、ここでは少し切実に聞こえる。クールな態度の奥にある不安が、比較的はっきりと表れている。

歌詞では、相手との関係がうまくいくか分からないまま、自分の運を試すような状況が描かれる。恋愛は計画通りには進まない。相手に近づくことは、拒絶される可能性を引き受けることでもある。この曲には、その不確かさへの静かな諦めがある。

「Trying Your Luck」は、『Is This It』の中で過小評価されがちな曲だが、アルバムの感情的なバランスを支えている。勢いのある曲が多い中で、この曲は少し立ち止まり、関係の失敗や不安を見つめる。The Strokesのメランコリックな側面がよく表れた楽曲である。

11. Take It or Leave It

ラスト曲「Take It or Leave It」は、アルバムを締めくくるにふさわしい、鋭く攻撃的な楽曲である。タイトルは「受け入れるか、捨てるか」という意味で、相手に選択を迫るような強い態度を持っている。『Is This It』の最後にこの曲が置かれることで、アルバムは曖昧な倦怠だけでなく、切断のエネルギーを持って終わる。

音楽的には、ギターのカッティングが非常に鋭く、リズムも前へ押し出す。Julianのヴォーカルはアルバムの中でも特に激しく、投げ捨てるような歌い方を見せる。曲は短く、無駄がなく、終盤に向けて緊張を高める。ライブでも強い効果を持つタイプの楽曲である。

歌詞では、関係に対する苛立ち、相手への突き放し、自分を理解しないならそれでいいという態度が描かれる。これは恋愛の曲としても、バンドとしての宣言としても読める。The Strokesは、自分たちの美学を大きく説明しない。受け入れるか、離れるか。それだけである。

「Take It or Leave It」は、アルバム全体の最後にある種の決着を与える曲である。タイトル曲「Is This It」で始まった曖昧な問いは、ここで挑発的な二択へ変わる。これがそれなのかと問いながら始まったアルバムは、最後に「受け入れるか捨てるか」と突きつけて終わる。この流れは非常に美しい。

総評

『Is This It』は、2000年代ロックを語るうえで最も重要なデビュー・アルバムのひとつである。The Strokesはこの作品で、ロック・バンドが巨大な音量や複雑な演奏、壮大なコンセプトに頼らなくても、明確な美学と優れた曲によって時代を変えられることを示した。全体は非常にシンプルで、曲も短く、サウンドも乾いている。しかし、その削ぎ落とされた構造の中に、都市の倦怠、若さの焦燥、恋愛の不器用さ、夜の高揚と空虚が見事に閉じ込められている。

本作の最大の魅力は、統一感である。どの曲も似た編成、似た音色、似たテンションで鳴っているが、それが単調さではなく、強い世界観を作っている。ギターは鋭く乾き、ドラムはタイトで、ベースは簡潔に動き、ヴォーカルは少し歪んでいる。この音像は非常に明確で、一度聴けばThe Strokesだと分かる。デビュー作の時点でここまで自分たちの音を確立していたことは驚異的である。

Julian Casablancasのヴォーカルは、本作の核心である。彼は圧倒的な歌唱力で曲を支配するタイプではない。むしろ、感情を少し隠し、声を歪ませ、言葉を投げるように歌う。その結果、歌詞の内容以上に、態度そのものが音楽になる。無関心そうで、実際には傷ついている。気だるそうで、実際には苛立っている。この声の二重性が、『Is This It』の感情を形作っている。

歌詞のテーマは、恋愛や若者の生活を扱っているため、一見すると大きな社会的主張は少ない。しかし、そこにこそ本作の時代性がある。2000年代初頭の若者たちは、必ずしも大きな理想や革命を掲げていたわけではない。むしろ、都市の中で遊び、恋愛し、退屈し、何かに失望しながらも、それを大げさに語らない。The Strokesはその感覚を非常に鋭く音楽にした。これは政治的なアルバムではないが、時代の感情を捉えたアルバムである。

音楽史的には、『Is This It』はガレージ・ロック・リバイバル、ポストパンク・リバイバル、2000年代インディー・ロックの流れを決定づけた作品である。このアルバムの後、ギター・バンドは再び「クール」で「都市的」で「ミニマル」なものとして注目された。Interpol、Yeah Yeah Yeahs、The Libertines、Franz Ferdinand、Arctic Monkeys、The Killersなど、多くのバンドがそれぞれ異なる形でThe Strokes以後の空気を共有していた。本作がなければ、2000年代前半のロック地図は大きく違っていただろう。

ただし、『Is This It』は単なる流行の起点ではない。今聴いても、このアルバムは驚くほど古びにくい。理由は、サウンドが最初から過剰に時代の技術へ依存していないからである。ドラム、ベース、ギター、声。基本的なロック・バンドの要素だけで作られているため、2001年の作品でありながら、特定のプロダクション流行に縛られにくい。むしろ、そのシンプルさが普遍性を生んでいる。

一方で、本作には限界もある。感情表現は意図的に抑制され、歌詞の視点は主に若い男性の都市的な恋愛や退屈に集中している。そのため、深い物語性や音楽的な多様性を求めるリスナーには、狭く感じられるかもしれない。しかし、その狭さこそが本作の強さでもある。The Strokesは、あらゆることをやろうとしなかった。自分たちが鳴らすべき音、表現すべき空気を絞り込み、それを徹底した。その結果、非常に強い作品になった。

日本のリスナーにとって『Is This It』は、ロックの「かっこよさ」が必ずしも技巧や音圧にあるわけではないことを教えてくれる作品である。音は薄く、歌は気だるく、曲は短い。しかし、リフの配置、声の質感、アルバム全体の雰囲気は非常に強い。過剰に説明しないことで生まれる余白、感情を露骨に出さないことで生まれる切なさが、この作品にはある。

『Is This It』というタイトルは、デビュー作としてあまりにも象徴的である。これがロックの未来なのか。これが若さなのか。これが愛なのか。これが成功なのか。The Strokesはその問いに明確な答えを出さない。ただ、11曲の短いロック・ソングを並べる。そして聴き終えた後、確かに「これだった」と感じさせる。問いの形をしたタイトルを持ちながら、アルバムそのものが答えになっている。

総じて『Is This It』は、2000年代ロックの出発点であり、The Strokesの最高傑作として語られ続けるべき作品である。過去のロックを引用しながら、完全にその時代の音になった稀有なアルバムである。若く、短く、乾いていて、皮肉で、少し寂しい。ロックンロールの過剰な神話を信じきれない世代が、それでもロックンロールを鳴らした。その結果として生まれたのが、この『Is This It』である。

おすすめアルバム

1. The Strokes – Room on Fire

2003年発表のセカンド・アルバム。『Is This It』の美学をほぼそのまま受け継ぎながら、ギターの絡みやメロディをさらに洗練させた作品である。デビュー作の衝撃には及ばないとされることもあるが、The Strokesの初期サウンドをよりタイトに聴ける重要作である。

2. Television – Marquee Moon

1977年発表のニューヨーク・パンク/アート・ロックの名盤。鋭いツイン・ギター、都市的な緊張、知的で乾いたロックの感覚は、The Strokesの音楽的背景を理解するうえで欠かせない。『Is This It』のギター・アンサンブルに関心があるリスナーに強く関連する。

3. The Velvet Underground – Loaded

1970年発表のアルバム。シンプルなロックンロール、都市的な倦怠、メロディの強さが共存しており、The Strokesのニューヨーク的な系譜を考えるうえで重要である。過剰な装飾を避けたロック・ソングの美しさを確認できる。

4. Interpol – Turn on the Bright Lights

2002年発表のポストパンク・リバイバル重要作。The Strokesと同じくニューヨークから登場したが、こちらはより暗く、冷たく、Joy Division的な陰影を持つ。2000年代初頭のニューヨーク・ロック・シーンの多様性を知るうえで重要な一枚である。

5. Arctic Monkeys – Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not

2006年発表のデビュー・アルバム。The Strokes以後のギター・ロックの影響を受けながら、英国の若者文化、夜遊び、クラブ、街の観察を鋭い歌詞で描いた作品である。『Is This It』が与えた影響を次世代の形で聴くことができる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました