
発売日: 1997年5月
ジャンル: サイケデリック・ロック、ガレージロック、ネオサイケ、ローファイ
- 概要
- 全曲レビュー
- 1曲目:Super-Sonic
- 2曲目:This Is Why You Love Me
- 3曲目:Satellite
- 4曲目:Malela
- 5曲目:Salaam
- 6曲目:Whoever You Are
- 7曲目:Sue
- 8曲目:(You Better Love Me) Before I Am Gone
- 9曲目:Not If You Were the Last Dandy on Earth
- 10曲目:#1 Hit Jam
- 11曲目:Servo
- 12曲目:The Devil May Care (Mom & Dad Don’t)
- 13曲目:Their Satanic Majesties’ Second Request (Revisited)
- 14曲目:Not Alone
- 総評
- おすすめアルバム(5枚)
概要
『Give It Back!』は、The Brian Jonestown Massacre(以下、BJM)が1997年に発表した通算5作目のアルバムであり、
“90年代オルタナ・サイケの象徴”として評価される代表作のひとつ である。
当時のバンドは、
- アルバムを年に複数枚発表する異常な創作速度
- メンバー間の衝突や入れ替え
- アントン・ニューコム(Anton Newcombe)の強烈なカリスマと混沌
といった独特の空気をまといながらも、
アメリカ西海岸のサイケデリアを90年代に蘇らせる重要バンド としてカルト的な人気を獲得していた。
『Give It Back!』は、そんなBJMの“もっとも創造的で、もっとも危うく、もっとも自由”だった瞬間を封じ込めている。
The Rolling Stones の1960〜70年代、The Velvet Underground のミニマリズム、
Spacemen 3 の反復美学、そして60年代の西海岸ドリーム。
それらが混ざり合いながら、Anton Newcombe の強烈な個性によって統合される。
本作はローファイでありながら音の密度は高く、
ガレージ × サイケ × 民族音楽 × フォークロック がゆるやかに溶け合った、
雑然とした美学の最良の形 といえる。
“壊れかけの天才”がバンドを率いていた時代のBJMを、最も鮮烈に体験できるアルバムだ。
全曲レビュー
1曲目:Super-Sonic
いきなりノイジーなギターと粗雑なビートが突っ込み、
“混沌のBJMらしさ”を一瞬で提示。
ガレージパンク的な勢いとサイケの曖昧さが同居する。
2曲目:This Is Why You Love Me
バンド初期を代表する人気曲。
ストーンズらしいロックンロールのクセと、独特の皮肉なムードが漂う。
ジャンル的枠を越えて愛される名曲。
3曲目:Satellite
スロウで夢見心地のサイケデリック・バラード。
淡々と反復するリフが催眠的で、メランコリックな世界に沈み込む。
4曲目:Malela
民族音楽風のパーカッションと呪術的なコーラス。
アンビエントとサイケの中間のような不可思議さが魅力。
5曲目:Salaam
アコースティックで神秘的な小品。
アラビックなスケールとミニマル構成が異国の情景を浮かべる。
6曲目:Whoever You Are
直線的なビートに淡いギターが重なり、90年代オルタナ感が濃厚。
Anton のボーカルがとくに“壊れそうな美しさ”を放つ一曲。
7曲目:Sue
フォーク × サイケの柔らかさが心地よい。
メロディラインのさりげなさが感情を強く刺激する、アルバムの隠れた名曲。
8曲目:(You Better Love Me) Before I Am Gone
ガレージソウル的なノリと、ゆるい歌声が奇妙にマッチ。
BJMの脱力感と切実さがどちらも出るユニークな曲。
9曲目:Not If You Were the Last Dandy on Earth
バンドの代表曲のひとつ。
後に映画『Dig!』でも象徴的に扱われた、Dandy Warhols への“返答的楽曲”でもある。
軽やかなギターとビートが中毒性を生む。
10曲目:#1 Hit Jam
その名の通り“ジャムセッション丸ごと”のようなアシッド・サイケ。
音のふらつき、ノイズ、ズレすら美学になる典型的BJM曲。
11曲目:Servo
ダウナーで陰鬱な空気が漂い、反復とドローンが深い没入感を生む。
Spacemen 3 的な退廃の香りが強い。
12曲目:The Devil May Care (Mom & Dad Don’t)
カントリー寄りの明るさを持ちながら、歌詞は非常に皮肉で毒のある内容。
アンバランス感が独特の魅力につながっている。
13曲目:Their Satanic Majesties’ Second Request (Revisited)
初期作の再訪で、サイケデリアの濃度が一気に上昇。
60年代サイケロックへの愛がストレートに表れた一曲。
14曲目:Not Alone
アルバムの最後にふさわしい美しい余韻の曲。
静かだがメロディに強い情感が宿っている。
総評
『Give It Back!』は、
The Brian Jonestown Massacre の最盛期の混沌と才能がそのまま音になったアルバム
である。
完璧な構成美とは無縁。
音質は粗く、統一感も弱い。
しかしそれこそがBJMの魅力であり、
Anton Newcombe の無尽蔵な創造性と不安定な精神状態の両方が、
奇妙な輝きを放っている。
本作は以下の3つが極めて鮮やかに記録されている:
- 60年代サイケデリアとガレージロックへの深い敬意
- ミニマルでドローン的な反復の快楽
- バンドの内部混沌が生み出す“人間的なサイケ”
BJMを語るうえで『Give It Back!』は避けられず、
“カルトバンドとしてのBJMの本質が最も濃く表れた作品”
として長く愛されている。
メロディ、狂気、美しさ、ラフさ。
その境界線が曖昧なところに、このアルバムの唯一無二の魅力がある。
おすすめアルバム(5枚)
- The Brian Jonestown Massacre / Take It From the Man! (1996)
ストーンズ的ガレージ美学の結晶。『Give It Back!』の前段階にある重要作。 - The Brian Jonestown Massacre / Their Satanic Majesties’ Second Request (1996)
サイケ度を極めた傑作。神秘的・幻想的なBJMの別側面が楽しめる。 - The Dandy Warhols / …The Dandy Warhols Come Down (1997)
“Dig!”文脈でも重要。時代を共有したオルタナ・サイケの代表作。 - Spacemen 3 / The Perfect Prescription (1987)
BJMの反復美学の源流。ドローン・サイケ好きに必須。 - The Velvet Underground / The Velvet Underground & Nico (1967)
BJMの美学の根幹にあるミニマリズム/曖昧な光と影を理解する上で最適。



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