アルバムレビュー:Fire Doesn’t Grow on Trees by The Brian Jonestown Massacre

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2022年6月24日

ジャンル:Psychedelic Rock / Neo-Psychedelia / Indie Rock

概要

Fire Doesn’t Grow on Treesは、アントン・ニューカム率いるThe Brian Jonestown Massacreが2022年に発表したスタジオ・アルバムである。前作にあたるセルフタイトル作The Brian Jonestown Massacreから約3年を経て登場し、ニューカムが拠点とするベルリンのCobra Studioで制作された。長い活動歴の中で電子音楽、ドローン、東洋的な音階などにも手を広げてきたバンドだが、本作ではエレクトリック・ギター、オルガン、ベース、ドラムを軸とするサイケデリック・ロックへ重心を戻している。

ただし、1990年代のガレージ・ロックをそのまま再現しているわけではない。複数のギターを重ね、短いフレーズを反復させながら音の密度を少しずつ変える手法は、2010年代以降の作品で洗練されてきたものだ。ニューカムのボーカルも大きなメロディを押し出すより、楽器と同じ高さで漂わせるように配置される。ドラムは複雑に動かず、一定の拍を刻み続けることで、ギターの細かな変化を目立たせている。

全10曲は比較的近い音色でまとめられており、一曲ごとにジャンルを変えるタイプの作品ではない。その代わり、甘いメロディ、荒いファズ、オルガン、反復するコードを曲ごとに少しずつ配分し直し、同じサイケデリック・ロックの内部で違いを作る。2023年のThe Future Is Your Pastにも直結する時期の録音であり、後期The Brian Jonestown Massacreのギター中心の作風を理解しやすい一枚である。

全曲レビュー

1. 「The Real」

乾いたドラムの上へ複数のギターが重なり、最初からバンドの基本的な音像を提示する。リフを大きく変化させるより同じパターンを繰り返し、その周囲でギターの音色やフレーズを動かすため、単純なコード進行でも演奏が平坦にならない。ニューカムの歌は少し奥に置かれ、何が本物なのかという題名の問いも明快な答えへ向かわず、疑念を抱えたまま曲が進んでいく。

2. 「Ineffable Mindfuck」

題名の強烈さに対して、曲は意外なほど落ち着いたテンポで進む。ギターとオルガンが同じコードの周囲を回り続け、思考から抜け出せない状態を音の反復として表しているように聞こえる。派手なソロでサイケデリアを示すのではなく、同じ場所に長く留まることで徐々に感覚を変えていくタイプの曲で、ニューカムの淡々とした声もその催眠性を強める。

3. 「It’s About Being Free Really」

ギターの明るい響きと一定のビートによって、前曲より視界が開ける。自由について歌いながら大げさな宣言にはせず、個人が周囲から受ける制約を振り払おうとする感覚として扱っている。短いフレーズを何度も反復する方法は変わらないが、ここでは重苦しいドローンよりポップなメロディが前へ出るため、アルバム序盤の中でも比較的軽快に聞こえる。

4. 「What’s in a Name?」

名前や肩書きが人間そのものをどこまで表せるのかという問いを、少し皮肉な調子で投げかける。演奏ではギターの短いリフが曲の軸となり、リズム隊はそれを崩さず一定の速度で支える。サビで突然大きく開くような構成を取らないため、歌詞の疑問が解決されるというより、演奏とともに頭の中を巡り続ける感触が残る。

5. 「Silenced」

アルバム前半の中でも暗い色合いを持ち、低く響くギターとニューカムの抑えた歌唱が閉塞感を作る。声を奪われることを思わせるタイトルに対し、ボーカル自体もミックスの上へ飛び出さず、楽器の層に埋もれるように聞こえる。その配置が歌詞の感覚と結びついており、説明的なアレンジを加えなくても「声が届かない」という状態が音として伝わってくる。

6. 「Before and Afterland」

ギターの反復を軸にしながら、音の層がゆっくり入れ替わることで奥行きを作る。明確な物語を追わせるより、過去と現在の境界が曖昧になるような言葉と音響を組み合わせた曲である。演奏には1960年代サイケデリアの感触があるものの、極端なエフェクトへ頼らず、バンドが同じパターンを持続することで意識が少しずつ変化するような効果を生んでいる。

7. 「You Think I’m Joking?」

題名の問いかけ通り、歌には相手との認識のずれを感じさせる苛立ちがある。ここではギターの音もやや鋭く、ニューカムの声とぶつかるように配置されるため、それまでの夢見心地な反復より緊張が強い。感情を叫び声へ変えるのではなく、同じフレーズを執拗に続けることで不満を蓄積させていくところが、この時期のバンドらしい。

8. 「#1 Lucky Kitty」

軽い響きのタイトルとは対照的に、演奏はアルバムの他曲と同じく反復を中心にしたサイケデリック・ロックである。ギターの細かな装飾がリズムの隙間へ入り、歌よりもバンド全体のグルーヴが耳に残る。後半に入っても急激に新しい音色を持ち込まず、同じ音世界の内部でギターの配置を変えることで流れを維持している。

9. 「The Only Lonesome Die」

孤独と死を結びつけた題名を持つが、演奏は重いバラードへは向かわない。一定のドラムとギターの反復を保つことで、悲しみを瞬間的な感情ではなく長く続く状態として聞かせる。ニューカムの力を抜いた歌唱も、絶望を大きく演じるよりすでに受け入れてしまったような距離を作り、終盤の中でも特に乾いた後味を残す。

10. 「Wait a Minute (2:30 to Be Exact)」

アルバム最後を飾るのは、題名からしてニューカムらしい冗談めいた感覚を持つ曲である。最終曲だからといって壮大なクライマックスを作らず、ギターとリズムを中心とする簡潔なロックを最後まで維持する。作品全体で使ってきた反復、乾いた音、力の抜けたボーカルを短くまとめ、長い余韻よりも途中でふっと演奏が切れるような感覚でアルバムを終わらせる。

総評

Fire Doesn’t Grow on Treesでは、The Brian Jonestown Massacreが長年使ってきたサイケデリック・ロックの語彙がかなり整理されている。1960年代風のギター、オルガン、単純なドラム、反復するコードという材料自体に目新しさはない。しかしニューカムは、それらを過剰なヴィンテージ趣味として飾るのではなく、同じパターンを何分間も維持できるバンドの演奏へ落とし込んでいる。曲を複雑にするより、わずかな音色の変化を積み重ねることが中心だ。

特にギターは、一つの派手なリフやソロが曲を支配するのではなく、複数のパートが少しずつ異なる動きをする。片方がコードを刻んでいる間に別のギターが短い旋律を入れ、さらに残響の長い音が後ろへ広がる。その層を一定のドラムとベースが支えるため、演奏は前へ激しく進むというより、その場で回転しながら厚くなっていく。この作りが、本作の催眠的な感触を生んでいる。

歌詞では自由、自己認識、孤独、他者との断絶といった題材が現れるが、ニューカムは物語を細かく説明しない。短い言葉や問いを繰り返し、意味を完全に固定しないため、ボーカルも一つの音響として機能する。1990年代作品のような若い反抗心をそのまま再現するのではなく、似た不満や疎外感をより疲れた、距離のある声で歌っているところにキャリアの長さが表れている。

一方で、曲間の音色やテンポが近いため、明確な変化を求めると中盤以降が均質に感じられる可能性はある。しかし、この統一感は本作の狙いとも結びついている。次作The Future Is Your Pastと合わせて見ると、ニューカムがこの時期に大量の素材を作りながら、ギター・ロックという自分の基本形を改めて掘り下げていたことが分かる。革新的な方向転換ではなく、長年使ってきた方法から余計なものを削り、反復そのものの強さを前面に出した後期の充実作である。

おすすめアルバム

The Future Is Your Past by The Brian Jonestown Massacre

翌2023年に発表された作品で、本作と連続する制作期の空気を最も直接的に共有している。反復するギターと乾いたバンド・サウンドを保ちつつ、メロディや曲調の違いをより細かく広げている。

The Brian Jonestown Massacre by The Brian Jonestown Massacre

2019年のセルフタイトル作。ギター、オルガン、一定のリズムによって催眠的なサイケデリアを作る方法が本作へ直接つながっており、2010年代末から2020年代への作風の継続を確認できる。

Take It from the Man! by The Brian Jonestown Massacre

1996年作。Rolling Stonesや60年代ガレージ・ロックを思わせる荒々しい演奏が中心で、Fire Doesn’t Grow on Treesにも残るギター・ロックの基本形を、より若く攻撃的な状態で聴くことができる。

Playing with Fire by Spacemen 3

少数のコードと反復を長く維持し、ギターの音色そのものからサイケデリックな感覚を作る1989年作。本作よりミニマルだが、複雑な展開ではなく持続によって聴覚を変化させるという発想に強い共通点がある。

The Velvet Underground by The Velvet Underground

1969年作。派手な技巧を避けたギター、単純なコード、抑えたボーカルから強い個性を作っている。Fire Doesn’t Grow on Treesの簡素な構造や、反復を欠点ではなく表現として使う方法の源流を考えるうえで重要な一枚である。

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