
1. 歌詞の概要
「Do You Feel Like We Do」は、ピーター・フランプトン(Peter Frampton)が1973年に発表したソロアルバム『Frampton’s Camel』に収録された楽曲であり、1976年のライヴアルバム『Frampton Comes Alive!』に収録された約14分に及ぶライブバージョンによってロック史に残る名演となった代表作である。
歌詞自体はシンプルかつ断片的だが、中心となる問いかけ――**「Do you feel like we do?(君は俺たちと同じ気持ちかい?)」**は、リスナーとの心のつながりを探る、極めて感覚的で親密な問いである。
語り手は、酩酊状態や前夜のパーティーの断片的な記憶を語りながら、「あの時の気持ちを、君も感じているか?」と繰り返し問いかける。その問いは単に“ノってる?”という軽いものではなく、共有される感情や時間、熱狂と高揚の一体感を確かめ合うような深みを持っている。
2. 歌詞のバックグラウンド
スタジオ版は1973年に発表されたが、当時は大きな注目を集めるには至らなかった。しかし3年後、1976年にリリースされたライヴアルバム『Frampton Comes Alive!』のラストトラックとして収録された壮大なライヴバージョンが爆発的な人気を呼び、フランプトンのキャリアを決定づける楽曲となった。
ライヴ版の魅力は何といっても、トーク・ボックス(Talk Box)を駆使したギターソロにある。まるでギターが人のように“しゃべる”このエフェクトは、当時としては斬新で、観客との一体感を視覚的にも聴覚的にも演出するものだった。
この曲は演奏時間が10分を超え、なかでもトーク・ボックスを駆使した即興的セクションは観客とフランプトンの**“対話”のような高揚感に満ちている。リフレインされるタイトルの一節が、ただのフレーズを超えた集団的陶酔のスローガン**となる瞬間、それはまさにライヴ・ロックの神髄であった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Woke up this morning with a wine glass in my hand
Whose wine, what wine, where the hell did I dine?
今朝目覚めたら、手にワイングラスがあった
誰のワイン? どんなワイン? どこで飲んでたんだ、昨夜は?
Must have been a dream, I don’t believe where I’ve been
Come on, let’s do it again
きっと夢だったんだろうけど、信じられない場所にいた気がする
さあ、もう一度やろうぜ
Do you feel like we do?
君も、俺たちと同じ気持ちかい?
引用元:Genius 歌詞ページ
この歌詞は、記憶の断片と感覚の交錯から生まれる非日常的な浮遊感を見事に描いており、その中心に「君も同じように感じてる?」という、感情の共有を求める一言が置かれている。
4. 歌詞の考察
「Do You Feel Like We Do」は、いわゆる“内容重視のリリック”とは異なり、その感情とエネルギーの“瞬間”を体感させることに主眼が置かれたロック・ジャムである。
冒頭の酔い覚めの混乱、夢のような夜の記憶、もう一度繰り返したいという衝動――これらはすべて、音楽のライヴ体験そのものをメタファーとして語っているとも言える。
つまりこの曲は、“昨夜のパーティー”という設定を借りながら、ライヴで得られる陶酔、即興、共有感情の奇跡を描いているのだ。
タイトルの「Do you feel like we do?」という問いかけは、単に観客に“盛り上がってるか?”と尋ねるのではない。むしろ**“君もここにいることを感じているか?”という、存在の確認に近い**。その問いが何度も繰り返されることで、演奏と観客の境界が崩れ、音楽を媒介にした一体化の瞬間が生まれる。
特にライヴバージョンにおけるトーク・ボックス・ソロは、まさに“ギターが喋る”という演出であり、言語を超えて音そのもので会話するロックの極致を体現している。そこにあるのは技巧ではなく、音楽によって“通じ合う”という感覚への信頼である。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Free Bird by Lynyrd Skynyrd
自由と解放感をテーマにした、即興性に満ちたロック・ジャム。 - Frankenstein by Edgar Winter Group
インストゥルメンタル中心ながら、構成と即興が見事に融合した代表的ライヴ曲。 - Dazed and Confused(Live) by Led Zeppelin
観客との空間を巻き込む、ライヴ・パフォーマンスの臨界点。 - Reelin’ in the Years by Steely Dan(Live Version)
楽器とボーカルが自由に交錯する技巧派ジャム・ソング。 - You Enjoy Myself by Phish
感覚の共有を最重視するジャム・バンド的哲学を現代に継承した一曲。
6. ライヴと観客をつなぐ“問いかけ”としてのロック
「Do You Feel Like We Do」は、ピーター・フランプトンのキャリアを象徴するだけでなく、1970年代のライヴ・ロック文化そのものを体現した名曲である。
そこにはスリルがある。
そこには混乱もある。
でも何よりもあるのは、**「誰かと一緒に音楽を感じる歓び」**だ。
ギターが言葉を放ち、観客がそれに応える。
ステージとフロアがひとつになるその瞬間、
音楽はもはや聴くものではなく、「感じるもの」となる。
だからこそ、繰り返される問いはただのコーラスではない。
それはライヴを生きる者たちすべてへの、永遠の問いかけである。
「君も、同じ気持ちでいてくれるかい?」
その問いに、ただ身体を揺らしながら答えたくなる。
それこそが、“Do You Feel Like We Do”という曲が放つ、最大の魔法なのだ。
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