発売日: 1988年7月
ジャンル: エレクトロニック / ノーウェーブ / プロトインダストリアル
11年ぶりとなる3枚目のアルバム、A Way of Lifeは、Suicideが1980年代の音楽シーンに適応しつつも、彼ら独自の美学を保った作品である。アラン・ヴェガのカリスマ的なボーカルと、マーティン・レヴの無骨で荒々しいエレクトロニックサウンドは健在でありながら、プロダクションが洗練され、当時のインダストリアルやシンセポップのトレンドとも共鳴している。
プロデューサーにリック・オケイセック（The Cars）を迎えたこともあり、アルバム全体にはポップさとアクセスしやすさが加わり、これまでの作品とは異なる聴きやすさがある。しかし、その中でも依然として感じられる暴力性や不穏な雰囲気は、Suicideらしさを失っていない。
トラック解説
1. Wild in Blue
アルバムのオープニングを飾るこの楽曲は、重厚でダークなシンセベースとアラン・ヴェガの荒々しいボーカルが特徴的だ。愛と暴力、混乱が絡み合う歌詞が、聴き手に強いインパクトを与える。
2. Surrender
比較的ポップなアプローチが光る楽曲。明るめのメロディとシンセのリフが特徴的で、アルバムの中ではキャッチーな一曲だ。しかし、歌詞の中には依然として不穏なテーマが潜んでいる。
3. Jukebox Baby 96
クラシックなロックンロールを思わせるリズムと、電子的なアプローチが融合した楽曲。タイトルにある「ジュクボックス」という懐かしいイメージと、未来的なサウンドが対照的だ。
4. Rain of Ruin
この曲では、反復されるシンセリフが不穏な雰囲気を醸し出している。核戦争や破壊といった暗いテーマが歌詞に込められており、Suicideらしい悲観的な世界観が色濃く反映されている。
5. Suffering in Vain
スローで沈鬱なトラック。ヴェガの感情的なボーカルと、重々しいシンセサウンドが絶望的な雰囲気を作り出している。苦痛と救済の狭間で揺れる感覚を体験できる一曲だ。
6. Eiffel Tower
タイトルが示す通り、フランス文化やヨーロッパの雰囲気を連想させる楽曲。柔らかくメロディックなサウンドが印象的で、アルバム全体の中で一息つけるような存在。
7. Harlem 2
1980年のアルバムAlan Vega / Martin Revに収録されていたHarlemの続編的な楽曲。都会の荒廃や孤独を描いたシンセのリフが、不安定で緊張感のある雰囲気を生み出している。
8. Dominic Christ
宗教的なテーマを扱った挑発的な楽曲。反復されるビートとヴェガのボーカルが力強く、聴き手を強く引き込む。歌詞の中の不安定さと宗教批判が、楽曲に鋭さを与えている。
9. Love So Lovely
タイトルからは穏やかさを想像させるが、楽曲にはSuicideらしい不気味さが潜んでいる。歪んだ愛や失望をテーマに、ヴェガのボーカルが詩的な物語を紡ぐ。
アルバムの背景: 80年代の新しい文脈でのSuicide
1980年代後半、電子音楽とインダストリアルの進化はSuicideにとって追い風となった。彼らのシンプルで無機質な音楽性は、この時代のサウンドと親和性が高く、本作ではそのトレンドを取り込みつつも、彼ら特有のアンダーグラウンドな美学を保っている。リック・オケイセックのプロデュースにより、サウンドに磨きがかかり、エッジを効かせながらも聴きやすい作品に仕上がった。
アルバム総評
A Way of Lifeは、Suicideの進化を感じさせる重要なアルバムだ。デビューアルバムの暴力的な美学を引き継ぎつつも、洗練されたポップな側面を加え、1980年代の音楽シーンに適応した一枚となっている。彼らの持つ不穏さや暗い美しさを堅持しながら、より広い層にアプローチできるサウンドを実現している。時代を超えた実験精神と、それを受け入れられる柔軟さが、このアルバムの魅力だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Closer by Joy Division
暗く冷たい美学と感情的な深みが、Suicideの世界観と共鳴する作品。
The Pleasure Principle by Gary Numan
シンセポップの洗練されたサウンドと、ミニマルな美学が共通点。
Songs of Faith and Devotion by Depeche Mode
宗教的テーマと暗いエレクトロニックサウンドが本作と響き合う。
Boys Noize by Oi Oi Oi
エレクトロニカとアグレッシブなビートを融合したサウンドがSuicideの精神に近い。
Replicas by Tubeway Army
冷たく無機質なシンセサウンドが特徴で、Suicideファンにおすすめ。
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