
1. 歌詞の概要
Bloodstream は、アメリカ・ナッシュビル出身のシンガーソングライター、Soccer MommyことSophie Allisonが2020年に発表した楽曲である。
セカンドアルバム color theory のオープニングを飾る曲であり、アルバム全体の色彩、痛み、記憶を一気に提示する重要な一曲だ。
Pitchforkは、Bloodstream がアルバム color theory から公開された楽曲であり、先行曲 circle the drain、yellow is the color of her eyes、lucy に続いて発表されたと報じている。color theory は2020年2月28日にLoma Vistaからリリースされた作品である。
この曲の中心にあるのは、子どもの頃の無垢さが、成長とともに不安や自己嫌悪へ変わっていく感覚である。
タイトルの Bloodstream は「血流」を意味する。
この言葉は、曲の中で非常に重要な働きをしている。
血は、身体の内側を流れるものだ。
外からは見えない。
でも、確かに自分の中にある。
生きているかぎり流れ続ける。
この曲で歌われる不安や憂鬱も、それに近い。
表面上は見えない。
けれど、身体の奥に潜んでいる。
忘れたように思っても、消えていない。
いつかまた戻ってくる。
歌詞は、子どもの頃の血色のいい頬から始まり、やがて傷ついた手、鏡の中の青白い少女、そして血流の中を泳ぐ不安へと移っていく。
ここで描かれる「血」は、生命力の象徴であると同時に、痛みの象徴でもある。
生きているから血が流れる。
でも、生きているから傷もつく。
Bloodstream は、その二面性を持った曲だ。
サウンドは、決して暗く沈みきっていない。
ギターはやわらかく、メロディには甘さがあり、90年代オルタナティブロックやドリームポップのような淡い質感がある。
しかし、歌詞の中では心がどんどん深い場所へ降りていく。
Pitchforkの color theory レビューでは、同作について、より大きく明るいサウンドとは対照的に、ムードはより陰り、感情的な真実はより暗いと評されている。Pitchfork
Bloodstream は、まさにそのギャップを最初に示す曲である。
聴こえる音は美しい。
けれど、歌われているのは自分の中から逃げられない感覚だ。
幸福は夏の蛍のように指の間をすり抜ける。
つかまえたいのに、つかまえられない。
それどころか、頭の中には「自分は十分ではない」と語りかける声がある。
Bloodstream は、ただの鬱の歌ではない。
もっと身体的で、もっと記憶に根ざした曲である。
子どもの頃の傷。
思春期から続く不安。
自分を他人と比べてしまう癖。
幸福を感じたいのに、手に取れないもどかしさ。
それらが、血流のように身体の中を流れている。
この曲は、その流れに耳を澄ませるような一曲なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
Bloodstream が収録された color theory は、Soccer Mommyの2作目のスタジオアルバムである。
Pitchforkのアルバム発表記事によれば、同作はツアー中に書かれ、ナッシュビルで彼女のツアーバンドとともに録音され、Gabe Waxがプロデュース、Lars Stalforsがミックスを担当した。Pitchfork
このアルバムは、タイトル通り「色」をテーマに構成されている。
GRAMMY.comのインタビューでは、Sophie Allisonが color theory を3つの色のセクションに分けていることが紹介されている。青はうつや孤独、黄色は身体的・精神的な病、灰色は死や喪失を表すという構成である。Grammy
Bloodstream は、その最初の「青」の領域に属する曲として聴ける。
青は、憂鬱の色だ。
冷たい色であり、沈む色でもある。
しかし同時に、空や水の色でもある。
Bloodstream の中の青は、単なる悲しみではない。
もっと広く、深く、逃げ場のないものとして描かれている。
Pitchforkのトラック解説インタビューでは、Bloodstream について、幼少期の無垢さから若い成人期の不安へ向かう曲として語られている。Allisonはこの曲に関して、過去を掘り下げることが簡単ではなかったこと、そして13歳頃から感じていたものに触れている。Pitchfork
この「13歳」という感覚は、曲の中でも非常に重要だ。
13歳は、子どもと大人の境目に近い年齢である。
身体も心も変わっていく。
自分を他人と比べるようになる。
鏡の中の自分が急に他人のように見える。
世界が以前よりも冷たく、複雑に感じられる。
Bloodstream は、その境目で何かが変わってしまった感覚を歌っている。
子どもの頃は、膝を擦りむいても、血が出ても、それは外側の傷だった。
痛いけれど、見える。
消毒して、絆創膏を貼れば、いつか治る。
しかし成長するにつれて、傷は見えない場所に移っていく。
心の中へ。
頭の中へ。
血流の中へ。
この曲にある怖さは、そこにある。
傷が見えない。
でも、確かにある。
そして、自分の中をずっと流れている。
color theory というアルバム全体について、Pitchforkは、Sophie Allisonがうつ、不安、パラノイア、母親の病、死の恐怖などを扱いながら、それを色彩の感覚と結びつけていると紹介している。Pitchfork
Bloodstream は、その入り口として、個人的な痛みを身体のイメージに変換している。
ここで大切なのは、Soccer Mommyの音楽が、重いテーマをただ重く鳴らすわけではないことだ。
The Guardianは color theory について、病や絶望を扱っているにもかかわらず、アレンジやメロディは見事に魅力的だと評している。ザ・ガーディアン
Bloodstream もその通りで、曲は美しく、やわらかい。
しかし、そのやわらかさがあるからこそ、歌詞の痛みがより深く響く。
硬い刃ではなく、冷たい水のように入ってくる。
気づくと、胸の奥まで濡れている。
それが Bloodstream の怖さであり、美しさである。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞の全文は著作権で保護されているため、ここでは短い範囲で抜粋する。
歌詞の確認には、Dorkの歌詞掲載ページなどを参照できる。Dorkでは Bloodstream の歌詞が掲載されている。Readdork
Fear lingering > > Running through my heart like a wild stream
和訳:
残り続ける恐れ > > 荒れた流れのように、私の心を駆け抜ける
この冒頭は、曲の核心を一気に示している。
恐れは、消えない。
ただ一瞬感じて終わるものではなく、身体の中に残り続ける。
しかもそれは静かな池ではなく、wild stream、荒々しい流れのようなものだ。
心の中を、水のように走る。
自分で止められない。
流れに飲まれてしまう。
このイメージは、タイトルの Bloodstream とつながっている。
水の流れ。
血の流れ。
心の流れ。
それらが重なり合い、不安が身体の内部に入り込んでいることを示している。
もうひとつ、曲全体のイメージを象徴する短いフレーズがある。
Swimming through my bloodstream
和訳:
私の血流の中を泳いでいる
ここで「それ」は、単なる気分ではなくなる。
憂鬱や不安が、身体の内部を泳ぐ存在になる。
見えないけれど、確かにいる。
消したつもりでも、血の中を流れている。
いつか自分を捕まえに来る。
この感覚は、非常に強い。
心の問題を、精神だけのものとしてではなく、身体の中の現象として描いているからだ。
さらに印象的なのは、幸福を表す比喩である。
Happiness is like a firefly
和訳:
幸福は蛍のようなもの
蛍は美しい。
しかし、つかまえにくい。
光っている時間は短く、手を伸ばすと逃げてしまう。
Bloodstream における幸福は、確かなものではない。
手の中に収まるものではなく、夏の夜にちらちら見える小さな光だ。
だからこそ、切ない。
見えている。
でも、つかめない。
引用元:Dork, Bloodstream Lyrics — Soccer Mommy
収録作:color theory
作詞作曲:Sophie Allison関連クレジットに基づく
歌詞著作権:各権利者に帰属
4. 歌詞の考察
Bloodstream の歌詞で最も印象的なのは、時間の流れが身体のイメージとして描かれていることだ。
曲は、子どもの頃の記憶から始まる。
赤い頬。
血。
膝の傷。
走って転ぶこと。
そうしたイメージは、幼さと身体性に結びついている。
子どもの頃の傷は、直接的だ。
転べば血が出る。
痛い。
泣く。
でも、その痛みは外にある。
しかし、曲が進むにつれて、傷は内側へ移っていく。
鏡の中に映る青白い少女。
13歳頃から続く半分だけの静けさ。
長袖で隠された傷。
頭の中で話しかけてくる声。
自分は誰かのようにはなれないという思い。
ここで描かれるのは、成長によって生まれる内面の傷である。
Bloodstream は、幼少期を単に美しいものとして懐かしむ曲ではない。
むしろ、幼い頃の身体的な痛みと、大人になるにつれて現れる精神的な痛みを重ねている。
その重ね方がとても巧みだ。
子どもの頃の血は、頬や膝にある。
成長後の血は、血流の中にある。
つまり、傷がより深く、より見えにくくなっている。
これは、うつや不安の感覚と非常に近い。
外からは分からない。
でも、本人の中では確かに流れている。
止めたくても止まらない。
忘れているときでさえ、身体のどこかで続いている。
Soccer Mommyの歌詞には、こうした「内側にあるもの」を具体的な物質や風景に変える力がある。
青。
血。
蛍。
紫陽花。
長袖。
鏡。
これらはすべて、心の状態を外へ出すための道具になっている。
特に「青」は重要だ。
曲の中で、自分がなぜこんなに blue なのかと問う場面がある。
ここでの blue は、色であり、感情でもある。
英語では blue は憂鬱を意味する。
color theory の最初のセクションが青であることを考えると、Bloodstream はアルバムの青い世界を開く曲と言える。
ただし、この青は単純な悲しみではない。
子どもの頃から続く感情。
自己比較。
幸福をつかめない感覚。
自分は十分ではないという声。
それらが重なった、濃い青である。
この曲の語り手は、自分の中の憂鬱を完全に理解しているわけではない。
むしろ、なぜ自分がこうなのかを問い続けている。
誰かにはあって、自分にはなかったものは何なのか。
なぜ自分はこんなに青いのか。
なぜ自分は十分ではないと思ってしまうのか。
この問いには、答えがない。
でも、答えがないまま歌うことに意味がある。
Bloodstream は、問題を解決する曲ではない。
むしろ、問題が自分の中に流れ続けていることを認める曲である。
それは苦しい。
しかし、正直でもある。
サウンド面では、この正直さが不思議な美しさで包まれている。
曲は、荒々しく叫ぶわけではない。
ギターの音はやわらかく、メロディは流れるようで、ボーカルは淡々としている。
この淡々とした声が、歌詞の痛みをよりリアルにしている。
本当に深い不安は、いつも泣き叫ぶ形で出てくるわけではない。
むしろ、普通の声で語られることがある。
何でもない日のように、恐ろしいことを言う。
その方が、かえって胸に残る。
Bloodstream のボーカルには、その感じがある。
Sophie Allisonは、劇的に歌い上げない。
しかし、声の奥に冷たい疲れがある。
それが、曲全体に陰影を与えている。
また、Bloodstream はアルバムの1曲目として非常に重要だ。
color theory は、青、黄色、灰色という色のセクションを通して、うつ、病、死や喪失へ向かっていく作品である。
その入口に置かれた Bloodstream は、まず「この痛みは一時的な気分ではなく、身体の中に流れているものなのだ」と伝える。
これはアルバム全体の宣言でもある。
これから語られるのは、外側の出来事だけではない。
内側に蓄積したもの。
子どもの頃から続くもの。
見えないけれど、確かに流れているもの。
そのすべてが、Bloodstream というタイトルに込められている。
Pitchforkのレビューでは、color theory について、より明るく大きなサウンドの裏側に、暗い感情的真実があると評されている。Pitchfork
Bloodstream はその構造を、最も明確に示す曲だ。
美しい音の中で、暗いものが流れている。
それはまるで、澄んだ水の下に血が混ざっているような感覚である。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- circle the drain by Soccer Mommy
color theory の中でも最も親しみやすいメロディを持つ曲で、うつや無気力に飲み込まれそうになる感覚を、90年代ギターポップ風の明るいサウンドで描いている。Bloodstream が血流の中に潜む不安を歌うなら、circle the drain は日常がゆっくり渦に吸い込まれていく感覚を歌っている。どちらも、軽やかな音と重い感情の対比が美しい。
- yellow is the color of her eyes by Soccer Mommy
color theory の中でも長く、深く沈むような曲である。母親の病や、愛する人を失う恐怖がテーマになっており、Bloodstream の個人的な内面の痛みが、より家族や死の不安へ広がったように聞こえる。黄色という色の不穏さ、時間の遅さ、取り返しのつかなさが印象的だ。
- Your Dog by Soccer Mommy
2018年のアルバム Clean に収録された代表曲で、関係性の中で自分が支配されることへの拒絶を鋭く歌っている。Bloodstream よりも外向きの怒りが強いが、自分の価値を取り戻そうとする感覚は共通している。ギターのざらつきと、淡々としたボーカルの奥にある強さが魅力だ。
- Motion Sickness by Phoebe Bridgers
傷つけられた相手への怒り、未練、皮肉を、透明感のあるメロディの中に閉じ込めた曲である。Bloodstream のように、痛みを大げさに叫ばず、静かな声と美しいサウンドで伝える。暗い感情を日常の言葉で描くソングライティングが好きな人に合う。
- Not by Big Thief
こちらはもっと荒々しく、感情を剥き出しにする曲だが、言葉にできない何かを反復によって浮かび上がらせる点で Bloodstream と通じる。自分の内側にあるものを説明しようとして、結局説明しきれない。そのもどかしさが、ギターの轟きとともに広がっていく。
6. 青い血流に沈む、Soccer Mommyの成長痛
Bloodstream の特筆すべき点は、成長することの痛みを、心だけでなく身体の中を流れるものとして描いているところにある。
多くの曲は、悲しみを心の問題として歌う。
でも Bloodstream では、悲しみや不安は血流の中を泳いでいる。
それは、気分ではなく、体質のようなものに近い。
ここがとても怖い。
気分なら、変わるかもしれない。
一晩寝れば少し良くなるかもしれない。
誰かと話せば軽くなるかもしれない。
けれど、血の中にあるものは簡単には消えない。
身体の奥にあり、生きている限り流れ続ける。
Bloodstream は、その感覚をとても正確に音楽にしている。
歌詞の中で、語り手は子どもの頃を思い出す。
頬に血が通い、転べば膝から血が出る。
その記憶は痛いが、どこか生き生きとしている。
しかし、現在の彼女は鏡の中の青白い少女を見る。
血の赤さは、外側の元気さではなく、内側の傷として現れる。
この変化が、成長の痛みなのだと思う。
子どもの頃、痛みは外にあった。
大人になるにつれて、痛みは内側へ入っていく。
そして、内側へ入った痛みは、名前をつけるのが難しくなる。
Bloodstream は、その名前のつかない痛みに名前を与える曲である。
それは、うつかもしれない。
不安かもしれない。
自己嫌悪かもしれない。
思春期から続く感情の傷かもしれない。
曲はそれをひとつの診断名に閉じ込めない。
代わりに、血流という比喩を与える。
この比喩が、とても強い。
血流は、止まってはいけない。
それは命の証である。
でも、その中に不安が泳いでいるとしたら、生きることそのものが苦しさを含んでしまう。
Bloodstream は、その矛盾を抱えている。
生きているから苦しい。
苦しいからこそ、自分が生きていることを意識してしまう。
この曲の美しさは、その重さを過度にドラマ化しないところにある。
Soccer Mommyの声は、淡く、少し距離がある。
ギターも、感情を押しつけるようには鳴らない。
曲全体には、どこか眠りの中にいるような質感がある。
夢なのか、現実なのか。
眠りに戻りたいのか、目を覚ましたいのか。
その境界が曖昧だ。
歌詞にも、眠りへ戻りたいという感覚がある。
それは、現実から逃れたいという願いでもある。
思春期以降、ずっと半分だけ落ち着いたような状態で生きている。
完全には壊れていない。
でも、完全に安心してもいない。
この「半分だけの静けさ」が、Bloodstream の空気を決めている。
幸福を蛍にたとえる表現も、とてもSoccer Mommyらしい。
幸福は太陽ではない。
ずっと照らしてくれるものではない。
蛍のように、小さく光って、すぐに逃げる。
手を伸ばしても、指の間をすり抜ける。
この比喩には、諦めと憧れが同時にある。
幸福を信じていないわけではない。
ちゃんと見えている。
でも、つかめない。
自分のものにできない。
この「見えているのにつかめない」という感覚は、うつや不安を抱える人にとって、とてもリアルだ。
周りの人が自然に楽しんでいるように見える。
自分もそれを欲しいと思う。
でも、同じようには感じられない。
なぜ自分にはそれがないのかと考えてしまう。
Bloodstream では、その問いが非常に痛い形で現れる。
誰かにはあって、自分にはなかったものは何なのか。
なぜ自分はこんなに青いのか。
なぜ、自分は十分ではないと思ってしまうのか。
この問いは、曲の中で解決されない。
しかし、解決されないからこそ、曲は誠実である。
現実の不安や自己嫌悪も、きれいに終わるものではない。
ある日突然、完全に消えるわけではない。
むしろ、良い日と悪い日を繰り返しながら、身体の中を流れ続ける。
Bloodstream は、その継続性を描いている。
だから、曲のラストに向かっても、完全な救いはない。
ただ、感情がそこにあることが分かる。
それを隠さずに歌ったことが、ひとつの救いになっている。
color theory というアルバムの入口として、Bloodstream は完璧だ。
このアルバムは、明るい色彩で暗い感情を描く作品である。
青、黄色、灰色。
それぞれの色は美しいが、同時に不穏でもある。
Bloodstream の青は、その最初の色だ。
冷たく、深く、身体の中を流れている。
この青があるから、その後の曲で描かれる黄色の病や灰色の喪失が、ひとつの大きな流れとしてつながっていく。
Pitchforkのトラック解説では、color theory の3つの色の構成と、Bloodstream が幼少期の無垢さから若い成人期の不安へ向かう曲であることが語られている。
つまりこの曲は、単独のオープニング曲であると同時に、アルバム全体の感情の源流でもある。
源流という言葉は、Bloodstream によく合う。
血流。
水流。
記憶の流れ。
不安の流れ。
曲の中では、すべてが流れている。
そして、その流れは止まらない。
Soccer Mommyの音楽の魅力は、こうした重い感情を、聴き手が触れられる形にしてくれるところにある。
ただ暗いだけではなく、メロディがある。
ただ美しいだけではなく、痛みがある。
Bloodstream は、そのバランスが特に見事な曲である。
聴いていると、胸の奥が冷える。
でも、同時にその冷たさが少しだけ分かち合われたような気持ちになる。
自分の中に流れているものを、誰かが同じように感じていた。
それだけで、ほんの少し呼吸がしやすくなる。
この曲は、幸福を簡単にはつかませてくれない。
不安も消してくれない。
血流の中を泳ぐものは、まだそこにいる。
けれど、それを言葉にし、音にし、曲として外へ出す。
その行為自体が、Bloodstream の光なのだと思う。
青い曲である。
でも、真っ暗ではない。
血の赤と、憂鬱の青が混ざり合う場所で、Sophie Allisonは自分の痛みを静かに見つめている。
そのまなざしは冷たく、やさしく、そしてとても鋭い。
Bloodstream は、成長とともに身体の奥へ入り込んだ痛みを、青いインディーロックとして鳴らした一曲である。
子どもの頃には外にあった傷が、いつの間にか内側を流れるようになった。
そのことに気づいてしまった人のための、静かで深いオープニング・トラックなのだ。

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