発売日: 1979年6月11日
ジャンル: パワーポップ、ニューウェーブ、ロック
パワーポップの決定打——鮮烈なデビュー作が生んだ“マイ・シャローナ”
1979年にリリースされた The Knack のデビューアルバム Get the Knack は、パワーポップの代表的作品として歴史に残るアルバム であり、世界的ヒット曲「My Sharona」 を生み出したことで知られている。
プロデューサーには The Beatles のエンジニアだった Mike Chapman を迎え、ビートルズ直系のポップセンス と、The Who のようなエネルギッシュなロックンロールの要素を融合させたスタイル で、一気に音楽シーンを席巻した。
リリース当初は、「新たなビートルズの再来」とまで騒がれたが、同時にバンドのマーケティング戦略が批判を浴び、後のキャリアに影響を与えることとなる。しかし、本作の持つフレッシュなエネルギー、キャッチーなメロディ、ストレートなロックンロールは、今もなお多くのファンに愛され続けている。
全曲レビュー
1. Let Me Out
アルバムの幕開けを飾る、勢いのあるロックンロールチューン。疾走感のあるギターリフとドラムが、バンドのエネルギッシュな魅力を強調する。
2. Your Number or Your Name
ポップでキャッチーなメロディが特徴の楽曲で、ビートルズの影響を感じさせるコード進行 が印象的。
3. Oh Tara
甘酸っぱい歌詞と爽やかなメロディが際立つ、パワーポップらしい楽曲。青春の恋愛を描いた歌詞が印象的。
4. (She’s So) Selfish
リズムセクションが特徴的な、ダークな雰囲気を持つトラック。攻撃的な歌詞とセクシーなボーカルが際立つ。
5. Maybe Tonight
ミドルテンポのバラード で、The Knack のロマンチックな一面を感じさせる楽曲。
6. Good Girls Don’t
「My Sharona」に次ぐ人気曲で、挑発的な歌詞とキャッチーなメロディが絶妙にマッチ している。ラジオ向けに一部の歌詞が修正されるほどの過激さも話題に。
7. My Sharona
アルバムのハイライトにして、The Knack の最大のヒット曲。アイコニックなギターリフ、疾走感のあるリズム、Doug Fieger の情熱的なボーカル が見事に融合した名曲。ロック史に残る名イントロとしても知られる。
8. Heartbeat
Buddy Holly のカバー曲で、バンドのルーツへのリスペクトが感じられるアレンジが施されている。
9. Siamese Twins (The Monkey and Me)
ユーモラスな歌詞と遊び心のあるメロディが特徴の実験的な楽曲。
10. Lucinda
ハードエッジなギターとキャッチーなメロディが融合した、エネルギッシュなロックナンバー。
11. That’s What the Little Girls Do
シンプルながらもキャッチーなメロディが印象的で、ライブ映えする楽曲。
12. Frustrated
アルバムの締めくくりにふさわしい、疾走感あふれるロックンロール。最後まで The Knack の勢いが続く。
総評
Get the Knack は、パワーポップの決定的なアルバム であり、The Knack の勢いと若さが詰まった作品である。「My Sharona」のインパクトはもちろんのこと、アルバム全体を通してビートルズ、The Who、The Kinks などの影響を感じさせる楽曲群 が並び、当時のニューウェーブやパンクの流れとも絶妙にリンクしている。
ただし、バンドの急激な成功とマーケティング戦略が反感を買い、「アンチ・ナック運動」が生まれたことも事実である。とはいえ、音楽的には洗練されたポップセンスとロックのダイナミズムを兼ね備えた、時代を超えて楽しめる名盤 であることは間違いない。
おすすめのリスナー:
- The Beatles や The Who のファンで、よりポップなサウンドを求める人
- パワーポップの名盤を探している人
- 「My Sharona」以外の The Knack の楽曲を知りたい人
おすすめアルバム
1. Cheap Trick – Cheap Trick at Budokan (1979)
The Knack と同時期に活躍したパワーポップバンドで、エネルギッシュなライブアルバムとしても名高い。
2. Blondie – Parallel Lines (1978)
ニューウェーブとポップロックの融合が成功した名盤で、The Knack のサウンドと共通点が多い。
3. Big Star – #1 Record (1972)
パワーポップの先駆け的存在で、美しいメロディとロックの躍動感が共存する。
4. The Cars – The Cars (1978)
ニューウェーブとロックを融合させたサウンドで、The Knack の音楽と相性が良い。
5. The Romantics – The Romantics (1980)
The Knack のフォロワー的存在で、「What I Like About You」が代表曲。
Get the Knack は、1979年というロックの転換期に登場した、パワーポップの象徴的なアルバム であり、今なお新鮮な魅力を放つ作品だ。「My Sharona」だけでなく、アルバム全体を聴くことで、The Knack の持つ純粋なロックンロールの楽しさを存分に味わうことができる。
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