HAIM(ハイム)|現代ポップ・ロックを牽引する姉妹バンドの魅力とは?

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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イントロダクション:ロサンゼルスの陽射しと姉妹のグルーヴ

HAIMは、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス、サンフェルナンド・ヴァレー出身の三姉妹によるポップ・ロック・バンドである。メンバーは、長女Este Haim、次女Danielle Haim、三女Alana Haim。Esteはベースとボーカル、Danielleはリードボーカルとギター、Alanaはギター、キーボード、ボーカルを担当する。日本のユニバーサル ミュージック公式ページでも、HAIMはカリフォルニアのヴァレー地方出身の三人姉妹によるポップ・ロック・バンドとして紹介されている。(universal-music.co.jp)

HAIMの魅力は、懐かしさと新しさが同時に鳴っているところにある。Fleetwood Mac的な70年代西海岸ロック、80年代のシンセポップ、90年代R&B、2000年代以降のインディーポップ、そして現代的なプロダクション。それらを自然に混ぜ合わせながら、彼女たちは“姉妹でしか出せない呼吸”をバンドサウンドの中心に置いている。

彼女たちの音楽は、いかにもロサンゼルスらしい。乾いたドラム、車で流したくなるベースライン、眩しいコーラス、少し褪せた夕暮れのギター。しかし、その明るい外側の奥には、恋愛のすれ違い、家族の記憶、喪失、怒り、自己肯定、女性であることへの違和感や誇りがある。HAIMの曲は、太陽の下で鳴っているのに、心のどこかに影を残す。

2013年のデビューアルバムDays Are GoneはUKアルバムチャートで1位を獲得し、2017年のSomething to Tell Youは2位、2020年のWomen in Music Pt. IIIもUKで1位を記録した。Official Chartsは、Women in Music Pt. IIIが彼女たちにとって2作目のUKナンバーワン・アルバムであり、デビュー作Days Are Goneも1位、Something to Tell Youは2位だったと報じている。(officialcharts.com)

2025年には4作目のアルバムI Quitを発表し、失恋、自己解放、人生の整理をテーマに、さらにラフで大胆なサウンドへ踏み込んだ。HAIM公式サイトでも、I Quitが新作アルバムとして掲載されている。(haimofficial.com) HAIMは、ただの“姉妹バンド”ではない。現代ポップ・ロックにおいて、バンドらしさ、女性性、ユーモア、スタジオの実験、ライブの身体性を同時に更新する存在である。

アーティストの背景と歴史:家族バンドから世界的ポップ・ロックへ

HAIMの物語は、家族の音楽から始まる。三姉妹は、両親とともにRockinhaimという家族バンドでクラシックロックのカバーを演奏していた。父Moti Haimはドラム、母Donna Haimはギターを担当し、姉妹たちは幼い頃からステージと楽器に親しんだ。この“家庭内バンド”の経験は、HAIMの音楽に深く根づいている。彼女たちは、ただ音楽学校で技術を学んだのではなく、家族の会話の延長として演奏を身につけた。

その後、EsteとDanielleは一時的に別のプロジェクトにも関わり、DanielleはJulian CasablancasやJenny Lewisのツアーバンドでも演奏した。こうした経験によって、Danielleはギタリスト、ボーカリスト、スタジオミュージシャンとしての実力を高めていく。一方、Alanaは最年少ながら、バンドの明るい空気と多楽器的な柔軟性を支える存在になった。

2012年、EPForeverを発表。表題曲「Forever」は、軽やかなギター、跳ねるリズム、姉妹のコーラスが印象的で、インディー界隈から一気に注目された。その後、Polydorと契約し、Jay-ZのRoc Nationともマネジメント契約を結ぶ。日本語版の紹介でも、2012年のEPForeverが話題となり、Polydor Recordsとの契約につながったことが整理されている。(ja.wikipedia.org)

2013年のデビューアルバムDays Are Goneで、HAIMは一気に国際的な存在となる。デビュー作ながら完成度は非常に高く、ギターポップ、R&B、シンセポップ、ソフトロックをなめらかに統合していた。彼女たちは“ロックバンド”でありながら、伝統的なロックの男性中心的なイメージから距離を置き、しなやかでリズム感のある新しいバンド像を提示した。

2017年のSomething to Tell Youでは、より大きなプロダクションと70〜80年代ポップの輝きを取り込み、2020年のWomen in Music Pt. IIIでは、感情の深みと実験性を大きく広げた。そして2025年のI Quitでは、失恋後の混乱、怒り、解放をテーマに、より生々しい“別れのアルバム”を作り上げた。Pitchforkは同作を、個人的な進化と手放すことをテーマにした作品とし、SpringsteenやGeorge Michael的な古典的アメリカン/ポップの影響とRostam Batmanglijの現代的プロダクションが混ざるアルバムとして評している。(pitchfork.com)

音楽スタイルと影響:西海岸ロック、R&B、現代ポップの接点

HAIMの音楽は、ポップ・ロックを基盤にしながら、フォークロック、ソフトロック、R&B、ファンク、シンセポップ、インディーポップ、ヒップホップ的なリズム感を取り込む。彼女たちのサウンドを一言で表すなら、“リズムが強いロック”である。

多くのロックバンドではギターリフが主役になるが、HAIMではベースとドラム、そして声のリズムが非常に重要だ。Esteのベースは、曲にファンク的なうねりを与える。Danielleのギターは、派手に弾き倒すよりも、必要なところで乾いたカッティングやリフを刻む。Alanaはギター、キーボード、パーカッション、コーラスを柔軟に使い、曲にカラフルな質感を加える。

影響源としてよく語られるのはFleetwood Macである。姉妹のハーモニー、恋愛や関係性の痛みをポップに変える感覚、70年代ロックの軽やかなグルーヴは、たしかにFleetwood Macを思わせる。しかしHAIMは、単なる懐古バンドではない。90年代R&Bのリズム、AaliyahやTLC以降のボーカルの間合い、Prince的なファンク、Sheryl Crow的なアメリカン・ポップ、さらにはVampire Weekend周辺のプロダクション感覚までを吸収している。

特に2020年以降のHAIMは、スタジオでの実験性を強めている。Women in Music Pt. IIIでは、Saxophone、ドラムマシン、ラフなギター、会話のようなボーカル、日常音のような質感が入り混じる。I Quitでは、George Michael「Freedom! ’90」のサンプルや、ガレージブルース、R&B、70年代ソフトロックまでを横断する大胆な音作りが見られる。The GuardianはI Quitについて、ガレージブルース、R&B、ニューメタル、70年代ソフトロックまでが混ざる、感情的にも音楽的にも混沌とした失恋アルバムとして評している。(theguardian.com)

HAIMは、“ロックバンドらしさ”を守りながら、その中身を現代化している。ギターを持っていても、リズムはR&B的。コーラスは70年代的でも、音像は現代的。姉妹の呼吸はアナログで、プロダクションは鋭い。この混合こそ、HAIMの魅力である。

代表曲の楽曲解説

「Forever」

「Forever」は、HAIMの出発点を象徴する楽曲である。2012年のEPForeverで注目を集め、彼女たちの名をインディーポップ/ロックの世界に広めた。

この曲の魅力は、軽快さにある。ギターは乾いていて、リズムは跳ね、ボーカルは明るい。しかし、歌われているのは関係のすれ違いと終わりの感覚だ。HAIMは初期から、明るい音の中に複雑な感情を入れるのがうまかった。

「Forever」では、三姉妹のコーラスの自然さも際立つ。完璧に磨かれたコーラスというより、家族だからこそ出せる近さがある。声が重なった瞬間、曲は単なるインディーポップから、HAIMだけの音になる。

「Don’t Save Me」

「Don’t Save Meは、初期HAIMのポップセンスを強く示す楽曲である。タイトルは「私を救わないで」。恋愛における依存と自立、助けてほしい気持ちと自分で立ちたい気持ちが交差している。

リズムは軽快で、メロディも非常にキャッチーだが、歌詞には少し突き放すような強さがある。HAIMの女性像は、守られるだけの存在ではない。恋愛に揺れながらも、自分の選択を手放さない。

この曲には、初期の彼女たちの“強がりのポップ”がよく表れている。傷ついているけれど、踊れる。迷っているけれど、声は前を向いている。

「Falling」

「Falling」は、HAIMの初期代表曲のひとつで、彼女たちのリズム感と広がりのあるメロディが美しく結びついた楽曲である。曲はゆっくりと立ち上がり、サビで大きく開ける。

タイトルの“Falling”は、落ちること、恋に落ちること、制御を失うことを思わせる。だが、曲そのものは崩れ落ちるのではなく、むしろ浮き上がるように進む。そこにHAIMらしい逆説がある。

彼女たちは、弱さをそのまま弱い音にしない。落ちている感覚を、前へ進むリズムへ変える。だからHAIMの失恋ソングには、不思議な体力がある。

「The Wire」

「The Wireは、HAIMのデビュー期を代表する最大級の名曲である。ギターのイントロ、弾むリズム、姉妹の掛け合い、そして恋愛の終わりをどこか軽やかに歌う構成。すべてが見事に噛み合っている。

この曲は、別れの歌でありながら、妙に晴れやかだ。相手を傷つけてしまったこと、うまくいかなかったことを歌いながら、曲調は前向きで、サビは高揚感に満ちている。Rolling Stone的なクラシックロックの気持ちよさと、現代ポップの明快さが融合している。

「The Wire」は、HAIMが“ロックバンド”でありながら、古いロックの重さやマッチョさを引き継がないことを示した。軽く、強く、リズムがあり、感情に正直なポップ・ロックである。

「If I Could Change Your Mind」

「If I Could Change Your Mind」は、HAIMのR&B的な側面がよく表れた楽曲である。リズムの刻み方、ボーカルの揺れ、シンセの質感が、80年代ポップと90年代R&Bのあいだにある。

タイトルは「あなたの気持ちを変えられたなら」。未練の歌だが、曲は過度に重くならない。HAIMの音楽では、切なさがいつもリズムに乗っている。だから聴き手は、悲しみに沈むのではなく、悲しみを身体で処理するような感覚になる。

「Want You Back」

「Want You Back」は、2017年のSomething to Tell Youを代表する楽曲である。タイトル通り、去ってしまった相手を取り戻したいという内容だが、音は明るく、ポップで、非常に開放的だ。

この曲では、HAIMのコーラスワークが一段と洗練されている。サビは大きく、ドラムは乾いていて、ギターとシンセが80年代的な輝きを作る。後悔を歌いながら、曲は夏のドライブのように進む。

HAIMの良さは、未練をじめじめさせないことだ。「Want You Back」は、失った恋への後悔を、強いポップソングへ変換した名曲である。

「Little of Your Love」

「Little of Your Loveは、HAIMの明るくクラシックなポップ感覚が前面に出た楽曲である。手拍子が似合い、メロディも親しみやすい。モータウンや70年代ポップのような人懐っこさがある。

歌詞は、少しだけ愛を分けてほしいというシンプルな願いだ。だが、HAIMが歌うと、その願いは甘さだけでなく、少しの切実さを帯びる。愛が大きな約束ではなく、日々の小さな確認として描かれている。

「Summer Girl」

「Summer Girl」は、2020年のWomen in Music Pt. IIIに収録された重要曲である。Lou Reedの「Walk on the Wild Sideを思わせるベースラインと、サックスの淡い響きが印象的だ。

この曲は、明るい夏の歌でありながら、背景には重い感情がある。Danielle Haimがパートナーの病気に寄り添う中で生まれた曲としても知られ、誰かの支えになろうとする優しさが込められている。

「Summer Girl」は、HAIMの新しい成熟を示した曲だ。初期のギターポップ的な勢いから離れ、より余白と空気を重視したサウンドになっている。夏の光の中に、不安と祈りが漂う。

「Now I’m in It」

「Now I’m in It」は、鬱や精神的な落ち込みをテーマにした楽曲である。サウンドはアップテンポで、シンセとリズムは明るい。しかし、歌われている内容は、心が深く沈んでしまう感覚だ。

この曲のすごさは、メンタルヘルスの苦しさを、暗いバラードではなく、疾走するポップソングとして描いた点にある。日常は動き続ける。周囲から見れば普通に見える。でも内側では落ち込んでいる。その感覚を、HAIMは見事に音にしている。

「The Steps」

「The Steps」は、Women in Music Pt. IIIの代表曲であり、HAIMのロックバンドとしての力が強く出た楽曲である。ギターは荒く、ドラムは前に出て、ボーカルには苛立ちがある。

歌詞では、相手が自分を理解してくれないことへのフラストレーションが歌われる。サビで繰り返される感覚は、女性が関係性の中で感じる“聞いてもらえなさ”にもつながる。これは、HAIMの中でも特に鋭い曲である。

「The Steps」は、彼女たちがただ洗練されたポップを作るだけでなく、荒い感情をバンドサウンドで鳴らせることを示した名曲だ。

「Gasoline」

「Gasoline」は、Women in Music Pt. IIIの中でも官能的で、ゆったりとしたグルーヴが魅力の楽曲である。のちにTaylor Swiftを迎えたバージョンも発表され、HAIMとSwiftの親密な音楽的関係を象徴する曲にもなった。

この曲では、ギターもリズムも控えめだが、全体にじわじわと熱がある。タイトルの“Gasoline”は、関係を燃やす燃料のようにも、危険な欲望のようにも聞こえる。HAIMの曲の中でも、かなり大人びた質感を持つ。

「Relationships」

「Relationships」は、2025年のI Quit期を象徴する楽曲である。The Guardianは同曲を、ジャンルを横断するポップの成功例として取り上げている。(theguardian.com)

タイトルはそのまま“関係性”。恋愛、家族、友人、業界、自分自身との関係まで含めて、HAIMがキャリアを重ねた今だからこそ向き合えるテーマである。曲には、別れの痛みだけでなく、そこから解放される感覚もある。

I Quitというアルバムタイトルの通り、ここでのHAIMは“やめる”ことを敗北ではなく、自分を取り戻す行為として描いている。「Relationships」は、その新章を告げる曲である。

「Down to Be Wrong」

「Down to Be Wrong」は、I Quitからの重要曲である。Pitchforkは同作の発表時に、この曲がアルバムからのシングルとして公開され、「Relationships」や「Everybody’s Trying to Figure Me Out」に続く楽曲だったと報じている。(pitchfork.com)

タイトルは「間違ってもいいと思っている」というニュアンスを持つ。これは成熟したHAIMらしい。若い頃は正しくいたい、かっこよく見られたいという気持ちが強い。しかし人生を重ねると、間違うこと、失敗すること、それでも自分で選ぶことの重要性が見えてくる。

この曲は、別れの後の痛みを、自己肯定へ変えていくI Quitのテーマをよく表している。

アルバムごとの進化

Days Are Gone:完璧なデビュー、三姉妹の名刺

2013年のDays Are Goneは、HAIMのデビューアルバムであり、彼女たちの初期美学が最も明快に刻まれた作品である。「Forever」、「Don’t Save Me」、「Falling」、「The Wire」、「If I Could Change Your Mind」など、名曲が並ぶ。

このアルバムの完成度は非常に高い。新人バンドの初期衝動というより、すでに自分たちの音を理解しているバンドの作品に聞こえる。Fleetwood Mac的なコーラス、80年代ポップのシンセ、90年代R&Bのリズム、インディーロックの軽やかさ。それらが自然に融合している。

Days Are GoneはUKアルバムチャートで1位を獲得し、HAIMを一気に世界的なバンドへ押し上げた。Official Chartsも、同作がUKで1位を記録したことを後年のWomen in Music Pt. IIIの記事の中で振り返っている。(officialcharts.com)

この作品のHAIMは、クールで、若く、少し強がっている。失恋を歌っても、姿勢は前のめりだ。三姉妹の名刺として、これ以上ないほど鮮やかなデビュー作である。

Something to Tell You:大きなポップへ向かった第二章

2017年のSomething to Tell Youは、デビュー作の成功を受けて発表されたセカンドアルバムである。「Want You Back」、「Little of Your Love」、「Nothing’s Wrong」など、より大きく、より磨かれたポップサウンドが特徴だ。

この作品では、HAIMの70〜80年代ポップへの愛がさらに前面に出る。ドラムは大きく、シンセは光沢を帯び、コーラスはより豊かだ。一方で、初期のラフな軽さは少し後退し、プロダクションは整えられている。

Official Chartsによれば、Something to Tell YouはUKアルバムチャートで2位を記録した。(officialcharts.com)

このアルバムは、HAIMが“インディー界の注目株”から“メインストリームで戦えるポップ・ロックバンド”へ進んだことを示している。完璧すぎるほど整っている部分もあるが、メロディの強さとバンドの個性はしっかり残っている。

Women in Music Pt. III:ユーモア、痛み、実験が結晶した最高傑作

2020年のWomen in Music Pt. IIIは、HAIMの代表作として高く評価されているアルバムである。タイトルは少し冗談めいているが、内容は非常に深い。女性ミュージシャンとしての扱われ方、メンタルヘルス、病、恋愛、家族、ロサンゼルスの街、孤独が、自由なサウンドで描かれる。

「Summer Girl」、「Now I’m in It」、「The Steps」、「Gasoline」、「Don’t Wanna」など、曲ごとに質感が異なる。サックス、ドラムマシン、荒いギター、アコースティックな余白、会話的なボーカル。アルバム全体は、初期2作よりもずっとラフで、開かれている。

Official Chartsでは、同作がUKアルバムチャートで1位を獲得し、HAIMにとって2作目のUKナンバーワン・アルバムとなったことが報じられている。(officialcharts.com)

このアルバムでHAIMは、ついに“かっこよく整ったバンド”であることをやめた。弱さも、怒りも、冗談も、ラフな音も入れ込んだ。その結果、最も人間的で、最も自由な作品になった。

I Quit:別れ、解放、そして“やめる”ことの美学

2025年のI Quitは、HAIMの4作目のアルバムである。Pitchforkは、同作が2020年のWomen in Music Pt. III以来のフルアルバムで、Danielle HaimとRostam Batmanglijが制作に関わり、「Relationships」、「Everybody’s Trying to Figure Me Out」、「Down to Be Wrong」などのシングルを含むと報じている。(pitchfork.com)

タイトルのI Quitは非常に強い。「私はやめる」。恋愛をやめる、考えすぎをやめる、恥を抱えることをやめる、自分を小さく見せることをやめる。これは単なる別れの言葉ではなく、自己解放の宣言である。

Rolling Stoneは同作を、夏の失恋アルバムとして、苦労して手にした自立を描くカタルシスのあるコンセプト作と評している。(rollingstone.com) 一方でPitchforkは、サウンドはよりリラックスしながらも、曲ごとの方向性にはばらつきもあると評している。(pitchfork.com)

つまりI Quitは、きれいに整った傑作というより、感情の混乱をそのまま抱えたアルバムだ。長期的な関係の終わり、怒り、諦め、自由、笑い、未練。そのすべてが雑多に入っている。HAIMはここで、成熟とはきれいに落ち着くことではなく、混乱しながらも自分の選択を引き受けることだと示している。

姉妹バンドとしての魅力:三人だから鳴る音

HAIMを語るうえで、三姉妹であることは単なるプロフィールではない。音楽そのものの核である。姉妹だから声の質感が自然に近い。姉妹だから、ステージ上の視線や合図が一瞬で通じる。姉妹だからこそ、遠慮のないユーモアや衝突もある。

Esteのベースプレイとステージ上の表情、Danielleの少しクールで芯のあるボーカル、Alanaの明るさと多才さ。この三人のバランスがHAIMである。誰か一人が完全な主役というより、曲ごとに役割が揺れながら、全体としてひとつのバンドになる。

彼女たちのライブでは、ドラムを三人で叩くパフォーマンスや、姉妹ならではの掛け合いが大きな魅力になる。スタジオ作品では緻密なポップを作り、ライブではバンドとしての身体性を見せる。その両方があるから、HAIMは現代において貴重な“ポップでありながらバンド”な存在であり続けている。

映像とファッション:Paul Thomas Andersonとのコラボレーション

HAIMの美学を語るうえで、映像作品も重要である。特に映画監督Paul Thomas Andersonとのコラボレーションは、彼女たちのイメージを大きく形作った。Andersonは「Right Now」、「Little of Your Love」、「Summer Girl」、「Now I’m in It」など、HAIMの複数のミュージックビデオを手がけている。

彼の映像では、ロサンゼルスの街、自然光、歩く身体、少し気まずい表情、日常の延長にあるパフォーマンスが重要になる。HAIMの音楽が持つ“自然体なのに映画的”な魅力と非常に相性がよい。

Alana Haimは、Paul Thomas Anderson監督の映画Licorice Pizzaで主演を務め、俳優としても高い評価を得た。これは、HAIMが音楽だけでなく、現代ロサンゼルス文化の中で映像やファッションとも深く結びついた存在であることを示している。

2025年のI Quitでも、Paul Thomas Andersonがアルバムアートワークを撮影したことが報じられている。(pitchfork.com) HAIMにとってビジュアルは、単なる宣伝素材ではなく、音楽の空気を拡張する重要な要素である。

影響を受けたアーティストと音楽

HAIMの音楽的ルーツには、Fleetwood Mac、The Eagles、Tom PettyPrince、Sheryl Crow、Joni Mitchell、TLC、Aaliyah、Destiny’s Child、Stevie Nicks、MadonnaJanet Jackson、The Strokes、Vampire Weekendなどがある。

Fleetwood Macからは、男女関係や家族的な緊張をポップソングへ変える感覚を受け継いでいる。Princeからはリズムの鋭さとファンクの感覚を、90年代R&Bからはボーカルの間合いとグルーヴを、Sheryl CrowやJoni Mitchellからは西海岸的なシンガーソングライターの感触を受け取っている。

ただしHAIMは、影響源をそのまま並べるバンドではない。古い音楽を聴き込んだうえで、現代のポップとして再構築する。そこに彼女たちの強みがある。

影響を与えたアーティストと音楽シーン

HAIMは、2010年代以降のポップ・ロックに大きな影響を与えた。ギターを持つ女性バンドが、ロックの伝統を背負いながら、R&Bや現代ポップの文法を自然に使う。そのスタイルは、多くの若いアーティストにとって重要なモデルになった。

彼女たちは、“女性バンド”という枠に閉じ込められることを拒みながら、同時に女性であること、姉妹であること、音楽業界で扱われる視線も作品に取り込んだ。Women in Music Pt. IIIというタイトルは、そのユーモアと批評性を象徴している。

また、Taylor Swiftとの交流やツアー参加、Phoebe Bridgers、Vampire Weekend周辺のミュージシャン、Rostam Batmanglijとの制作など、HAIMは現代インディー/ポップの中心的なネットワークの中にいる。彼女たちはロックバンドでありながら、現代ポップの会話にも自然に参加している。

同時代アーティストとの比較:HAIMのユニークさ

HAIMを同時代のアーティストと比較すると、その立ち位置がよく分かる。

Taylor Swiftが物語性とソングライティングでポップの中心を更新してきたとすれば、HAIMはバンド演奏と姉妹のグルーヴによって、ポップに別の身体性を与えている。Swiftとの共通点は、恋愛や自己認識を鋭く歌う点だが、HAIMにはよりバンドの呼吸とロサンゼルスの乾いた空気がある。

Vampire Weekendと比べると、どちらも古いポップやロックを現代的なプロダクションで再構築する感覚を持つ。ただし、Vampire Weekendが知的で東海岸的な構築性を持つのに対し、HAIMはより西海岸的で、身体的で、家族的だ。

Fleetwood Macと比べられることも多いが、HAIMはFleetwood Macの再来ではない。むしろ、Fleetwood Mac以後のポップロックを、R&Bと現代スタジオ感覚を通してアップデートした存在である。

ファンと批評家の評価:クールさの奥にある人間味

HAIMは、デビュー時から批評的な注目を集めた。Days Are Goneでは洗練された新人バンドとして評価され、Women in Music Pt. IIIではより深い作家性と実験性が高く評価された。同作はグラミー賞のAlbum of the Yearにもノミネートされ、HAIMはロックバンドとしてだけでなく、現代ポップの重要アクトとして認識されるようになった。

一方で、HAIMの音楽はしばしば“クールすぎる”と見られることもある。サウンドは洗練され、ビジュアルも自然体ながら非常にスタイリッシュだ。しかし、よく聴くと、彼女たちの曲にはかなり不器用な感情が入っている。恋愛で失敗する。落ち込む。怒る。強がる。笑ってごまかす。

その人間味が、HAIMを単なるおしゃれなバンドにしていない。「The Steps」の苛立ち、「Now I’m in It」の落ち込み、「Relationships」の解放感。そこには、クールな表面の奥にある切実な生活がある。

HAIMの魅力:現代のロックバンドが生き残る方法

HAIMの最大の魅力は、現代において“ロックバンドであること”を更新している点にある。21世紀のポップシーンでは、バンドという形式は必ずしも中心ではない。プロデューサー、ソロアーティスト、ラッパー、ベッドルームポップが主流になり、ギター・バンドは過去のものとして扱われることもある。

しかしHAIMは、バンドという形式を古く見せない。三人で演奏し、声を重ね、ライブで身体を動かしながら、スタジオではサンプル、シンセ、ドラムマシン、R&B的なリズムも使う。つまり、彼女たちは“バンドかポップか”という二択を拒否している。

HAIMの音楽には、家族の親密さ、ロサンゼルスの光、恋愛の痛み、女性としての違和感、ライブバンドの体力、スタジオポップの洗練がある。その全部が同時に鳴るから、彼女たちは特別なのだ。

まとめ:HAIMは現代ポップ・ロックの理想形である

HAIMは、現代ポップ・ロックを牽引する姉妹バンドである。ロサンゼルスのサンフェルナンド・ヴァレーから登場し、Days Are Goneで鮮烈なデビューを飾り、Something to Tell Youで大きなポップサウンドへ向かい、Women in Music Pt. IIIで感情と実験性を深め、I Quitで別れと自己解放を大胆に描いた。

「Forever」、「The Wire」、「Want You Back」、「Summer Girl」、「The Steps」、「Gasoline」、「Relationships」。これらの楽曲には、HAIMの進化が刻まれている。初期の軽快なギターポップから、よりラフで、深く、自由な現代ポップ・ロックへ。彼女たちは常に変化してきた。

HAIMの音楽は、懐かしいのに新しい。ロックなのにR&B的で、ポップなのにバンドの体温がある。姉妹だからこそ鳴る声とグルーヴがあり、そこに現代的なプロダクションと鋭いソングライティングが加わる。

現代において、ロックバンドが生き続けるためには、過去の型を守るだけでは足りない。HAIMは、その答えを示している。ギターを持ち、ベースを鳴らし、姉妹で声を重ねながら、ポップの現在へ踏み込むこと。HAIMは、まさにそのしなやかな革新の象徴である。

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