発売日: 2005年10月4日
ジャンル: サイケデリックロック / インディーロック / アルトカントリー
My Morning Jacketの4作目となるZは、バンドの音楽性における大胆な進化を示したアルバムである。それまでのサザンロックやカントリーロックの影響に加え、サイケデリックロック、ダブ、レゲエ、アートロックといったジャンルを融合させたこの作品は、彼らの音楽の幅広さを証明している。
アルバム全体を通じて、サウンドプロダクションが格段に洗練されており、リバーブを多用したボーカルやギターの音響効果が幻想的な雰囲気を生み出している。ジム・ジェームスを中心としたバンドのアンサンブルは、これまで以上に緻密でダイナミックであり、My Morning Jacketの代表作のひとつとして高く評価されている。
トラック解説
1. Wordless Chorus
アルバムの幕開けを飾るアンビエントな楽曲。ジム・ジェームスの高音域のファルセットが幻想的な雰囲気を作り出し、歌詞の少ない構成がリスナーの想像力を掻き立てる。初めて聴いたときの驚きと感動は、このアルバムの方向性を物語っている。
2. It Beats 4 U
ドラムとベースのリズムが楽曲の中心を担う、心地よいグルーヴを持つトラック。サイケデリックなシンセサイザーの音色が加わり、現実と夢の境界を行き来するような印象を与える。
3. Gideon
壮大なサウンドスケープを持つ楽曲で、ジェームスの感情的なボーカルが際立つ。リバーブの効いたギターとエネルギッシュなドラムが、楽曲を劇的に盛り上げている。
4. What a Wonderful Man
アップテンポでポジティブな雰囲気を持つ一曲。軽快なリズムとキャッチーなメロディが特徴で、アルバム全体の中で明るいアクセントとなっている。
5. Off the Record
レゲエやダブの影響を受けた楽曲で、リズミカルなギターフックが耳に残る。中盤からのインストゥルメンタルパートはサイケデリックな展開を見せ、実験的な側面が光る。
6. Into the Woods
複雑なリズム構成と奇妙なメロディが特徴のトラック。タイトル通り、リスナーを未知の森の奥深くへと誘うような不思議な魅力を持つ。
7. Anytime
ギターリフが前面に出たエネルギッシュなロックナンバー。バンドの持つダイナミックな一面を存分に楽しめる楽曲で、ライブでも定番の一曲だ。
8. Lay Low
穏やかなイントロから始まり、次第に盛り上がりを見せる構成が印象的。ギターソロが楽曲のハイライトとなり、感情の高まりを感じさせる。
9. Knot Comes Loose
シンプルで繊細なバラード。ジェームスの優しいボーカルとアコースティックギターが、心に染み入るような温かさを持っている。
10. Dondante
アルバムのラストを飾る壮大なトラック。静かなイントロから徐々に緊張感が高まり、終盤ではドラマチックな展開を見せる。バンドの演奏力とジム・ジェームスの表現力が凝縮された名曲だ。
アルバムの背景: 新しい地平への挑戦
Zは、My Morning Jacketが初期のカントリーロックから、より実験的で多彩な音楽スタイルへと進化したことを示している。ジョン・リキーがプロデューサーを務め、音響的にも大きな変化を遂げた本作は、バンドの新しい方向性を決定づけた。これにより、彼らはインディーロックシーンにおいてさらに注目を集める存在となった。
アルバム総評
Zは、My Morning Jacketのキャリアにおける重要なターニングポイントであり、バンドの音楽的成熟を象徴する作品だ。カントリーやサザンロックの影響を超え、サイケデリックやアートロックの要素を取り入れたことで、彼らの音楽の幅広さが明確になった。多彩なジャンルを横断しながらも、統一感のあるサウンドがアルバム全体を貫いており、リスナーを魅了する。彼らの新しい一面を体験したい人には、間違いなくおすすめの一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Yoshimi Battles the Pink Robots by The Flaming Lips
サイケデリックで幻想的なサウンドが共通するインディーロックの名盤。
Sea Change by Beck
感情的で深みのあるサウンドがZと共鳴する作品。
Funeral by Arcade Fire
ドラマチックな構成と多様な音楽要素が融合したアルバムで、Zのファンにも響く一枚。
Kid A by Radiohead
実験的なアプローチとアンビエントな雰囲気が、My Morning Jacketのサイケデリックな一面と似ている。
Sky Blue Sky by Wilco
カントリーロックと実験的なサウンドが共存するアルバムで、バンドの進化が楽しめる。
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