アルバムレビュー:Yep, Definitely by Wednesday

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2020年8月14日

ジャンル:インディーロック、オルタナティヴ・カントリー、シューゲイザー、ノイズロック、インディーフォーク、スロウコア

概要

Wednesdayの『Yep, Definitely』は、ノースカロライナ州アッシュヴィルを拠点とするバンドが、後に『Twin Plagues』(2021年)や『Rat Saw God』(2023年)で大きく注目される以前の段階で、その独自の音楽的混交を明確に示した重要作である。WednesdayはKarly Hartzmanを中心とするバンドであり、インディーロック、シューゲイザー、ノイズロック、オルタナティヴ・カントリー、スロウコア、エモ的な感情表現を、アメリカ南部の郊外的な風景や日常の断片と結びつけることで、2020年代のインディー・ロックにおいて特異な位置を築いていく。

『Yep, Definitely』というタイトルは、非常に日常会話的で、どこか投げやりな響きを持つ。「うん、間違いなく」といった軽い返答のようでありながら、その確信が本当に確信なのか、むしろ曖昧さを隠すための言葉なのかは分からない。この軽さと不安の同居は、Wednesdayの音楽に通じる。彼らの歌詞は、劇的な物語を大上段に語るのではなく、生活の中にある些細な光景、奇妙な記憶、疲労、若者の閉塞感、家庭や土地に残る空気を切り取る。その断片が、歪んだギターと柔らかなメロディの中で、不意に強い感情へ変わる。

本作は、Wednesdayのディスコグラフィーの中では初期の作品であり、後の代表作と比べると録音や構成には粗さもある。しかし、その粗さこそが重要である。『Twin Plagues』ではノイズとカントリーの融合がさらに明確になり、『Rat Saw God』ではアメリカ南部の具体的な情景、ドラッグ、家族、労働、事故、愛、疲弊がより鮮烈に描かれるが、その前段階として『Yep, Definitely』には、バンドがどのようにして「轟音の中で日常を歌う」スタイルへ向かったのかが刻まれている。

音楽的には、シューゲイザーの厚いギター・ノイズと、オルタナティヴ・カントリー的なメロディ感覚が共存している。これは単なるジャンルの組み合わせではない。Wednesdayにおいて、歪んだギターは感情の爆発であり、カントリー的な旋律は土地や記憶の匂いを運ぶ。Karly Hartzmanの歌声は、強く押し出すというより、ざらついたバンド・サウンドの中に半ば埋もれながら、しかし確かな輪郭を持って浮かび上がる。その声の距離感が、Wednesdayの音楽に独特の親密さと荒さを与えている。

影響関係としては、My Bloody ValentineやDinosaur Jr.に通じるギターの轟音、Drive-By TruckersやLucinda Williamsに通じる南部的な語り、PavementやBuilt to Spillのようなインディーロックの緩さ、さらにBig ThiefやWaxahatchee、MJ Lenderman周辺に通じる現代オルタナ・カントリーの感覚が挙げられる。とはいえ、Wednesdayの音楽は懐古的なルーツ・ロックではない。彼らはカントリーの伝統を清潔に再現するのではなく、ノイズによって汚し、破れたスピーカーのような音像の中で鳴らす。そこに、2020年代の若いインディー・ロックらしい感覚がある。

『Yep, Definitely』は、完成された大作というより、バンドの美学が固まり始めた初期衝動のアルバムである。楽曲はしばしば短く、録音はラフで、ノイズとメロディのバランスもまだ不安定である。しかし、その不安定さの中に、Wednesdayの魅力である「生活の雑音と感情の轟音が同じ場所で鳴る」感覚がすでに存在している。

全曲レビュー

1. Fate Is…

オープニング曲「Fate Is…」は、アルバムの入口として、Wednesdayの持つ曖昧な不安と轟音の美学を示す楽曲である。タイトルは「運命とは……」と途中で言葉が途切れており、何かを定義しようとしながら、それを最後まで言い切れない感覚がある。この未完の言い回しは、アルバム全体の姿勢とも重なる。Wednesdayは大きな結論を提示するのではなく、生活の断片や感情の途中経過をそのまま音楽にする。

サウンドは、荒いギターと浮遊するヴォーカルが中心である。メロディにはインディーフォーク的な親しみやすさがあるが、ギターの歪みがそれをぼやかし、単純なポップ・ソングにはしない。Karly Hartzmanの声は、感情を劇的に叫ぶのではなく、ノイズの中に沈みながら言葉を置く。その距離感が、曲に独特の儚さを与えている。

歌詞では、運命や偶然、人生の方向が自分の意志だけでは決まらないという感覚が示唆される。Wednesdayの世界では、日常は小さな偶然の積み重ねでできている。大きなドラマではなく、何気ない瞬間が後から重い意味を持つ。この曲は、そのような感覚を短く提示する。

2. Billboards

「Billboards」は、アメリカの道路沿いに立つ看板を連想させるタイトルを持つ楽曲である。ビルボードは広告であり、通過する車から一瞬だけ見える風景である。Wednesdayの音楽において、こうした郊外的・道路的なイメージは重要である。看板、駐車場、家、道路、壊れた物、地方の風景。それらは単なる背景ではなく、感情を保存する場所として機能する。

音楽的には、ギターのざらつきとメロディの柔らかさが共存している。曲は過度に整えられておらず、むしろ演奏の揺れや録音の粗さがそのまま残されている。これにより、楽曲はスタジオで磨き上げられたポップではなく、実際の生活空間から出てきた音のように響く。

歌詞では、通り過ぎる景色、消費社会的な記号、そしてその中で感じる空虚さが浮かび上がる。ビルボードは何かを売ろうとするが、その明るい表面の下には、地方都市の退屈や疲労が漂う。Wednesdayはその感覚を、直接的な社会批評ではなく、風景の描写として提示する。

3. November

「November」は、季節の名前を冠した楽曲であり、秋の終わりから冬へ向かう時間の感覚を持つ。11月は、明るい季節が終わり、寒さや暗さが近づく時期である。Wednesdayの音楽において、季節はしばしば感情の温度を示す装置として働く。この曲でも、11月という言葉は、何かが終わりかけている感覚を呼び起こす。

サウンドは、メランコリックなメロディと歪んだギターが重なる。曲には静かな寂しさがあるが、完全に沈み込むわけではない。ノイズが感情を押し広げ、個人的な憂鬱をバンド全体の音へ変換している。Wednesdayの特徴は、こうした小さな悲しみを大きな音に変えるところにある。

歌詞では、季節の変化とともに、人間関係や自分自身の状態が変わっていく感覚が描かれているように響く。11月は、まだ冬ではないが、すでに夏には戻れない時期である。その中間的な時間が、若さや関係性の不安定さと重なる。

4. Maura

「Maura」は、人名をタイトルにした楽曲であり、Wednesdayの歌詞における人物の記憶や断片的な物語性を示す曲である。人名を曲名にすることで、聴き手は特定の誰かを想像する。しかし、その人物についてすべてが説明されるわけではない。Wednesdayの歌詞では、人は完全な物語としてではなく、印象や記憶の断片として現れることが多い。

音楽的には、比較的親密な質感を持ちながら、ギターの歪みが曲に曇りを与えている。メロディは柔らかく、カントリー的な素朴さも感じられるが、演奏は清潔ではなく、ざらついたインディーロックとして鳴っている。この二面性がWednesdayらしい。

歌詞では、Mauraという人物への記憶や、その人物をめぐる感情がにじむ。相手は近い存在だったのかもしれないし、遠くから見ていた存在かもしれない。重要なのは、曲がその人物を説明し尽くさないことである。名前だけが残り、その周囲に感情の残響が漂う。

5. Ghost of a Dog

「Ghost of a Dog」は、非常にWednesdayらしいタイトルを持つ楽曲である。犬の幽霊というイメージは、家庭的で身近でありながら、死や記憶の不気味さを含んでいる。Wednesdayの世界では、動物、家、道路、古い物といった日常の要素が、突然奇妙な幽霊性を帯びる。このタイトルは、その感覚をよく表している。

音楽的には、ノイズとメロディが不安定に重なり、どこかぼやけた夢のような雰囲気がある。ギターは厚く歪み、ヴォーカルはその中に埋もれる。まるで古い記憶が、はっきりしない音像として戻ってくるように聞こえる。

歌詞では、失われたものが完全には消えず、生活の中に幽霊のように残り続ける感覚が描かれている。犬という存在は、家族や日常、忠実さの象徴でもある。だからこそ、その幽霊は個人的な喪失の象徴として響く。大きな悲劇ではなく、身近なものの不在が、じわじわと感情に影を落とす。

6. Adult Teeth

「Adult Teeth」は、「大人の歯」という奇妙で身体的なタイトルを持つ楽曲である。乳歯が抜け、大人の歯が生えることは、成長の象徴である。しかし、それは痛みや違和感を伴う身体的な変化でもある。Wednesdayはこのような日常的で少し不気味な身体のイメージを通じて、成長や不安を描く。

音楽的には、荒いギターとやや不安定なメロディが特徴である。曲は大きく整った構成というより、感情の断片をそのまま鳴らしているように響く。ローファイな質感が、成長の生々しさや未完成さと結びついている。

歌詞では、大人になることへの違和感、身体が変化すること、自分がかつての自分ではなくなる感覚が示唆される。大人の歯は一度生えると戻らない。つまり、成長は不可逆である。Wednesdayの音楽における若さは、明るい可能性ではなく、取り返しのつかない変化として描かれることが多い。この曲も、その感覚を持っている。

7. Talking to Myself

「Talking to Myself」は、自分自身に話しかけることを主題にした楽曲である。孤独、自己対話、不安の反復を端的に示すタイトルであり、Wednesdayの内向的な側面がよく表れている。誰かに言えないことを、自分の中で何度も繰り返す。その状態は、若者の孤独や閉塞感と強く結びついている。

音楽的には、比較的静かな部分と歪んだ部分が交錯し、内面の揺れを表している。ヴォーカルは近く、しかしギターのノイズがそれを包み込み、言葉が完全には外へ届かないように響く。この「届ききらなさ」が、曲のテーマと合っている。

歌詞では、自己対話が必ずしも解決をもたらさないことが示される。自分に話しかけても、答えが返ってくるわけではない。むしろ、同じ不安を繰り返し確認することになる。Wednesdayはその状態を、過剰に dramatize せず、日常の延長として描く。そこにリアリティがある。

8. How Can You Live If You Can’t Love How Can You If You Do

「How Can You Live If You Can’t Love How Can You If You Do」は、長く、矛盾を含んだタイトルを持つ楽曲である。「愛せないならどうやって生きるのか、でも愛するならどうやって生きるのか」というように読めるこの言葉は、Wednesdayの感情世界を象徴している。愛がなければ生きられない。しかし愛することは痛みを伴う。どちらを選んでも苦しさがある。

音楽的には、アルバムの中でも感情的な重みが強い楽曲である。メロディには哀愁があり、ギターの歪みは感情の圧力を増幅する。曲は単純なバラードではなく、愛に関する問いがノイズの中で揺れるように展開する。

歌詞では、愛することの必要性と危険性が描かれる。Wednesdayの歌詞は、恋愛を美しい解決として扱わない。むしろ、愛は人を生かすものでありながら、同時に壊すものでもある。このタイトル自体が、その矛盾をほとんどそのまま表している。答えは提示されない。問いだけが残る。

9. Handsome Man

「Handsome Man」は、魅力的な男性像をめぐる楽曲として読むことができる。タイトルは一見シンプルで、少し冗談のようにも響く。しかしWednesdayの文脈では、こうした簡単な言葉の裏に、欲望、観察、距離、皮肉が含まれることが多い。

音楽的には、比較的緩やかなインディーロックの感触があり、バンドのラフな演奏が前面に出る。メロディは親しみやすいが、音は少し汚れている。美しい対象を歌いながら、音像は決して清潔ではない。このズレが曲の魅力である。

歌詞では、誰かを魅力的だと感じる視線と、その視線に含まれる不安や距離が描かれているように響く。魅力は人を引き寄せるが、同時に相手を記号化することもある。Wednesdayはその感覚を、日常的な言葉とざらついた音で表現する。

10. Revenge of the Lawn

「Revenge of the Lawn」は、Richard Brautiganの作品名を思わせるタイトルであり、郊外的な芝生のイメージと奇妙な復讐劇を結びつけている。芝生はアメリカの郊外生活、家庭、管理された自然の象徴である。その芝生が復讐するという発想には、日常の中に潜む不気味さがある。

音楽的には、Wednesdayの持つノイズとユーモアの感覚がよく出ている。ギターは荒く、曲には少し壊れたような勢いがある。タイトルの奇妙さと音のラフさが結びつき、日常風景が突然異様なものへ変わる。

歌詞では、郊外的な景色や家庭的な空間が、単なる安心の場所ではなく、抑圧や退屈、奇妙な暴力性を含む場所として描かれているように感じられる。Wednesdayは、地方や郊外を牧歌的に美化しない。そこには退屈、疲労、滑稽さ、そして時に不穏なエネルギーがある。この曲は、その感覚を象徴している。

総評

『Yep, Definitely』は、Wednesdayの初期衝動と美学の原型を記録したアルバムである。後年の『Twin Plagues』や『Rat Saw God』に比べると、楽曲の完成度や録音の迫力はまだ発展途上にある。しかし、本作にはWednesdayがどのようなバンドであるかを示す重要な要素がすでに揃っている。ノイズとカントリー、シューゲイザーと南部的な語り、日常の細部と感情の爆発。その組み合わせが、荒削りながら明確に表れている。

本作の魅力は、感情を美しく整えすぎない点にある。Wednesdayの音楽では、生活は散らかっており、記憶は断片的で、愛は矛盾していて、成長は気持ち悪く、郊外の風景は少し不気味である。だが、その不完全さがリアルである。Karly Hartzmanの歌詞は、詩的な大言壮語ではなく、身近な物や場所、奇妙なタイトル、身体的な違和感を通して感情を描く。これにより、楽曲は抽象的な悲しみではなく、実際の生活の中から出てきたものとして響く。

音楽的には、シューゲイザー的な轟音が重要である。Wednesdayのギター・ノイズは、単なる装飾ではない。それは、言葉にならない感情や、生活の中で蓄積されたノイズそのものを表している。一方で、メロディにはカントリーやフォークの素朴さがあり、完全に抽象的なノイズにはならない。このバランスが、Wednesdayの独自性である。

『Yep, Definitely』は、2020年代のインディー・ロックにおいて、オルタナティヴ・カントリーとシューゲイザーが再び接近する流れの初期的な記録としても聴ける。Waxahatcheeの『Saint Cloud』以降のオルタナ・カントリー再評価、MJ Lenderman周辺のゆるく乾いたギター・ロック、Big Thief以降の生活感あるソングライティング、そして90年代オルタナ/シューゲイザーの轟音美学。Wednesdayはそれらを、アメリカ南部の若者の視点からラフに接続している。

日本のリスナーにとって、本作はWednesdayの代表作から遡って聴くと、より粗く、より小規模に感じられるかもしれない。しかし、その粗さには初期作ならではの魅力がある。完成されたバンド像ではなく、バンドが自分たちの音を探しながら、すでに独自の風景を作り始めている瞬間がここにはある。

評価として、『Yep, Definitely』はWednesdayの後の飛躍を予告する重要な初期作である。強烈な代表作というより、原石としての価値が高いアルバムであり、Karly Hartzmanの観察眼、ノイズとメロディの混交、郊外的な不穏さ、愛と成長への違和感がすでに刻まれている。『Rat Saw God』の完成度へ至る道を理解するうえで、本作は欠かせない一枚である。

おすすめアルバム

1. Wednesday – Twin Plagues(2021)

『Yep, Definitely』で示されたノイズ、シューゲイザー、オルタナ・カントリーの要素をより明確に発展させた作品。轟音ギターとKarly Hartzmanの断片的な語りが強まり、Wednesdayのスタイルが大きく固まった重要作である。

2. Wednesday – Rat Saw God(2023)

Wednesdayの代表作として広く評価されたアルバム。アメリカ南部の風景、ドラッグ、家族、事故、生活の疲労、愛の断片が、ノイズロックとカントリー的メロディの中で鮮烈に描かれる。『Yep, Definitely』の原型がどのように完成されたかを理解できる。

3. MJ Lenderman – Boat Songs(2022)

WednesdayのメンバーでもあるMJ Lendermanによる作品。ゆるいギター・ロック、オルタナ・カントリー、乾いたユーモア、日常の情けなさを歌う感覚が、Wednesdayと深く通じる。より肩の力が抜けた視点から同じ音楽的環境を聴ける一枚である。

4. Waxahatchee – Saint Cloud(2020)

インディーロックからオルタナティヴ・カントリーへ大きく接近した作品。Wednesdayほどノイジーではないが、南部的な風景、自己回復、カントリーの現代的な再解釈という点で関連性が高い。2020年代のオルタナ・カントリー文脈を理解するうえで重要である。

5. Duster – Stratosphere(1998)

スロウコア、ローファイ、霞んだギター、生活の中の孤独を描く感覚において、Wednesdayの静かな側面と通じる作品。『Yep, Definitely』の曖昧な音像や、沈んだメロディに惹かれるリスナーに適している。

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