- 発売日: 2014年3月25日
- ジャンル: ガレージロック、インディーロック、ポストパンク
Howlerの2枚目でラストとなったスタジオアルバムWorld of Joyは、デビューアルバムAmerica Give Upに続く作品で、バンドの音楽性がさらに熟成され、より深みのあるサウンドが展開されている。ジョーダン・ゲイツミスのリードで、Howlerはガレージロックのラフなエネルギーと、ポストパンクの鋭さや反骨精神を合わせ持つ音楽スタイルを築き上げた。このアルバムは、60年代のガレージロックや80年代のポストパンクに影響を受けながらも、彼ら独自のユーモアと皮肉が散りばめられており、バンドが抱えるアメリカ社会への不満や自己反省の視点が色濃く反映されている。
サウンドはシンプルでキャッチーだが、前作よりも内省的でダークな側面が際立つ。短いトラックが続くため、コンパクトにまとめられた構成だが、エネルギーと勢いが詰まっており、The StoogesやThe Replacementsなどの影響が垣間見えるアルバムだ。
トラック解説
1. Al’s Corral
アルバムの幕開けを飾るスピーディーなトラックで、鋭いギターリフと疾走感のあるビートが印象的。荒々しさと勢いが詰まった一曲で、バンドの持つエネルギーがそのまま表現されている。
2. Drip
ガレージロックにポストパンクの冷ややかさを加えたトラックで、タイトル通り、気だるい雰囲気が漂う。ジョーダン・ゲイツミスのボーカルが不安定な感情を伝え、印象的なビートがリスナーを引き込む。
3. Don’t Wanna
シングルとしてリリースされたこの曲は、キャッチーなメロディと若々しい反骨精神が詰まった一曲。シンプルな構成ながらも中毒性があり、アルバムの中でも特にキャッチーなナンバーである。
4. Yacht Boys
皮肉の効いた歌詞とポップなメロディが融合したトラックで、ジョーダンの風刺的な視点が表れている。軽快なテンポと爽快なギターリフが印象的で、Howlerのユニークな世界観が楽しめる。
5. In the Red
重厚なギターサウンドが特徴的な一曲で、ややダークでシリアスなムードが漂う。アルバム全体の中でも異色の存在で、Howlerの多様な音楽性が感じられる。
6. World of Joy
アルバムのタイトル曲で、皮肉を込めて「喜びの世界」を描く。明るいメロディに反する歌詞が興味深く、現実の不条理や矛盾に対する冷ややかな視点が込められている。
7. Louise
アルバムの中でも特にポップな印象を持つ曲で、恋愛と喪失をテーマにしている。軽快でノスタルジックなメロディが耳に残り、感傷的なボーカルが印象的だ。
8. Here’s the Itch That Creeps Through My Skull
奇妙で独特なタイトルが印象的なトラックで、内面の葛藤や不安が歌われている。ギターリフとドラムが緊張感を生み出し、不安定な雰囲気が全体に漂う。
9. Indictment
パンクの影響が強く感じられるスピード感あふれるトラックで、怒りと皮肉に満ちた歌詞が特徴。短くも強烈なインパクトを残す一曲で、バンドの反抗的なエネルギーが表現されている。
10. Aphorismic Wasteland Blues
アルバムのラストを飾る哀愁漂うトラックで、シンプルでメロディアスな構成が特徴的。ギターとボーカルが静かに響き、エモーショナルでリリカルなフィナーレを迎える。
アルバム総評
World of Joyは、Howlerが持つ若さとエネルギーが詰まったアルバムであり、バンドのアイデンティティがしっかりと表現された作品である。60年代のガレージロックや80年代のポストパンクの影響を受けつつ、ジョーダン・ゲイツミスの風刺的な視点や皮肉が独特の味わいを加えている。America Give Upよりも内省的でダークなトーンが目立ち、短いトラックが続くことで、コンパクトながらも濃密な体験が味わえる。
シンプルでラフなサウンドがHowlerの魅力を引き出し、現代社会に対する不満や個人的な葛藤が歌詞に反映されている。このアルバムはバンドのラスト作でありながら、彼らの音楽的成熟と可能性が感じられる仕上がりとなっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Up the Bracket by The Libertines
英国ガレージロックの代表作で、Howlerの反骨精神やユーモアに共鳴するアルバム。荒々しくもキャッチーなサウンドが楽しめる。 - Is This It by The Strokes
ガレージロックリバイバルの金字塔で、シンプルでキャッチーなメロディと若さに満ちたエネルギーが詰まっている。 - Primary Colours by The Horrors
ポストパンクとサイケデリックな要素が融合した名盤で、Howlerのダークで深みのあるサウンドに共感できる。 - The Modern Lovers by The Modern Lovers
70年代のガレージロックの名盤で、皮肉な歌詞とシンプルなサウンドがHowlerに通じる。 - Crooked Rain, Crooked Rain by Pavement
インディーロックの名盤で、気だるさとポップセンスが同居する作品。Howlerのラフでキャッチーな音楽性が好きなリスナーにおすすめ。
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