アルバムレビュー：With Light and with Love by Woods

アルバムレビュー

2025.04.21

発売日: 2014年4月15日
ジャンル: サイケデリック・フォーク、インディーロック、ローファイ、カントリーロック

概要
全曲レビュー
総評
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概要

『With Light and with Love』は、ブルックリンのサイケデリック・フォーク・バンド、Woodsが2014年にリリースした通算8作目のスタジオ・アルバムであり、彼らのキャリアにおいて決定的な飛躍を遂げた作品とされている。
このアルバムは、ローファイ志向だった初期の音作りから一歩踏み出し、より洗練された録音、より大胆な楽器編成、そして何よりメロディとグルーヴの豊かさを前面に押し出したことで、Woodsの音楽性の幅を大きく拡張した。

タイトルが示すように、本作には“光”と“愛”というスピリチュアルなモチーフが通底しており、自然への憧れ、癒し、変化といったテーマが全体を貫いている。
だがそれは単なる牧歌性ではなく、どこか“夢と現実の境界”に立ち続けるような、微かな不安と美しさが同居する音像でもある。

フォーク、サイケ、カントリー、ジャム・ロック、R&Bまでを取り込みながら、雑味を感じさせずひとつの世界にまとめ上げる構成力は、Woodsが単なるインディーフォークの枠を超えて独自の境地に達したことを証明している。

全曲レビュー

1. Shepherd

柔らかなアコースティックギターとファルセットで始まる短いイントロ曲。
自然と一体化したような響きが、アルバム全体の“心象風景”を予感させる。

2. Shining

スライドギターと軽快なパーカッションが心地よい、晴れやかなサイケ・ポップ。
“輝き”というテーマが、曇りのないメロディに込められている。

3. With Light and with Love

10分を超える大作。
グレイトフル・デッドを彷彿とさせるジャム・セクションと、緻密な曲構成が見事に融合しており、バンドの演奏力とスピリチュアルな探求心が最大限に発揮されたハイライト曲。

4. Moving to the Left

軽快なテンポとファルセットが特徴的なナンバー。
“左へ移動する”という謎めいたフレーズに、逃避や変化のメタファーが滲む。

5. New Light

クラヴィネット風の鍵盤が印象的なグルーヴィーな楽曲。
R&Bの影響を感じさせつつ、フォークの温もりを保つバランス感が見事。

6. Leaves Like Glass

メランコリックなメロディと穏やかなコード進行が胸を打つバラード。
“ガラスのような葉”という比喩が、壊れやすさと美しさを共に抱える人間関係を暗示している。

7. Twin Steps

ファズの効いたギターが炸裂するガレージ色の強い楽曲。
それまでの穏やかさとは一線を画し、アルバムにダイナミズムを与えている。

8. Full Moon

月と夢想をテーマにした、夜の静けさを感じさせる一曲。
オルガンの残響が深い空間を生み、夜の森に迷い込んだような感覚を覚える。

9. Only the Lonely

50〜60年代のポップスに対するオマージュ的な、切ないラブソング。
シンプルな構成の中に、深い感情が込められている。

10. Feather Man

アルバムのラストを飾る、優しくも儚いナンバー。
“羽根の男”という象徴的キャラクターが、Woodsの詩世界の核心を語っているようにも思える。

総評

『With Light and with Love』は、Woodsの持つ“ローファイ・フォークの美学”を土台にしながら、そこに明確なポップ性と演奏の自由さを加えたことで、バンドとしての次元上昇を遂げた重要作である。

本作がユニークなのは、その音楽が“牧歌的”であるにもかかわらず、“現実逃避”ではないという点だ。
むしろ、世界の曖昧さや不安の中にこそ希望と美しさを見出そうとする態度が、一貫して貫かれている。
“光”と“愛”という、ある意味で使い古された言葉が、これほど真摯に響くのは、Woodsの音楽が聴き手の深い部分に語りかけてくるからだろう。

アメリカーナやジャム・バンド的なルーツに根差しながらも、それらを気負いなく更新していく姿勢は、現代インディー・フォークの理想的なあり方とも言える。
Woodsというバンドの魅力をもっともわかりやすく、かつ深く体感できるアルバムのひとつとして、本作は今後も長く語り継がれるに違いない。