アルバムレビュー：Where the Action Is by The Waterboys

アルバムレビュー

2025.05.10

発売日: 2019年5月24日
ジャンル: ロックンロール、ブルース・ロック、アート・ポップ、ゴスペル・ロック

『Where the Action Is』は、The Waterboysが2019年に発表した通算13作目のスタジオ・アルバムであり、
バンドの根底にある“自由で熱いロックンロール魂”を真正面から鳴らし直した、祝祭的で快活な作品である。
本作のタイトルは1960年代の同名音楽番組やポール・リヴィア＆ザ・レイダーズの楽曲を意識したものであり、
マイク・スコットはこのアルバムで、“どこにアクション（命、光、音楽の歓び）があるのか？”を問い続ける。

近作『Out of All This Blue』で見せたエレクトロニックなサウンドの探求から一転、
本作はよりシンプルでパワフル、かつ生々しいバンド・サウンドが前面に出ており、
ロック、ゴスペル、ブルース、ポップ、スポークン・ワードが横断的に展開されるエネルギッシュなアルバムとなっている。

全曲レビュー
総評
おすすめアルバム
特筆すべき事項
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全曲レビュー

1. Where the Action Is
オープニングにふさわしい爆発力あるロックンロール・ナンバー。
ロドニー・クロウェルの曲をベースにしながら、スコットの詩的な変奏が加えられている。
“アクションのある場所”＝生命が躍動する場所を探し求める力強い宣言。

2. London Mick
ザ・クラッシュのギタリスト、ミック・ジョーンズに捧げられた感動的トリビュート・ソング。
ロンドンの記憶、友情、パンク精神への愛情がにじむスウィートなロック。

3. Out of All This Blue
前作からのタイトルを引用したスロー・ナンバー。
混沌や苦しみ（blue）の中から見出された愛と意味を、
穏やかで霊的なバラードとして描く。

4. Right Side of Heartbreak (Wrong Side of Love)
ファンキーなベースとリズムが効いたブルース・ロック。
“恋に敗れても心は正しい場所にある”という逆説的テーマが印象的。

5. In My Time on Earth
政治・環境・人間性への問いかけを含むスピリチュアル・ポエム。
スコットのスポークン・ワードが響く、社会的メッセージ性の強い楽曲。

6. Ladbroke Grove Symphony
ロンドンの街角と記憶を詩的にスケッチしたシンフォニック・ポップ。
“ラドブローク・グローヴ交響曲”という題名通り、都市と心象風景の交差点が鳴る。

7. Take Me There I Will Follow You
ゴスペル風のコーラスが絡むパワフルなラブ・ロック。
“どこへでもあなたについていく”という誓いの歌で、
信仰と愛の結びつきが強く表れている。

8. And There’s Love
穏やかなアコースティック・サウンドと、肯定的なメッセージが印象的な小品。
愛は“そこにある”という静かな真理を歌い上げる。

9. Then She Made the Lasses-O
スコットランド伝統詩に基づくアップテンポなフォーク・ロック。
アイルランド的祝祭感とルーツ音楽の喜びが凝縮されている。

10. Piper at the Gates of Dawn
アルバムのクライマックスにふさわしい、幻想的で神秘的なスロー・トラック。
ケネス・グレーアム『たのしい川べ』の章から着想を得たこの曲は、
“世界の扉が開かれる一瞬”を音で描いた美しい詩曲。

総評

『Where the Action Is』は、The Waterboysというバンドの**“多様性と信念”を凝縮した、現代のロックンロール宣言**である。
それは、マイク・スコットが若き日から問い続けてきた
「魂はどこにあるのか？」「真の詩はどこで鳴るのか？」という問題に、
“今ここで鳴らすこと”という答えを返すようなアルバムなのだ。

生演奏の熱、詩の濃度、街の匂い、友情、政治、愛、神秘──
それらすべてが鳴り響き、どの瞬間も「これがアクションのある場所なのだ」と叫んでいる。

特筆すべき事項

本作は、マイク・スコットが「60代に突入してもなお最前線にいる」ことを自ら証明したアルバムとして評価され、
　バンドのファン層のみならず、若い世代のロックファンにも支持を広げた。
特に「London Mick」や「In My Time on Earth」は、ライブでも定番曲となり、
　現在のThe Waterboysの“生きているリアリティ”を象徴する楽曲として愛されている。
リリースにあたり、スコットは「これは怒りのアルバムではない。喜びと再生、そして参加への招待状だ」と語っており、
　それはまさに“Where the Action Is”という言葉そのものを生きる姿勢に通じている。