アルバムレビュー:Watusi by The Wedding Present

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1994年9月12日
ジャンル: インディー・ポップ、オルタナティブ・ロック、ネオサイケ、60sリヴァイバル


『Watusi』は、The Wedding Presentが1994年にリリースした4作目のスタジオ・アルバムであり、
これまでのノイジーで感情剥き出しのギターロックから一転、レトロ・ポップとサイケデリックな軽やかさに舵を切った意欲作である。
バンドが初期3作で確立した失恋と怒りの轟音美学をいったん脱ぎ捨て、
60年代の米英ポップやガレージ・ロック、ソフト・サイケ、モッド・ポップへの明確な傾倒を見せながら、
その上にDavid Gedgeならではの苦味あるリリックと恋愛観のねじれを重ね合わせていく。

プロデュースはSteve Fisk(Nirvana、Lowなどを手がけた米国のオルタナ名匠)によるもので、
シアトル録音によるざらついた音像と、60s感覚のポップアレンジが絶妙に融合した“異国のWedding Present”がここにある。


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全曲レビュー

1. So Long, Baby
キラキラしたオルガンと跳ねるようなリズムが特徴のオープニング。
“もうおしまいだね”と軽く言いながらも、
その軽さに含まれた未練と空虚がじわじわとにじむ

2. Click Click
テンポよく進むポップなリズムに乗って、会話の歯車が噛み合わない瞬間を描写。
タイトルの“クリック”は、関係性の弾ける音にも聞こえる。

3. Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah
The BeatlesThe Ramonesを足したような一種のパスティーシュ・ナンバー
明るいがどこか空虚なリフレインが、逆に“何も言えない気まずさ”を際立たせる。

4. Let Him Have It
1960年代のイギリスに実在した事件(デレク・ベントリー事件)をモチーフにした、
社会的テーマを内包した異色のバラッド
Gedgeの語り口は感傷に流されず、冷静に悲劇を見つめている。

5. Gazebo
サーフ・ポップとソフト・サイケを掛け合わせたようなミッドテンポ・ナンバー。
“東屋(gazebo)での再会”というロマンティックな場面に、淡く苦い後悔の気配が差し込む。

6. Shake It
ドライブ感のあるガレージ・ロック調トラック。
歌詞には“踊ること”と“振り払うこと”の二重性があり、恋の終わりと再起のリズムがリンクしている。

7. Spangle
本作の隠れた名曲。
シンプルなギターと控えめなアレンジのなかで、
“装飾(spangle)”のようにきらめいた過去の記憶がほのかに浮かび上がる。

8. It’s a Gas
アメリカン・スラングをタイトルに用いたポップ・チューン。
軽妙な語り口に反して、恋愛の虚しさや演技めいた日常が皮肉交じりに描かれる。

9. Swimming Pools, Movie Stars
ハリウッド的イメージを逆手に取ったアイロニカルなラウンジ・ロック。
夢と現実の乖離、そして都市的孤独がテーマになっている。

10. Big Rat
ファズギターとカラフルなベースラインが印象的な一曲。
“でかいネズミ”という比喩で、裏切りや嫉妬、関係の裏側に潜む動物的な感情を語る。

11. Catwoman
コミック的な女性像を通して、“強くて近寄れない”相手への困惑と憧れを描いた一曲。
サウンドはグラム・ロックとモッド・ポップの中間のようなユニークさ。

12. Hot Pants
アルバムのラストは、一見軽薄なタイトルとは裏腹に、
切なさと空虚が滲むビターなクロージング・ナンバー
ファルセット気味のヴォーカルと、フェードアウト気味のアレンジが“幕が下りる感覚”を演出する。


総評

『Watusi』は、The Wedding Presentが自らのスタイルを“破壊”ではなく“脱皮”によって更新した転換点である。
Gedgeのリリックのテーマは依然として恋愛と喪失にあるが、
本作では怒りでも悲嘆でもなく、レトロ・ポップの形式とカラフルなアレンジによって、その痛みを包み込んでいる

これまでの作品が剥き出しの感情を叩きつける“日記”だったとすれば、
『Watusi』は“架空の恋愛映画のサウンドトラック”のような余裕と遊び心
がある。

その意味で本作は、The Wedding Presentというバンドが“何でもない瞬間”に込める表現力を、もっとも柔らかく美しく示した作品ともいえる。


おすすめアルバム

  • Teenage Fanclub / Grand Prix
     甘酸っぱいギター・ポップとメロディの調和。
  • The Zombies / Odessey and Oracle
     60sポップとサイケデリアの先駆的融合作。
  • Pulp / His ‘n’ Hers
     恋愛のアイロニーと都会的な視点が共鳴。
  • Yo La Tengo / Fakebook
     カバーとオリジナルを交えた、脱力系ローファイ・ポップの傑作。
  • The Auteurs / New Wave
     英国ポップと毒のバランスが心地よい作品。

特筆すべき事項

  • アートワークも含め、1960年代のアメリカン・ポップカルチャーへのオマージュが随所に見られる本作は、
     UKインディーの文脈にありながら“英米ポップのブリッジ”としての機能も果たしている。
  • 1990年代中盤のUKではブリットポップの波が押し寄せていたが、
     The Wedding Presentはこの作品でその流れとは一線を画す“オルタナ的ポップ”の路線を貫いた
  • 本作は当時賛否両論を呼んだが、現在ではバンドの“柔らかい側面”を代表する愛されアルバムとして再評価が進んでいる。

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