発売日: 1988年3月14日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、インディーロック
Viva Hateは、ザ・スミス解散後、モリッシーが初めてリリースしたソロアルバムであり、彼のソロキャリアのスタートを飾る重要な作品だ。ジョニー・マーとのコンビを解消し、ギタリストのヴィニ・ライリー（デュルッティ・コラム）を起用したことで、サウンドはザ・スミスとは一線を画している。メランコリックで皮肉たっぷりの歌詞はモリッシーらしいが、全体的により抑制された感情表現と、インディーロックの枠を超えた豊かなサウンドスケープが特徴的だ。スミス時代のトレードマークであったギターポップとは異なり、より複雑で陰鬱なトーンが作品全体に漂う。
各曲ごとの解説:
- Alsatian Cousin
アルバムの冒頭を飾るこの曲は、不穏なエレクトリックギターのリフと攻撃的なビートが特徴的。モリッシーは、過去のトラウマや人間関係の破綻をテーマに、シニカルな視点から歌い上げる。緊張感が漂うサウンドが、アルバム全体のダークなトーンを予感させる。 - Little Man, What Now?
短くシンプルな構成のこの曲は、モリッシーらしい皮肉とユーモアが詰まっている。控えめなギターメロディと、社会的に失敗した男の物語を描いた歌詞が絶妙にマッチしており、彼の物語性の強い歌詞作りが光る一曲だ。 - Everyday Is Like Sunday
アルバムの代表曲であり、最もキャッチーなメロディを持つ曲。核戦争後の荒廃したリゾート地を描く歌詞は、モリッシー独特の退廃的な美学が漂い、力強いバラード調のメロディとともに印象深い。「灰色の空」と「空虚な日曜日」というイメージが、リスナーに強烈なビジュアルを喚起する。 - Bengali in Platforms
移民をテーマに、異文化との対立や疎外感を描いた曲で、モリッシーの挑発的な一面が現れている。メロディはポップで明るいが、歌詞は非常に皮肉的であり、リスナーに不快感を与える要素も含んでいる。 - Angel, Angel, Down We Go Together
弦楽器を中心に、儚げでメランコリックな雰囲気が漂う短いバラード。モリッシーのソフトなボーカルが切なさを際立たせ、曲全体に哀愁が漂う。内向的な感情を丁寧に描き出している。 - Late Night, Maudlin Street
7分を超える大作で、モリッシーの物語性が最も強く表れた曲。退屈な日常や過去の記憶が交錯し、抑制されたサウンドが彼の内省的な歌詞を引き立てている。繊細なギターワークとドラマチックな構成が、アルバムの中でも際立つ存在だ。 - Suedehead
アルバムの中でも特にポップな曲で、シングルとしても成功を収めた。「元恋人との再会」というテーマを歌詞に込め、メロディアスなギターとキャッチーなリフが心地よく響く。モリッシーらしい、ノスタルジックで皮肉たっぷりのラブソング。 - Break Up the Family
個人的な孤独や家族との関係について歌った曲で、どこか青春の終わりを感じさせる内容。淡々としたリズムと控えめなアレンジが、歌詞のセンチメンタルな側面を引き立てている。 - The Ordinary Boys
無名の若者たちの平凡な生活を風刺的に描いた楽曲。軽快なギターリフとシンプルなビートが中心となり、モリッシーの歌詞の鋭さが際立つ。 - I Don’t Mind If You Forget Me
スピーディーで軽快な曲調ながらも、拒絶や孤独をテーマにした歌詞が皮肉めいている。ギターポップの要素を取り入れつつも、ザ・スミスとは一線を画すソロアーティストとしての新たな一面が感じられる。 - Dial-a-Cliché
短くシンプルな楽曲で、自己批判やアイデンティティの模索をテーマにしている。モリッシー特有の皮肉が漂う歌詞が、シンプルなメロディに乗せて繊細に表現されている。 - Margaret on the Guillotine
アルバムの締めくくりを飾る曲は、サッチャー政権への怒りを露骨に表現した反体制的な楽曲。アコースティックギターをベースに、モリッシーの政治的メッセージが際立つ。終末的な雰囲気が漂う、強烈なフィナーレだ。
アルバム総評:
Viva Hateは、ザ・スミス解散後のモリッシーのソロアーティストとしての新たなスタートを象徴するアルバムだ。ジョニー・マーとの決別にもかかわらず、モリッシーはその歌詞の力強さと独自の視点で、個性をしっかりと確立している。ダークでメランコリックなトーンが全体を包み込みつつも、ポップな要素が随所に光る。特に「Everyday Is Like Sunday」や「Suedehead」のような楽曲は、ソロアーティストとしての成功を確実にした名曲だ。モリッシーのシニカルな視点と詩的な表現は、アルバム全体を通して一貫しており、彼の独自の魅力が存分に発揮されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- The Queen Is Dead by The Smiths
ザ・スミスの代表作で、モリッシーのシニカルで詩的な歌詞とジョニー・マーの独特なギターワークが光る作品。Viva Hateに共通するテーマと感情が多く、ファンには必聴。 - Hatful of Hollow by The Smiths
シングルやラジオセッションを集めたザ・スミスのコンピレーションアルバム。モリッシーの初期のシニカルな視点と、後の作品に通じる感情的な深みが感じられる。 - The Eternal by Joy Division
モリッシーのメランコリックな側面と、ジョイ・ディヴィジョンの暗くて重厚なサウンドには通じるものがある。特に感情表現の深さや陰鬱なトーンを好むリスナーにおすすめ。 - The Good Son by Nick Cave & The Bad Seeds
ダークで感情的な歌詞とシンプルなメロディが特徴のニック・ケイヴの名作。モリッシーの孤独感や内省的な視点に共感するリスナーに特におすすめできる。 - Your Arsenal by Morrissey
モリッシーのソロキャリアにおけるもう一つの傑作で、グラムロックやロックンロールの要
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