アルバムレビュー:There Is No Year by Algiers

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2020年1月17日

ジャンル:ポスト・パンク、ゴスペル、インダストリアル、ソウル、ノイズ・ロック、エクスペリメンタル・ロック

概要

Algiersの3作目となるスタジオ・アルバム『There Is No Year』は、21世紀の政治的不安、歴史の反復、暴力、信仰、抵抗、絶望を、ゴスペル、ポスト・パンク、インダストリアル、ソウル、ノイズを横断しながら描いた重厚な作品である。Algiersは、Franklin James Fisherの圧倒的なヴォーカル、Ryan Mahanのベースと電子音、Lee Tescheのギター、Matt Tongのドラムを軸に、ブラック・ミュージックの霊性とパンク以後の攻撃性を結びつけてきたバンドである。

2015年のデビュー作『Algiers』では、ゴスペルの叫びとポスト・パンクの冷たい反復が衝突し、2017年の『The Underside of Power』では、より明確に反ファシズム、反権力、歴史的暴力への怒りが前面に出た。『There Is No Year』は、その延長線上にありながら、より終末的で、より抽象的で、より内側から崩れていくような作品である。前作が抗議のエネルギーを外へ放っていたとすれば、本作は抗議の声が歴史の廃墟の中で反響し、時間の感覚そのものが壊れていくように響く。

タイトルの『There Is No Year』は、「年など存在しない」と訳せる。これは単なる詩的な表現ではなく、アルバム全体を貫く強い思想を示している。歴史は直線的に進歩しているわけではない。過去の暴力、植民地主義、人種差別、国家権力、警察暴力、資本主義の搾取、宗教的な救済への渇望は、終わったはずの時代から何度も戻ってくる。2020年であっても、1960年代、1930年代、奴隷制の時代、冷戦期、そして未来のディストピアが同時に存在している。つまり、本作における時間は、カレンダーの上で進むものではなく、暴力と抵抗の反復として循環している。

音楽的には、Algiersの過去作よりもさらに密度が高く、暗い。ゴスペルのコール、ソウルフルなヴォーカル、ポスト・パンクの硬いベース、インダストリアルの金属的なノイズ、シンセの不穏な響き、軍隊的なドラム、断片的なギターが重なり合う。楽曲は明快なロック・ソングとして開かれることもあるが、多くの場合、音は不安定で、空間は圧迫され、聴き手は安全な場所に置かれない。これは快適な音楽ではない。世界の不快さを、そのまま音に変えようとする作品である。

Franklin James Fisherのヴォーカルは、本作の中心にある。彼の声は、ソウル・シンガーの力強さ、ゴスペルの祈り、パンクの怒り、説教師の切迫感を同時に持つ。彼はメロディを美しく歌うだけではなく、叫び、告発し、祈り、崩れ落ちる。Algiersの音楽において、声は個人的な感情表現であると同時に、歴史の中で抑圧されてきた声の集合でもある。『There Is No Year』では、その声がさらに切実に響く。

歌詞面では、明確な政治スローガンよりも、悪夢的なイメージ、断片的な告発、宗教的な語彙、身体的な恐怖、革命への幻滅が交錯する。Algiersは政治的なバンドだが、単純なメッセージ・ソングの形を取らない。むしろ、政治が個人の身体、記憶、夢、信仰、恐怖にどのように入り込むのかを描く。ここでの政治は新聞の見出しではなく、眠れない夜、街を覆うサイレン、身体に刻まれた恐怖、声にならない怒りとして存在する。

『There Is No Year』は、2020年という時代に発表されたことも重要である。アルバム自体はその年の大きな社会的出来事を予言するために作られたわけではないが、その終末感、権力への不信、歴史の暗い反復への意識は、発表後の世界の空気とも強く共鳴した。Algiersはここで、単なる現在の記録ではなく、現在という時間がすでに過去の暴力と未来の崩壊を含んでいることを音楽化している。

全曲レビュー

1. There Is No Year

タイトル曲「There Is No Year」は、アルバム全体の世界観を提示するオープニングである。冒頭から不穏な電子音と重いリズムが立ち上がり、聴き手を安定した時間感覚から引きはがす。ここでは、通常のロック・アルバムのように爽快な始まりは用意されていない。むしろ、すでに何かが崩壊した後の世界に放り込まれる。

サウンドは、ポスト・パンク的な反復とインダストリアルな硬さを持つ。ベースは暗くうねり、ドラムは機械的に進み、シンセとギターは不安を増幅する。Franklin James Fisherの声は、叫びと祈りの中間にあり、時間の終わりを告げる預言者のようにも聞こえる。

歌詞では、年という単位が意味を失う感覚が描かれる。歴史は進んでいるようで、実際には同じ暴力を繰り返している。新しい年が来ても、新しい世界が来るとは限らない。この曲は、アルバム全体の核心である「進歩の幻想」を最初から拒否している。

2. Dispossession

「Dispossession」は、「剥奪」「所有を奪われること」を意味するタイトルを持つ楽曲である。植民地主義、土地の略奪、階級的搾取、人種的抑圧、身体の支配など、さまざまな暴力を連想させる言葉である。Algiersの政治性が非常に明確に表れた曲といえる。

サウンドは、重く、圧迫感があり、リズムは行進のような緊張を持つ。電子音と生演奏が混ざり合い、曲全体が都市の暴動、監視社会、工場の騒音のように響く。ここでの音は、美しく整えられたものではなく、何かを奪われる痛みと怒りを表すために歪んでいる。

歌詞では、自分のものだったはずの土地、身体、声、歴史が奪われる感覚が描かれる。Algiersにとって、剥奪は単なる経済問題ではない。それは人間の尊厳、記憶、未来を奪う行為である。「Dispossession」は、本作の中でも最も直接的に抑圧と支配を扱った楽曲である。

3. Hour of the Furnaces

「Hour of the Furnaces」は、火炉や溶鉱炉の時間を意味するタイトルを持つ楽曲である。同名の政治映画を連想させる題でもあり、革命、植民地主義、暴力、歴史の燃焼といったイメージが重なる。炉は、金属を溶かし、形を変える場所である。つまりこの曲では、社会が燃え、別の形へ変わる可能性と恐怖が同時にある。

サウンドは、鋭いビートとノイズが前面に出る。曲は非常に緊張感が高く、音の熱量が強い。ギターやシンセは炎のように揺れ、リズムは逃げ場のない圧力を作る。Fisherの声は、炎の中から叫ぶように響く。

歌詞では、歴史の燃焼、暴力的な転換、革命の期待と失望が感じられる。炉の中で何かが作り替えられるとしても、それは必ずしも救済を意味しない。変化には破壊が伴い、その破壊はしばしば弱い者の身体を通過する。この曲は、革命的な熱とその危険性を同時に描いている。

4. Losing Is Ours

「Losing Is Ours」は、「敗北は我々のもの」という非常に印象的なタイトルを持つ楽曲である。勝利ではなく敗北を所有するという発想には、Algiersらしい逆説がある。抑圧される側に残されたものが敗北だとしても、それを自分たちの歴史として引き受けることで、抵抗の出発点にするという感覚がある。

サウンドは、比較的メロディアスでありながら、暗い重みを持つ。ゴスペル的な哀しみとポスト・パンク的な硬さが結びつき、曲は嘆きと行進の中間のように進む。Fisherの声には、悲しみと誇りが同時に宿っている。

歌詞では、負け続けること、奪われ続けること、それでも声を失わないことが描かれる。ここでの敗北は単なる失敗ではない。歴史の中で何度も敗北させられた人々の記憶であり、それを認めることが逆に抵抗の形になる。「Losing Is Ours」は、本作の中でも特に深い政治的悲哀を持つ楽曲である。

5. Unoccupied

「Unoccupied」は、「占有されていない」「空いている」という意味を持つタイトルである。しかしAlgiersの文脈では、この言葉は単純な空白ではなく、占領、所有、空洞化、放棄された空間をめぐる政治的な意味を帯びる。誰のものでもない場所は、本当に自由なのか。それとも、暴力によって人が追い出された後の空虚なのか。

サウンドは、不穏なリズムと電子音によって構成され、曲全体に空白の圧力がある。空いているはずの場所が、実際には不在の気配で満たされている。音の隙間にも不安が残る。

歌詞では、不在、空間、占領の記憶が暗示される。空っぽの場所には、かつてそこにいた人々の痕跡が残る。都市の再開発、植民地主義、戦争、貧困による追放など、現代社会には多くの「空けられた場所」がある。この曲は、その空白に耳を澄ますような楽曲である。

6. Chaka

「Chaka」は、アルバムの中でもリズムの切迫感と呪術的な反復が強い楽曲である。タイトルは一語で、意味を固定しすぎないが、名前、呼び声、儀式的な掛け声のようにも響く。Algiersの音楽における身体性と霊性が強く出た曲である。

サウンドは、打楽器的なリズム、ノイズ、ヴォーカルの反復が組み合わさり、ダンス・ミュージックに近い推進力を持ちながらも、快楽よりも緊張が前に出る。踊れるが、楽しく踊るための音楽ではない。身体を動かすことが、抵抗や儀式のように感じられる。

歌詞は断片的で、明確な物語よりも音としての言葉の力が重視される。Algiersはここで、政治的なメッセージを説明するのではなく、声とリズムによって身体に直接訴える。ゴスペルや労働歌、抗議のチャントにも通じる感覚がある。

7. Wait for the Sound

「Wait for the Sound」は、「その音を待て」という意味のタイトルを持つ楽曲である。音を待つという行為には、到来、警告、合図、啓示への期待がある。何かが起こる直前の静けさ、まだ聞こえない未来の声を待つ緊張がこの曲にはある。

サウンドは、抑制された空間から徐々に緊張を高めていく。音が鳴ることそのものがテーマであるため、曲の構成にも「待つ」感覚が組み込まれている。リズムは急ぎすぎず、音の到来を予感させる。

歌詞では、救済の声、革命の合図、あるいは破滅のサイレンを待つような感覚が描かれる。待つことは希望でもあり、恐怖でもある。何かが来ると信じていなければ待てない。しかし、それが何であるかは分からない。「Wait for the Sound」は、本作の終末的な期待を象徴する曲である。

8. Repeating Night

「Repeating Night」は、反復する夜を意味するタイトルを持つ楽曲である。夜は終わるはずのものだが、それが繰り返されるなら、朝は来ない。これは、政治的な暗闇や個人的な不眠、歴史の停滞を表す非常に強いイメージである。

サウンドは、暗く沈み、反復的である。曲は前へ進んでいるようで、同じ不安の中を回っているようにも感じられる。ポスト・パンク的な循環するリズムが、タイトルの感覚を音で表現している。

歌詞では、夜が終わらないこと、同じ恐怖が何度も戻ること、記憶が閉じないことが描かれる。Algiersにとって、歴史は過去から未来へまっすぐ進むものではなく、夜のように何度も降りてくるものだ。「Repeating Night」は、『There Is No Year』というタイトルの思想を、より感覚的に表した楽曲である。

9. We Can’t Be Found

「We Can’t Be Found」は、「我々は見つけられない」というタイトルを持つ楽曲である。これは逃亡、消失、不可視性、監視からの逃避を連想させる。Algiersの政治的世界において、見つからないことは、無力であると同時に、生き延びるための戦略でもある。

サウンドは、暗く、動きがあり、逃走するような緊張を持つ。リズムは不安定で、声は追われながら叫ぶように響く。電子音とバンド・サウンドが混ざり、曲全体にパラノイア的な空気がある。

歌詞では、追跡される者、見えなくなる者、記録から消される者の存在が暗示される。社会の中で不可視化されることは、抑圧の結果である。しかし同時に、権力の視線から逃れるために、自ら見つからない場所へ向かうこともある。この曲は、その両義性を不穏に描いている。

10. Nothing Bloomed

「Nothing Bloomed」は、「何も咲かなかった」という意味を持つタイトルであり、アルバム終盤に深い虚無感をもたらす楽曲である。花が咲くことは希望、成長、未来の象徴である。しかしここでは、何も咲かない。努力、祈り、抵抗、犠牲の後にも、期待した実りが来ない感覚がある。

サウンドは、重く、沈み、哀しみを帯びている。Fisherのヴォーカルは、希望を歌うのではなく、希望の不在を告げる。だが、その声には完全な諦めだけではなく、失われたものを見届ける強さもある。

歌詞では、空虚、失敗、成長しなかった未来、奪われた可能性が描かれる。これは個人的な喪失にも、政治的な敗北にも聞こえる。革命は来なかった。約束された未来は咲かなかった。しかし、その事実を歌うこと自体が、記憶を残す行為になる。「Nothing Bloomed」は、本作の中でも最も痛ましい楽曲の一つである。

11. Void

ラスト曲「Void」は、アルバムを締めくくるにふさわしい、空虚そのものをテーマにした楽曲である。タイトルは「空洞」「虚無」を意味し、『There Is No Year』の終着点として非常に重い。時間も、希望も、場所も、花も失われた後に残るものが、ここではVoidとして提示される。

サウンドは、広がりがありながらも冷たく、終末的である。アルバム全体のノイズ、ゴスペル的な声、ポスト・パンクの反復、電子音の不穏さが、最後に大きな空洞へ吸い込まれていくように響く。曲は救済をはっきり提示しない。むしろ、問いを残したまま終わる。

歌詞では、空虚の中で何が残るのかが問われる。虚無は完全な終わりなのか、それとも新しい声が生まれるための空間なのか。Algiersの音楽は、絶望を描きながらも、声を上げることをやめない。だから「Void」は、完全な無音ではない。空洞の中にも、まだ反響がある。

この曲は、アルバム全体を決定的な解決へ導くのではなく、聴き手を不安と余韻の中に残す。『There Is No Year』にふさわしい、厳しく美しい終幕である。

総評

『There Is No Year』は、Algiersのディスコグラフィの中でも特に暗く、終末的で、密度の高いアルバムである。デビュー作の衝撃、前作『The Underside of Power』の政治的エネルギーを引き継ぎながら、本作ではより抽象的で悪夢的な世界へ踏み込んでいる。ここには分かりやすい救済はない。むしろ、救済が来ない世界で、それでも声を上げることの意味が問われている。

本作の最大の特徴は、時間感覚の崩壊である。タイトルが示すように、ここには「2020年」という単一の現在だけがあるわけではない。植民地主義、奴隷制、人種差別、ファシズム、資本主義の暴力、宗教的な終末論、革命の失敗、都市の不安が、すべて同時に存在している。年号は進むが、暴力は終わらない。この感覚が、アルバム全体を覆っている。

音楽的には、Algiersのジャンル横断性がさらに強まっている。ゴスペルの声、ポスト・パンクの反復、インダストリアルのノイズ、ソウルの感情、ダブ的な空間、ノイズ・ロックの圧力が混ざり合う。だが、それらは単なるジャンルの組み合わせではない。各要素は、政治的・歴史的な意味を持っている。ゴスペルは抑圧の中で生まれた祈りであり、ポスト・パンクは都市と権力への不信であり、インダストリアルは機械化された暴力の音である。

Franklin James Fisherのヴォーカルは、本作の最も強い核である。彼の声は、個人の声でありながら、集団の声でもある。彼は歌うだけでなく、証言し、叫び、祈り、告発する。Algiersの音楽では、声を上げること自体が政治的行為である。『There Is No Year』では、その声が絶望の中でさらに鋭く響いている。

歌詞面では、直接的なスローガンよりも、断片的なイメージが多い。そのため、本作は一聴してすべての意味が分かるタイプのアルバムではない。むしろ、言葉、音、声、リズムが一体となって、政治的な悪夢の感覚を作り出している。これは説明の音楽ではなく、体験の音楽である。聴き手は安全な距離からメッセージを受け取るのではなく、不安定な歴史の中へ巻き込まれる。

『The Underside of Power』と比較すると、本作はより暗く、より内向きである。前作には抗議のアンセムとしての強さがあったが、『There Is No Year』では、抗議の声が反響し、歪み、空虚へ落ちていく感覚がある。これは後退ではなく、より厳しい認識である。権力に対して声を上げても、すぐに世界が変わるわけではない。その現実の重さが、本作には刻まれている。

一方で、本作は非常に濃密で、聴きやすいアルバムではない。ポップなフックや明快な展開を求めるリスナーには、重く、難解で、圧迫的に感じられる可能性がある。しかし、Algiersの音楽は快適さを目的としていない。むしろ、不快な現実を不快なまま聴かせることで、音楽が持つ政治的な力を取り戻そうとしている。

日本のリスナーにとって本作は、単なる洋楽ロックとしてではなく、ブラック・ミュージック、ポスト・パンク、反権力の歴史、ゴスペルの霊性、インダストリアルの暴力性が交差する作品として聴くことで、その深さが見えてくる。日本のポップ・リスニング環境ではあまり一般的ではない重さを持つが、だからこそ強い体験になる。

『There Is No Year』は、希望が咲かない時代のためのアルバムである。年は変わる。しかし暴力は続く。夜は繰り返される。声は奪われる。花は咲かない。それでも、Algiersは空虚の中で声を上げる。そこに簡単な救いはないが、沈黙への抵抗がある。本作は、2020年代初頭の不安と歴史の暗い反復を、最も苛烈な形で音楽化した重要作である。

おすすめアルバム

1. Algiers – Algiers(2015)

Algiersのデビュー作。ゴスペル、ポスト・パンク、ノイズ、ソウルを衝突させた初期衝撃作であり、バンドの基本的な美学が最も荒々しく表れている。『There Is No Year』の出発点を理解するために重要である。

2. Algiers – The Underside of Power(2017)

Algiersの2作目で、より政治的な怒りとアンセム性が強まった作品。反ファシズム、抑圧、抵抗のテーマが前面に出ており、『There Is No Year』の暗い終末感へ至る前段階として欠かせない。

3. Algiers – Shook(2023)

多くのゲストを迎え、ヒップホップ、ゴスペル、ポスト・パンク、実験音楽をさらに広げた作品。『There Is No Year』の重い密度から、よりコラージュ的で開かれた方向へ進んだアルバムとして比較できる。

4. TV on the Radio – Return to Cookie Mountain(2006)

ロック、ソウル、電子音、ゴスペル的な声を融合した重要作。Algiersほど直接的に政治的ではないが、黒人音楽とインディー/アート・ロックの接続という点で関連性が高い。

5. Death Grips – The Money Store(2012)

ヒップホップ、インダストリアル、ノイズ、パンク的攻撃性を融合した作品。Algiersとは方法は異なるが、現代社会の暴力性や不安を、身体に直接ぶつけるような音で表現する点で比較しやすい。

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