発売日: 2011年1月18日
ジャンル: フォークロック / アメリカーナ / オルタナティブカントリー
The King Is Deadは、The Decemberistsがこれまでのドラマチックで物語性に富んだサウンドから一転し、シンプルでフォークやアメリカーナのルーツに立ち返った作品である。バンドにとって6枚目のスタジオアルバムとなる本作は、R.E.M.やニール・ヤングといったアーティストへのオマージュが随所に感じられ、カントリーやルーツミュージックの要素が色濃く反映されている。
このアルバムは、ポートランド郊外の農場で録音され、自然をテーマにした詩的な歌詞と、暖かみのあるアコースティックなサウンドが印象的だ。前作Hazards of Loveの壮大なコンセプトアルバムとは対照的に、シンプルで親しみやすい楽曲が並び、The Decemberistsの新しい側面を示す作品となっている。
トラック解説
1. Don’t Carry It All
アルバムの幕開けを飾るアンセム的な楽曲。ハーモニカとアコースティックギターが中心となり、自然や共同体をテーマにした歌詞が広がりを感じさせる。コリン・メロイの力強いボーカルが印象的だ。
2. Calamity Song
R.E.M.への敬意が感じられるトラックで、ピーター・バック（R.E.M.のギタリスト）がギターで参加している。軽快なリズムとジャングリーなギターサウンドが、楽曲をよりキャッチーなものにしている。
3. Rise to Me
ペダルスティールギターを用いたカントリー調のバラード。親子や愛をテーマにした感動的な歌詞が印象的で、バンドの柔らかい一面を感じさせる。
4. Rox in the Box
ケルト音楽の影響が感じられるトラックで、アコーディオンとマンドリンが楽曲を彩る。労働や犠牲をテーマにした歌詞が、民謡的な雰囲気を醸し出している。
5. January Hymn
静謐で美しいバラード。冬の寒さと失われた愛を詩的に描いた歌詞が心に響く。シンプルなアコースティックギターの伴奏が、歌詞の持つ郷愁を際立たせている。
6. Down by the Water
アルバムのハイライトのひとつ。ピーター・バックがギターで再び参加しており、ルーツロック的なサウンドが楽曲を引き締めている。スティールギターとメロイの情熱的なボーカルが融合した、力強いナンバー。
7. All Arise!
ゴスペルとカントリーが交錯した楽曲。軽快なリズムと希望に満ちた歌詞が印象的で、アルバム全体に明るさをもたらしている。
8. June Hymn
January Hymnと対を成す楽曲で、初夏の風景を描写した詩的な歌詞が魅力的だ。アコースティックなアレンジが、歌詞の自然主義的なテーマと調和している。
9. This Is Why We Fight
ロック色の強い楽曲で、アルバムの中でも特にエネルギッシュな一曲。抑圧に立ち向かう力強いメッセージが込められており、ライブでも人気の高いナンバーだ。
10. Dear Avery
アルバムの最後を飾る感動的なバラード。失われた愛や別れをテーマにしており、メロイの歌声が静かに心に染み渡る。余韻を残すようなエンディングがアルバムを美しく締めくくる。
アルバムの背景: シンプルさと自然への回帰
The King Is Deadは、The Decemberistsがこれまでのコンセプトアルバムの方向性を離れ、シンプルで親しみやすい楽曲に焦点を当てた作品である。録音が行われた自然豊かな環境の影響もあり、アルバム全体を通じて温かみのあるサウンドと、自然に根ざしたテーマが感じられる。また、ピーター・バックの参加により、R.E.M.の影響が明確に表れている。
この作品は、物語性よりも感情や雰囲気に重きを置いたアプローチが評価され、The Decemberistsにとって新たな方向性を示すアルバムとなった。
アルバム総評
The King Is Deadは、The Decemberistsが音楽的なルーツに立ち返り、シンプルで暖かいサウンドを追求したアルバムだ。フォークロックやアメリカーナのエッセンスを取り入れた楽曲群は、これまでの物語性豊かなスタイルとは異なる新しい一面を示している。自然の風景や人間の感情を詩的に描いた本作は、The Decemberistsのファンだけでなく、フォークやアメリカーナを愛するリスナーにも広く受け入れられる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Harvest by Neil Young
フォークとカントリーの要素が融合した名盤で、The King Is Deadのルーツを感じさせる。
Automatic for the People by R.E.M.
ピーター・バックが参加している本作との共通点が多く、フォークとロックの絶妙なバランスが楽しめる。
Trouble Will Find Me by The National
シンプルながらも深い感情を湛えた楽曲が、The King Is Deadのファンに響くだろう。
All Ashore by Punch Brothers
アコースティック楽器を中心にしたフォークとアメリカーナが美しく表現されている作品。
The Harrow & The Harvest by Gillian Welch
深い郷愁を感じさせるフォークアルバムで、The King Is Deadと通じるナチュラルな魅力がある。
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