アルバムレビュー:I’ll Be Your Girl by The Decemberists

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2018年3月16日

ジャンル:Indie Rock / Indie Pop / Folk Rock

概要

The Decemberistsが2018年に発表した8作目のスタジオ・アルバムがI’ll Be Your Girlである。Colin Meloy、Chris Funk、Jenny Conlee、Nate Query、John Moenという編成を軸に、プロデューサーとしてJohn Congletonを迎えて制作された。前作What a Terrible World, What a Beautiful Worldまでのフォーク/ルーツ・ロックを中心とした音から意識的に距離を取り、シンセサイザー、電子的な低音、ニューウェーブ風のリズムを大胆に導入している。

もっとも、バンドの基本的な作曲法まで変わったわけではない。Meloy特有の少し鼻にかかった歌声、文学的な言葉遣い、古いフォークや英国ロックに通じるメロディは残っており、そこへ80年代のシンセポップを思わせる音色が重なる。「Severed」のように電子音を前面へ出す曲がある一方、「Rusalka, Rusalka / Wild Rushes」では長い物語歌へ戻るため、新路線への完全な転向というより、既存のThe Decemberistsへ新しい道具を加えた作品と考える方が近い。

歌詞には不安、怒り、政治的な閉塞感、死のイメージが頻繁に現れるが、音楽は必ずしも暗くない。むしろ陽気なコーラスやダンス可能なビートと組み合わせることで、嫌な現実を笑いながら直視するようなブラック・ユーモアが強まっている。物語を精密に組み立てる従来のMeloyと、2010年代後半の社会を直接見るMeloyが同居した、キャリアの中でも意図的に落ち着きの悪いアルバムである。

全曲レビュー

1. 「Once in My Life」

「人生で一度くらい、何かうまくいってほしい」という願いを反復する、非常に簡潔な言葉からアルバムは始まる。シンセサイザーの低い脈動とドラムが一定の速度を保ち、Meloyの疲れたような声と対照を作る。曲が進むにつれて音は広がるが、完全な勝利の高揚にはならず、願いは願いのまま残る。新しい電子的サウンドと本作の閉塞した感情を、最初の一曲で同時に示している。

2. 「Cutting Stone」

民話や古い物語を思わせる言葉遣いへ戻り、石を切るという具体的なイメージを中心に曲を組み立てる。アコースティックな感触を残しつつ、リズムと鍵盤には現代的な処理が加わり、純粋なフォークには着地しない。Meloyは人物や出来事を細かく説明しきらず、古い寓話の断片を聞いているような曖昧さを残す。電子音へ踏み込んだ本作でも、物語歌の作家としての個性が消えていないことを確認できる。

3. 「Severed」

太いシンセ・ベースと硬い電子音が反復する、本作の方向転換を最も露骨に聞かせる曲である。The Decemberistsのフォーク的な装飾は後ろへ退き、80年代ニューウェーブやシンセポップに近い冷たい質感が前面へ出る。歌詞には分断や怒りを思わせる言葉が並び、Meloyの声も物語を語るより短いフレーズを鋭く押し出す。電子音を装飾ではなく曲の骨格として使った点で、アルバム最大の転換点だ。

4. 「Starwatcher」

反復されるコーラスと力強いドラムによって、集団で歌う儀式のような雰囲気を作る。旋律そのものは単純だが、声を何層にも重ねることで徐々に規模が大きくなり、個人の独白から共同体的な響きへ変化する。星を見る者というタイトルには神話的な広がりがあるものの、物語を詳細に説明する曲ではない。言葉より反復と音響によってイメージを膨らませる点が、従来のThe Decemberistsとは少し異なる。

5. 「Tripping Along」

ここでは電子音を大きく後退させ、アコースティック・ギターを中心とした穏やかなフォークへ移る。Meloyの声も力を抜き、歩きながら鼻歌を歌うような自然なテンポで旋律を運ぶ。アルバム前半の不安や硬いビートから離れるため、一時的な休憩のように聞こえるが、完全に無邪気な明るさではなく、どこか頼りなさも残る。新しい音ばかりを連続させず、バンド本来の手触りを途中で戻す役割を持つ。

6. 「Your Ghost」

短い演奏時間の中で、すでにいなくなった誰かの気配が残り続ける感覚を描く。軽いリズムと覚えやすいメロディによって、幽霊という題材を重苦しいゴシック・ソングにはしない。むしろ不在の人物が日常へ自然に入り込んでくるような軽さがあり、それがかえって奇妙な後味を作る。The Decemberistsが得意とする死のイメージを、コンパクトなインディー・ポップへ縮めた一曲だ。

7. 「Everything Is Awful」

題名そのものを明るい集団コーラスで繰り返すという、アルバムのブラック・ユーモアが最も分かりやすく現れた曲である。「すべて最悪だ」という悲観的な言葉なのに、演奏は手拍子したくなるほど陽気で、聴感上は祝祭に近い。この矛盾によって、単なる絶望ではなく、悪い状況を仲間と笑い飛ばすような感覚が生まれる。短く直接的で、Meloyの通常の物語的作詞とは正反対の方法が成功している。

8. 「Sucker’s Prayer」

ピアノを中心にした親しみやすい曲調の中で、失敗や自己嫌悪をかなり露骨に扱う。語り手は状況を立て直せず、祈りさえどこか間の抜けたものになっており、「Everything Is Awful」から続く悲観とユーモアが別の形で現れる。サビは大きく歌えるほどキャッチーだが、その開放感が歌詞を解決してくれるわけではない。落ち込んだ感情を美化せず、少し滑稽な自分まで含めて描くところが面白い。

9. 「We All Die Young」

タイトルは悲観的だが、音楽は軽快で、死を扱う曲とは思えないほどポップに進む。人生の短さを大げさな悲劇へ変えるより、逃れられない事実を乾いたユーモアで受け入れるような歌である。ギターと鍵盤は明るい色を保ち、コーラスも覚えやすいため、言葉と音の食い違いが強く残る。本作中盤以降に続く「暗い内容を楽しい音で歌う」という方法を最も簡潔にまとめている。

10. 「Rusalka, Rusalka / Wild Rushes」

約8分にわたる組曲で、スラヴ民間伝承の水の精ルサルカを題材に、The Decemberists本来の長編物語歌へ大きく戻る。前半は暗く静かな反復によって水辺へ引き込まれる不安を作り、後半では演奏が広がって物語の緊張を高める。人を誘惑し破滅へ導く存在という古い伝承を、Meloyは現代的に説明し直すのではなく、その恐怖と魅力を物語として生かす。電子ポップ中心の曲群の後だからこそ、この古風な世界が強烈に際立つ。

11. 「I’ll Be Your Girl」

タイトル曲は、柔らかなメロディと穏やかな演奏でアルバムを閉じる。「あなたの女の子になる」という言葉には性別の役割を軽く入れ替える遊びがあり、深刻な宣言というより、相手のためなら決められた立場から外れてもよいという親密さとして聞こえる。前曲の死を伴う民話的世界から一転し、最後は個人同士の関係へ視野を縮める。大きな解決を提示せず、小さな献身を残して終わるところが本作らしい。

総評

I’ll Be Your Girlは、The Decemberistsがそれまで得意としてきた要素を捨てたアルバムではない。Meloyの物語性、フォーク由来の旋律、Chris Funkらによる多彩な楽器の使い方は残っている。変わったのは、それらを囲む音の色である。特に「Severed」ではシンセサイザーと電子的な低音が中心となり、従来ならアコーディオンやアコースティック楽器が担った奇妙さを、別の音色で作り出している。

この変化を支えているのがJohn Congletonのプロダクションである。楽器を古風で温かな響きに統一するのではなく、硬いドラムや人工的なシンセをそのまま目立たせることで、The Decemberistsの文学的な歌詞との摩擦を作った。そのためアルバムは意図的に不均一で、「Tripping Along」と「Severed」が同じ作品に入っていること自体が一つの狙いになっている。まとまりより変化を楽しむタイプの作品だ。

歌詞では、以前の作品以上に現代的な閉塞感が直接表へ出ている。「Everything Is Awful」ほど単純な題名は、初期のMeloyならもっと複雑な物語へ置き換えていたかもしれない。しかし本作では、その直接性を陽気なコーラスと衝突させることで新しい表現にしている。同時に「Rusalka, Rusalka / Wild Rushes」のような古い伝承を扱う長編曲も残し、現在への不安と昔話の死や誘惑が不思議に並列される。

結果として、キャリアの中でも評価が分かれやすい作品である。シンセポップへの接近はすべての曲を刷新したわけではなく、従来のフォーク・ロックと新しい電子音が別々に聞こえる場面もある。それでも、長く確立したスタイルを持つバンドが安全な反復を避けた意味は大きい。I’ll Be Your GirlはThe Decemberistsの新しい完成形というより、自分たちの作曲が異なる衣服を着ても成立するかを試したアルバムであり、その落ち着かなさ自体が作品の魅力になっている。

おすすめアルバム

What a Terrible World, What a Beautiful World by The Decemberists

2015年の前作。フォーク・ロック、ポップ、長編的な作曲を成熟した形でまとめており、電子音はまだ中心ではない。I’ll Be Your Girlが従来のサウンドからどれほど意識的に離れたかを比較するのに適している。

The Hazards of Love by The Decemberists

2009年作。英国フォークやプログレッシブ・ロックを使い、一枚を通して幻想的な物語を展開するロック・オペラ。「Rusalka, Rusalka / Wild Rushes」に表れる長編物語への志向を、アルバム全体へ拡大した作品である。

The Crane Wife by The Decemberists

2006年作。日本の民話を題材にした組曲を含み、フォーク、プログレッシブ・ロック、インディー・ポップを結びつけた代表作。I’ll Be Your Girlにも残る、古い物語を現代のロックへ移すMeloyの作曲法を理解しやすい。

Masseduction by St. Vincent

2017年作。鮮烈なシンセ、電子ビート、ギターを使い、不安や欲望を非常にキャッチーなポップへ変換した。同時期の作品として、暗い題材と人工的で明るいサウンドを意図的に衝突させる方法に共通点がある。

Sleep Well Beast by The National

2017年作。長く確立していたインディー・ロックのスタイルへ電子ビートやシンセを増やし、バンドの基本を壊さず音響を更新した作品である。中堅以降のバンドが電子音を新しい作曲の道具として取り込んだ例として、本作と比較しやすい。

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