アルバムレビュー:Everything by The Bangles

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1988年10月18日

ジャンル:ポップ・ロック/パワー・ポップ/フォーク・ロック/ニューウェイヴ/ギター・ポップ

概要

The Banglesの3作目のスタジオ・アルバム『Everything』は、1980年代後半のポップ・ロックを代表する作品であり、バンドが持つ60年代由来のギター・ポップ感覚、女性コーラス・グループとしてのハーモニー、MTV時代の洗練されたプロダクション、そしてメンバー個々のソングライティングの成熟が交差したアルバムである。前作『Different Light』(1986年)は「Manic Monday」と「Walk Like an Egyptian」のヒットによってThe Banglesを世界的な人気バンドへ押し上げたが、その成功は同時に、彼女たちを単なるシングル・ヒットのポップ・グループとして見られやすくする危険も生んだ。『Everything』は、その状況に対して、バンド自身の作家性と演奏力をより明確に示そうとした作品である。

The Banglesは、1980年代初頭のロサンゼルスにおけるペイズリー・アンダーグラウンド周辺から登場した。The ByrdsThe Beatles、The Mamas & the Papas、The Hollies、Big Star、ガレージ・ロックなど、1960年代のギター・ポップやフォーク・ロックへの深い愛着を持ちながら、ニューウェイヴ以降の軽快なビート感と80年代のポップ・プロダクションを取り入れたバンドである。The Banglesの魅力は、単に女性だけのロック・バンドという話題性ではなく、メンバー全員が歌い、ハーモニーを作り、楽曲ごとに異なる表情を担う点にある。

『Everything』は、商業的には大ヒット・バラード「Eternal Flame」を含むアルバムとして広く知られている。この曲はThe Banglesの代表曲のひとつであり、Susanna Hoffsの透明感あるヴォーカルを中心に、ロマンティックで普遍的なラヴ・ソングとして世界的に成功した。しかしアルバム全体を聴くと、『Everything』は単なるバラードのための作品ではない。むしろ、ギター・ロック、パワー・ポップ、サイケデリック・ポップ、フォーク・ロック、AOR的な洗練、80年代的なシンセやドラム処理が多彩に並ぶ、バンドとしての総合力を示すアルバムである。

前作『Different Light』では外部作家による楽曲の存在感が大きかったが、『Everything』ではメンバー自身のソングライティングがより重要になっている。Susanna Hoffs、Vicki Peterson、Debbi Peterson、Michael Steeleがそれぞれ作曲やヴォーカルで個性を示し、バンド内の多声性が強調されている。これはThe Banglesの本質に近い部分である。彼女たちは一人の絶対的フロントウーマンを中心にしたバンドではなく、複数の声と視点が並び立つグループだった。『Everything』は、その集合体としての魅力を、商業的なポップ・アルバムの形で提示している。

一方で、このアルバムはバンド内の緊張が高まっていた時期の作品でもある。Susanna Hoffsがメディア上で中心的に扱われることが増え、グループ内のバランスは徐々に不安定になっていった。『Everything』の後、The Banglesは一度解散へ向かう。そのため本作は、彼女たちの80年代における集大成であると同時に、ひとつの終章でもある。華やかなポップ・サウンドの裏側には、メンバー間の個性の違いや、バンドとしての方向性をめぐる緊張もにじんでいる。

1988年という時代背景も重要である。80年代後半のメインストリーム・ポップは、巨大なドラム・サウンド、きらびやかなシンセサイザー、ラジオ向けの明快なサビを特徴としていた。同時に、R.E.M.やThe Smiths、10,000 Maniacsなどのオルタナティヴ/カレッジ・ロック、あるいはパワー・ポップ再評価の流れも存在していた。The Banglesはその中間に位置する存在だった。彼女たちはチャート向けのポップ性を持ちながら、ルーツには60年代ギター・ロックやフォーク・ロックへの愛着があった。『Everything』は、その二重性をよく示している。

日本のリスナーにとって『Everything』は、「Eternal Flame」の甘美な印象から入りやすいアルバムである。しかし、実際にはそれだけではなく、「In Your Room」のようなサイケデリックなポップ・ロック、「Bell Jar」のような文学的なテーマ、「Glitter Years」のような70年代ロックへの回想、「Crash and Burn」のような疾走感あるギター・ポップなど、多面的な魅力を持つ。The Banglesを80年代のヒット・ポップ・グループとしてだけでなく、60年代ロックの伝統を80年代末に再構成したバンドとして理解するうえで、本作は非常に重要である。

全曲レビュー

1. In Your Room

アルバム冒頭を飾る「In Your Room」は、『Everything』の中でも特にThe Banglesらしさが凝縮された代表的な楽曲である。Susanna Hoffs、Vicki Peterson、Billy Steinberg、Tom Kellyによる共作で、60年代サイケデリック・ポップへの愛情と、80年代後半のラジオ向けポップ・ロックの華やかさが見事に結びついている。イントロから色彩感のあるギターとリズムが入り、明るく官能的なムードを作る。

歌詞では、恋愛や親密な空間が「部屋」というイメージを通じて描かれる。部屋は単なる物理的な場所ではなく、秘密、欲望、個人的な時間、相手との閉じた世界を象徴している。The Banglesの楽曲には、無邪気なポップ性の中に少しだけ陰影や官能性が含まれることが多いが、この曲もその典型である。歌詞は露骨ではないが、親密な関係の期待や高揚感が明確に感じられる。

音楽的には、サビの強さとハーモニーの美しさが際立つ。Hoffsのヴォーカルは軽やかで、少し鼻にかかった特徴的な声質が曲に甘さと神秘性を与えている。バック・コーラスはThe Banglesらしく、単なる装飾ではなく楽曲の大きな魅力になっている。60年代のガール・グループやフォーク・ロックの影響が、80年代的な明るいプロダクションの中に自然に溶け込んでいる。

「In Your Room」は、アルバムの冒頭曲として非常に効果的である。『Everything』が過去のロックへのオマージュと現代的なポップ感覚の融合であることを、最初の一曲で明確に示している。The Banglesの華やかさ、知的なポップ・センス、軽いサイケデリック感覚が一体となった名曲である。

2. Complicated Girl

Complicated Girl」は、Michael Steeleがリード・ヴォーカルを取る楽曲であり、アルバムに落ち着いた陰影を与える一曲である。The Banglesの魅力のひとつは、Susanna Hoffsだけでなく、Michael Steele、Vicki Peterson、Debbi Petersonもそれぞれ異なる声と作風を持っている点にある。この曲では、Steeleのやや低く、クールで内省的な声が前面に出ることで、アルバム序盤に深みが生まれている。

歌詞の「複雑な女の子」というテーマは、恋愛や人間関係の中で単純に理解されることを拒む女性像を描いている。ポップ・ソングでは女性が分かりやすい恋愛対象として描かれることも多いが、この曲では、相手の内面が一筋縄ではいかないものとして提示される。そこには、感情の揺れ、自己防衛、他人に簡単に解釈されたくないという距離感がある。

音楽的には、派手なシングル向けの爆発力よりも、メロディの陰影とアンサンブルのまとまりが重視されている。ギターはきらびやかだが抑制されており、リズムも落ち着いている。Steeleの声は、Hoffsの甘く明るい声と対照的で、アルバムに成熟した表情を加える。

「Complicated Girl」は、『Everything』が単なる明るいポップ・ロック集ではないことを示す曲である。The Banglesの内省的な側面、そしてメンバーそれぞれが異なる女性像を表現できるバンドであることがよく分かる。

3. Bell Jar

「Bell Jar」は、タイトルからも分かるように、Sylvia Plathの小説『The Bell Jar』を連想させる文学的な楽曲である。The Banglesのポップなイメージの裏には、こうした文学性や心理的な暗さを扱う側面も存在しており、この曲はその代表例である。明るいギター・ポップの表面の奥に、閉塞感や精神的な不安が潜んでいる。

歌詞では、ガラスの鐘の中に閉じ込められたような感覚が描かれる。外の世界は見えているが、そこへ自由に出ていけない。周囲の声や期待から切り離され、自分だけが密閉された空間にいるような心理状態である。これは恋愛の歌としても、精神的な孤立の歌としても解釈できる。

音楽的には、The Banglesらしいメロディアスなギター・ポップでありながら、曲調には微妙な不安定さがある。コーラスの美しさが、歌詞の閉塞感と対比されることで、かえって不穏な印象を強めている。60年代ポップの甘さを借りながら、内容はより現代的で心理的である。

「Bell Jar」は、The Banglesが単なる明るい80年代ポップ・バンドではなく、内面の不安や女性の心理を扱うバンドでもあったことを示す重要な楽曲である。文学的な参照とポップな旋律の組み合わせが、アルバムに奥行きを与えている。

4. Something to Believe In

「Something to Believe In」は、タイトル通り「信じられるもの」を求める楽曲であり、アルバムの中でも比較的シリアスで普遍的なテーマを持つ。The Banglesの音楽には恋愛を扱った曲が多いが、この曲ではもう少し広い意味で、人生や関係性における信念、希望、支えとなるものが問われている。

音楽的には、穏やかな導入から徐々に広がっていく構成で、AOR的な滑らかさとThe Banglesらしいギター・ポップ感覚が共存している。コーラスは美しく、曲全体に温かい余韻がある。80年代後半のポップ・ロックらしいプロダクションを持ちながら、メロディには60年代フォーク・ロック的な誠実さも感じられる。

歌詞では、混乱や不安の中で何かを信じたいという願いが描かれる。これは恋人への信頼とも読めるし、より大きな人生の意味を探す歌としても読める。The Banglesのハーモニーは、このテーマに適している。複数の声が重なることで、個人の孤独な願いが共同体的な響きへと広がる。

「Something to Believe In」は、派手なシングル曲ではないが、アルバムの精神的な中核のひとつである。『Everything』というタイトルが示すような、愛、信頼、不安、希望の総体を支える曲として機能している。

5. Eternal Flame

「Eternal Flame」は、The Bangles最大の代表曲のひとつであり、1980年代後半のポップ・バラードを象徴する楽曲である。Susanna Hoffs、Billy Steinberg、Tom Kellyによるこの曲は、シンプルなメロディ、透明感あるヴォーカル、ロマンティックな歌詞によって、時代を超えるスタンダード的な魅力を獲得した。

歌詞の中心にあるのは、永遠に燃え続ける炎というイメージである。これは恋愛の持続、運命的な結びつき、消えない感情を象徴している。歌詞は非常に直接的で、難解さはない。しかし、The Banglesの演奏とHoffsの歌唱によって、単なる甘いラヴ・ソング以上の透明感と切実さが生まれている。

音楽的には、控えめな伴奏から始まり、徐々に広がっていく構成が特徴である。Hoffsのヴォーカルは、強く押し出すのではなく、繊細にメロディをたどる。声の少し震えるような質感が、歌詞の純粋さと不安を同時に表現している。サビでメロディが大きく開く瞬間は、80年代ポップ・バラードの中でも非常に印象的である。

「Eternal Flame」は、The Banglesを広く一般に知らしめた曲である一方、バンド内のイメージの偏りを強めた曲でもある。Hoffsが中心的に扱われることで、グループ全体のバランスに影響を与えた面もある。しかし音楽的には、The Banglesが持つメロディ・センスとハーモニーの美しさが最も普遍的な形で結実した名曲である。

6. Be with You

「Be with You」は、Debbi Petersonがリード・ヴォーカルを取る楽曲であり、The Banglesのガレージ・ポップ的な勢いを感じさせる一曲である。前曲「Eternal Flame」の大きなバラード感から一転し、よりバンドらしいリズムとギターの推進力が戻ってくる。アルバム中盤において、作品全体のテンションを引き締める役割を果たしている。

歌詞は、相手と一緒にいたいというシンプルな願いを中心にしている。しかし、曲調は甘いバラードではなく、明るくエネルギッシュなポップ・ロックである。Debbi Petersonのヴォーカルは、Hoffsとは異なる力強さと快活さを持ち、楽曲に自然なロック感を与えている。

音楽的には、The Banglesの60年代ガレージ・ロックやパワー・ポップへの愛着が感じられる。ギターは歯切れよく、リズムは前に進む。コーラスも明快で、ライヴで映える構成になっている。The Banglesはバラードだけのバンドではなく、しっかりとしたギター・バンドだったことを思い出させる曲である。

「Be with You」は、アルバムのバランスを保つうえで重要な楽曲である。『Everything』が多彩な作品であること、そして各メンバーがヴォーカリストとして異なる魅力を持っていることを示している。

7. Glitter Years

「Glitter Years」は、Michael Steeleが中心となった楽曲で、タイトル通りグラム・ロック時代や70年代ロックへの回想を感じさせる一曲である。SteeleはThe Runaways周辺の経歴も持ち、他のメンバーとは少し異なるロック史への接続を持っている。この曲には、その背景が反映されている。

歌詞では、きらびやかな時代、若さ、ロック・スター的な幻想、そしてその後に残る記憶が描かれる。タイトルの「Glitter」は輝きであると同時に、表面的な装飾や過ぎ去った流行の象徴でもある。つまりこの曲は、単なるノスタルジーではなく、過去の輝きとその儚さを見つめる歌である。

音楽的には、ギターの質感やメロディに少し70年代的な影がある。The Banglesの基本である60年代ポップ感覚に加え、ここではグラム・ロックやパワー・ポップ的な雰囲気が強く出ている。Steeleのクールな声が、回想の甘さを抑え、少し距離を置いた視点を作っている。

「Glitter Years」は、The Banglesの音楽的ルーツが60年代だけではなく、70年代ロックやパワー・ポップにも広がっていることを示す曲である。アルバムの中でも、バンドのロック史的な自意識が強く感じられるトラックである。

8. I’ll Set You Free

「I’ll Set You Free」は、アルバム後半の中でも特に叙情的で、The Banglesのメロディアスな側面がよく表れた楽曲である。タイトルは「あなたを自由にしてあげる」という意味を持ち、恋愛の終わりや相手を手放すことをテーマにしている。別れを扱いながらも、感情の爆発ではなく、成熟した受容が中心にある。

音楽的には、ギター・ポップとバラードの中間に位置する。メロディは美しく、コーラスも印象的で、The Banglesのハーモニーの魅力がよく出ている。80年代的なプロダクションの中に、60年代フォーク・ロックの切なさが感じられる点が特徴である。

歌詞では、愛しているからこそ相手を束縛しないという姿勢が描かれる。これは単純な失恋ではなく、相手の自由を認めることで自分自身も次へ進もうとする歌である。The Banglesの楽曲には、恋愛の喜びだけでなく、関係の終わりや距離を丁寧に描くものが多いが、この曲はその成熟した側面を示している。

「I’ll Set You Free」は、『Everything』の中で非常に完成度の高い楽曲である。シングル曲ほど広く知られてはいないが、The Banglesの作家性とコーラス・ワークの美しさを味わえる重要な一曲である。

9. Watching the Sky

「Watching the Sky」は、アルバムの中でもややサイケデリックで、広がりのある雰囲気を持つ楽曲である。タイトルが示すように、空を見上げる視線、遠くへの憧れ、現実から少し離れた感覚が中心にある。The Banglesの音楽には、60年代サイケデリック・ポップの影響がしばしば現れるが、この曲もその系譜にある。

音楽的には、ギターの響きやコーラスの重なりが、浮遊感を作り出している。リズムは過度に激しくなく、曲全体がゆるやかに広がっていく。メロディには少し夢見心地の感覚があり、アルバム後半に幻想的な色合いを加えている。

歌詞では、空を見る行為が、内面の逃避や希望と結びついている。空は自由や未来の象徴であると同時に、手の届かないものでもある。現実の中にいながら、意識だけが遠くへ向かう感覚が、この曲にはある。

「Watching the Sky」は、The Banglesのサウンドが単なるラジオ向けポップにとどまらないことを示す曲である。ペイズリー・アンダーグラウンド由来のサイケデリックな美意識が、アルバムの中でしっかり息づいている。

10. Some Dreams Come True

「Some Dreams Come True」は、タイトル通り、夢が叶うことをテーマにしたポジティヴな楽曲である。ただし、The Banglesらしく、その明るさには少し控えめな現実感がある。すべての夢が叶うのではなく、「いくつかの夢は叶う」という言い方が重要である。そこには、希望と同時に、人生の不確かさへの理解がある。

音楽的には、明るいメロディと軽快なリズムが中心で、アルバム後半に穏やかな開放感を与えている。コーラスは親しみやすく、The Banglesのポップ・センスがよく表れている。過度に派手ではないが、聴き手に前向きな余韻を残す曲である。

歌詞では、願いが現実になる瞬間の喜びが描かれる。しかし、それは無条件の成功賛歌ではない。夢が叶うことの貴重さを知っているからこそ、言葉に重みが生まれる。The Banglesのキャリアを考えると、この曲は、成功を手にしたバンドがその喜びと不安を同時に感じているようにも聴こえる。

「Some Dreams Come True」は、アルバムの中で比較的軽やかな曲だが、タイトルのニュアンスには深みがある。80年代ポップらしい明るさと、The Banglesの少し控えめな感情表現が共存している。

11. Make a Play for Her Now

「Make a Play for Her Now」は、アルバム終盤に配置された、やや鋭いポップ・ロック曲である。タイトルは、誰かに対して行動を起こすこと、恋愛における主導権や駆け引きを示している。The Banglesの楽曲には、恋愛の中で女性が受け身になるだけでなく、状況を観察し、判断し、時には距離を取る視点がある。この曲にもその知的な距離感が感じられる。

音楽的には、ギターとリズムが比較的前に出ており、サウンドには緊張感がある。メロディはキャッチーだが、明るく開放的というより、少し陰りを帯びている。コーラスの重なりも、甘さだけではなく、曲の複雑な感情を支えている。

歌詞では、恋愛の場面における行動やタイミングがテーマになっている。誰が誰を選ぶのか、いつ動くのか、相手の気持ちをどう読むのか。こうした駆け引きは、ポップ・ソングの定番テーマだが、The Banglesはそれを軽い遊びだけでなく、心理的な緊張を含むものとして描く。

「Make a Play for Her Now」は、アルバム終盤に少し引き締まった空気をもたらす曲である。The Banglesのギター・バンドとしての側面と、恋愛をめぐる観察眼が同時に感じられる。

12. Waiting for You

「Waiting for You」は、待つこと、期待すること、そしてその間に生じる不安をテーマにした楽曲である。The Banglesのポップ・ソングには、明るいメロディの中に少し寂しさを含ませるものが多いが、この曲もその特徴を持っている。待つという行為は、恋愛における希望であると同時に、相手に時間を支配される不安でもある。

音楽的には、明快なギター・ポップであり、コーラスの美しさが印象的である。リズムは軽快だが、メロディには切なさがある。The Banglesは、こうした甘酸っぱい感情を表現するのが非常に巧みである。60年代ポップの影響を受けたハーモニーと、80年代のクリアなプロダクションが自然に結びついている。

歌詞では、相手を待つ語り手の感情が描かれる。そこには、相手への信頼、期待、焦り、そして少しの諦めがある。The Banglesはこの感情を重くしすぎず、ポップな軽やかさの中に置く。だからこそ、曲は親しみやすく、同時に余韻を残す。

「Waiting for You」は、アルバムの終盤において、The Banglesらしいメロディックな魅力を再確認させる曲である。大きなヒット曲ではないが、バンドのポップ職人としての力が感じられる。

13. Crash and Burn

アルバムの最後を飾る「Crash and Burn」は、『Everything』を締めくくるにふさわしい、やや疾走感のあるギター・ポップ曲である。タイトルは「墜落して燃え尽きる」という意味を持ち、失敗、衝突、破滅、あるいは勢いのまま進んだ結果としての崩壊を連想させる。華やかなアルバムの終曲として、この少し不穏なタイトルは印象的である。

音楽的には、ギターの推進力があり、The Banglesのロック・バンドとしてのエネルギーが前面に出ている。コーラスは明快で、曲全体に終幕の勢いがある。『Everything』はバラードやミッドテンポ曲も多いアルバムだが、最後にこのようなギター・ポップで締めることで、バンドとしての原点が再び強調される。

歌詞では、関係や状況がうまくいかず、最終的に崩れていくイメージが描かれる。これは恋愛の失敗としても、より広く人生やバンドの状況としても読める。結果的にThe Banglesは本作の後に一度解散へ向かうため、この曲は後から聴くと、ある種の予兆のようにも響く。

「Crash and Burn」は、アルバムを単なる甘美なポップ作品として終わらせない。明るいメロディと不穏なタイトル、疾走感と崩壊のイメージが重なることで、『Everything』の背後にあった緊張を最後に浮かび上がらせる。The Banglesの80年代期を締めくくる曲として、象徴的な意味を持つ楽曲である。

総評

『Everything』は、The Banglesの80年代における到達点であり、同時に一つの終章でもある。前作『Different Light』で世界的な成功を収めた彼女たちは、本作でより自分たちのソングライティングとバンドとしての多面的な魅力を打ち出した。結果として、『Everything』はヒット・シングルを含む商業的なポップ・アルバムでありながら、アルバム全体にはThe Banglesのルーツ、個性、そして内面の複雑さが刻まれている。

本作の最大の特徴は、ポップ性とバンド性の共存である。「Eternal Flame」は世界的なバラードとして非常に大きな成功を収めたが、アルバム全体をそのイメージだけで捉えると、本作の本質を見落とすことになる。「In Your Room」には60年代サイケデリック・ポップの華やかさがあり、「Be with You」にはガレージ・ポップ的な勢いがあり、「Glitter Years」には70年代ロックへの回想があり、「Bell Jar」には文学的で心理的な閉塞感がある。これらが並ぶことで、The Banglesが非常に豊かな音楽的背景を持つバンドだったことが分かる。

また、本作は複数の声によって成り立つアルバムである。Susanna Hoffsの透明感ある甘い声はもちろん重要だが、Michael Steeleのクールで内省的な声、Debbi Petersonの快活でロック的な声、Vicki Petersonのギタリスト/ソングライターとしての骨格も欠かせない。The Banglesは一人のスターを中心にしたプロジェクトではなく、複数の個性が並び立つバンドだった。そのバランスが商業的な成功の中で揺らいでいったことも含めて、『Everything』は興味深い作品である。

音楽史的に見ると、『Everything』は80年代末のポップ・ロックが持っていた二重性をよく示している。一方には、MTV時代の洗練、ラジオ向けの強いフック、大きなバラードがある。もう一方には、60年代のギター・ポップやフォーク・ロックへの深い敬意がある。The Banglesは、その両方を自然に結びつけた。彼女たちは懐古的なバンドではなく、過去の音楽を80年代のポップ・フォーマットへ変換する力を持っていた。

歌詞面では、恋愛が中心にありながら、その描き方は意外に多様である。「In Your Room」では親密さと欲望、「Eternal Flame」では永続する愛、「I’ll Set You Free」では相手を手放す成熟、「Waiting for You」では待つことの不安、「Bell Jar」では精神的な閉塞が描かれる。恋愛は単純な幸福ではなく、自己の境界、自由、孤独、記憶、夢と結びついている。この点で、『Everything』は80年代ポップの分かりやすさを持ちながら、聴き込むと内面的な深さも感じられるアルバムである。

The Banglesの後のキャリアを考えると、本作には特別な重みがある。『Everything』の成功、とりわけ「Eternal Flame」の大ヒットは、バンドをさらに大きな存在にした一方で、メンバー間のバランスを難しくした。バンドは1989年に活動を停止し、再結成まで時間を要することになる。そうした背景を踏まえると、本作のタイトル『Everything』は象徴的である。ここには、The Banglesが持っていたほとんどすべての要素が詰まっている。甘さ、鋭さ、ハーモニー、ギター、60年代への憧れ、80年代の輝き、そして崩壊の予感である。

日本のリスナーにとって、『Everything』は80年代洋楽ポップの名盤として聴きやすい作品である。「Eternal Flame」の印象が強い場合でも、アルバム全体に耳を向けることで、The Banglesが単なるバラード・ヒットのグループではなく、優れたギター・ポップ・バンドであったことが理解できる。The BeatlesやThe Byrds、The Mamas & the Papas、Big Star、The Go-Go’s、R.E.M.周辺のギター・ポップに関心のあるリスナーにも、本作は重要な接点となる。

総じて『Everything』は、The Banglesのポップな魅力とバンドとしての複雑な個性が高い水準で結びついたアルバムである。1980年代後半の商業ポップとしての輝きを持ちながら、60年代ロックへの愛情と、メンバーそれぞれの声による多層性が作品に深みを与えている。華やかで、甘く、時に切なく、時に不穏なこのアルバムは、The Banglesの80年代期を総括する重要作であり、女性バンドによるポップ・ロックの完成度を示す一枚である。

おすすめアルバム

1. Different Light by The Bangles

1986年発表の2作目。The Banglesを世界的な存在にしたアルバムであり、「Manic Monday」「Walk Like an Egyptian」「If She Knew What She Wants」などを収録している。『Everything』よりも外部作家の楽曲の存在感が大きいが、バンドのポップ性と60年代由来のハーモニー感覚が広く伝わった重要作である。『Everything』の前段階として必ず聴くべき作品である。

2. All Over the Place by The Bangles

1984年発表のデビュー・アルバム。後の大ヒット期よりもギター・バンドとしての性格が強く、ペイズリー・アンダーグラウンドや60年代ガレージ/フォーク・ロックへの影響が明確に出ている。『Everything』の洗練されたポップ性とは異なり、より生々しく、The Banglesの原点を知ることができる作品である。

3. Beauty and the Beat by The Go-Go’s

1981年発表。女性ロック・バンドがメインストリームで成功した重要作であり、ニューウェイヴ、パンク以後のギター・ポップ、明るいメロディが結びついている。The Banglesとは作風が異なるが、1980年代に女性バンドが自ら演奏し、ポップ・チャートで成功した文脈を理解するうえで欠かせない一枚である。

4. Document by R.E.M.

1987年発表。アメリカのカレッジ・ロック/オルタナティヴ・ロックがメインストリームへ接近していく時期の重要作である。The Banglesとはサウンドの方向性は異なるが、60年代ギター・ロックへの影響、アメリカン・インディー的な感覚、80年代後半のギター・ポップの広がりという点で関連性がある。The Banglesの背景をより広いロック史の中で捉えるために有効である。

5. #1 Record by Big Star

1972年発表。パワー・ポップの古典的名盤であり、The Banglesを含む多くの80年代ギター・ポップ・バンドに影響を与えた作品である。美しいメロディ、きらめくギター、甘さと切なさが共存するソングライティングは、『Everything』の奥にある音楽的ルーツを理解するうえで重要である。パワー・ポップの源流を知るために欠かせない一枚である。

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