
発売日:2001年4月10日
ジャンル:グラムロック、オルタナティブロック、パワーポップ、ブリットポップ、スペースロック、ハードロック
- 概要
- 全曲レビュー
- 1. Jupiter’s Moon
- 2. This Is America
- 3. I Want to Live
- 4. Earthquake
- 5. A Real Waste of Food
- 6. Perpetual Drag
- 7. Dancing on My Own
- 8. And It Is
- 9. The Hogyssey
- 10. The Strangest Dream
- 11. At Least I Got Laid
- 12. The Horror
- 13. Wishing Well
- 総評
- おすすめアルバム
- 1. Spacehog – Resident Alien(1995)
- 2. Spacehog – The Chinese Album(1998)
- 3. David Bowie – The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars(1972)
- 4. Queen – Sheer Heart Attack(1974)
- 5. Supergrass – In It for the Money(1997)
- 関連レビュー
概要
Spacehogの『The Hogyssey』は、2001年に発表された3作目のスタジオ・アルバムであり、1990年代半ばに「In the Meantime」で国際的な注目を集めた彼らが、グラムロック、パワーポップ、オルタナティブロック、サイケデリックな宇宙感覚をさらに大きく広げようとした作品である。タイトルは明らかにホメロスの叙事詩『Odyssey』をもじったものであり、Spacehogというバンド名と合わせて、宇宙的な旅、滑稽な英雄譚、ロックンロールの大げさな自己演出を含んだ言葉遊びになっている。
Spacehogは、イギリス出身でありながらニューヨークを拠点に活動したバンドである。この立ち位置は彼らの音楽に大きく影響している。1970年代英国グラムロック、特にDavid Bowie、T. Rex、Queen、Mott the Hoopleの流れを強く感じさせながら、1990年代アメリカのオルタナティブロック、パワーポップ、ポスト・グランジ的なギターサウンドとも接続していた。彼らの代表作『Resident Alien』は、まさに英国的な華やかさとアメリカ的なロックの厚みが結びついた作品だった。
『The Hogyssey』は、その二重性をより意識的に押し出したアルバムである。デビュー作のような一撃必殺のヒット曲こそ少ないが、アルバム全体には、ギターの厚み、メロディの甘さ、グラムロック的な芝居がかった歌唱、宇宙的なイメージ、そしてロックンロールへの愛着が濃く漂っている。Spacehogは、同時代のオルタナティブロックの暗さや内省に完全に同化するのではなく、もっと派手で、演劇的で、少し時代錯誤なロックを鳴らすバンドだった。本作はその美学がよく表れた作品である。
2001年という時代を考えると、本作の位置づけは興味深い。1990年代のオルタナティブロックの熱狂は一段落し、ニューメタル、ポップパンク、ポスト・ブリットポップ、ガレージロック・リバイバルの前夜のような空気があった。そうした中でSpacehogは、流行の中心に乗るというより、1970年代のロック幻想を2000年代初頭に持ち込むような音を作っていた。これは商業的には難しい立場でもあったが、音楽的には非常に個性的である。
本作の中核にあるのは、Royston Langdonの声とメロディ感覚である。彼のヴォーカルは高く、少し鼻にかかり、BowieやFreddie Mercuryの系譜を思わせる演劇性を持つ。単に力強く歌うのではなく、ロック・スターとしての身振り、少し皮肉な華やかさ、宇宙へ飛び出すようなロマンティシズムを声に含ませる。Spacehogの楽曲は、メロディ自体は非常に親しみやすいものが多いが、その歌唱とアレンジによって、普通のパワーポップよりも大げさで、異物感のあるものになっている。
『The Hogyssey』の歌詞には、愛、孤独、疎外感、ロックンロール的な逃避、宇宙的な浮遊感、都市生活の疲れ、自己演出が入り混じる。Spacehogの魅力は、深刻な感情をそのまま暗く歌うのではなく、少し派手な衣装を着せ、ギターを鳴らし、宇宙船に乗せてしまう点にある。悲しみや不安は存在するが、それはグラムロック的なきらめきの中で屈折する。ここでは、孤独ですら少し華やかに見える。
音楽的には、ハードなギターリフ、Queen的なコーラスワーク、Bowie的なコード感、パワーポップの明快なサビ、サイケデリックな浮遊感が混ざっている。Spacehogはテクニカルなプログレッシブロック・バンドではないが、曲のアレンジには細かな仕掛けが多い。ギターは分厚く、ベースは曲を強く前へ押し出し、ドラムはストレートなロック感を保つ。そこに、やや芝居がかったヴォーカルとコーラスが乗ることで、彼ら特有のグラム・オルタナティブロックが成立する。
日本のリスナーにとって『The Hogyssey』は、1990年代から2000年代初頭のオルタナティブロックの中でも、少し異なる角度から聴くべき作品である。Nirvana以降の内省的な暗さ、Radiohead的な実験性、Oasis的な直線的ロックンロールとは違い、SpacehogはもっとBowie以後の演劇性と、Queen以後の大仰なポップ感覚を引き継いでいる。派手で、少し古風で、しかしメロディは強い。『The Hogyssey』は、そうした彼らの魅力を凝縮した、隠れたグラムロック復興作である。
全曲レビュー
1. Jupiter’s Moon
「Jupiter’s Moon」は、アルバムの幕開けにふさわしい宇宙的なタイトルを持つ楽曲である。木星の月というイメージは、Spacehogというバンド名ともよく合っており、地球上のロックンロールを少し外側から眺めるような感覚を生む。彼らの音楽における宇宙は、SF的な厳密さというより、グラムロック的なロマンと逃避の場である。
音楽的には、ギターの厚みとメロディアスなヴォーカルが中心である。曲は大きく開けており、アルバムの導入としてバンドのスケール感を示す。Royston Langdonの声は高く伸び、宇宙的なタイトルにふさわしい浮遊感を与える。
歌詞では、遠い場所、孤独、憧れ、到達できない対象への思いが感じられる。木星の月は美しいが、手の届かない場所にある。これは恋愛や夢の比喩としても機能する。Spacehogは、個人的な感情を宇宙的なイメージへ拡大することが得意であり、この曲はその美学を最初に提示している。
「Jupiter’s Moon」は、『The Hogyssey』の入口として、Spacehogの華やかさとメランコリーをよく示す楽曲である。宇宙へ向かうように見えて、実際には人間の孤独を歌っている点が彼ららしい。
2. This Is America
「This Is America」は、タイトルからして非常に大きな主題を持つ楽曲である。イギリス出身でありながらアメリカを拠点に活動したSpacehogにとって、アメリカは憧れの場所であると同時に、消費文化、成功、メディア、幻想、違和感の対象でもあった。この曲は、その複雑な視線を含んでいる。
音楽的には、ロックとしての力強さが前面に出る。ギターは厚く、リズムはストレートで、サビには大きな開放感がある。アメリカ的な広さを意識したようなサウンドでありながら、歌い方には英国グラム的な芝居がかった感覚が残っている。このズレがSpacehogの個性である。
歌詞では、アメリカという国のイメージが、単純な賛美ではなく、少し皮肉を帯びて描かれる。夢の国、成功の国、自由の国としてのアメリカ。しかしそこには同時に、表面的な明るさ、商業主義、疎外感もある。外から来たバンドだからこそ、その魅力と違和感の両方を見ている。
「This Is America」は、本作の中でSpacehogの英米混合的な立場をよく示す楽曲である。アメリカを歌いながら、完全にはアメリカ化されない。その距離感が曲に面白さを与えている。
3. I Want to Live
「I Want to Live」は、タイトル通り、生への欲望を直接的に掲げた楽曲である。Spacehogの曲には、華やかなアレンジの下に孤独や不安が潜むものが多いが、この曲では「生きたい」という根源的な言葉が前面に出る。ただし、その言葉は単純なポジティブさだけではなく、生きることへの切実さを含んでいる。
音楽的には、メロディアスなロック・ナンバーであり、サビの高揚感が印象的である。ギターは力強く、リズムは前向きに進む。Royston Langdonのヴォーカルは、どこか演劇的でありながら、ここでは感情の直接性も強い。
歌詞では、生きること、変わること、現状から抜け出したいという思いが中心になる。Spacehogのグラムロック的な美学は、単なる装飾ではなく、現実からの脱出願望とも結びついている。派手に歌うことは、暗い感情を否定することではなく、それを乗り越えるための身振りでもある。
「I Want to Live」は、本作の中でも比較的ストレートな感情を持つ曲である。Spacehogの華やかなロックの中にある生命への渇望が、分かりやすく表現されている。
4. Earthquake
「Earthquake」は、地震というタイトルが示す通り、揺れ、崩壊、不安定さをテーマにした楽曲である。Spacehogの宇宙的なイメージとは対照的に、ここでは地面そのものが揺らぐ。これは恋愛や精神状態、社会の不安定さの比喩として読むことができる。
音楽的には、ギターの圧力が強く、曲全体に揺さぶるようなエネルギーがある。リフは重く、サビでは大きく開ける。Spacehogらしいメロディの甘さと、ロックの荒さが同時に出ている。
歌詞では、何かが崩れる予感、足元が安定しない感覚が中心になる。地震は突然起こり、日常の安全を奪う。恋愛や人生においても、ある出来事がすべての前提を揺るがすことがある。この曲は、その瞬間の衝撃をロックとして表現している。
「Earthquake」は、本作の中でよりハードな側面を担う楽曲である。Spacehogの甘いメロディが、揺れる地面のような不安と結びついている。
5. A Real Waste of Food
「A Real Waste of Food」は、タイトルからして皮肉とユーモアが強い楽曲である。「本当に食べ物の無駄」という表現は、人間の価値、消費、身体、無意味さをからかうようにも聞こえる。Spacehogのグラムロック的な華やかさには、こうした悪ふざけに近い感覚も含まれている。
音楽的には、軽快で、やや奇妙なポップ感覚がある。曲は大きく重いというより、ひねりのあるロックとして進む。メロディは親しみやすいが、タイトルと歌詞の皮肉によって、単純なポップソングにはならない。
歌詞では、誰か、あるいは自分自身を無駄な存在として扱うような辛辣さがある。これは自己嫌悪にも、他者への皮肉にも読める。Spacehogは、深刻な自己否定をそのまま暗く歌うのではなく、少し滑稽で過剰な言い方に変える。その結果、曲はユーモラスでありながら、どこか苦い。
「A Real Waste of Food」は、本作の中でSpacehogの皮肉なポップセンスを示す楽曲である。大げさなロックの美学と、日常的で馬鹿馬鹿しい言葉の組み合わせが面白い。
6. Perpetual Drag
「Perpetual Drag」は、「永続する重荷」「終わらない引きずり」といった意味を持つタイトルであり、疲労、依存、惰性、関係のしがらみを感じさせる楽曲である。華やかなロックの表面とは裏腹に、Spacehogの音楽にはこうした消耗感がしばしば流れている。
音楽的には、ややダークで粘りのあるグルーヴが特徴である。ギターとベースが曲を重く支え、ヴォーカルはその上で少し投げやりに響く。サビにはメロディの開放感があるが、タイトルの通り、曲全体には何かを引きずるような感覚が残る。
歌詞では、抜け出せない状態、同じ場所に留まること、続いてしまう負担が描かれる。これは恋愛関係かもしれないし、生活や音楽業界の疲労かもしれない。Spacehogは、それを完全な悲劇としてではなく、少し退廃的でグラムな空気の中に置く。
「Perpetual Drag」は、『The Hogyssey』の中で、華やかさの裏にある倦怠感を示す楽曲である。永遠に続くような重さを、メロディアスなロックとして鳴らしている点が印象的である。
7. Dancing on My Own
「Dancing on My Own」は、孤独とダンスを結びつけたタイトルを持つ楽曲である。一人で踊るという行為は、自由でもあり、孤独でもある。誰かと共有するためのダンスが、自分だけのものになる時、そこには解放感と寂しさが同時に生まれる。
音楽的には、リズムに軽快さがあり、曲には身体を動かす感覚がある。しかし、それは明るいパーティーソングではない。Royston Langdonの声にはどこか孤独があり、曲全体にも少し影がある。Spacehogらしく、華やかな動作の中に寂しさが潜んでいる。
歌詞では、他者との距離、自分だけの空間、誰にも完全には理解されない感覚が描かれる。一人で踊ることは、孤立の証であると同時に、自分を保つための行為でもある。誰かに見せるためではなく、自分が崩れないために踊る。
「Dancing on My Own」は、本作の中で、Spacehogのメランコリックなグラムポップ的側面をよく示している。踊れるのに寂しい、明るいのに孤独。その二重性が曲の魅力である。
8. And It Is
「And It Is」は、タイトルの簡潔さが印象的な楽曲である。「そして、それはそうである」というような言い切りには、受容、諦め、現実をそのまま認める感覚がある。大げさな物語や宇宙的なタイトルが多いアルバムの中で、この曲名は逆に抽象的で、静かな響きを持つ。
音楽的には、メロディを重視したロックであり、Spacehogのパワーポップ的な魅力が表れている。ギターは厚いが、曲の中心は歌である。ヴォーカルは比較的素直で、曲全体に穏やかな開け方がある。
歌詞では、現実を受け入れること、物事がそうであることを認める感覚が示される。変えようとしても変わらないこと、説明できないこと、ただそこにある感情。タイトルの「And It Is」は、そのような受容の言葉として響く。
「And It Is」は、本作の中で比較的落ち着いた楽曲である。Spacehogの華やかな演劇性だけでなく、シンプルなメロディと受容の感覚も聴くことができる。
9. The Hogyssey
表題曲「The Hogyssey」は、アルバムタイトルを背負う楽曲であり、Spacehogの自己神話化が最も分かりやすく表れた曲である。『Odyssey』をもじったタイトルは、旅、冒険、帰還、英雄譚を連想させるが、それを「Hog」と結びつけることで、壮大さと馬鹿馬鹿しさが同時に生まれる。この二重性はSpacehogそのものの魅力である。
音楽的には、アルバムの中でもスケール感を意識した構成になっている。グラムロック的な大仰さ、ロックンロールの推進力、コーラスの広がりが組み合わさり、バンドの世界観を強く押し出す。彼らはここで、自分たちのロックを一種の宇宙的な旅として提示している。
歌詞では、旅、迷走、自己演出、ロックンロール的な冒険が感じられる。だが、それは真面目一辺倒の叙事詩ではない。タイトルが示すように、Spacehogは自分たちの大げささをどこかで笑っている。ロックスター的な身振りを取りながら、それが滑稽であることも理解している。
「The Hogyssey」は、アルバム全体のコンセプトを象徴する楽曲である。グラムロックの壮大さと、パワーポップの親しみやすさ、そして自己パロディのユーモアが同時に鳴っている。
10. The Strangest Dream
「The Strangest Dream」は、夢をテーマにした楽曲であり、Spacehogのサイケデリックで幻想的な側面を示す曲である。タイトルは「最も奇妙な夢」を意味し、現実と非現実の境界が曖昧になる感覚を持つ。
音楽的には、やや浮遊感があり、メロディにも夢のような柔らかさがある。ギターは激しく押し出すというより、曲の空気を作る役割を持つ。ヴォーカルも少し遠くに響き、夢の中で誰かが歌っているような印象を与える。
歌詞では、奇妙な夢、記憶、願望、不安が混ざる。夢はしばしば現実の感情を変形して映す場所である。Spacehogはここで、具体的な物語よりも、夢の質感を音楽にしている。そこには美しさと不安が同時にある。
「The Strangest Dream」は、本作の中で幻想性を担う楽曲である。ハードなロックだけでなく、サイケデリックでドリーミーな表現もSpacehogの重要な要素であることを示している。
11. At Least I Got Laid
「At Least I Got Laid」は、非常にSpacehogらしい、下品さと自虐とユーモアが混ざったタイトルを持つ楽曲である。「少なくとも寝た」という言葉には、失敗した状況の中で、最低限の満足を見つけようとする滑稽さがある。グラムロックの性的な身振りを、少し情けない現実感へ落とし込んでいる。
音楽的には、軽快で、少し荒いロックンロールの感覚がある。曲は深刻になりすぎず、勢いで進む。Royston Langdonの歌唱も、どこかふざけたようなニュアンスを含み、タイトルの自虐的なユーモアを強めている。
歌詞では、成功しきれない夜、満たされない欲望、しかし何かは得たという感覚が描かれる。これはロックンロール的な快楽主義へのパロディでもある。多くのロックソングが性的成功を誇示するのに対し、この曲ではそれが少し情けなく、滑稽に響く。
「At Least I Got Laid」は、本作の中でSpacehogのユーモアと退廃性がよく出た楽曲である。華やかなロックの裏にある情けなさを隠さない点が、彼らの魅力である。
12. The Horror
「The Horror」は、タイトル通り恐怖をテーマにしたアルバム終盤の楽曲である。ここでの恐怖は、ホラー映画的なものというより、生活、関係、自分自身、世界への不安を含んでいるように響く。アルバムの宇宙的・滑稽な旅は、最後に暗い感情へたどり着く。
音楽的には、比較的重く、不穏な空気がある。ギターは濃く、ヴォーカルにも緊張がある。曲は派手に爆発するというより、暗い余韻を残しながら進む。Spacehogのグラムロック的な華やかさが、ここでは少し影を帯びている。
歌詞では、恐怖、直視したくないもの、避けられない現実が描かれる。『The Hogyssey』という旅の最後に「The Horror」が置かれることは重要である。冒険や快楽や宇宙的なロマンの先には、結局人間の不安や恐怖が残る。Spacehogはそれを完全に隠さない。
「The Horror」は、アルバム終盤に暗い重みを与える楽曲である。派手なロックンロールの仮面の下にある不安が、ここでよりはっきりと現れている。
13. Wishing Well
「Wishing Well」は、アルバムの最後を締めくくる楽曲であり、願い、祈り、希望、過去への未練を感じさせるタイトルを持つ。願いの井戸は、コインを投げ入れて何かを願う場所である。しかし、その願いが叶う保証はない。Spacehogの終曲として、この曖昧な希望のイメージは非常にふさわしい。
音楽的には、メロディアスで、比較的穏やかな余韻を持つ。アルバムの中で繰り広げられたロックンロールの旅、皮肉、孤独、恐怖の後に、最後は願いの場所へ戻る。サウンドは過度に明るくはないが、完全な絶望でもない。
歌詞では、何かを願うこと、届かないものを求めること、希望を捨てきれない人間の姿が描かれる。Spacehogの音楽は、しばしば皮肉や自虐を含むが、その奥にはロマンティックな願望がある。宇宙へ行きたい、愛されたい、生きたい、変わりたい。その願いが、この曲で静かに残る。
「Wishing Well」は、『The Hogyssey』の終曲として、派手な締めではなく、余韻と願いを残す楽曲である。Spacehogの華やかさとメランコリーが、最後に穏やかに結びついている。
総評
『The Hogyssey』は、Spacehogのディスコグラフィの中で、グラムロック的な演劇性、オルタナティブロックの厚み、パワーポップのメロディ、宇宙的なロマンを一つにまとめた作品である。デビュー作『Resident Alien』のような圧倒的な代表曲のインパクトと比べると、本作はやや評価が分かれやすい。しかし、アルバム全体としては、彼らの美学が非常に明確に表れている。
本作の魅力は、時代錯誤すれすれの華やかさにある。2001年のロックシーンにおいて、SpacehogのようにBowie、Queen、T. Rex、Mott the Hoopleの影響を隠さず、宇宙的で、芝居がかっていて、少し滑稽なロックを鳴らすバンドは決して主流ではなかった。しかし、その主流からのズレこそが彼らの個性である。『The Hogyssey』は、流行に合わせるのではなく、自分たちの好きなロックンロール神話を再演しようとするアルバムである。
Royston Langdonのヴォーカルは、本作の中心にある。彼の声は、グラムロックの伝統を現代的なオルタナティブロックの中へ持ち込む役割を果たしている。高く、少し鼻にかかり、演劇的で、時に自虐的でもある。その声によって、曲は単なるギターロックではなく、少し宇宙的で、少し奇妙なポップ劇場になる。
歌詞の面では、本作は愛や生への欲望、孤独、アメリカへの視線、自己嫌悪、滑稽な性、恐怖、願いを扱っている。大きなコンセプト・アルバムというより、ロックンロール的な旅の中で出会う感情の断片が並んでいる。タイトルの『The Hogyssey』が示すように、これは英雄的な冒険ではなく、少し間抜けで、少し派手で、少し切ない旅である。
音楽的には、ハードなギター曲と、メロディアスなポップソング、幻想的な曲のバランスがある。「Jupiter’s Moon」や「The Hogyssey」では宇宙的なスケールが、「This Is America」では英米の視点の交差が、「I Want to Live」ではストレートな生命力が、「At Least I Got Laid」では自虐的なユーモアが、「Wishing Well」では願いと余韻が表れる。曲ごとに表情は違うが、全体を貫くのは、ロックを演劇的な逃避として鳴らす感覚である。
弱点を挙げるなら、本作はデビュー作ほどシングル単位で強烈なフックが多いわけではない。また、2001年の時代感から見ると、サウンドや美学がやや古風に聞こえる部分もある。だが、その古風さは欠点であると同時に、Spacehogの存在理由でもある。彼らは最新のロックを作るというより、1970年代のロック幻想を1990年代以降のオルタナティブな感覚で再点火するバンドだった。
日本のリスナーにとって『The Hogyssey』は、グラムロックやパワーポップ、英国的なメロディアス・ロックを好む場合に非常に興味深い作品である。David BowieやQueen、T. Rexの華やかさと、1990年代オルタナティブロックのギターの厚みが同居しているため、クラシックロックと90年代ロックの橋渡しとしても聴ける。Spacehogは大きな主流にはなりきらなかったが、その分、独自のロマンを強く保ったバンドである。
総じて『The Hogyssey』は、Spacehogが自分たちのグラムロック的な宇宙旅行を、21世紀初頭にもう一度鳴らしたアルバムである。派手で、少し滑稽で、メロディアスで、孤独で、ロマンティック。ロックンロールの大げさな夢を信じながら、その夢が少し時代遅れであることも分かっている。その切なさこそが、本作の最大の魅力である。
おすすめアルバム
1. Spacehog – Resident Alien(1995)
Spacehogのデビュー作であり、「In the Meantime」を収録した代表作である。グラムロック、ブリットポップ、オルタナティブロックの要素が最も鮮やかに結びついており、『The Hogyssey』を理解するために欠かせない作品である。
2. Spacehog – The Chinese Album(1998)
セカンド・アルバムであり、デビュー作の路線をさらに多様化させた作品である。ギター・ロックの勢いに加え、より実験的でひねりのある楽曲も含まれており、『The Hogyssey』へ向かう過程を知ることができる。
3. David Bowie – The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars(1972)
Spacehogのグラムロック的な宇宙感覚と演劇性の重要な源流である。ロックスターを宇宙的なキャラクターとして演じる方法、退廃とメロディを結びつける手法は、Spacehogの音楽にも強く影響している。
4. Queen – Sheer Heart Attack(1974)
ハードロック、グラム、ポップ、コーラスワーク、演劇的な展開が凝縮されたQueen初期の重要作である。Spacehogの大げさなメロディ感覚や、ロックを劇場的に鳴らす姿勢と強く響き合う。
5. Supergrass – In It for the Money(1997)
1990年代英国ロックにおけるグラム/パワーポップ的な勢いを持つ重要作である。Spacehogよりもブリットポップ寄りだが、クラシックロックへの愛着、メロディの強さ、若々しいロックの推進力という点で関連性が高い。

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