アルバムレビュー：The Highlights by The Weeknd

アルバムレビュー

2025.04.21

発売日: 2021年2月5日
ジャンル: オルタナティブR&B、ポップ、エレクトロポップ

概要

『The Highlights』は、The Weekndが2021年にリリースした初のベスト・アルバムであり、彼の音楽キャリアを代表する18曲を収録したコンパイル作品である。

同年に開催された第55回スーパーボウル・ハーフタイムショーへの出演に合わせて発表され、多くの新規リスナーに向けた“入門編”としての役割を担っている。

本作は、初期のミックステープから世界的ヒットとなった『Blinding Lights』まで、各時代の代表曲を横断的に収録しており、The Weekndというアーティストの進化と多面性を一枚で体感できる構成となっている。

ジャンル的には、オルタナティブR&B、ドリームポップ、エレクトロファンク、シンセウェーブ、ニューウェーブなどを自由に横断しており、独自の世界観を築いてきた彼の軌跡が鮮明に刻まれている。

『After Hours』収録のシンセポップ・ナンバー。哀しげな旋律と踊れるビートの対比が印象的で、自己破壊的な恋愛の余韻を描く。

彼の代表曲ともいえる一曲。1980年代シンセポップへのオマージュを現代的に再構築し、世界中で爆発的なヒットを記録した。
疾走感とノスタルジアが交錯し、あらゆる世代に訴求する普遍性を持っている。

サックスソロが印象的なダンスチューン。ポップな装いながらも、視線に潜む真意や愛の不信をテーマにしており、軽やかさの中に陰りがある。

『Beauty Behind the Madness』からのメガヒット。マイケル・ジャクソンの影響を色濃く感じさせる歌唱と、中毒的なファンクビートが特徴。
ドラッグと恋愛を重ね合わせた寓話的なリリックが、ポップでありながらも深みを与える。

エロティックな世界観を前面に出したR&Bナンバー。ミックステープ期の暗いトーンを引き継ぎつつも、洗練されたサウンドでアダルトな雰囲気を漂わせる。

デビュー時の原点に立ち返る1曲。
情け容赦ない恋愛の実相と、自己喪失の誘惑を描いたこの曲は、The Weekndの世界観を最も明確に示すものとして、多くのファンにとって特別な意味を持つ。

ダークでサイケデリックなサウンドが支配する一曲。名声の裏にある猜疑心や分裂したアイデンティティがテーマ。
ラジオでは聴けない“裏の顔”を提示する代表的ナンバー。

『The Highlights』は、The Weekndというアーティストの歩みを“最もアクセスしやすい形”で凝縮した、導入口として非常に優れた作品である。

本作の面白さは、ただのヒット曲集ではない点にある。
それぞれの曲が個別に輝きつつも、全体として一貫した世界観—快楽と孤独、光と闇、肉体と精神の境界—を共有しており、無意識のうちに彼の物語へと引き込まれるように構成されている。

また、収録曲の並びにも配慮がなされており、過去から現在へと順を追うのではなく、聴き心地や感情の流れを優先した編集がなされている。
その結果、時間軸を超えてThe Weekndの本質が浮き彫りになっているのだ。

これから彼の作品を深掘りしていきたいリスナーにとってはもちろん、すでにファンである者にとっても、改めて彼の幅広さと一貫性を再確認できる一枚である。