発売日: 1986年3月5日
ジャンル: インディー・ロック、ポストパンク、フォークロック
『The Good Earth』は、The Feeliesがデビューアルバム『Crazy Rhythms』から6年のブランクを経てリリースしたセカンドアルバムだ。プロデューサーには、R.E.M.のピーター・バックを迎え、より有機的で温かみのあるサウンドが印象的な作品に仕上がっている。デビュー作の緊張感あるポストパンク的な要素に比べ、このアルバムではアコースティックギターやフォークロック的なアプローチが取り入れられ、よりリラックスした雰囲気が漂う。
アルバム全体を通して、ミニマルな演奏と繊細なアレンジが際立ち、シンプルながらも深い情緒を感じさせる一枚となっている。歌詞は郊外生活の平穏や自然とのつながりをテーマにしつつ、どこか内省的でノスタルジックな空気感が漂う。リズムセクションは依然としてタイトで正確だが、全体としては穏やかな音の流れが心地よく、静かにリスナーを引き込む。
以下、各トラックについて解説する。
1. On the Roof
アコースティックギターの軽快なリズムと控えめなボーカルが、アルバムの穏やかなトーンを象徴するオープニングトラック。郊外の生活や平穏な日常を描写した歌詞が印象的で、ゆったりとした空気感が心地よい。
2. The High Road
リバーブの効いたギターと、ミッドテンポの落ち着いたリズムが特徴の楽曲。控えめながらも感情的な深みを感じさせる一曲で、歌詞には選択や内面の葛藤が織り込まれている。
3. The Last Roundup
フォークロックの要素が色濃く反映された楽曲で、アコースティックギターが中心となった温かみのあるサウンドが特徴。タイトルが暗示するように、どこか終末的な雰囲気が漂っている。
4. Slipping (Into Something)
アルバムの中でも特にダイナミックな展開を見せる一曲。ゆったりとした始まりから、徐々にエネルギーを高めていく構成が魅力で、感情の高まりが音楽として表現されている。
5. Long Story
穏やかでリラックスしたトラック。単調に繰り返されるギターリフが心地よく、ミニマルなアプローチがアルバム全体の流れに調和している。
6. Moonlight
柔らかいアコースティックギターと夢見心地なメロディが夜の静けさを思わせる楽曲。控えめなボーカルとゆったりとしたリズムが、タイトル通り月明かりの下でのひとときを連想させる。
7. Only Life
疾走感のあるリズムが特徴の楽曲で、シンプルながらもポジティブなエネルギーを感じさせる。歌詞には日々の生活や自然との調和が表現されている。
8. The Good Earth
アルバムタイトル曲であり、中心的なテーマを反映した楽曲。郊外や自然への敬意を感じさせる詩的な歌詞と、オーガニックなアレンジが美しい調和を見せる。
9. Let’s Go
軽快なテンポと明るいメロディが印象的な楽曲。日常からの脱出や冒険をテーマにした歌詞が、アルバム全体の落ち着いた雰囲気にアクセントを与えている。
10. Two Rooms
シンプルなギターリフと控えめなボーカルが特徴のエンディングトラック。家庭や個人の空間を描写した歌詞が、アルバム全体のテーマを締めくくるように優しく響く。
アルバム総評
『The Good Earth』は、The Feeliesがポストパンク的な鋭さから離れ、フォークロックや郊外生活の温かさをテーマにした音楽へと進化を遂げた作品だ。シンプルなアレンジと控えめなパフォーマンスの中に、自然への敬意や日常の美しさを感じさせる深い情緒が宿っている。アルバム全体を通して流れる穏やかで有機的な雰囲気は、リスナーを心地よい場所へと導き、静かな感動を呼び起こす。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
R.E.M. – Murmur
The Feeliesと同じく控えめながらもエモーショナルなサウンドが特徴。フォークロックとポストパンクの融合が共通している。
Yo La Tengo – I Can Hear the Heart Beating as One
多様なジャンルを取り入れつつ、静けさと深い情緒を感じさせるアルバム。
Television – Adventure
控えめで繊細なギターワークとミニマルなアレンジが『The Good Earth』と響き合う作品。
The Byrds – The Notorious Byrd Brothers
フォークロックの先駆的な作品で、自然と調和した音楽的感覚が共通する。
Galaxie 500 – On Fire
シンプルで内省的な楽曲が揃うアルバムで、『The Good Earth』の落ち着いた雰囲気に通じる一枚。
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