アルバムレビュー:Sun Racket by Throwing Muses

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2020年9月4日

ジャンル:オルタナティヴ・ロック/インディー・ロック/ポスト・パンク/アート・ロック/ノイズ・ロック

概要

Throwing MusesのSun Racketは、1980年代からオルタナティヴ・ロックの深部で独自の音楽を作り続けてきたバンドが、長い時間を経てなお鋭さを失っていないことを示したアルバムである。Kristin Hershを中心に結成されたThrowing Musesは、1980年代半ばからアメリカン・インディー・ロックの重要な存在として活動してきた。彼女たちの音楽は、パンクやポスト・パンクの緊張感、変則的なリズム、神経質なギター、断片的で詩的な歌詞、そしてHershの強烈なヴォーカルによって特徴づけられる。

Throwing Musesは、Pixies、Sonic Youth、R.E.M.、Dinosaur Jr.The Breeders、Bellyなどと同じ時代のアメリカン・オルタナティヴの地層に属している。しかし、彼女たちの音楽はそのどれとも単純には重ならない。Pixiesのようなポップな爆発力や、Sonic Youthのようなノイズの理論性とは異なり、Throwing Musesの音楽は、内側からねじれた感情がそのまま曲の構造になったような独特の感触を持つ。曲はしばしば直線的に進まず、拍子やメロディが不意にずれ、歌詞は夢、記憶、身体感覚、怒り、幻覚のようなイメージを断片的に投げかける。

Sun Racketは、2013年のPurgatory/Paradise以来となるスタジオ・アルバムであり、バンドの長いキャリアの中でも非常に凝縮された作品である。Kristin Hersh、David Narcizo、Bernard Georgesという編成による演奏は、トリオであることを逆に強みにしている。ギター、ベース、ドラムという基本的なロック編成でありながら、音の隙間、リズムのねじれ、突然の爆発、声の切迫感によって、非常に立体的なサウンドを作り出している。

タイトルのSun Racketは、直訳すれば「太陽の騒音」「太陽のラケット」といった奇妙な響きを持つ。sunは光、生命、熱、眩しさを示す一方、racketは騒音、混乱、または不正な稼業を意味することもある。つまり、このタイトルには、明るさと暴力、光と騒音、自然のエネルギーと人間的な混乱が同居している。Throwing Musesの音楽はまさにそのようなものだ。美しいメロディの断片がありながら、そこには常にノイズ、歪み、ねじれた感情が入り込む。

本作は、後期のバンド作品でありながら、懐古的ではない。1980年代や1990年代のサウンドを再現するのではなく、Throwing Musesがもともと持っていた異物感を、現代の録音環境の中でそのまま生かしている。ギターは厚く、時に乾いており、リズムは硬く、ベースは曲の重心を鋭く支える。音は過剰に磨かれておらず、生々しい。ロック・バンドが部屋の中で鳴っているような物理的な感触がある。

Kristin Hershの存在は、当然ながら本作の中心である。彼女の声は、若い頃の鋭さとは違う形で、より深い傷と強度を持っている。彼女は歌うというより、感情や記憶の断片を身体から押し出すように発声する。歌詞は説明的ではなく、しばしば夢の中のイメージのように飛躍する。しかし、その断片性こそがHershの作詞の特徴であり、聴き手は意味を一つに固定するのではなく、言葉の質感や声の圧力から感情を受け取ることになる。

Sun Racketは、アルバム全体として非常に緊張感が高い。だが、それは若いバンドの衝動とは違う。ここにあるのは、長い時間を生き延びたミュージシャンが、なおも自分の内側にある不穏なものを手放していないという緊張である。年齢を重ねたバンドのアルバムには、しばしば落ち着きや円熟が期待される。しかしThrowing Musesの場合、成熟とは丸くなることではない。むしろ、より少ない音で、より深い不安を鳴らすこととして表れている。

日本のリスナーにとって、Sun RacketはThrowing Musesの後期作品としてだけでなく、オルタナティヴ・ロックの本質を再確認するアルバムとしても聴ける。ここには、流行に合わせた音も、分かりやすいノスタルジアもない。ただ、ギター、ベース、ドラム、声が、ねじれた感情をそのまま音に変えている。派手な代表曲集ではないが、バンドの核にある異様な生命力が凝縮された作品である。

全曲レビュー

1. Dark Blue

「Dark Blue」は、アルバムの冒頭を飾る楽曲であり、タイトルからして深い青、夜、海、沈み込む感情を連想させる。青はしばしば憂鬱や静けさを示す色だが、darkが加わることで、その色はさらに深く、重く、底の見えないものになる。Throwing Musesの音楽における青は、穏やかな空ではなく、沈んでいく水の色に近い。

音楽的には、ギターのざらつきとリズムの硬さが印象的である。曲は大きく開放されるというより、緊張を抱えたまま前進する。Kristin Hershの声は、冒頭から聴き手を不安定な内面へ引き込む。声には鋭さと疲労が同時にあり、長い時間を経た者だけが持つ圧力がある。

歌詞のテーマは、沈み込む感情、記憶の深部、あるいは自分の中にある暗い領域として読める。Throwing Musesの歌詞は、感情を直接説明するのではなく、色や身体感覚、断片的なイメージで伝える。この曲でも、dark blueという色そのものが、言葉にしにくい心の状態を代弁している。

オープニング曲として「Dark Blue」は非常に効果的である。アルバムは明るい挨拶ではなく、深い色の中へ沈み込むように始まる。Sun Racketというタイトルが持つ太陽の眩しさとは対照的に、最初に現れるのは暗い青である。この対比が、本作の複雑な感情の入口になっている。

2. Bywater

「Bywater」は、水辺、あるいはニューオーリンズの地区名を連想させるタイトルを持つ楽曲である。水はThrowing Musesの歌詞世界において、流れ、記憶、身体、沈黙、再生を含む重要なイメージとして働く。この曲では、場所の名前のようでありながら、同時に水のそばにいる感覚も漂う。

音楽的には、比較的しなやかなリズムを持ちながらも、曲の内部には不安定な揺れがある。David Narcizoのドラムは過剰に前へ出るのではなく、曲の骨格を硬く支え、Bernard Georgesのベースは深い重心を作る。ギターはその上で、鋭くも流動的な線を描く。

歌詞のテーマは、場所の記憶として読める。ある場所は、そこにいた人や出来事と結びつき、後になっても身体の中に残る。Bywaterという言葉は、具体的な地名であると同時に、記憶の水辺のように響く。そこでは、過去が完全には流れ去らず、足元に残っている。

「Bywater」は、Sun Racketの中で空間感覚を広げる曲である。Throwing Musesの音楽は内面的でありながら、場所の気配も強い。現実の風景と精神の風景が重なり合うところに、この曲の魅力がある。

3. Maria Laguna

「Maria Laguna」は、人物名と水辺を思わせる言葉が組み合わさったタイトルを持つ。Mariaという名前は宗教的・古典的な響きを持ち、Lagunaはラグーン、潟、閉じられた水域を連想させる。人物と水のイメージが重なることで、曲は非常に幻想的な入口を持つ。

音楽的には、Throwing Musesらしいねじれたギター・ロックが展開される。曲はまっすぐに進むようでいて、細部のリズムやメロディが不意にずれる。Hershのヴォーカルは、人物を語っているようでありながら、その人物が現実に存在するのか、記憶や夢の中の存在なのかを曖昧にする。

歌詞のテーマは、女性像、記憶、あるいは神話化された人物への視線として読める。Maria Lagunaは具体的な人物であると同時に、心の中に現れる像でもある。Throwing Musesの歌詞では、人物名が出てきても、その人物の物語が分かりやすく説明されることは少ない。むしろ名前そのものが、不気味な存在感を持って響く。

「Maria Laguna」は、本作の中でも物語性と抽象性が入り混じった曲である。聴き手はMariaが誰なのかを完全には知らない。しかし、その名前が曲の中で発せられることで、強いイメージが立ち上がる。この説明しなさが、Throwing Musesの大きな魅力である。

4. Bo Diddley Bridge

「Bo Diddley Bridge」は、ロックンロールの重要人物Bo Diddleyの名前を含むタイトルを持つ楽曲である。Bo Diddleyといえば、独特のリズム・パターンとギター・ロックの原始的な力を象徴する存在である。Throwing Musesがこの名前を用いることは、ロックの原始的なリズム性と、自分たちのねじれたギター・ロックをつなぐ橋を示しているように思える。

音楽的には、リズムの反復とギターの硬い響きが重要である。曲は単純なロックンロールの再現ではなく、Bo Diddley的な身体性を、Throwing Muses流の不穏な構造へ変換している。リズムは身体を動かすが、その動きはどこかぎこちなく、不安を含んでいる。

歌詞のテーマは、音楽的記憶、ルーツへの接続、または古いリズムが現在へ橋をかける感覚として読める。bridgeという言葉は、曲の構成部分であるブリッジでもあり、場所と場所をつなぐ橋でもある。Bo Diddleyの名を冠した橋は、ロックの過去とThrowing Musesの現在をつなぐ象徴として機能している。

「Bo Diddley Bridge」は、Sun Racketの中で特にロックの根源的なリズムを意識させる楽曲である。ただし、それは懐古的な引用ではない。Throwing Musesは古いリズムをそのまま再現するのではなく、自分たちの不安定な音楽言語へ引き入れている。

5. St. Charles

「St. Charles」は、聖人名や地名を連想させるタイトルを持つ楽曲である。アメリカにはSt. Charlesと呼ばれる地名が複数あり、ニューオーリンズのSt. Charles Avenueを思い浮かべることもできる。本作には水辺や南部的な地名を感じさせる曲名がいくつかあり、この曲もその流れに置かれる。

音楽的には、緊張感を保ちながらも、どこか広がりのある曲である。ギターは鋭く、リズムは重いが、曲全体には道や街路を進んでいくような感覚がある。Hershの声は、風景を描写しているようでいて、実際には内面の混乱を語っているようにも響く。

歌詞のテーマは、街路、信仰、移動、記憶として読める。St.という表記は聖性を示す一方で、地名としては日常的でもある。Throwing Musesの世界では、聖なるものと汚れたもの、現実と幻覚がしばしば同じ場所に存在する。この曲にも、その重なりがある。

「St. Charles」は、本作の空間的な広がりを深める曲である。具体的な場所を思わせながらも、歌詞はその場所を明確に説明しない。地名は、記憶や幻影の入口として置かれている。

6. Frosting

「Frosting」は、ケーキなどの上に塗る甘いアイシングを意味するタイトルである。甘さ、装飾、表面を覆うものというイメージを持つ。Throwing Musesがこのようなタイトルを用いると、単純な甘さだけでなく、何かを覆い隠す表面、過剰な飾り、あるいは甘さの裏にある不快さが浮かび上がる。

音楽的には、タイトルの甘さに反して、曲には不穏な緊張がある。ギターの響きはざらつき、リズムは硬く、Hershのヴォーカルには切迫感がある。甘い言葉や装飾的な表面の下に、別の感情が潜んでいるように聞こえる。

歌詞のテーマは、表面と内側のズレとして読める。frostingは、ケーキの外側をきれいに見せる。だが、その下に何があるかは覆われている。人間関係や記憶にも同じことがある。表面は甘く、整っていても、その内側には苦味や腐敗があるかもしれない。この曲は、その二重性を音楽的に表現している。

「Frosting」は、Sun Racketの中でもタイトルと音の対比が印象的な楽曲である。Throwing Musesは、美しいものや甘いものをそのまま肯定しない。甘さの下にある不気味さを聴かせるところに、このバンドらしさがある。

7. Kay Catherine

「Kay Catherine」は、人物名をタイトルにした楽曲である。Throwing Musesの歌詞において、人物名はしばしば具体的な説明を伴わず、記憶や夢の中の像として現れる。Kay Catherineもまた、聴き手には詳しく説明されないまま、強い存在感を持つ名前として提示される。

音楽的には、緊張と叙情が入り混じっている。ギターは鋭く、リズムは不安定な感情を支える。Hershのヴォーカルは、名前を呼ぶことでその人物を現在へ呼び戻すように響く。曲は人物の伝記ではなく、その名前が語り手の内面に引き起こす反応を描いている。

歌詞のテーマは、人物の記憶、失われた関係、または心の中に残る女性像として読める。名前は、過去のすべてを呼び出す鍵になる。Kay Catherineという二つの名前の響きには、親密さと距離が同時にある。知っているようで知らない、近いようで遠い人物である。

「Kay Catherine」は、本作の中でHershの詩的な人物描写がよく表れた曲である。説明ではなく、声の響きと名前の重さによって感情を伝える。Throwing Musesの歌詞の不思議な力がここにある。

8. Upstairs Dan

「Upstairs Dan」は、非常に具体的で日常的な人物名を持つタイトルである。「上の階のDan」と訳せるこの言葉は、集合住宅や近所の人物、あるいは生活の中にいる少し奇妙な存在を連想させる。Throwing Musesは、日常の人物を取り上げながら、それをどこか夢の中のキャラクターのように変えてしまう。

音楽的には、曲には独特の動きがある。リズムはどこかぎこちなく、ギターは不穏な線を描く。上の階から聞こえてくる物音のように、曲全体が少し斜め上から響いてくるような感覚もある。タイトルの具体性と、音楽の奇妙さがよく結びついている。

歌詞のテーマは、日常空間の中に潜む不気味さとして読める。隣人や上の階の住人は、近くにいるが、実際にはよく知らない存在である。音や気配だけが伝わり、想像が膨らむ。この曲は、その近さと不明瞭さの感覚を描いている。

「Upstairs Dan」は、Throwing Musesが身近な題材から不思議な緊張を作る力を示す曲である。大きな物語ではなく、上の階の人物という小さな設定から、日常の中の不安を引き出している。

9. Milk at McDonald’s

「Milk at McDonald’s」は、本作の中でも特に奇妙で印象的なタイトルを持つ楽曲である。McDonald’sという世界的なファストフード・チェーンと、milkという日常的でやや無垢な飲み物が結びつくことで、消費社会、子ども時代、人工的な明るさ、そして身体的な違和感が同時に浮かび上がる。

音楽的には、タイトルが持つポップな記号性とは裏腹に、不穏な緊張がある。Throwing Musesは、日常的で消費文化的な言葉を使っても、それを軽いポップ・ソングにはしない。ギターとリズムは鋭く、Hershの声はその場面を少し歪んだ記憶として描いているように響く。

歌詞のテーマは、日常の中にある不自然さとして読める。McDonald’sは、均質化された現代生活の象徴である。そこで飲むmilkは、清潔で健康的なイメージを持ちながら、同時にどこか奇妙で人工的に感じられる。この曲は、そのような消費社会の小さな違和感を、個人的な記憶や身体感覚と結びつけている。

「Milk at McDonald’s」は、Sun Racketの中でも特にThrowing Musesらしいタイトル・センスを持つ楽曲である。何気ない言葉が、不安で奇妙な光を帯びる。日常が少しだけ異常に見える瞬間を音楽にしている。

10. Sunray Venus

「Sunray Venus」は、アルバムの最後を飾る楽曲であり、タイトルからして非常に象徴的である。sunrayは太陽光線、Venusは金星、愛と美の女神、または明けの明星を連想させる。太陽の光と金星の神話的イメージが結びつき、アルバムの終曲として、光、美、熱、距離、天体的な孤独を感じさせる。

音楽的には、終曲らしい広がりを持ちながらも、完全な解放には向かわない。ギターは強く、リズムは重いが、曲にはどこか浮遊する感覚もある。Hershの声は、アルバム全体で積み上げられてきた不安や記憶を最後に天体的なイメージへ押し上げるように響く。

歌詞のテーマは、光と身体、愛と距離、美と破壊として読める。Venusは愛と美の象徴だが、太陽光線と結びつくことで、その美は眩しく、近づきすぎると焼かれるようなものになる。Throwing Musesの音楽において、光は必ずしも救済ではない。むしろ、強すぎる光は現実を暴き、痛みを露出させる。

終曲として「Sunray Venus」は非常にふさわしい。アルバムは暗い青から始まり、さまざまな場所、人物、記憶、消費文化の断片を通り、最後に太陽と金星のイメージへ到達する。しかしそれは穏やかな終着点ではない。光の中にも騒音と痛みがある。その感覚が、Sun Racketの結論として残る。

総評

Sun Racketは、Throwing Musesが長いキャリアを経てもなお、非常に独自の緊張感を保ち続けていることを証明するアルバムである。1980年代から活動するバンドの後期作品として聴くと、本作は驚くほど鋭い。若い頃の衝動を単に再現しているのではなく、年齢と経験を経たうえで、なおも音楽の中に不穏さ、奇妙さ、身体的な切迫感を残している。

本作の最大の魅力は、トリオとしての音の強度である。Kristin Hershのギターと声、David Narcizoのドラム、Bernard Georgesのベースは、それぞれが過剰に装飾されることなく、曲の内部で鋭く機能している。音数は多すぎないが、隙間があるからこそ緊張が高まる。Throwing Musesの音楽では、空間が単なる余白ではなく、不安が入り込む場所として働く。

Kristin Hershの作詞と歌唱は、本作でも非常に特異である。歌詞は説明的ではなく、人物名、地名、色、食べ物、身体感覚、神話的イメージが断片的に現れる。「Dark Blue」「Maria Laguna」「Bo Diddley Bridge」「Milk at McDonald’s」「Sunray Venus」といったタイトルだけでも、現実と夢、日常と神話、ロックの歴史と個人的記憶が入り混じっていることが分かる。Hershは物語を語るというより、意識の中を通過する像をそのまま音楽にしている。

この断片性は、聴き手に分かりやすい解釈を与えない。そのため、Sun Racketは一聴してすべてを理解できるアルバムではない。しかし、そこにこそ魅力がある。意味が完全に開かれないからこそ、曲は何度も聴くたびに違う表情を見せる。ある時は怒りのアルバムに聞こえ、別の時は記憶のアルバムに聞こえ、また別の時は身体の中で鳴るノイズのようにも聞こえる。

音楽的には、Throwing Musesの過去作にあった変則性と鋭さが保たれている一方で、全体の音像には後期ならではの凝縮感がある。曲は比較的コンパクトだが、単純ではない。ギターのフレーズはしばしば不意に角度を変え、リズムは安定しているようで微妙に揺れ、声はメロディと叫びの間を行き来する。伝統的なロックのフォーマットを使いながら、その内部を常に歪ませている。

Sun Racketというタイトルも、本作を象徴している。太陽は通常、光や生命の象徴として理解されるが、ここではracket、つまり騒音や混乱と結びつく。光は癒しではなく、騒がしく、痛く、眩しすぎるものでもある。このタイトルは、アルバム全体の感覚をよく表している。美しいものは不穏であり、明るいものは暴力的であり、日常的なものは奇妙に歪んでいる。

本作は、ノスタルジックなオルタナティヴ・ロック復興とは距離を置いている。Throwing Musesは、過去のサウンドを懐かしく再演しているわけではない。むしろ、彼女たちがもともと持っていた異物感が、今の時代においても変わらず異物として響くことを示している。これは非常に重要である。オルタナティヴ・ロックが一つの様式や懐かしい時代として消費される中で、Throwing Musesはなおも扱いづらく、奇妙で、簡単には整理できない音を鳴らしている。

日本のリスナーにとって、Sun Racketは、Throwing Musesを初めて聴く作品としてはやや難しいかもしれない。バンドの代表作であるThe Real RamonaやUniversityの方が、メロディや時代性の面で入りやすい部分もある。しかし、Throwing Musesというバンドの本質、つまり内面のねじれをギター・ロックの形に変える力を知るには、本作は非常に重要である。後期作品でありながら、バンドの核が明確に見える。

このアルバムには、分かりやすい救済や結論はない。暗い青、水辺、人物名、聖なる地名、甘い表面、上の階の住人、ファストフードの牛乳、太陽光線と金星。これらの断片は、直線的な物語に収束しない。しかし、それらはすべてHershの声とバンドの演奏によって結びつき、一つの不安定な宇宙を作っている。その宇宙は騒がしく、眩しく、時に痛い。だが、そこには紛れもない生命力がある。

Sun Racketは、Throwing Musesが老成ではなく、持続する異常さによって到達したアルバムである。オルタナティヴ・ロックの歴史における重要バンドが、過去の栄光に頼らず、今なお自分たちだけの言語で鳴っている。その事実だけでも、この作品には大きな価値がある。美しさと騒音、記憶と身体、太陽と傷が同時に鳴る、濃密な後期作品である。

おすすめアルバム

1. Throwing Muses『The Real Ramona』

1991年発表の代表作。Throwing Musesの変則的なギター・ロックと、比較的開かれたメロディが高いバランスで結びついたアルバムである。Sun Racketの鋭さに惹かれたリスナーが、バンドのよりポップな側面を知るために適している。

2. Throwing Muses『University』

1995年発表のアルバム。オルタナティヴ・ロックとしての力強さと、Kristin Hershのソングライティングの鋭さが明確に表れた作品である。Sun Racketの後期的な凝縮感と比較すると、1990年代中期のバンドの躍動がよく分かる。

3. Kristin Hersh『Hips and Makers』

1994年発表のソロ・アルバム。Throwing Musesとは異なり、よりアコースティックで内省的な方向へ向かった作品である。Hershの歌詞世界、声の強度、個人的な幻覚性を別の角度から理解できる重要作である。

4. Pixies『Doolittle』

1989年発表のオルタナティヴ・ロック名盤。静と動のダイナミクス、奇妙な歌詞、鋭いギター・サウンドという点で、Throwing Musesと同時代のボストン周辺オルタナティヴの文脈を理解するうえで重要である。ただし、Throwing Musesの方がより内面的でねじれた構造を持つ。

5. Belly『Star』

1993年発表のアルバム。Throwing Musesにも在籍したTanya Donellyによるバンドの代表作であり、オルタナティヴ・ロックとドリーム・ポップ的なメロディが結びついている。Throwing Muses周辺の人脈と、より親しみやすいメロディックな側面を知るうえで関連性が高い。

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