Son of a Gun by The La’s（1990）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.05.23

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “反抗はポップに鳴る”

1. 歌詞の概要

「Son of a Gun（ならず者の息子）」は、The La’s（ザ・ラーズ）が1990年にリリースした唯一のアルバム『The La’s』に収録された楽曲のひとつで、陽気なメロディとは裏腹に、皮肉と批判をはらんだメッセージ性の強い楽曲である。
2分に満たないこの小曲は、社会的規範や欺瞞、空虚な権威への嘲笑を、軽快なギターサウンドとともに投げつける。
まるで口笛を吹くように無邪気に、しかしその実、非常に鋭い視点で現実を見据えている。

「Son of a Gun」という英語表現は、文字通りには「銃の息子」、転じて「ならず者」「やっかいな奴」という意味の俗語。
だがこの曲では、それが「自らの出自」や「社会的ラベル」、さらには“自分を型にはめようとするもの”すべてへのアンチテーゼとして使われている。
「オレはそんなもんじゃない」と笑い飛ばすような、反骨と自由への希求が、この小さな歌の中には詰まっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

この楽曲もまた、バンドの中心人物であるリー・メイヴァース（Lee Mavers）によって書かれており、彼の“反体制的”かつ“人間臭い”視点がストレートに反映された楽曲と言える。
アルバム『The La’s』は全体として、過剰な装飾やプロダクションを排除し、60年代のビートバンド的なシンプルさと精神性を現代に蘇らせることを目指して制作された作品であるが、「Son of a Gun」はまさにそのコンセプトを体現する1曲である。

60年代ブリティッシュ・インヴェイジョンのエッセンス（特にThe KinksやThe Whoの影響）を感じさせながらも、リー・メイヴァース独特の“無垢な怒り”がにじむこの曲は、ポップでありながら鋭い。
まるで子供のいたずらのように見えて、その裏には大人社会への強い違和感が潜んでいる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Son of a Gun」の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を併記する。

“Don’t you know / He’s the son of a gun”
「知らないのか？ / あいつは“ならず者の息子”なんだぜ」

“And you know / He’s gonna shoot everyone”
「そして分かってるだろ？ / あいつはみんなを打ちのめすつもりさ」

“If you’re gonna act like a star / Better take it real far”
「スターみたいに振る舞うつもりなら / 本気でやらなきゃ意味がないぜ」

“Son of a gun, son of a gun…”
「ならず者の息子、ならず者の息子…」

歌詞全文はこちらで確認可能：
The La’s – Son of a Gun Lyrics | Genius

4. 歌詞の考察

「Son of a Gun」は、その陽気なメロディとは裏腹に、社会的な仮面やステレオタイプに対する鋭い皮肉を投げかけている。
とくに「If you’re gonna act like a star, better take it real far」というフレーズは、薄っぺらなポーズではなく、“本物”であれ、というメイヴァースの信念が滲む一節である。

また、「He’s gonna shoot everyone」というセンテンスも、そのまま暴力性を表すのではなく、“偽善や欺瞞を撃ち抜く”という比喩的な読み方がふさわしい。
リー・メイヴァースの詞は常に多義的であり、ここでもまた「ならず者」とは、本当に反社会的な存在ではなく、“社会の論理に屈しない者”として描かれている。

そして繰り返される「Son of a gun…」というリフレインは、まるで子どもが遊び歌を歌うかのように無邪気だが、その響きの中には「お前は誰の言葉を信じる？」という投げかけも込められている。
それはまさに、メイヴァース自身が音楽業界、社会、あるいは過去の自分と対峙しているようにも聴こえるのだ。