Ride(ライド)は、1988年にイギリス・オックスフォードで結成されたバンドで、シューゲイズというジャンルの草分け的存在として知られています。轟音のギターサウンドと、エフェクトを多用した「音の壁」を特徴とする彼らの音楽は、まるで夢の中にいるかのような幻想的なサウンドスケープを生み出し、1990年代初頭のUKロックシーンで一世を風靡しました。ボーカルとギターを務めるマーク・ガードナーとアンディ・ベルを中心に構成されたRideは、シューゲイズブームを代表するバンドとして、後のオルタナティブロックシーンにも大きな影響を与えています。
アーティストの背景と歴史
Rideは、1988年にマーク・ガードナー(ボーカル・ギター)、アンディ・ベル(ボーカル・ギター)、スティーヴ・キレイ(ドラム)、ローレンス・コルバート(ベース)の4人で結成されました。彼らは、エフェクトペダルを駆使した轟音ギターとドリーミーなボーカルスタイルでシューゲイズという新しい音楽ジャンルを確立し、特にMy Bloody ValentineやCocteau Twinsからの影響を受けた重層的なサウンドで話題を集めます。
1990年には初のEP『Ride』をリリースし、UKインディチャートで注目を集めました。同年にはアルバム『Nowhere』を発表し、轟音ギターと幻想的なメロディの組み合わせで大成功を収めます。続く『Going Blank Again』(1992年)でもサイケデリックな要素を加えたサウンドが高く評価されました。しかし、1996年に一度解散。2014年には再結成し、アルバム制作やツアーで再び活躍の場を広げ、現在もシューゲイズシーンの中心的なバンドとして活動を続けています。
音楽スタイルと影響
Rideの音楽スタイルは、シューゲイズ特有の「音の壁」と呼ばれるギターの轟音、リバーブやディレイを多用した空間的なサウンドが特徴です。彼らは、複雑なギターエフェクトを駆使して、分厚いサウンドの層を構築し、ノイズと美しいメロディが溶け合う独自の世界観を作り上げました。また、アンディ・ベルとマーク・ガードナーの重なり合うボーカルは、楽器のようにサウンドと溶け込み、リスナーを包み込むような一体感を生み出しています。
彼らが影響を受けたアーティストには、My Bloody Valentine、Cocteau Twins、Sonic Youth、The Jesus and Mary Chainが挙げられます。特に、My Bloody Valentineからの影響は色濃く、フィードバックノイズやリバーブの活用が、Rideの音楽スタイルを形作っています。
代表曲の解説
Vapour Trail
「Vapour Trail」は、1990年のアルバム『Nowhere』に収録されたRideの代表曲で、シューゲイズの名曲として愛されています。シンプルで繊細なギターリフと、切ないメロディが印象的で、曲の終盤に入るストリングスが哀愁を際立たせます。歌詞には青春や淡い恋の儚さが表現されており、どこか懐かしさを感じさせる一曲です。甘く切ないメロディとノスタルジックな雰囲気が、シューゲイズというジャンルの美しさを象徴しています。
Leave Them All Behind
「Leave Them All Behind」は、1992年のアルバム『Going Blank Again』のオープニングを飾る楽曲で、Rideの中でも特に評価が高い作品です。9分にも及ぶこの曲は、轟音のギターとドラマチックな構成が特徴で、サイケデリックなサウンドが印象的です。ギターリフが徐々に盛り上がり、曲全体を壮大な音の波で包み込むこの楽曲は、彼らの音楽性が最もよく表れた一曲であり、シューゲイズとサイケデリックロックが融合したRideの真骨頂ともいえます。
Seagull
「Seagull」もデビューアルバム『Nowhere』に収録された曲で、シューゲイズ特有の轟音ギターが炸裂するダイナミックな一曲です。力強いドラムとフィードバックノイズが組み合わさり、まるで嵐の中を進むかのような緊張感が漂います。曲の展開が激しく変化し、ノイズとメロディが一体となるこの曲は、Rideの初期の代表的なシューゲイズサウンドを感じさせます。
アルバムごとの進化
Nowhere
1990年にリリースされたデビューアルバム『Nowhere』は、シューゲイズの名盤として広く知られている作品で、Rideの音楽性が詰まった一枚です。「Vapour Trail」や「Seagull」などの名曲が収録され、分厚いギターサウンドと儚げなメロディが特徴です。波が打ち寄せるようなアルバムカバーも象徴的で、この作品を通してRideはシューゲイズというジャンルの確立に大きく貢献しました。
Going Blank Again
1992年の『Going Blank Again』は、前作のシューゲイズサウンドに加え、よりサイケデリックでポップな要素が加わったアルバムです。「Leave Them All Behind」や「Twisterella」などの楽曲が収録され、サウンドの厚みが増し、バンドの成長が感じられる一枚です。Rideにとって商業的にも成功したアルバムであり、バンドの人気を一層高めることとなりました。
Weather Diaries
2017年、再結成後に発表したアルバム『Weather Diaries』は、Rideの新しいスタートを感じさせる作品です。シューゲイズの要素を残しながらも、現代的なアプローチを取り入れており、初期のファンだけでなく新たなリスナーも楽しめる内容となっています。リリースから数十年が経っても、彼らの音楽が色あせないことを証明したアルバムです。
影響を受けたアーティストと音楽
Rideは、My Bloody ValentineやCocteau Twins、Sonic Youthなど、シューゲイズやノイズロック、サイケデリックロックからの影響を公言しています。特にMy Bloody Valentineのフィードバックノイズや、Cocteau Twinsの空間的なギターワークが、彼らのサウンドに多大な影響を与えています。また、ビートルズやクリエイションレコードの影響も受けており、ポップなメロディとノイズの融合がRideの音楽に独特の美しさをもたらしています。
影響を与えたアーティストと音楽
Rideは、シューゲイズやオルタナティブロックの多くのバンドに影響を与えました。例えば、SlowdiveやLush、The Verveなどのシューゲイズバンドや、後のオルタナティブロックシーンにもその影響は広がっています。また、現代のインディーロックやシューゲイズリバイバルシーンでも、Rideのサウンドがリスペクトされ続けており、DIIVやBeach Fossilsなどのバンドにも影響を与えています。
まとめ
Rideは、シューゲイズのパイオニアとして轟音のギターと美しいメロディで、夢幻的な音の世界を創り出し、音楽の新たな可能性を追求し続けてきました。彼らの音楽は、ノイズとポップが溶け合う独自のサウンドで、多くのリスナーに強い印象を残し、後続のアーティストにも多大な影響を与えています。もしRideの音楽に触れる機会があれば、シューゲイズの持つ幻想的な音の美しさを堪能し、夢のような音の旅を楽しんでください。
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