発売日: 1977年
ジャンル: ブルースロック、ハードロック、ジャズロック
リサイクルではなく“再錬”——グループの終焉を告げる音の集約
『Recycled』は、Edgar Winter Group名義としては最後のスタジオアルバムとなった1977年作である。
タイトルの“Recycled（再生・再利用）”という言葉には、過去のエッセンスを甦らせるという意図と、キャリアの節目としての自嘲的なニュアンスが同居しているようにも思える。
本作では、ブルース、ファンク、ハードロック、ジャズの要素が再構成され、これまでの活動を振り返るかのような多層的なアプローチがとられている。
バンドとしてのまとまりは徐々に失われつつも、エドガー自身の演奏・作編曲能力は依然として高水準を維持しており、過渡期の強度が感じられる一枚となっている。
全曲レビュー
1. Puttin’ It Back
ハードロック的なギターリフとソウルフルなヴォーカルが印象的なオープニング。
「元に戻す」というタイトルが、アルバム全体のリサイクル的コンセプトを象徴する。
2. Leftover Love
軽快なリズムとファンキーなグルーヴが融合したポップロックナンバー。
“残された愛”というテーマが、70年代的な洒脱な言葉遊びの中に切なさを孕んでいる。
3. Shake It Off
アップテンポのリズムとブラスアレンジが映える、ディスコ・ファンク寄りの楽曲。
時代の流れに呼応するような、軽快なダンスナンバーとして機能している。
4. Stickin’ It Out
ジャズロック的なリズムチェンジと不穏なコード進行。
グループの内的な緊張感が滲み出たような、実験的な構造をもつ。
5. Open Up
メロウなバラードで、エドガーの内省的なヴォーカルが際立つ。
「心を開いて」というリリックが、アルバム中もっともパーソナルな一瞬を演出している。
6. Parallel Love
スペーシーなエフェクトとサイケデリックな構成が異色。
“平行世界の愛”というテーマが、幻想的なサウンドスケープとともに描かれる。
7. The In And Out Of Love Blues
ブルースの原点回帰を感じさせる、シンプルで力強い楽曲。
ギターとヴォーカルが絡み合う中に、エドガーの本質的なルーツが見える。
8. Thank You For the Good Times
感謝の気持ちをストレートに伝える、グループ最後の“幕引き”にふさわしいトラック。
爽やかでノスタルジックなメロディが、終章の余韻を残す。
総評
『Recycled』は、Edgar Winter Groupというバンドがその活動を終えるにあたって放った、静かで誠実な別れの手紙のようなアルバムである。
突出したヒット曲や革新性は見られないかもしれない。だが、キャリアの積み重ねによって得た引き算の美学や、ジャンル横断的な視点が全体に宿っている。
この作品における“リサイクル”とは、過去の模倣ではなく、時間を経た素材を熟成させ、再び価値を与える行為である。
それはまさに、当時30代半ばを迎えたエドガーが、自身の音楽を再構築しようとする試みだったのだろう。
本作は、派手さよりも深みを求めるリスナー、あるいはEdgar Winter Groupの軌跡を総括的に味わいたい者にとって、静かに響く“ラスト・ピース”となる。
おすすめアルバム
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Traffic – When the Eagle Flies
バンドの終焉を前にしたスピリチュアルで内省的な空気感が共通。 -
Jeff Beck – Blow by Blow
ジャズロックとファンクの融合という意味で、本作と響き合うインスト重視の名盤。 -
Steely Dan – Aja
洗練されたアレンジとジャンル横断的な構築力において近いセンスを持つ。 -
Boz Scaggs – Down Two Then Left
AOR寄りのポップさとブルースフィールが本作の柔らかさと重なる。 -
Little Feat – Time Loves a Hero
南部ロックとファンク、ジャズのミクスチャー的アプローチが、本作の多様性と相似している。
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