
1. 楽曲の概要
「On My Way」は、ノルウェーのDJ/プロデューサーであるAlan Walker、アメリカのシンガー/俳優であるSabrina Carpenter、プエルトリコ出身のレゲトン/ラテン・ポップ・アーティストであるFarrukoが連名で発表した楽曲である。2019年3月21日にシングルとしてリリースされた。Sabrina Carpenterの単独曲として扱われることもあるが、正式なアーティスト表記はAlan Walker, Sabrina Carpenter & Farrukoである。
作曲・作詞にはAlan Walker、Sabrina Carpenter、Farrukoのほか、Julia Karlsson、Gunnar Greve、Fredrik Borch Olsen、Jesper Borgen、Øyvind Sauvik、Anders Frøen、Anton Rundbergらが関わっている。プロダクションはAlan WalkerとBig Fredによる。リリース元はMERおよびSony Music系で、Apple Music上ではKreatell MusicからSony Music Entertainment Swedenへのライセンス表記も確認できる。
この曲は、Alan Walkerの代表的なエレクトロニック・ポップの文脈に、Sabrina Carpenterの英語ボーカルとFarrukoのスペイン語パートを組み合わせた国際的なコラボレーション曲である。Walkerは「Faded」以降、メランコリックなメロディとEDMのドロップを組み合わせるスタイルで広く知られるようになった。「On My Way」でも、その特徴は保たれているが、ラテン的なリズム感と二言語構成によって、よりグローバルなポップ・ソングとして仕上げられている。
また、この曲はモバイルゲーム『PUBG Mobile』の1周年記念イベントとのタイアップ曲としても知られている。楽曲のテーマである出発、自己決定、困難に向かう姿勢は、ゲーム内のサバイバル的なイメージとも結びつきやすい。ミュージック・ビデオも冒険的な物語性を持ち、単なる恋愛曲ではなく、行動する人物のテーマ曲として機能している。
2. 歌詞の概要
「On My Way」の歌詞は、別れや傷ついた関係から離れ、自分の道を進む決意を描いている。Sabrina Carpenterが歌う英語パートでは、語り手が相手への未練や感情を抱えながらも、最終的には自分を守るために歩き出す姿勢が示される。タイトルの「On My Way」は、「私はもう向かっている」「自分の道を進んでいる」という意味であり、停滞から移動への転換を表している。
歌詞の語り手は、完全に強い人物として描かれているわけではない。むしろ、痛みや迷いを抱えている。それでも、過去の関係に戻るのではなく、自分の意思で前へ進もうとする。この点が、曲の中心的なメッセージである。失恋の歌でありながら、悲しみを長く引き延ばすのではなく、行動へ変換する構造になっている。
Farrukoのスペイン語パートは、曲に別の視点とリズムを加えている。英語パートが内面の決意を比較的まっすぐに伝えるのに対し、スペイン語パートはよりリズムに乗った流れで、関係の終わりや自立の感覚を補強する。二言語構成によって、楽曲は特定の国のポップ・ソングにとどまらず、国際的なEDM/ラテン・ポップの形式を取っている。
歌詞全体としては、「誰かに依存した状態から抜け出すこと」が主題である。相手を責めるだけではなく、自分がどう動くかに焦点が置かれている。そのため、この曲は失恋ソングであると同時に、自己回復の歌でもある。Sabrina Carpenterの声はその主題を強く支えており、弱さを隠さないまま前へ進む感覚を作っている。
3. 制作背景・時代背景
「On My Way」が発表された2019年は、EDMがポップ・ミュージックの中心的な語法として定着した後の時期である。2010年代前半のフェスティバル向けEDMのように、大きなドロップだけで楽曲を成立させるスタイルから、より歌、メロディ、国際的なコラボレーションを重視する流れへ移っていた。Alan Walkerの音楽もその文脈にある。
Walkerの楽曲は、強いビートと同じくらい、哀愁のあるメロディを重視する。代表曲「Faded」では、明快なシンセ・リフと孤独感のあるボーカルが大きな特徴だった。「On My Way」もその延長線上にあるが、よりリズムが細かく、ラテン・ポップやムーンバートン的な揺れを取り込んでいる。ドロップの爆発力よりも、歌の輪郭とリズムの推進力が前に出ている。
Sabrina Carpenterにとって、この曲はディズニー・チャンネル出身の俳優/シンガーというイメージから、より国際的なポップ・アーティストへ広がっていく時期のコラボレーションである。2018年にはアルバム『Singular: Act I』を発表し、2019年には『Singular: Act II』へつながる活動を行っていた。彼女の歌声は、派手に張り上げるよりも、感情の輪郭を保ちながらポップ・トラックに馴染むタイプであり、「On My Way」ではその特性が活かされている。
Farrukoの参加も重要である。彼はレゲトン、ラテン・トラップ、ポップの領域で活動してきたアーティストであり、英語圏のEDMとの接続によって楽曲の聴取範囲を広げている。2010年代後半のポップ・ミュージックでは、ラテン音楽のグローバルな影響力が非常に大きくなっていた。「On My Way」は、その流れの中で、北欧EDM、アメリカン・ポップ、ラテン・ミュージックを結びつけた曲といえる。
また、PUBG Mobileとの連動は、2010年代後半以降の音楽の広がり方を象徴している。楽曲がアルバムやラジオだけでなく、ゲーム、動画プラットフォーム、SNSを通じて拡散する時代に、「On My Way」は非常に適した作りをしている。サビはすぐに記憶に残り、トラックは映像やゲームのテンションに合いやすく、歌詞は個人的な決意とアクション的な物語の両方に結びつく。
4. 歌詞の抜粋と和訳
So take aim and fire away
和訳:
だから狙いを定めて、撃てばいい
このフレーズは、曲の持つ戦闘的なイメージを端的に示している。語り手は傷つけられることを恐れていないというより、すでに傷つくことを引き受けたうえで進もうとしている。恋愛関係の終わりを語っている歌詞でありながら、言葉選びにはアクション映画やゲーム的な感覚もある。
I’m on my way
和訳:
私はもう自分の道を進んでいる
この一節は、曲全体の結論である。語り手は相手の元にとどまるのではなく、自分の方向へ動き出している。「on my way」は目的地に到着したことではなく、移動中であることを示す表現である。そのため、この曲の主題は完全な回復ではなく、回復へ向かう行動にある。
歌詞引用は批評・解説に必要な最小限にとどめた。歌詞全文は権利者によって管理される著作物であり、ここでは楽曲理解に必要な短い範囲のみを扱っている。
5. サウンドと歌詞の考察
「On My Way」のサウンドは、Alan WalkerらしいメロディックなEDMを基盤にしている。冒頭から、暗さを帯びたコード感と緊張感のあるリズムが配置され、すぐにSabrina Carpenterのボーカルが入る。音数は過度に多くないが、シンセの質感、低音、リズムの刻みが組み合わされ、曲全体に移動感を与えている。
リズム面では、典型的な四つ打ちEDMというより、ムーンバートンやラテン・ポップに近い揺れがある。テンポは速すぎず、ビートは重すぎない。これにより、クラブ向けの強さを保ちながら、歌を前面に出す余地が生まれている。Farrukoのスペイン語パートが自然に入るのも、このリズム設計によるところが大きい。
Sabrina Carpenterのボーカルは、曲の感情の中心を担っている。彼女は強いビブラートや過剰なフェイクで聴かせるのではなく、比較的まっすぐな発声で歌詞を伝える。そのため、語り手の決意が押しつけがましくならず、内面から自然に出てくる言葉として響く。特にサビでは、声の透明感とトラックの冷たい質感が合わさり、孤独と前進の感覚が同時に表れる。
Farrukoのパートは、曲に温度差を与えている。Sabrinaの英語パートがメロディアスで感情的な軸を作るのに対し、Farrukoのスペイン語パートはリズムを強調し、曲をより身体的な方向へ動かす。これによって、「On My Way」は単なる英語圏のEDMバラードではなく、ラテン・ポップの流れを取り込んだダンス・トラックとして成立している。
Alan Walkerのプロダクションは、派手な展開よりも、記憶に残るフレーズと世界観の統一を重視している。ドロップは攻撃的に爆発するというより、メロディを引き継ぎながら曲を広げる役割を持つ。これは「Faded」以降のWalker作品に共通する特徴であり、歌とインストゥルメンタルの境界をなめらかにする作りである。
歌詞とサウンドの関係では、「自分の道を進む」という主題が、曲の構成そのものに表れている。冒頭では迷いと緊張があり、サビで決意が明確になり、ドロップで言葉を超えた推進力に変わる。つまり、歌詞の中で語られる「出発」が、音楽的にもリズムとメロディの前進として表現されている。
また、この曲は悲しみを過度に暗く描かない。別れや痛みを扱いながら、トラックは常に前へ進んでいる。ここに、2010年代後半のポップ・ソングらしい感覚がある。感情を告白するだけでなく、プレイリスト、ゲーム、動画、ライブ、SNSで機能するための明快なエネルギーが必要とされる時代の曲である。
Sabrina Carpenterのキャリア全体で見ると、「On My Way」は彼女の代表的なソロ作品とは少し異なる位置にある。後年の「Nonsense」や「Espresso」のような、キャラクター性や言葉遊びを前面に出したポップとは違い、この曲ではフィーチャリング・ボーカリストとして、Alan Walkerの世界観の中に声を置いている。しかし、その中でも彼女の声は匿名的にならず、曲の感情面を支える重要な役割を果たしている。
6. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Faded by Alan Walker
Alan Walkerの代表曲であり、メランコリックなメロディとEDMの構成を結びつけた楽曲である。「On My Way」の冷たいシンセ感や孤独を含んだポップ性が好きな人には自然につながる。Walkerの音楽的な基盤を理解するうえでも重要な曲である。
- Alone by Alan Walker
孤独と連帯をテーマにした楽曲で、Walkerらしいシンセ・メロディと強いサビが特徴である。「On My Way」と同じく、個人的な感情を大きなエレクトロニック・サウンドへ広げている。歌詞の主題も、孤独の中で前へ進む感覚と近い。
- Sue Me by Sabrina Carpenter
Sabrina Carpenterのソロ曲で、自立と自己肯定を明るく打ち出したポップ・ソングである。「On My Way」では抑制された決意が中心だが、「Sue Me」ではより軽快で攻めた態度が前面に出る。Sabrinaのポップ・アーティストとしての個性を知るには聴きやすい曲である。
- Bad Time by Sabrina Carpenter
Julia Karlssonとの制作上のつながりもあるSabrina Carpenterの楽曲である。恋愛関係のタイミングや距離感を扱いながら、ポップなメロディに落とし込んでいる。「On My Way」の英語パートにある感情の整理の仕方と比較しやすい。
- Calma (Remix) by Pedro Capó & Farruko
Farrukoのラテン・ポップ的な側面を知るうえで重要な曲である。「On My Way」ではEDMの中にスペイン語パートを加える役割を担っているが、この曲ではよりリラックスしたラテン・ポップの魅力が前面に出ている。Farrukoの声とリズム感に注目したい場合に適している。
7. まとめ
「On My Way」は、Alan Walker、Sabrina Carpenter、Farrukoによる国際的なコラボレーション曲である。正式にはSabrina Carpenterの単独曲ではなく、3組のアーティスト名義で発表されたシングルであり、北欧EDM、アメリカン・ポップ、ラテン・ミュージックの要素を結びつけている。
歌詞の中心にあるのは、傷ついた関係から離れ、自分の道を進む決意である。悲しみや迷いは残っているが、曲はそこにとどまらない。「I’m on my way」というフレーズが示すように、重要なのは完全に回復した状態ではなく、回復へ向かって歩き出すことにある。
サウンド面では、Alan WalkerらしいメロディックなEDMを軸に、Sabrina Carpenterの澄んだボーカルとFarrukoのラテン的なリズム感が組み合わされている。ドロップは過度に攻撃的ではなく、歌のメロディを支えながら曲全体を前進させる。PUBG Mobileとのタイアップも含め、2010年代後半の音楽がゲーム、映像、ストリーミングを通じて広がる状況をよく示す楽曲である。
Sabrina Carpenterのキャリアだけで見ると、後年のソロ・ヒットとは異なる位置づけにあるが、彼女の声が国際的なダンス・ポップの中でどのように機能するかを示した曲として重要である。「On My Way」は、失恋、自己決定、移動、グローバルなポップ・プロダクションが一つにまとまった、2019年らしいエレクトロニック・ポップである。
参照元
- Alan Walker, Sabrina Carpenter & Farruko’s “On My Way” / Billboard
- On My Way – Single / Apple Music
- On My Way / Wikipedia
- Alan Walker 日本公式ニュース / Sony Music Japan
- Alan Walker, Sabrina Carpenter, Farruko – On My Way / Discogs
- On My Way / Shazam
- On My Way Lyrics / Genius

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