
1. 楽曲の概要
「Morning in LA」は、イギリス・ロンドン出身のロック・バンド、White Liesが2016年に発表した楽曲である。4作目のスタジオ・アルバム『Friends』に収録され、アルバムではオープニング曲「Take It Out on Me」に続く2曲目に配置されている。リリース情報では2016年10月6日公開のトラックとして確認でき、アルバム『Friends』は同年10月7日にBMGからリリースされた。
White Liesは、Harry McVeigh、Charles Cave、Jack Lawrence-Brownを中心とするバンドで、2009年のデビュー・アルバム『To Lose My Life…』によって注目された。初期の彼らは、Joy Division、Echo & the Bunnymen、Interpolなどを想起させる暗いポストパンク/ニューウェイヴ的なサウンドで語られることが多かった。しかし、作品を重ねるにつれて、より明るいシンセ、広がりのあるコーラス、1980年代ポップの要素を取り入れるようになった。
「Morning in LA」は、その変化がよく表れた曲である。初期White Liesの重く暗いムードは残しつつも、サウンドはより開放的で、メロディは大きく、シンセサイザーの質感も明るい。タイトルにあるロサンゼルスは、実際の都市名であると同時に、距離、夢、逃避、映画的な明るさを象徴する場所として機能している。
歌詞では、語り手がロサンゼルスの朝を思い浮かべながら、離れた相手や過去の時間を振り返る。曲名は明るいが、内容は単純な西海岸賛歌ではない。むしろ、眩しい場所にいるはずなのに、心の中には距離や喪失が残っている。その落差が、「Morning in LA」の中心的な魅力である。
2. 歌詞の概要
「Morning in LA」の歌詞は、ロサンゼルスの朝という具体的な時間と場所を軸にしながら、恋愛や人間関係の距離を描いている。語り手は、相手と共有した時間、あるいは相手と離れてしまった状態を思い返している。曲は明るい朝のイメージを持ちながら、歌詞の感情はどこか曇っている。
ロサンゼルスは、ポップ・ミュージックの中でしばしば夢の場所として描かれる。映画、太陽、成功、逃避、自由といったイメージが強い。しかし、この曲ではその都市の明るさが、そのまま幸福にはつながらない。朝が来ても、問題が解決するわけではない。新しい日が始まっているのに、語り手の感情は過去に引き戻されている。
歌詞の中では、相手への思いが直接的に語られる一方で、完全な再会や救済は示されない。White Liesの歌詞には、愛や死、孤独、距離を大きなスケールで扱う傾向があるが、この曲ではそれが比較的ポップな形に整理されている。言葉は重くなりすぎず、しかし背後には関係の不安定さがある。
「Morning in LA」というタイトルは、希望の始まりにも聞こえるが、曲を通して聴くと、むしろ感情のずれを示す言葉として響く。外の世界は明るく、朝が来ている。だが、内面はまだ夜の続きにいる。この外側と内側の差が、歌詞の大きなテーマである。
3. 制作背景・時代背景
『Friends』は、White Liesの4作目のアルバムである。前作『Big TV』から約3年後に発表され、バンドがよりポップな方向へ踏み出した作品として位置づけられる。アルバムには「Take It Out on Me」「Morning in LA」「Hold Back Your Love」「Don’t Want to Feel It All」「Is My Love Enough?」などが収録されている。
初期のWhite Liesは、低音の効いたベース、重いドラム、陰影のあるギター、Harry McVeighの深い声によって、ダークなポストパンクの継承者として受け止められた。だが『Friends』では、より明るいシンセ・ポップ的な質感が前に出ている。1980年代のニューウェイヴやアリーナ・ポップの影響が分かりやすく、楽曲のスケールも大きい。
「Morning in LA」は、アルバムの序盤に置かれているため、作品全体の方向性を早い段階で示す役割を持つ。1曲目「Take It Out on Me」がアルバムの入り口として力強いフックを提示した後、この曲はより都市的で、明るく、少しノスタルジックな空気を作る。White Liesが初期の暗さを完全に捨てたわけではなく、それを光の強い場所へ移し替えたことが分かる。
2010年代半ばのロック・シーンでは、2000年代後半のポストパンク・リバイバルから出てきたバンドが、それぞれ次の方向を探していた。White Liesもその一つである。暗いギター・ロックだけではなく、シンセサイザーや大きなコーラスを取り入れ、フェスティバルや大きな会場でも映えるサウンドへ向かった。「Morning in LA」は、その変化を象徴する曲の一つといえる。
4. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞は権利保護の対象であるため、ここでは批評上必要な短い範囲のみ引用する。
Morning in LA
和訳:
ロサンゼルスの朝
この短いフレーズは、曲全体の舞台を決定する。ロサンゼルスの朝は、明るさ、光、再出発を連想させる。しかし曲の中では、その明るさが語り手の感情と完全には一致しない。むしろ、外の光と内面の曇りの対比を作っている。
I can see you
和訳:
君が見える
この言葉は、相手の不在と記憶を同時に示す。実際に相手が目の前にいるのか、あるいは頭の中に浮かんでいるだけなのかは曖昧である。その曖昧さが、曲のノスタルジックな感覚につながっている。
Don’t you want to know?
和訳:
知りたいと思わないのか?
この問いかけには、相手に届ききらない感情がある。語り手は何かを伝えたいが、それが本当に相手に届くかは分からない。問いの形を取ることで、曲には未解決の関係性が残る。
5. サウンドと歌詞の考察
「Morning in LA」のサウンドは、White Liesの中でも明るい部類に入る。シンセサイザーは広がりを持ち、ドラムは大きく、コーラスは開放的である。初期の「Death」や「To Lose My Life」のような重い疾走感とは異なり、この曲ではよりポップで滑らかな推進力が重視されている。
冒頭から、曲は明確なメロディとリズムで進む。ギターは前面で荒々しく鳴るというより、シンセやリズムと一体になって音の空間を作る。White Liesの音楽では、ギター・ロックとシンセ・ポップの境界がしばしば曖昧になるが、「Morning in LA」はそのバランスがよく表れた曲である。
Harry McVeighのボーカルは、この曲でも大きな役割を持つ。彼の声は低く、重みがあるため、明るいサウンドの上に乗っても軽くなりすぎない。もし同じメロディをもっと高く軽い声で歌えば、曲は単なる爽やかなポップ・ソングになったかもしれない。しかしMcVeighの声があることで、ロサンゼルスの朝の明るさの中にも、どこか影が残る。
サビでは、メロディが大きく広がる。ここで曲は、White Liesらしいスケール感を獲得する。ただし、その開放感は完全な幸福感ではない。歌詞が示すのは、相手との距離や、記憶の中にいる人物への呼びかけである。音は開けているが、言葉はまだ過去に引っかかっている。このずれが曲の聴きどころである。
リズムは安定しており、曲全体をまっすぐ前へ進める。だが、歌詞の感情は前進しきれていない。朝が来て、街は動き出している。しかし語り手の心は、相手との関係の中で止まっている。この「外の時間は進むが、内面の時間は止まる」という構造が、サウンドと歌詞の対比として表れている。
アルバム『Friends』の中で「Morning in LA」は、White Liesがより色彩のある音へ向かったことを示す曲である。「Hold Back Your Love」や「Is My Love Enough?」にも通じる、大きなシンセ・ポップ的な響きがあり、バンドの初期イメージから一歩離れている。一方で、愛や距離をめぐる不安は変わっていない。つまり、テーマはWhite Liesらしいまま、音の表面がより明るくなっている。
この曲のタイトルにロサンゼルスが使われていることも重要である。White Liesはロンドンのバンドだが、ここではイギリス的な曇り空ではなく、アメリカ西海岸の光を舞台にしている。だが、その光は単純な解放ではない。むしろ、明るすぎる場所にいることで、内面の孤独がよりはっきり見える。これが、曲の映画的な感覚につながっている。
White Liesの楽曲には、しばしば大きな場所や強いイメージが登場する。死、都市、愛、逃避、巨大な風景。そうしたスケールの大きさは、「Morning in LA」にもある。ただし、この曲では悲劇性よりも、少し淡いノスタルジーが前に出ている。かつての相手、遠い場所、戻れない時間。それらが、明るいポップ・サウンドの中でゆっくり浮かび上がる。
6. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Take It Out on Me by White Lies
同じ『Friends』のオープニング曲で、アルバムのポップな方向性を強く示す楽曲である。「Morning in LA」よりも力強く、フックも明確で、White Liesが2010年代半ばに目指した大きなロック・サウンドを理解しやすい。
- Hold Back Your Love by White Lies
『Friends』収録曲で、シンセ・ポップ的な明るさと恋愛の不安が結びついている。「Morning in LA」と同じく、初期の暗さを残しながら、よりダンサブルで開かれた音像を持つ。アルバムの中心的な流れを知るうえで重要である。
- There Goes Our Love Again by White Lies
2013年の『Big TV』収録曲で、White Liesが初期のポストパンク的な重さから、よりポップな方向へ進んだ時期の代表曲である。「Morning in LA」の前段階として聴くと、バンドの変化が分かりやすい。
- Somebody Else by The 1975
シンセ・ポップの音像と、恋愛における距離や未練を結びつけた楽曲である。White LiesよりもR&B寄りの滑らかさを持つが、夜や都市の中で相手を思い続ける感覚には共通点がある。
ポストパンク・リバイバル以降のバンドが、大きなメロディと暗いギター・サウンドを結びつけた例である。White Liesの初期的な陰影に近く、「Morning in LA」の明るさと対比して聴くと、同時代のロックの幅が見える。
7. まとめ
「Morning in LA」は、White Liesの4作目のアルバム『Friends』に収録された楽曲であり、バンドが初期の暗いポストパンク的な音から、より明るく大きなシンセ・ポップ/ロックへ進んだことを示す一曲である。アルバム序盤に置かれることで、作品全体の色彩とスケールを早い段階で提示している。
歌詞では、ロサンゼルスの朝という明るい舞台を用いながら、相手との距離や記憶の中に残る感情が描かれる。朝は新しい始まりを示すが、語り手の内面は完全には前へ進んでいない。光のある場所で孤独が見えてくる、その対比が曲の中心である。
サウンド面では、広がりのあるシンセサイザー、大きなコーラス、安定したリズム、Harry McVeighの低く重い声が組み合わされている。音は明るく開けているが、声と歌詞には影がある。この二重性こそ、White Liesらしい魅力である。
「Morning in LA」は、バンドの最大の代表曲ではないかもしれない。しかし、『Friends』というアルバムの方向性を理解するうえでは重要な曲である。暗さを光の中へ移し替え、距離や未練をポップなスケールで描いた、2010年代中盤のWhite Liesを象徴する楽曲といえる。
参照元
- White Lies – Friends / Spotify
- White Lies – Friends / Apple Music
- White Lies – Morning in LA / Dork
- White Lies – Friends / Dork
- White Lies – Friends / Discogs
- White Lies – Morning in LA / SoundCloud
- White Lies – Friends album information / Discogs

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