発売日: 2016年7月12日
ジャンル: インディー・ロック、ドリーム・ポップ、ローファイ
『Habit』は、Snail Mailことリンジー・ジョーダンが高校生のときにリリースしたデビューEPであり、そのシンプルながらも感情的な深みを持つギターロックサウンドで一躍注目を浴びた作品である。ジョーダンの透明感のあるボーカルと、クリーンなギタートーンが織り成す楽曲は、10代ならではの不安や孤独感をテーマにしており、シンプルな構成ながらも感情的な奥行きがある。このEPを通じて、彼女のソングライティングの才能が多くのリスナーに認識され、後に続くアルバム『Lush』への期待を高めるきっかけとなった。
各曲ごとの解説:
- Thinning
このEPの代表曲ともいえるオープニングトラック。心地よいギターのアルペジオとジョーダンの憂いを帯びたボーカルが、青春時代の不安感や孤立感を描き出す。シンプルなメロディが耳に残り、若さゆえの感情の揺れ動きを見事に表現している。ジョーダンのギターワークが特に際立つ一曲。 - Habit
タイトル曲であり、自己反省と成長をテーマにした曲。繰り返されるギターリフが楽曲に安定感を与えつつ、ジョーダンのヴォーカルが淡々とした語り口で感情を伝えている。歌詞の中で日常に埋もれがちな葛藤を静かに表現しており、控えめなアレンジながらも深い印象を残す。 - Static Buzz
このトラックでは、よりゆったりとしたテンポで進行し、静かに感情を積み重ねていく。途中でギターが高鳴りを見せるクライマックスがあり、内省的なトーンが際立つ。メロウなムードの中で、静けさの中に潜むエネルギーが垣間見える瞬間が魅力。 - Dirt
ギターのリフが印象的なミッドテンポの曲。歌詞は人間関係の複雑さや自己嫌悪に焦点を当てており、シンプルな言葉で感情の深みを描き出している。ジョーダンの歌声が飾らず率直であるため、リスナーに共感を呼び起こす。ミニマルなアレンジが楽曲の持つ感情的な重みを一層引き立てている。 - Slug
この曲では、より明るくキャッチーなメロディが際立っている。軽やかなギターとシンプルなリズムが一体となり、ジョーダンの声が透明感を持って響く。感情的な歌詞は相変わらずだが、楽曲全体としては前向きな雰囲気が漂い、アルバムの中で一息つけるような爽やかさを感じる。 - Stick
EPを締めくくるこのトラックは、静かなイントロから始まり、徐々に感情が高まっていく構成が特徴的。内省的でありながらも、最後に向かって感情のクライマックスを迎え、余韻を残す形で終わる。ジョーダンの控えめなボーカルと、感情を抑えつつも強く訴えかける歌詞が、アルバム全体をまとめ上げている。
アルバム総評:
『Habit』は、Snail Mailのリリース作の中でも特にシンプルで直感的な作品であり、若さゆえの不安や孤独感、成長への葛藤が色濃く反映されている。リンジー・ジョーダンの控えめでありながらも強い個性を持った歌声と、ミニマルながらも印象的なギターワークが、インディーロックの新たな才能として彼女を際立たせている。『Habit』は、彼女が後にリリースするフルアルバム『Lush』に通じるサウンドの基盤を築き、彼女の今後の成長を予感させる作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Stranger in the Alps by Phoebe Bridgers
フォークとインディー・ロックを融合させた、感情的な深みのあるアルバム。Snail Mailと同じく、シンプルな楽器編成の中に鋭い歌詞が光る。 - Masterpiece by Big Thief
ローファイなサウンドと内省的な歌詞が特徴の作品。Snail Mailの『Habit』と同様に、シンプルなサウンドでありながら感情的なインパクトが強い。 - Sprained Ankle by Julien Baker
最小限の楽器編成と感情的なボーカルが印象的なデビューアルバム。繊細な歌詞と深い内省が、Snail Mailのサウンドと共鳴する。 - Puberty 2 by Mitski
個人的な感情や成長をテーマにしたインディー・ロックアルバム。若さや不安感、孤独といったテーマを共有し、Snail Mailのリスナーに響く要素が多い。 - Capacity by Big Thief
アコースティックなサウンドと内省的なリリックが特徴的なアルバム。感情的な歌詞とシンプルなアレンジが、『Habit』に通じる部分がある。
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