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ギター・ポップを知るなら、まず代表曲から
ギター・ポップは、エレクトリックギターを中心にしながら、強いメロディとコンパクトな楽曲構成を重視するポップ/ロックの系譜である。日本では特に1980年代以降の英国インディーやネオアコ、1990年代のインディーポップなどと結びつけて語られることが多い。
特徴的なのは、ギターの音が必ずしも「重さ」のために使われないことである。コードを細かく刻むカッティング、アルペジオ、12弦ギターを思わせる響き、クリーンから軽い歪みまでの明るい音色などによって、メロディを引き立てる役割を担う。
The SmithsやThe La’s、Teenage Fanclubといった定番から、The Sundays、The Wannadiesまで代表曲を聴き比べれば、ギター・ポップという言葉が示す音楽の広さがつかみやすい。
ギター・ポップとはどんなジャンルか
ギター・ポップは厳密な音楽ジャンルというより、ギターを軸としたメロディアスなポップミュージックをまとめる呼称として使われることが多い。その源流には1960年代のThe Beatles、The Byrdsなどがあり、1970年代末以降にはパンクやポストパンクを通過した新しい世代によって、その方法論が更新された。
特に1980年代の英国インディーは重要である。The Smithsをはじめとするバンドが、当時のメインストリームとは異なるギターサウンドを提示し、C86周辺やインディーポップへ大きな影響を与えた。
日本で「ギター・ポップ」と呼ばれる範囲にはネオアコと重なる部分も多い。ネオアコの軽快なコード感や洗練されたポップセンスが好きなら、ギター・ポップにも入りやすい。
ギター・ポップの代表曲10選
1. There Is a Light That Never Goes Out by The Smiths
1986年のアルバム『The Queen Is Dead』に収録された「There Is a Light That Never Goes Out」は、The Smithsを代表する楽曲であり、80年代英国ギター・ポップの魅力を知るうえでも重要な一曲である。
Johnny Marrのギターはハードロック的なリフやソロを前面に出すのではなく、コード、アルペジオ、細かな装飾によって楽曲全体を支えている。そこへMorrisseyのヴォーカルと印象的なメロディが重なる。
ギター・ポップにおいて「ギターが目立つこと」と「ギターソロが主役になること」は同じではない。この曲を聴けば、アンサンブルのなかでギターがポップなメロディを支える感覚を理解しやすい。
2. Just Like Honey by The Jesus and Mary Chain
The Jesus and Mary Chainが1985年のデビューアルバム『Psychocandy』で発表した「Just Like Honey」は、甘いポップメロディとノイズギターを結びつけた代表曲である。
フィードバックを多用したバンドとして知られる彼らだが、この曲の中心にあるのは非常にシンプルで親しみやすいメロディだ。ノイズとポップを対立させず、同時に鳴らしてしまう方法は、その後のインディーポップやシューゲイザーにも大きな影響を与えた。
クリーンなギターだけではないギター・ポップを知るために適した一曲であり、よりノイジーなインディーロックへの入口にもなる。
3. Can’t Be Sure by The Sundays
1989年にシングルとして発表されたThe Sundaysの「Can’t Be Sure」は、80年代末から90年代初頭の英国ギター・ポップを代表する楽曲のひとつである。翌1990年のデビューアルバム『Reading, Writing and Arithmetic』にも収録された。
Harriet Wheelerの透明感のあるヴォーカルと、David Gavurinによる流麗なギターが大きな特徴だ。ギターは細かなフレーズを重ねながら曲を動かし、強いディストーションに頼らず豊かな音像を作っている。
The Smiths以降のジャングリーなギターロックを知りたい初心者にもおすすめしやすい。ヴォーカルとギターの絡みに注目して聴きたい一曲である。
4. There She Goes by The La’s
The La’sの「There She Goes」は1988年に最初のシングルが発表され、その後1990年の唯一のスタジオアルバム『The La’s』にも収録された。ギター・ポップという言葉から連想される魅力を非常にわかりやすく体現した一曲である。
冒頭から鳴る印象的なギターフレーズ、簡潔なコード進行、すぐに覚えられるメロディが特徴で、楽曲は余計な要素をほとんど必要としない。1960年代ポップから受け継いだ簡潔さを、80年代末の英国ロックとして鳴らしている。
ギター・ポップ初心者なら最初に聴いておきたい曲である。短い曲のなかでメロディとギターがどれだけ強い印象を残せるのかがわかる。
5. Here’s Where the Story Ends by The Sundays
1990年の『Reading, Writing and Arithmetic』に収録された「Here’s Where the Story Ends」は、The Sundaysの代表曲のひとつである。
軽快なアコースティック/エレクトリックギターの響きとHarriet Wheelerのヴォーカルが中心となり、派手なアレンジを使わずに強いメロディを聴かせる。ギターの音数は多いが、それぞれのフレーズがヴォーカルを邪魔せず、曲全体にリズムと動きを与えている。
ジャングルポップやネオアコに近い音を好む人にも入りやすく、ギター・ポップの繊細な側面を知るための好例である。
6. Star Sign by Teenage Fanclub
Teenage Fanclubが1991年のアルバム『Bandwagonesque』で発表した「Star Sign」は、90年代ギター・ポップを代表する一曲である。
スコットランド出身のTeenage Fanclubは、The ByrdsやBig Starなどに通じるメロディとハーモニーを、90年代の歪んだギターサウンドへ取り込んだ。ノイズを含んだギターでありながら、曲の中心には常にポップな旋律がある。
オルタナティブ・ロックのギターサウンドと、60年代以来のポップなソングライティングがどのように結びついたのかを理解するのに適している。
7. Lloyd, I’m Ready to Be Heartbroken by Camera Obscura
Camera Obscuraが2006年のアルバム『Let’s Get Out of This Country』で発表した「Lloyd, I’m Ready to Be Heartbroken」は、2000年代のインディーポップ/ギター・ポップを代表する楽曲のひとつである。
タイトルはLloyd Coleへの言及を含み、80年代以降の英国インディーポップの系譜を意識した曲でもある。軽快なリズム、明瞭なメロディ、控えめながら効果的なギターとストリングスが組み合わされている。
ギター・ポップが80年代や90年代だけの音楽ではなく、その後もインディーポップのなかで継承されてきたことを示す一曲である。
8. You and Me Song by The Wannadies
スウェーデンのThe Wannadiesによる「You and Me Song」は、1990年代のギター・ポップを象徴する楽曲のひとつである。1994年のアルバム『Be a Girl』に収録され、その後広く知られるようになった。
静かなパートと大きく広がるコーラスの対比が特徴で、シンプルなメロディをギターバンドのダイナミクスによって効果的に聴かせている。英国以外にもギター・ポップ的な感覚が広がっていたことを示す好例だ。
キャッチーなサビが明確なので、インディー音楽に詳しくない人でも入りやすい。90年代らしいギターサウンドを楽しみたい場合にもおすすめである。
9. Sparky’s Dream by Teenage Fanclub
1995年のアルバム『Grand Prix』に収録された「Sparky’s Dream」は、Teenage Fanclubのメロディメーカーとしての魅力が凝縮された一曲である。
ベースを担当するGerard Loveが書いた楽曲で、明るいギター、伸びやかなメロディ、コーラスワークが自然に組み合わされている。『Bandwagonesque』期のファズを前面に出したサウンドと比較すると、より整理されたギター・ポップとして楽しめる。
Teenage Fanclubを初めて聴くなら有力な入口である。ギター、メロディ、ハーモニーというギター・ポップの基本要素が非常に明確に聞こえる。
10. If You Don’t Want Me to Destroy You by Super Furry Animals
Super Furry Animalsが1996年のデビューアルバム『Fuzzy Logic』で発表した「If You Don’t Want Me to Destroy You」は、ブリットポップ期の英国から登場した個性的なギター・ポップである。
彼らはサイケデリック・ロックや電子音楽など幅広い要素を取り込んだバンドだが、この曲ではメロディアスなヴォーカルとギターを軸にした比較的ストレートな魅力を楽しめる。
90年代半ば以降、ギター・ポップがブリットポップやネオ・サイケデリアなどと重なりながら発展していったことを知るうえでも興味深い一曲だ。
初心者におすすめの3曲
最初に聴く3曲としておすすめしたいのは、The La’s「There She Goes」、The Smiths「There Is a Light That Never Goes Out」、Teenage Fanclub「Sparky’s Dream」である。
「There She Goes」は、ギター・ポップの魅力を最もシンプルな形で理解できる。印象的なギターフレーズとメロディだけで曲を成立させるソングライティングは、この音楽の基本に近い。
「There Is a Light That Never Goes Out」ではJohnny Marrのギターワークを通して、80年代英国インディーの洗練されたアンサンブルを味わえる。「Sparky’s Dream」まで進めば、その系譜が90年代により厚みのあるギターサウンドと結びついたこともわかる。
関連ジャンルへの広がり
ギター・ポップの軽快なコードや繊細なアレンジが気に入ったなら、ネオアコを掘り下げるとよい。ジャズやソウルなども取り込んだ洗練されたサウンドを持つ作品が多く、ギター・ポップとの境界が曖昧なアーティストも少なくない。
一方、The Jesus and Mary Chainの「Just Like Honey」のようなノイズギターに惹かれた場合は、ノイズポップやシューゲイザーへ進むとよい。ポップなメロディを維持しながらギターの歪みやフィードバックを拡大していく方向性を楽しめる。
まとめ
ギター・ポップは、ギターの音色そのものだけではなく、メロディ、コード、ハーモニー、コンパクトなソングライティングを重視する音楽である。The Smithsの緻密なギターワーク、The La’sの簡潔なポップソング、The Sundaysの流麗なアンサンブル、Teenage Fanclubのメロディとハーモニーなど、代表曲を聴き比べるとその幅が見えてくる。
初心者なら、まずThe La’s「There She Goes」で基本的な魅力をつかみ、The Smiths「There Is a Light That Never Goes Out」で80年代英国インディーへ進み、Teenage Fanclub「Sparky’s Dream」で90年代のギター・ポップを聴くと流れを理解しやすい。
そこからネオアコ、インディーポップ、ノイズポップ、シューゲイザーなどへ広げていけば、ギターという楽器がポップミュージックのなかで生み出してきた多彩なサウンドをさらに深く楽しめるのである。

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