
イントロダクション
Frankie Goes to Hollywood(フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド)は、1980年代のイギリス音楽シーンを強烈に揺さぶったリヴァプール出身のポップバンドである。メンバーは、ボーカルのHolly Johnson(ホリー・ジョンソン)、ボーカル/ダンサーのPaul Rutherford(ポール・ラザフォード)、ギターのBrian Nash(ブライアン・ナッシュ)、ベースのMark O’Toole(マーク・オトゥール)、ドラムのPeter Gill(ピーター・ギル)。彼らは、ニューウェイヴ、シンセポップ、ハイエナジー、ダンス、ロック、クラブカルチャー、政治的挑発、セクシュアルなイメージを一つに混ぜ、80年代ポップの中でも特に過激で巨大な現象となった。
Frankie Goes to Hollywood、略してFGTHは、活動期間だけを見れば非常に短い。だが、彼らが1984年に放った衝撃は桁違いだった。デビューシングル「Relax」は、性的な内容を理由にBBCで放送禁止となりながら、逆に話題を爆発させて全英1位へ到達した。The Guardianは、BBCが同曲をラジオとテレビで禁止したのち、曲が全英1位へ上昇し、5週間首位を維持したと伝えている。(theguardian.com)
続く「Two Tribes」、「The Power of Love」も全英1位を獲得し、Frankie Goes to Hollywoodは、デビューからわずかな期間で社会現象になった。1984年のデビューアルバムWelcome to the Pleasuredomeは、ZTT Recordsからリリースされ、Trevor Hornの豪華で先鋭的なプロダクション、Paul Morleyによるメディア戦略、そしてバンドの持つリヴァプール的な荒さとセクシュアルな挑発が結びついた、80年代ポップの金字塔である。
彼らの音楽は、単なる「派手な80年代サウンド」ではない。そこには、快楽、恐怖、戦争、メディア、検閲、同性愛的イメージ、消費社会、冷戦時代の不安が詰め込まれている。「Relax」は欲望の爆発であり、「Two Tribes」は核戦争時代のダンスミュージックであり、「The Power of Love」は混乱の時代に差し出された祈りだった。
Frankie Goes to Hollywoodは、80年代ポップがどれほど過剰で、政治的で、セクシーで、危険で、同時に商業的になり得るかを証明したバンドである。
アーティストの背景と歴史
Frankie Goes to Hollywoodは、1980年頃にイギリス・リヴァプールで結成された。リヴァプールといえばThe Beatlesの街として知られるが、70年代後半から80年代初頭には、ポストパンク、ニューウェイヴ、クラブカルチャー、アートスクール的感覚が入り混じる独自の音楽環境を持っていた。その中から、FGTHは異様な存在感を放つバンドとして現れた。
初期の彼らは、完成されたスタジオポップのグループというより、クラブ、ライヴ、テレビ出演を通じて注目を集める挑発的なパフォーマンス集団に近かった。Holly Johnsonは、既にリヴァプールのアート/パンクシーンで活動していた人物であり、その声とルックス、毒のあるユーモア、性的に曖昧で挑発的な存在感がバンドの顔となった。Paul Rutherfordもまた、バンドの視覚的・身体的なインパクトを高める重要な存在だった。
彼らの運命を大きく変えたのが、ZTT Recordsとの契約である。ZTTは、プロデューサーのTrevor Horn、ジャーナリスト/思想家のPaul Morley、Jill Sinclairによって設立されたレーベルで、音楽、映像、広告、コピーライティング、12インチリミックス、アートワークを一体化する極めて先鋭的なポップ実験場だった。The Guardianは、ZTTをTrevor Hornが共同設立したレーベルとして紹介し、Frankie Goes to HollywoodやGrace Jones、Sealなどのヒットに関わったと説明している。(theguardian.com)
Trevor Hornは、The Bugglesの「Video Killed the Radio Star」やYesのプロデュースでも知られる、80年代スタジオサウンドの魔術師だった。FGTHの音楽は、彼の手によって、単なるバンド演奏を超えた巨大な音響建築へと変貌する。Fairlight CMIやSynclavierといった当時最先端のサンプラー/デジタル機材、重厚なドラム、重ねられたシンセ、ギター、コーラス、編集、12インチミックスが、Frankie Goes to Hollywoodの音楽を「曲」以上のメディア体験へ押し上げた。Pitchforkも、Welcome to the PleasuredomeにおいてFairlight CMIの使用が密度の高い音響を作るうえで重要だったと指摘している。(pitchfork.com)
1983年にリリースされた「Relax」は、最初はゆっくりチャートを上がっていた。しかし1984年、BBC Radio 1のDJ Mike Readが歌詞とジャケットを問題視し、放送中に曲を流すことを拒否したことで騒動が拡大する。BBCの放送禁止は、結果的に曲への関心を爆発させ、Frankie Goes to Hollywoodは一夜にして時代の話題の中心へ立った。(theguardian.com)
その後、「Two Tribes」、「The Power of Love」が続き、1984年10月29日にはデビューアルバムWelcome to the Pleasuredomeをリリース。アルバムはZTTから発表され、オリジナルは2枚組LPとしてリリースされた。(wikipedia.org)
音楽スタイルと影響
Frankie Goes to Hollywoodの音楽は、シンセポップ、ニューウェイヴ、ハイエナジー、ダンスロック、ファンク、ポップロック、クラブミュージック、アートポップを横断している。だが、その本質はジャンル名よりも、過剰なエネルギーをポップに変換する力にある。
「Relax」では、反復するベースライン、機械的なビート、セクシュアルな緊張、Holly Johnsonの挑発的な声が一体化する。「Two Tribes」では、冷戦時代の核戦争への恐怖が、まるで巨大なスポーツイベントのようなサウンドに変えられる。「The Power of Love」では、極端に派手な時代の中で、逆に厳粛なバラードが提示される。
彼らの音楽的な核には、Trevor Hornのプロダクションがある。ZTTは、曲を単一の完成形として扱うのではなく、12インチ、リミックス、別バージョン、コピー、映像、スローガンを通じて、無限に増殖するメディア商品として扱った。PitchforkはZTTの12インチ文化について、Trevor HornとPaul Morleyが曲の提示方法やミックスそのものを作曲と同じくらい重要視し、「曲に最終版はなく、解釈が増殖していく」という発想を持っていたと評している。(pitchfork.com)
影響源としては、ディスコ、ハイエナジー、ニューウェイヴ、David Bowie、Roxy Music、Queen、Donna Summer、Kraftwerk、The Art of Noise、クラブカルチャー、ゲイカルチャー、パンク、広告文化、冷戦期のテレビ報道などが挙げられる。彼らは音楽だけでなく、時代そのものをサンプリングしたバンドだった。
代表曲の解説
「Relax」
「Relax」は、Frankie Goes to Hollywood最大の象徴であり、80年代ポップ史に残る問題作である。1983年にリリースされ、1984年にBBCによる放送禁止騒動をきっかけに社会現象化した。The Guardianによれば、BBCが同曲をラジオとテレビで禁止した後、曲は全英1位へ上昇し、5週間首位を維持した。(theguardian.com)
この曲のすごさは、性的な挑発だけではない。音そのものが欲望の機械のように動く。ベースは執拗に反復し、ドラムは身体を押し出し、シンセは緊張を高め、Holly Johnsonの声は命令のように響く。タイトルの「Relax」は、リラックスしろという意味でありながら、曲はまったくリラックスしていない。むしろ、抑え込まれた欲望が爆発寸前まで高まっていく。
「Relax」は、検閲によって封じ込められるどころか、さらに強い欲望の記号になった。禁止されたからこそ、人々は聴きたくなった。80年代のメディア社会において、スキャンダルが広告になることを証明した曲でもある。
「Two Tribes」
「Two Tribes」は、Frankie Goes to Hollywoodの政治的側面を最も強烈に示す楽曲である。1984年、冷戦時代の核戦争への不安が世界を覆っていた時期に、彼らはその恐怖を巨大なダンス・アンセムへ変えた。
曲のタイトルは「二つの部族」を意味する。これは米ソ対立、東西冷戦、戦争を煽る国家同士の対立を思わせる。だが、サウンドは重苦しいプロテストソングではない。むしろ、格闘技の入場テーマのように派手で、軍事パレードのように威圧的で、クラブトラックのように身体を動かす。
この曲のMVも強烈だった。世界の指導者を戯画化し、政治を暴力的なショーとして描く。Frankie Goes to Hollywoodは、政治的怒りを説教ではなく、メディア時代のスペクタクルとして提示したのである。
「Two Tribes」は、核戦争の恐怖を踊れる音楽に変えた曲だ。そこにこそ、FGTHの異常な才能がある。
「The Power of Love」
「The Power of Love」は、Frankie Goes to Hollywoodの代表的なバラードである。「Relax」と「Two Tribes」の過剰な欲望と政治的恐怖の後に、この曲が全英1位になったことは非常に象徴的である。
この曲は、タイトル通り愛の力を歌う。だが、単なる甘いラブソングではない。音は荘厳で、ほとんど宗教的な空気を持つ。Holly Johnsonの声は、ここでは挑発者ではなく、祈る人のように響く。
80年代のFrankie Goes to Hollywoodは、快楽と戦争と愛をすべて同じ巨大なポップ装置の中に入れた。「The Power of Love」は、その中でも最も純粋で、最も切実な曲である。過剰な時代に差し出された、静かな救済の歌だ。
「Welcome to the Pleasuredome」
「Welcome to the Pleasuredome」は、デビューアルバムの表題曲であり、Frankie Goes to Hollywoodの世界観を最も大きなスケールで示す楽曲である。長尺で、幻想的で、クラブ、映画、神話、広告、欲望のテーマパークが一体になったような曲である。
「Pleasuredome」とは快楽の殿堂、快楽のドーム、人工的な楽園のような場所である。だが、その快楽は単純に楽しいものではない。消費され、管理され、演出される快楽でもある。FGTHは、この曲で80年代のポップカルチャーそのものを巨大な遊園地として描いた。
Trevor Hornのプロダクションは、ここで最大限に発揮される。サンプル、シンセ、ドラム、ギター、声、ナレーション的な断片が層を作り、曲はひとつの音楽というより、音で作られた都市のように広がる。
「War」
「War」は、Edwin Starrの反戦曲のカバーであり、Welcome to the Pleasuredomeにも収録された。Classic Pop Magazineは、デビューアルバムが2枚組となったことでオリジナル曲だけでは足りず、Edwin Starr、Bruce Springsteen、Burt Bacharachなどのカバーも含まれることになったと紹介している。(classicpopmag.com)
Frankie Goes to Hollywoodが「War」をカバーしたことは自然だった。「Two Tribes」で冷戦の恐怖を描いた彼らにとって、戦争への問いは大きなテーマだった。だが、彼らの「War」は単なる懐古的な反戦カバーではなく、80年代の核不安と結びついた新しい意味を持つ。
「Born to Run」
「Born to Run」は、Bruce Springsteenの名曲のカバーである。Springsteenの原曲がアメリカの若者の逃走と希望を歌うロックアンセムだとすれば、Frankie Goes to Hollywood版は、より人工的で、80年代的な過剰さをまとっている。
このカバーは、FGTHが単なるシンセポップグループではなく、ロックの大きなドラマ性にも強く惹かれていたことを示す。彼らは、アメリカンロックの自由への衝動すら、自分たちのPleasuredomeへ取り込んだ。
「Rage Hard」
「Rage Hard」は、1986年のセカンドアルバムLiverpoolからの代表曲である。デビュー期の爆発的な成功後、バンドはよりロック色の強い方向へ向かった。この曲には、以前のようなZTT的な過剰なコンセプトは残りつつも、バンドとしての肉体性がより前に出ている。
タイトルは「激しく怒れ」「激しく生きろ」といった意味を持つ。80年代半ばのFGTHは、もはや新人のスキャンダルバンドではなく、自分たちの存在を証明し続ける必要があった。「Rage Hard」には、その焦りと力強さがある。
「Warriors of the Wasteland」
「Warriors of the Wasteland」もLiverpool期を象徴する楽曲である。タイトルは「荒野の戦士たち」。デビュー期のクラブ的でメディア的なイメージから、より荒々しいロック的世界観へ向かったことが分かる。
この曲には、ポストアポカリプス的なイメージがある。80年代後半、ポップの熱狂は少しずつ変質し、バンド自身もZTTとの関係や内部分裂に直面していた。「Warriors of the Wasteland」は、その不穏さを背負った曲である。
「Watching the Wildlife」
「Watching the Wildlife」は、Frankie Goes to Hollywoodの後期を代表する曲であり、彼らの終幕の空気を感じさせる楽曲である。大きなヒットを連発した1984年の勢いはすでになく、バンドの中には疲労と分裂が広がっていた。
この曲には、少し距離を置いて世界を眺めるような感覚がある。野生を観察するというタイトルは、社会、人間、欲望を少し冷めた視点で見ているようにも読める。Frankie Goes to Hollywoodの過剰な祭りが終わりに近づく中で、どこか寂しい余韻を残す曲である。
アルバムごとの進化
Welcome to the Pleasuredome
1984年10月29日にリリースされたWelcome to the Pleasuredomeは、Frankie Goes to Hollywoodのデビューアルバムであり、80年代ポップ史に残る巨大な作品である。ZTT Recordsから発表され、Trevor Hornがプロデュースを担当した。もともとは2枚組LPとしてリリースされ、リリース前から100万枚を超える予約があったと報じられたが、実際の初週売上は約25万枚だったとされる。それでもアルバムは大成功し、イギリスで1位を獲得した。(wikipedia.org)
このアルバムは、普通の意味でのバンドのデビュー作ではない。むしろ、ZTTというメディア装置が作り上げた巨大なポップ・テーマパークである。「Relax」、「Two Tribes」、「The Power of Love」という怪物級シングルに加え、「Welcome to the Pleasuredome」、「War」、「Born to Run」などが並ぶ。
Classic Pop Magazineは、ZTTがデビュー作を2枚組にする方針を取ったため、バンドはオリジナル曲だけでは足りず、Edwin Starr、Bruce Springsteen、Burt Bacharachなどのカバーを収録することになったと説明している。(classicpopmag.com)
このアルバムの魅力は、整合性ではなく過剰さである。快楽、戦争、愛、カバー、リミックス的発想、映画的な構成、広告コピー、巨大な音響。それらが混ざり合い、まるで80年代そのものが音になったような作品になっている。
Pitchforkは同作について、BBCによる「Relax」禁止騒動、Paul Morleyの挑発的なメディア戦略、Trevor Hornのデジタル機材を使った重層的な音作りが結びつき、80年代の電子ポップ時代における特異な作品となったと評している。(pitchfork.com)
Liverpool
1986年のLiverpoolは、Frankie Goes to Hollywoodのセカンドアルバムであり、実質的なラストアルバムである。デビュー作の巨大な成功とZTTによる徹底した演出の後、バンドはよりロック的な方向へ進もうとした。
このアルバムでは、「Rage Hard」、「Warriors of the Wasteland」、「Watching the Wildlife」などが収録されている。音は前作ほど多彩で巨大なテーマパーク的構造ではなく、よりバンドとしての攻撃性を感じさせる。
しかし、Liverpoolは商業的にも批評的にもWelcome to the Pleasuredomeほどの衝撃を与えることはできなかった。問題は単に曲の出来ではない。1984年のFGTHは、音楽、検閲、メディア、ファッション、政治、セクシュアリティが一点で爆発した奇跡的なタイミングだった。Liverpoolは、その後に出された「普通のロックアルバム」として受け止められやすかった。
それでも、Liverpoolには興味深い価値がある。ここには、プロデューサーやメディア戦略に包まれたFGTHではなく、バンドとして生き残ろうとする彼らの姿がある。結果的に、バンドはこの後分裂へ向かうが、その最後の抵抗として聴くことができる。
ZTT、Trevor Horn、Paul Morleyの魔術
Frankie Goes to Hollywoodを語るうえで、ZTTの存在は決定的である。ZTTは、普通のレーベルではなかった。曲を売るだけでなく、アーティストを記号化し、コピーを作り、映像を作り、12インチで曲を増殖させ、ファンの想像力を刺激する総合メディア工場だった。
Trevor Hornは、音の建築家だった。彼はスタジオを楽器として使い、バンドの演奏を素材にしながら、巨大なポップサウンドを構築した。MusicRadarのインタビューでも、HornはWelcome to the Pleasuredomeのサウンドを形づくったFairlightやSynclavierといった機材、そしてSteve Lipsonとの制作について語っている。(musicradar.com)
Paul Morleyは、言葉の魔術師だった。彼はFGTHを単なるバンドではなく、スローガン、メッセージ、謎めいた広告コピーによって包み込んだ。「Frankie Say Relax」のTシャツは、80年代ポップ文化を象徴するアイテムとなった。ここでは、音楽とファッションと広告が完全に一体化している。
つまりFrankie Goes to Hollywoodは、バンドであり、商品であり、アートプロジェクトであり、メディア事件だった。
セクシュアリティと検閲
Frankie Goes to Hollywoodの革新性は、音だけでなく、セクシュアリティの表現にもある。Holly JohnsonとPaul Rutherfordはゲイであり、バンドは同性愛的なイメージ、レザー、クラブ、肉体、欲望を前面に出した。1980年代前半のイギリス社会において、これは非常に挑発的だった。
「Relax」の放送禁止騒動は、その象徴である。曲が性的すぎると判断されたことは、当時のメディアや社会がどのような欲望を許容し、どのような欲望を危険視していたかを示している。
しかし、FGTHはその検閲を逆手に取った。禁止された曲は、むしろ最大の広告になった。スキャンダルは売上を伸ばし、バンドの神話を強化した。これは、後のMadonnaやPet Shop Boys、George Michael、Lady Gaga、Lil Nas Xなどにもつながる、ポップにおけるセクシュアリティとメディア戦略の重要な先例である。
冷戦、核不安、80年代の政治性
Frankie Goes to Hollywoodは、快楽のバンドであると同時に、恐怖のバンドでもある。「Two Tribes」はその最たる例だ。1980年代前半、米ソ冷戦、核兵器、テレビ報道、政治家の演説は、日常の中に終末感を持ち込んでいた。
FGTHは、その不安を暗いフォークソングにはしなかった。彼らは、核戦争の恐怖を巨大なダンストラックへ変えた。これは一見不謹慎にも見える。しかし、そこには80年代らしい真実がある。世界が破滅するかもしれない時代に、人々はクラブで踊り、テレビを見て、ポップソングを買っていた。
Frankie Goes to Hollywoodは、その矛盾を隠さなかった。むしろ、快楽と破滅を同じ音量で鳴らした。
影響を受けたアーティストと音楽
Frankie Goes to Hollywoodの音楽には、ディスコ、ハイエナジー、ニューウェイヴ、パンク、ゲイ・クラブカルチャー、David Bowie、Roxy Music、Queen、Donna Summer、Kraftwerk、The Art of Noise、Yes、Bruce Springsteenなどの影響が感じられる。
特に、David BowieやRoxy Musicからは、音楽とイメージを一体化する方法を受け継いでいる。Queenからは、過剰なドラマ性と壮大なコーラス。ディスコやハイエナジーからは、身体を直接動かすビート。KraftwerkやFairlight以降の電子音楽からは、機械的な精密さを取り込んだ。
しかし、FGTHはそれらを美しく整理したわけではない。むしろ、全部を巨大なミキサーに入れて、80年代的な爆発物にした。
影響を与えたアーティストと音楽シーン
Frankie Goes to Hollywoodの影響は、音楽そのものだけでなく、ポップの見せ方に大きく及んだ。Pet Shop Boys、Erasure、George Michael、Madonna、Scissor Sisters、Lady Gaga、Years & Years、Dua Lipa以降のクィアポップ的表現、そして巨大なクラブポップの演出に、彼らの遺産を見ることができる。
ZTT的な12インチ文化とリミックス戦略は、のちのダンスミュージック、クラブミックス、エクステンデッドバージョンの価値を押し広げた。Pitchforkも、ZTTが曲を多面的な体験へ変えるレーベルだったことを指摘している。(pitchfork.com)
また、「Frankie Say Relax」に象徴されるスローガンTシャツ文化は、音楽がファッションと広告コピーによって拡散する方法の先駆的事例だった。バンド名や曲名だけでなく、言葉そのものが商品になり、時代の記号になったのである。
同時代アーティストとの比較
Frankie Goes to Hollywoodは、Duran Duran、Wham!、Culture Club、Pet Shop Boys、Eurythmics、Soft Cell、Depeche Mode、The Human League、Madonnaなどと同時代的に語ることができる。
Duran Duranが洗練されたファッションとニューウェイヴの華やかさを持っていたのに対し、FGTHはもっと暴力的で、性的で、メディア戦略的だった。Culture Clubがジェンダーの曖昧さをポップに持ち込んだなら、FGTHはより直接的にゲイカルチャーと欲望を持ち込んだ。
Pet Shop Boysとは、クィアな感性、電子音楽、アイロニーという点で共通する。ただし、Pet Shop Boysが冷静で都会的な観察者だとすれば、Frankie Goes to Hollywoodは巨大なサウンドと肉体性で突進する存在だった。
Depeche Modeが暗い欲望と機械的なビートを深めたのに対し、FGTHはそれをより商業的で、スキャンダラスで、テレビ向きの爆発へ変えた。
再結成と後年の評価
Frankie Goes to Hollywoodは、1987年頃に分裂し、その後長く伝説的存在として語られてきた。Holly Johnsonはソロ活動へ進み、バンドの再結成は長年ほとんど不可能と思われていた。
しかし、2023年、リヴァプールで開催されたEurovision関連イベントで、Frankie Goes to Hollywoodは36年ぶりに再結成した。The Guardianは、彼らがリヴァプールで25,000人の観客の前に登場し、36年ぶりのステージを行ったものの、演奏は1曲のみだったと報じている。(theguardian.com) Sky Newsも、Eurovision Song Contestの開始を記念するコンサートで、36年ぶりに再結成し、約30,000人の観衆の前で演奏したと伝えている。(news.sky.com)
また、Welcome to the Pleasuredomeはリリースから40年を越えて再評価が進み、2025年にはデラックス版のリリースも告知された。Steven Wilsonの公式サイトでは、2025年10月31日に7CD/Blu-rayボックス、2CD、2LP新ステレオミックスなどを含むデラックス版が発売されると紹介されている。(stevenwilsonhq.com)
この再評価は、Frankie Goes to Hollywoodが単なる80年代の懐メロではなく、ポップ、政治、セクシュアリティ、プロダクション、メディア戦略を結びつけた重要な実験だったことを示している。
ファンや批評家からの評価
Frankie Goes to Hollywoodは、当時から賛否が激しいバンドだった。彼らは「作られたバンド」「ZTTのスタジオ産物」と批判されることもあった。確かに、Trevor HornのプロダクションとPaul Morleyの戦略がなければ、FGTHはあの巨大な形にはならなかっただろう。
しかし、それは彼らの価値を下げるものではない。むしろ、80年代ポップがそもそもバンド演奏だけで成立するものではなく、スタジオ、映像、広告、リミックス、テレビ、検閲、スキャンダルを含む総合芸術だったことを、FGTHは最も鮮やかに示した。
PitchforkはWelcome to the Pleasuredomeを、音楽、政治、快楽の境界を曖昧にした作品として再評価している。(pitchfork.com) これは、現在の視点から見ると非常に重要である。現代ポップでは、アーティストは音楽だけでなく、映像、SNS、イメージ、発言、ファッションを含めて評価される。Frankie Goes to Hollywoodは、その先駆だった。
Frankie Goes to Hollywoodのユニークさ
Frankie Goes to Hollywoodのユニークさは、ポップをスキャンダル、快楽、政治、広告、音響実験の総合装置にしたことにある。
彼らは、ただ良い曲を出しただけではない。社会を騒がせた。BBCを怒らせた。Tシャツを流行らせた。核戦争をダンスミュージックにした。愛のバラードを宗教的な賛歌のように響かせた。ZTTのプロダクションによって、バンドは巨大なメディア神話へ変わった。
また、彼らは80年代の欲望を美化せず、過剰なまま提示した。セックス、戦争、愛、消費、メディア、クラブ、政治。それらは別々のものではなく、同じ時代の中で同時に鳴っていた。Frankie Goes to Hollywoodは、その騒音をポップソングへ変換したバンドである。
まとめ
Frankie Goes to Hollywoodは、80年代を象徴するエネルギッシュなポップ革命だった。リヴァプールから登場し、ZTT Records、Trevor Horn、Paul Morleyと出会うことで、彼らは単なるバンドを超えたメディア現象になった。
「Relax」は欲望と検閲をめぐる社会的事件となり、BBCの放送禁止によって逆に全英1位へ駆け上がった。「Two Tribes」は冷戦と核戦争の恐怖を巨大なダンス・アンセムへ変え、「The Power of Love」は過剰な時代の中に祈りのような愛を提示した。Welcome to the Pleasuredomeは、快楽、政治、戦争、愛、広告、リミックス文化を一つにまとめた、80年代ポップの巨大なモニュメントである。
彼らの活動は短かった。しかし、その短さの中で、Frankie Goes to Hollywoodはポップの可能性を一気に拡張した。音楽は音だけではない。映像であり、コピーであり、ファッションであり、スキャンダルであり、政治的記号であり、身体の欲望でもある。
Frankie Goes to Hollywoodは、80年代の眩しいネオンの中で、快楽と恐怖を同時に鳴らしたバンドである。その音は今も、ポップがただ楽しいだけのものではなく、時代そのものを爆発させる力を持つことを思い出させてくれる。

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